インタビュー
[TGS 2012]「SOUL SACRIFICE」は期待している以上の体験ができるはず。稲船敬二氏へのインタビューを掲載
スピーディな戦闘や個性的な魔法の数々によるアクションゲームとしての純粋な面白さ,救済と生贄という選択が生む新たな体験などはプレイレポートでもお伝えしたとおりだが,率直な感想として,前評判や期待を遥かに超える一作として仕上がっている印象だ。今回はプレイを踏まえてのインタビューということで,魔法や救済と生贄のシステム,注目すべきポイントなどについて話を聞いてみた。
4Gamer:
お忙しい中,お時間をいただきありがとうございます。今回,SOUL SACRIFICEは世界初の一般公開ということで期待されている方も多いかと思います。それだけに,「SCEJ Press Conference 2012」での発売の変更の発表は少し残念でしたが……。
稲船敬二氏(以下,稲船氏):
今回出展しているように,ざっくりとしたチューニングであれば,すでに形になっているんですけどね。ただ,かなり面白く仕上がってきているので,SCEさんのほうから「もっと時間をかけてもっと面白くしましょう」というお話をいただいたんですよ。
4Gamer:
え,発売の延期って,普通はスケジュール的に間に合わないからといった感じで,開発側が頼むものだとばかり(笑)。
普通はそうです。なので,僕も「本当にいいのかな?」と思ってしまいました。だから延期を発表したとき僕は「SCEさんは太っ腹だ」って言いましたが,本当にポジティブな理由での延期なんです。
4Gamer:
では,さらに面白いゲームが出てくることを楽しみにしています。とはいえ,出展されているマルチプレイを遊ばせていただきましたが,現状でもアクションゲームとしてかなり面白いですよねえ。
稲船氏:
イケてるでしょ? 僕も自分でイケてると思っています(笑)。
4Gamer:
触ってみて,戦闘のスピード感と魔法それぞれの個性を,かなり強く意識して作られているという印象を受けました。
稲船氏:
そうですね。意図としては,「これは魔法なんだ」ということをしっかりとお見せしたいんです。魔法といいつつ,使っていてショボい,ただ魔法と名付けられているようなものであったら,がっかりしますよね。
4Gamer:
ただエフェクトがちょっと違うだけでは寂しいですしね……。
稲船氏:
ええ。魔法を使ったときのハデさ,爽快さは,すごく注意して作っています。おそらく,初めてプレイしたときは,あまりにハデに,かつテンポ良く魔法が繰り出されるので,なんだかよく分からない間に敵や自分が死んでしまった,という感覚を覚えると思うんですよ。でも,これに慣れてくると,魔法を使うのがものすごく楽しくなってくるようなバランスを目指しました。
4Gamer:
魔法の楽しさは徹底していますよね。魔法によっては,発動後の操作方法すら違っていたりして,ここまでやるかと思うほどで。
稲船氏:
そのぐらい差別化しないと,「これを使いたい!」というこだわりが生まれてきませんから。自分の気に入った魔法をどう見つけていくか,使うために必要な供物をどう集めていくかといった過程も,楽しんでもらいたいので。
4Gamer:
試遊では最初から供物が用意されているので魔法を連発できますけど,おそらく製品版ではそうはいかないんですよね。貴重な供物を使うのはもったいないけど,このボスを倒すために使うべきか,それともがんばって温存するか,といった葛藤があると面白そうです。
稲船氏:
もちろん,そういった要素はあります。手持ちの供物からどうやってザコを倒すか。お気に入りの魔法を使うにはどうやって供物を集めればいいのか。ただ魔法を使うといっても,そう簡単にはいきません。
4Gamer:
それはなかなかシビアなことになりそうですね。
ちなみに,魔法ってどのぐらいあるんですか? 今回の試遊だけでも18種類ありましたけど。
稲船氏:
まだお話はできませんが,18種類どころじゃない,「うわっ」と思うほどの数が用意されているとだけお伝えしておきましょう。プレイでは一度に6個しか選択できないのに,こんなに必要あるのかというぐらいありますよ。
4Gamer:
うーん,早く製品版で一覧を見てみたいです……。
ではこれから遊ぶ人のために,ひとまずテストプレイバージョンに入っている中から稲船さんがオススメするのはどの魔法ですか?
