インタビュー
最新作「beatmania IIDX 20 tricoro」のサウンドディレクター陣に聞く,IIDXシリーズの今昔。新曲から制作秘話までみっちり語った2時間を凝縮してお届け
「10作続いたらどうしよう?」から始まったIIDXシリーズ
4Gamer:
ではここからは,少し主旨を変えてbeatmaniaシリーズのこれまでを振り返っていただきたいと思います。ちょうどIIDXシリーズのナンバリング20作目ということで節目なわけですが,まず皆さんのbeatmaniaシリーズとの出会いって,どんな形だったんでしょうか。
L.E.D.氏:
そうですね。これは自分がKONAMIに入る前の話なんですが,この業界にはいて,beatmaniaというゲームが話題になっているというのを耳に挟んだのが最初ですね。その頃は横浜にいたんですが,横浜駅周辺ってゲームセンターがすごく多かったんですよ。そんな中に,beatmaniaを外に設置しているお店があって,店頭に人だかりができていたのを覚えています。
4Gamer:
初代の稼働が1997年頃だから……恐らくその辺りのお話ですね。
L.E.D.氏:
そうですね。うまい人がプレイすると本物のDJみたいに脚光を浴びて,ここまで音楽が主役になるゲームが登場したということに,衝撃を受けました。当時のゲームのサウンドクリエイターは皆,そう思ったはずですよ。
4Gamer:
ここまで音楽がメインになるゲームはなかったと。
L.E.D.氏:
リズムアクションというジャンルは,もちろんそれ以前からあったわけですが,beatmaniaの場合はもっと曲が前に出ていて,自分にとってはそれが驚きだったんだと思います。
僕はpop'n musicのサウンドディレクターだったtogoさんの席に,コンシューマ版のIIDXのコントローラやソフトが置いてあって,それをお借りして遊んだのが初めてだったと記憶しています。togoさんと同じ部署に僕が配属になったとき,「音ゲー興味ある?」と聞かれて,「何でもやります!」と答えたあと,コンシューマ版のpop'n musicに楽曲を提供したのが音楽ゲームへの初参加なので。
4Gamer:
TAKAさんはbeatmania IIDXシリーズの初期から楽曲を提供していますが,当時を振り返っていかがでしょうか。
dj TAKA氏:
昔,「IIDXシリーズが10作品まで続いたらどうしようか?」って冗談交じりで言ってたことがあるんですよ。その嘘から出た真というか,10を通り過ぎて20まで来るなんて,当時は予想もしなかったですね。
4Gamer:
それはいつ頃のお話でしょうか。
dj TAKA氏:
ちょうどDDRとbeatmaniaがリズムゲームブームを牽引していた時期ですね。家庭用はミリオンを突破して,DDRのサントラは60万枚をセールスと,大変な記録を打ち立てて,まさに日本中がリズムゲームブームの頃でした。
4Gamer:
DDRの稼働が1998年,IIDXの1作目の稼働が1999年ですから,ちょうどその前後ですか。
dj TAKA氏:
そうです。IIDXって,実は最初の頃は人気がなくて,けっこう危なかったんですよ。稼働直後は珍しさもあって良かったのですが,五鍵盤(初代beatmaniaシリーズ)との差別化が図れないうちに,あちらの人気が徐々に回復して,立場が危うくなりかけたという。
L.E.D.氏:
やっぱり五鍵盤に比べて難しいから,大体の人が1曲目で落ちてた(ゲームオーバーになっていた)印象がありますね。
4Gamer:
IIDXシリーズって,初期は1プレイ300円がデフォルトでしたよね。稼動したての頃,「beatmania IIDX」が出たらしいぞって地元の友達に聞いて,かなり離れた場所のゲームセンターに自転車で通った覚えがあります。五鍵盤を結構やり込んでいたので自信はあったんですが,いきなり七鍵盤の操作に慣れるわけもなく,やっぱり1〜2曲目で落ちて悶絶してました。
dj TAKA氏:
結局,稼動してすぐに,この状況を何とかしなきゃってことになり,Ver1.5と称して「beatmania IIDX substream」を急遽制作することになって。当時人気の高かったDDRにすがる形で,何とか頑張っていこうと,連動するキットを作ったんですよ。