稲船氏:
うーん,ゴーレムを呼び出す魔法とか,防具を身につけて戦える魔法ですね。効果が発動しているときに,別の魔法も使えるのって,お得感があって好きなんです。
仲間や敵を救済するか,それとも生贄にするか
4Gamer:
ところで,試遊中に倒れていく仲間を見て,ずいぶん難度が高めに設定されているという印象を受けたのですが,シビアなゲームバランスを目指しているのでしょうか。
試遊バージョンは,わざと仲間が倒されるような難度に調整しています。やられてもらわないと,マルチプレイで一番体験してもらいたい,「死んだときに救済するのか生贄にするのか」という要素がお見せできませんから。
4Gamer:
なるほど。確かに,「仲間を助けないことが選べる」というのは斬新な体験でした。私は先ほどプレイして,つい3人の仲間を生贄にしてしまったんですが。
稲船氏:
血も涙もないですね(笑)。でも,初めてあの選択肢をみたら,絶対生贄にしますよね。今回は短い試遊時間の中で,自分が仲間を殺したんだ,もしくは自分が仲間に殺されたんだという体験をしてもらいたかったので,あえて極端なチューニングにしています。
4Gamer:
正直,ちょっと罪悪感はありましたね……。ボスを撃破といわれても,仲間は全滅していて立っているのは自分だけという状態だったので。
稲船氏:
そう感じていただけたなら,僕の狙い通りです。
製品版のお話を少しすると,供物をどう集めるか,強力になっていく魔物にどう立ち向かっていくかといった要素が含まれてくるので,また違ったプレイフィールを楽しんでもらえると思います。それと,まだお話はできませんが,シナリオが本当によくでてきているんですよ。
4Gamer:
そういえば,シナリオの情報はプロローグぐらいしかまだ公開されていませんね。
稲船氏:
単純に「魔物が現れたから魔法使いが倒しなさい」では終わらないシナリオになっています。倒した敵を救済するか,それとも生贄にするか,とにかく悩んでもらいたいですから。そして,その選択の末に物語を最後まで見たとき得られる気持ちを,ぜひ味わってもらいたいんです。
4Gamer:
というと,例えば「パラメータ的に強くなるから,全部生贄にしてしまえ」みたいな進め方をするより,ストーリーに感情移入して救済すべきか悩んだほうが,SOUL SACRIFICEを楽しめたりするんでしょうか。
稲船氏:
もちろん,皆さんが好きな遊び方をしていただければいいんですけど,僕としては主人公になりきって遊んでもらいたいですね。自然とそうなるチューニングができるよう,頑張ります。
新規タイトルを出すというチャレンジの意味を分かってほしい
4Gamer:
今回初めて一般公開するにあたって,これから触る皆さんにここを見てほしい,という部分はありますか?
とくに日本人に感じてもらいたいのは,これがブランニュータイトル(完全新作)だということですね。これは日本のゲーム業界にとってすごく重要なんです。今年のゲームショウで注目されているタイトルって,続編が多いですよね。
4Gamer:
そうですね……今年というより,例年そんな感じですけども。
稲船氏:
だから海外にがっかりされるんですよ。もちろん,海外だって続編は多く出ています。でも,例えばSCEが「Beyond: Two Souls」「The Last of Us」みたいなブランニュータイトルを出して,大きく注目されたわけじゃないですか。
そんな中で,SCEJからブランニュータイトルが,しかも新しいハードのPS Vitaで出てくる。これはものすごく勇気のいることです。その意味を分かってほしい。
4Gamer:
しかも,自ら発売を延期までして。
稲船氏:
大きな犠牲と代償を払って,チャレンジしているわけですよ。
4Gamer:
SOUL SACRIFICEは海外での発売も決定していますが,日本での期待感とは違いを感じますか?
稲船氏:
「いいね」「期待しているよ」といった声はどちらでもいただけますけど,ブランニュータイトルであることへの応援が込められているのは,やっぱり海外ですね。ゲームショウの会場で海外の方に声を掛けられても,その違いをすごく感じます。
なので,続編としての評判はなく,触ったこともないSOUL SACRIFICEというゲームに対して,これからプレイする日本人の皆さんにどういった評価をしていただけるのか。めちゃめちゃ気になりますよ。
4Gamer:
そうですね。まずは東京ゲームショウでどういった反響があるのか,ゲームメディアとしても楽しみにしています。
お時間が迫ってきましたので,最後にSOUL SACRIFICEに期待している読者にコメントをいただけますか。
稲船氏:
はい。今回の試遊版を遊んでいただければ,皆さんが期待している以上の体験ができるはずです。その期待を裏切るようなことはないと思っていますし,今回触れない人は,体験版への期待をもっと大きくしてもらってもかまいません。救済と犠牲の選択がもたらす体験はどういったものなのか,ぜひプレイしてみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「SOUL SACRIFICE」公式サイト
- 関連タイトル:
SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)
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(C)2013 Sony Computer Entertainment Inc.
- SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス) PlayStation Vita the Best
- ビデオゲーム
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