4Gamer:
ああ,「CLUB VERSION2」※ですね。あれはそういう経緯だったんですか。
※「CLUB VERSION2」……「beatmania IIDX substream」と「DDR 2ndMIX」の連動キット。「beatmania IIDX substream」と「DDR 2ndMIX」を同時に遊ぶことで,IIDXの楽曲がDDRでも遊べるようになった。今でいう多機種連動イベント「Lincle LINK」の元祖といえるかもしれない。
dj TAKA氏:
まぁ,そういうことをやりながら徐々に人気を回復させて,2nd・3rdくらいからようやく安定したお客さんについていただいた感じかな。とにかくbeatmaniaと同じことをやっているのではダメだという意識で,中身を違うものにしていきました。
4Gamer:
確かにその頃には,1プレイあたりの料金も下がってきて,五鍵盤の人達がIIDXにシフトしていった記憶がありますね。ちなみに,今まで開発してきた中で,とくに印象に残っている楽曲や出来事って,なにがあるでしょうか。
L.E.D.氏:
「beatmania IIDX 5th Style」のロケテストを見学しに行ったとき,会場のお客さんが全員「V」をやっていたのが衝撃的でしたね。「V」すげえ,dj TAKAすげえって。今でも鮮明に覚えていますよ。
4Gamer:
当時のロケテストは自分も行きましたが,たしかに皆「V」をやっていましたね。
L.E.D.氏:
自分の楽曲でいうなら,beatmania IIDX substreamに入った「THE EARTH LIGHT」かな。自分は当時,コンシューマゲーム機を持っておらず,ゲームと言えばゲーセンでプレイするものだと思っていたので,アーケードタイトルに収録されるのが憧れだったんですよね。
4Gamer:
自分もついにbeatmaniaまで辿りついた,みたいな。
L.E.D.氏:
ですね。正確にいえば,五鍵盤の「beatmania 4th mix」に入っている「GENOM SCREAMS」の方が先なんですけど,とにかく自分の曲が収録された筐体に,人だかりができているのが嬉しかった。この業界に入って,ベスト5に入るくらいの感動でしたよ。
猫叉氏:
僕はちょっとうろ覚えなんですけど,昔のバージョンに,谷 啓さんとせんだみつおさんがコラボした楽曲※があったじゃないですか。ナハナハとかガチョーンとか鳴りまくるっていう。あれを見たときに,自分の中で何か壊れた音がしましたね。こういうのもアリなんだって。だってボタン押すと,ナハナハとかガチョーンとか言うんですよ(笑)。
※「NaHaNaHa vs. Gatchoon Battle 」……家庭用の「beatmania GOTTAMIX」に収録。せんだみつお氏と谷 啓氏の奇跡のコラボレーションにより生まれた楽曲で,実はアーケード版に収録されていた時期がある。
dj TAKA氏:
なんでもアリの時代だったからね(笑)。
猫叉氏:
やっぱりあのインパクトが大きかった。もちろんそれがすべてではないですが,こういうことができるタイトルなんだって,すごく感動しました。自分の楽曲でいえば,「beatmania IIDX 17 SIRIUS」に収録された「being torn the sky」という曲があるんですけど,ちょうど変なことしてやろうと思っていた頃に作ったトラックで,結構思い入れがあるかな。
4Gamer:
変というのは,どういう意味でしょうか。
猫叉氏:
まさにさっきTAKAさんが言ってた自分の音楽の方向性について,自分はあえて逆に行ってみようって思ってたんですよね。でもコード進行を色々いじったつもりなのに,なぜかまとまってしまって,「あれっ?」って思いました(笑)。
4Gamer:
なんだかTAKAさんの話に,すべて凝縮されているような気がしてきました。TAKAさんはbeatmania IIDX substreamから「beatmania IIDX 11 IIDX RED」まで,サウンドディレクターを担当されていましたが,とくに印象に残ったシリーズはありますか?
dj TAKA氏:
うーん,そうですね。さっきの引き出しの話と被るんですが,自分のアイデア中心でずっと続けていくには限界を感じてきた時期があったんですよ。6th styleを作ったときなんですが,これが自分の中で一つ極まったところだと。IIDXとしてベストを尽くした作品だと感じたんです。
そこから7th〜10thまでは僕が中心になってやってきましたが,そこに新しい発想が生まれにくくなってきてしまった。これはもう,そろそろ違う人にやってもらったほうがいいということで,Tatsh君を育てて,彼に任せようと考えていました。もちろんすべてのタイトルでベストを尽くしましたが,7th〜10thは過渡期だったこともあって,葛藤もありましたね。
beatmaniaの今と昔,シーンの移り変わり
4Gamer:
さて,beatmaniaが稼動してから今年の12月で15周年。IIDXシリーズとしては12年となります。その間に音楽シーンも変わり,プレイヤーの年齢層にも変化があったと思うのですが,昔のbeatmaniaと今のbeatmaniaを比べて,ここが変わったな,ということはありますか。
dj TAKA氏:
これは個人的な印象ですけど,昔のbeatmaniaって,いわゆるゲーマーとは違う層の人達を凄く意識してたと思うんですよ。それはもちろん,まったく新しい層にプレイしてほしいという想いからなんですが,もう一方で,ゲーマーでない人から見てもカッコいいものを作りたいというプライドが,自分達の中のあったように思います。そしてそれが時に,プレイヤーの求めるものとズレていた時期がありました。
4Gamer:
なんとなく,分かる気がしますね。
以前一緒に仕事をしたコンシューマゲームのディレクターが,「IIDXはリズムゲーム界のF1マシンだ」って言っていたことがあるんです。自分もそのとおりだと思っていて,IIDXはゲームセンターの中でスポットを浴びる存在であってほしいし,クールなものであってほしいという想いがありました。だからクラブカルチャーやダンスミュージックを,皆で共有していきたいという気持ちで,ディレクションに取り組んでいたんです。
4Gamer:
昔のIIDXには,確かにそういうイメージがあったように思います。クラブカルチャーやダンスミュージックとIIDXって,実際のところ相性がいいのでしょうか。
L.E.D.氏:
昔でいえば,例えばトランスは,世間の音楽の流行とIIDXでの人気がマッチしていた印象がありますね。逆にエレクトロポップなんかは,最近はブームになっていますが,IIDXとの親和性は今ひとつな気がします。
4Gamer:
昔のIIDXでは,ユーロビートも人気がありましたね。
L.E.D.氏:
そうですね。ユーロビートが流行した頃は,IIDXでもよく選曲されていたと思います。
4Gamer:
ゲームとしてのIIDXに合う音楽と,そうでない音楽がある?
dj TAKA氏:
そういう部分もあったかもしれません。でもシリーズを重ねるうちに,そういうズレはなくなっていきました。今はもう,お客さんが求めるものをドンピシャで提供できているというイメージがあります。
4Gamer:
プレイヤーのニーズを正しくつかめるようになったのには,なにかきっかけがあったのでしょうか。
劇的に変わったのは,9th Style以降ですね。e-AMUSEMENTのシステムが整備されて,プレイ状況が正確に把握できるようになったんです。それまでも自分の足でお店に行って確認したり,ネットの意見を見て回ったりということはしていましたが,やっぱりネットの意見というのは,極端なものが多いんですよ。
4Gamer:
声の大きなプレイヤーばかりが目立ってしまうというのは,どのタイトルでも一緒のようです。
dj TAKA氏:
そう。そういう人の意見と,多くの人が望んでいる意見とは,必ずしも一致しないということに,なかなか気づけなかった。今はすべての筐体がオンラインでつながっていて,そのデータを元に開発が行えるので,変わってきたのはちょうどそのあたりですね。
L.E.D.氏:
今でも初心をまったく捨ててしまったわけではないですが,データを参考にすることで,プレイヤーの皆さんの要望に沿ったディレクションを,より重視する方向にシフトしています。
4Gamer:
プレイの記録が残るシステムは,今のアーケードシーンにはなくてはならないものになっていますね。
dj TAKA氏:
今考えると,よくあれでプレイしてくれていたと思うほど,劇的な変化でした。常にプレイヤーと一期一会といいますか,アーケード筐体側からみると,誰がプレイしているのかまったく分からなかったわけじゃないですか。
4Gamer:
なるほど。プレイしている側としては“ちょっと便利になった”くらいでも,開発側から見るとそこまで違いがあるものなんですね。でも時代時代で違いはあれど,beatmaniaシリーズって基本的なインタフェース自体は昔から変わっていません。それってすごいことだと思うんですが,いかがでしょうか。
dj TAKA氏:
音楽に合わせて体を動かすのって,やっぱり楽しいじゃないですか。楽器を演奏するのって,演奏できる人からすればすごく楽しい。それをゲームとして,バーチャルに体験できるのがリズムゲームであって,単純に音楽に参加する面白さが詰まっているのかなと。
それに加えて,スコアを競い合うゲーマー的な楽しみ方もできる,楽しみ方の幅の広さが,良かったんだと思います。
L.E.D.氏:
上を目指せば,キリがないですからね。音楽に合わせてボタンを叩く面白さって,僕も普遍的なものだと思うんです。それに今は楽曲もたくさん用意されていますし,いろんな楽曲,それぞれの譜面から生まれる面白さを,人によって自由に選べる。それが今もたくさんの人に遊んでもらえる,最大の理由ですよ。
dj TAKA氏:
あとはやっぱり,皆が頑張っていい曲を作ってきたからこそ続けてこられたんじゃないかな。
L.E.D.氏:
うん。コンポーザーさん達がIIDXのために本気で楽曲を作ってくれる。その積み重ねが,今の結果につながっているんだと思います。
猫叉氏:
僕は「tricoro」から制作に携わったんですが,デバッグしているときにすごい中毒性を感じたんですよ。デバッグが終わってアップした後も,筐体が空いていたらつい遊んでしまうんです。その中毒性っていうのが,つまり普遍性ということなのかなって。そこに好きな音楽が組み合わさったら,もう遊ぶしかないじゃないですか(笑)。
音楽制作に向けるパワーと,これからのIIDXシリーズについて
4Gamer:
ちょっと脱線してしまうのですが,先ほどのTAKAさんの話が面白かったので,その辺りをもう少し聞かせてください。引き出しの中身が足りなくなってしまう経験は,皆さんお持ちだと思うんですが,そういう時ってどうやって再充電されているんでしょうか。
dj TAKA氏:
うーん,街とかで流れている曲を聴いたときに,自分ならこう作るな,ってメロディを思い浮かべている時が,それに近いかなあ。あとは定期的に新しい音楽のムーブメントが訪れるので,そういうのを聴いて影響を受けて,自分のモノにする。そんな感じですね,僕の場合は。
僕は今,プライベートでも色々な中二コンテンツを吸収しているところですけど……最近はそういったアニメとかの映像コンテンツからインスピレーションをもらうことが多い気がしますね。中二って,今でこそ市民権を得ていますが,そういう感覚って昔から,それこそ自分の中にもずっとあって,それが呼び覚まされた感じ。それを音楽として再構成してアウトプットするのが面白いです。
あとは若い人達から音源を聴かせてもらって,そういうところから影響を受けたりとか……なんで笑うんですか(笑)。
dj TAKA氏:
え。いや,すごいことやってるなあって(笑)。
猫叉氏:
僕も二人とほぼ同じなんですが,映像であれ音楽であれ,あらゆる日常の体験のなかに琴線に触れるものがあって,そこに触れるものと出会うと,どんどん引き出しに中身が蓄えられていくんですよ。音楽はとくに刺激を受けやすくて,知らないうちに溜まっていたものがあるきっかけでポロっと出る。それの繰り返しですかね。
4Gamer:
お二人ともアニメや映画などの映像作品からパワーをもらっていると。では音楽でいうと,最近は何が熱いですか? 刺激を受けたものとか。
猫叉氏:
僕は「マクロスFRONTIER」のサウンドトラックが結構きました。ツボをついているなって。
L.E.D.氏:
うーん,サイケとかハードコアを良く聴きますが,最近は電波系の曲が熱いですね。I'veさんとかIOSYSさんとか。「beatmania IIDX 19 Lincle」で「恋する☆宇宙戦争っ!!」を作ったときに,参考にするためいろいろ聴かせてもらったんですが,なんだか自分でも楽しくなってしまって。電波曲の中にも,もちろん良いものとそうでないものがあるんですが,良いものについてはエンターテイメント性の高さが半端ない。そこは見習うべきなんじゃないかって。
とくに前回から参加してくれたIOSYSのARMさんが作る曲は,一時期のつんく氏を彷彿とさせるポテンシャルを秘めていると思います。今後自分が電波系の曲を作るときには,最重要ポイントとして踏まえておきたい。
4Gamer:
……TAKAさん,何か言いたいことがあれば言った方がいいですよ(笑)。
(一同笑)
dj TAKA氏:
いやいや,大丈夫です。ちょっと今日知ったことが多すぎて(笑)。
でも,僕も同じですね。電波曲に限らないんですけど,最近はインターネットミュージックをよく聴いています。最初は業務上聴かないといけない,というところから始まったんですが,聴いてると技術力の高さが凄いんです。最近流行しているdubstepとかを,日本人が好む形にうまく取り入れて作ったりしていて,結構イイ曲がたくさんあるんですよ。
猫叉氏:
あと僕は,会社と自宅で聴くものが違うんですね。Electroやdubstepなどの流行モノは会社で,自宅では楽器数の少ない小編成のバンドやアコースティックバンドなどと,週単位でコロコロ変えているんです。そこで一曲いいのがあると,ずっとそれを聴き続ける。それこそ100回とか200回とか。なかなかそういう“当たり”にはめぐり合えませんけど,日頃から,それを捜し求めているという。
4Gamer:
なるほど。ちょっと話が変わるんですが,ボス曲※ってありますよね。前作のbeatmaniaIIDX 19 Lincleでは,TAKAさんの「天空の夜明け」,L.E.D.さんとwacさんのユニット,度胸兄弟がクラシックの名曲をアレンジした「DIAVOLO」がそれに該当していて,今のbeatmaniaには欠かせない要素になっていると思うんですが,制作側としてはその存在を意識されているんでしょうか。
※ボス曲……各シリーズを代表する高難度曲のこと。譜面におけるノーツの密度が非常に高く,曲調が急激に変わるBPM変化などもあって,ハイスコアはおろかクリアするのも困難である。現在のbeatmania IIDXシリーズでは,「冥」「卑弥呼」「灼熱beach side bunny」などが代表的なボス曲といえるだろう。
dj TAKA氏:
ボス曲って,そもそも最初から存在していたものですよね。最初のbeatmaniaでいえば「20,November」がそうですし,ゲームであるからには,何か頂点になるものが存在していているべきですから。IIDXでいえば,明らかにボス曲を意識したのは,ワンモアが追加されたときかな。だから7thの「革命」からかと。
4Gamer:
ワンモアを追加したきっかけは?
dj TAKA氏:
これは僕が最初に言い出したんです。きっかけは,先ほども話したとおり,6th Styleで一つ極まった形ができたと感じて,何か新しいことをやろうとし始めた,その中の一つです。
4Gamer:
ボス曲を制作するにあたって,作曲時はなにか意識されていますか?
dj TAKA氏:
プレイヤーからの期待が高い曲になるので,たどり着いた先がこれかよ! と思われないように,気合は入れますね(笑)。最近はイベントにも絡んでくるようになって,年々ボス曲に対するオーダーが細かくなってきてます。以前は結構好き勝手にやれるというか,ボス曲にふさわしいだけの風格があれば,OKだったんですけどね。
4Gamer:
オーダーというと,例えばどんなものですか。
dj TAKA氏:
beatmaniaIIDX 19 Lincleだったら,天使と悪魔がテーマだったので,僕の「天空の夜明け」が天使っぽい曲。悪魔はどう考えてもL.E.D.さんですよね(笑)。天使のイメージから,ボス曲らしさを出すのが難しかったですね。
4Gamer:
ボス曲って,書く方としては楽しいんでしょうか。それとも辛いですか?
dj TAKA氏:
うーん,最近はプレッシャーの方が大きいかもね(笑)。
L.E.D.氏:
自分がボス曲を強く意識したのは,「beatmania IIDX 13 DistorteD」の四聖獣からなんだけど,曲にキャラ付けがされ始めた頃で,ビジュアル込みでボス曲が成立するようになった気がするんです。
猫叉氏:
世界観の設定がしっかりしていて,ストーリーがあるみたいな。
L.E.D.氏:
うん。ボス曲はダークであるべき,みたいな縛りが生まれてしまっているので,「DIAVOLO」は明るいイメージとダークなイメージが混在することを意識して作りました。今後は,もっと明るくて楽しいボス曲を作っていきたいですね。
4Gamer:
曲はポップだけど,譜面はハードみたいな?
L.E.D.氏:
そうです。ボス曲ではないですが「恋する☆宇宙戦争っ!!」もその路線の一つですし,今回の「狂イ咲ケ焔ノ華」も,同じ狙いです。これからもいろいろなボス曲が登場する予定なので,ぜひ,楽しみにしていただければと。
4Gamer:
では,ズバリこれからのIIDXが目指す方向性について,最後にコメントをいただけますでしょうか。……今日のお話だと,中二方面への進化は止まることを知らなそうですが。
L.E.D.氏:
いや,そうはならないので大丈夫です(笑)。IIDXには色々なコンポーザーさんが参加してくださっているので,その多様性みたいなものは守っていこうと思っています。プレイヤーさんの趣向に合わせたコアな部分は守りつつ,幅を広げていきたいです。音楽ジャンルだけでなく,コンポーザーの世代であるとか,スタイルとかを含めてね。
猫叉氏:
僕としては,今回からサウンドチームに加わって,制作のルールに関して少しずつ分かってきたので,今後はこれを軸にして,さらに面白いものを作っていきたいですね。そこを守りつつ,ハズすときは狙ってハズしていく,みたいな。そうすることで,自分の新しいスタイルが,自然と生まれてくるんじゃないかと。
L.E.D.氏:
今回の「beatmania IIDX 20 tricoro」は,多くの方々――とくにゲストコンポーザーの皆さんのご協力をいただいて,過去最高のIIDXになったと思います。楽曲配信をはじめ,新しい試み,いろんな楽しみ方を仕込んだつもりです。次回作が出る直前まで,「tricoro」を楽しめるようなつくりになっているので,ご堪能いただければと。
猫叉氏:
L.E.D.さんの言うとおり,「tricoro」は1年通して遊べるつくりになっています。慌ててやらなくてもいいですが,でもたくさん遊んでほしい。そういう想いを込めてイベントをギュウギュウに詰め込んでいますので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
最後にTAKAさんからも,一言お願いします。
dj TAKA氏:
そうですね……。さっきe-AMUSEMENTのシステムがシリーズの大きな転機になったという話をしましたが,「tricoro」からはじまるコンテンツ配信システムも,今後の大きな転機になる新しいサービスです。ぜひ長く遊んでいただいて,ご意見をいただければと思います。
4Gamer:
稼動後のイベントにも期待しています。本日はありがとうございました。
IIDXのキーパーソン3氏に,2時間みっちりと語ってもらった今回のインタビュー。アーケードで大きな存在を示す人気シリーズにも,実は存続の危機があったなど,筆者としても意外な話題が飛び出した,興味深いインタビューとなった。
9月25日より稼働を開始し,いよいよ全国でプレイが可能となった「beatmania IIDX 20 tricoro」。システムや演出面でのパワーアップに加え,新たなコンポーザー陣の参入など,注目すべきポイントは幾つもある。本インタビューで興味を持った人は,制作スタッフ陣が過去最高と太鼓判を押す本作を,ぜひ最寄りのアーケードで体験してみよう。
「beatmaniaIIDX 20 tricoro」公式サイト
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(C)Konami Digital Entertainment