インタビュー
「鬼武者Soul」は,“47都道府県”のコミュニティを意識したオンライン戦国シミュレーションRPG。その概要と展望をプロデューサーの杉浦一徳氏に聞いた
「鬼武者Soul」は,カプコンの人気アクションゲームの一つである,「鬼武者」シリーズの世界観をモチーフにした戦国シミュレーションRPG。ただ,これまで公開された情報だけでは,どんなゲームなのかよく分からないという人も多いだろう。
今回4Gamerでは,本作のプロデューサーであるカプコンの杉浦一徳氏にインタビューする機会を得て,そもそも「鬼武者Soul」がどんなゲームなのか,また今後はどのような展開を検討しているかなど,いろいろと話を聞かせてもらった。
「鬼武者Soul」公式サイト
アジアを筆頭に,海外展開を見据えて
「鬼武者Soul」をオンラインゲームに
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
「鬼武者Soul」ですが,2012年6月にPC向けオンラインゲームとして,さらに2012年秋にはスマートフォンでもサービス予定であることが発表されました。まずは,この2つのプラットフォームでリリースすることに決めた理由から教えてください。
ご存じのようにカプコンでは,「モンスターハンター フロンティア オンライン」と「イクシオン サーガ」という2つのオンラインゲームや,さまざまなタイトルのソーシャルゲームを展開しています。
新しいタイトルを,これまでにリリースしたタイトルと似たジャンル,同じプラットフォームで展開しようとすると,お客様の層がかぶってしまったり,社内で人的なリソースの配分が難しくなったり,といった状況が起こり得ます。
そこで今回は,事業展開をしていくうえで,まずはこれまでのカプコンの戦略とは異なるジャンル・プラットフォームのタイトルを揃えていこう,ということを決めたんです。
4Gamer:
今回は主に,ブラウザゲームのプレイヤー層をターゲットにしたというわけですね。
杉浦氏:
そうですね。「鬼武者Soul」はスマートフォンにも対応予定ですが,2012年2月にローンチした「みんなと モンハン カードマスター」のようなソーシャルゲームとは違うゲーム性で,今までとは異なった層のお客様にアピールしたいと考えています。
また,日本でも海外でも,オンラインゲーム市場の移り変わりが早い,という状況にあります。そんな中で,開発に時間のかかるクライアント型のヘビーなオンラインゲームだけを提供しようとするのは,厳しい部分があります。ですから,比較的短期間で開発できるPCブラウザゲームを用意することで,市場のニーズに対応していこうという思惑もありました。
4Gamer:
なるほど。では,「鬼武者」というIPをベースにした理由を教えてください。
杉浦氏:
今回の試みでは,国内はもちろん,海外での展開も目指しています。そこで,アジアで人気の高いIPである「鬼武者」が候補に挙がったんです。
「比較的短期間で開発できて」「アジアをカバーできる」という二つを考え合わせて,「鬼武者」のPCブラウザゲームにしよう,ということに決まりました。
4Gamer:
というと,「鬼武者Soul」の海外展開は,主にアジアを見据えているということでしょうか。
杉浦氏:
ええ。ただカプコンとしては,日本でヒットしないものを海外に展開するという事態になるのは不本意ですから,まずは日本国内で実績を確立することを目指します。
4Gamer:
そもそもアクションゲームだった「鬼武者」が,「鬼武者Soul」ではシミュレーションRPGになったのはなぜなんですか?
開発当初は,アクションゲームも視野に入れていました。ただ,ソーシャルゲームの開発などを通じて,いろいろと知識を得ていく中で,プラットフォームごとにジャンルを選定したほうがいいだろう,という考えに至ったんです。
現状,ブラウザゲームでカプコンの目指すオンラインアクションゲームを作ろうとすると,まだ技術的に厳しい部分があります。またオンラインアクションゲームは,プレイヤーにある程度まとまった時間プレイすることを求めますから,短時間で気軽に遊べる,ブラウザゲームの特徴と相容れないとも言えます。そこで「今回はシミュレーションRPGでいきましょう」ということになったんです。
47都道府県から自分の領地を選び
内政では“城下町作り”をとことん楽しめる
4Gamer:
確かに,シミュレーション系のゲームはブラウザゲームと相性が良いとは思いますが,その分,競合するタイトルも多くなりますよね。
杉浦氏:
それはもちろん承知の上です。ただ「鬼武者Soul」は,ブラウザゲームを研究し尽くしたうえで,私自身が「何が面白いのか」と感じる部分を,徹底的に押し出しています。ですから,競合タイトルとは,かなり違うゲームに仕上がっている,という自信はあります。
4Gamer:
それでは,「鬼武者Soul」ならでは,という部分がどこなのか,教えてください。
杉浦氏:
「鬼武者Soul」には,内政・合戦・クエストという要素があるのですが,内政は“自分の城下町作りを楽しむ”という内容になっています。城下町のベースになる領地も拡大できますが,リセット要素がないので,ひたすら作り込めます。
4Gamer:
ああ,それは嬉しいですね。
杉浦氏:
たとえば,多くのブラウザゲームだと,プレイヤーが自分の領土を箱庭のように作っていけても,区切りとなる一定の期間が経過すると,それがリセットされてしまうことが多いですよね。領土に箱庭的な要素がどれだけあっても,それは対人戦のためのリソース供給施設でしかないわけです。
4Gamer:
リセットがないとなると,ゲームの最終目標は何になるんですか? 仮に天下統一が目的だとすると,長くプレイしている人が,どんどん有利になっていきますよね。
極端に言ってしまえば,「鬼武者Soul」は,自分の城下町や好きな武将をあくまで自己満足的に育てたり,ストーリーを楽しんだりしながら,地元のお客様同士で仲良くなったり地元ネタで盛り上がったりしてもらう,というゲームなんですよ。ですから,天下統一のような大きな目的は掲げていないんです。
確かに,シーズン終了時にリセットをかけたほうがゲーム内に循環が生まれますから,ゲームとしては簡単なんです。
ただ,私個人はプレイヤーとして,箱庭をリセットされてしまうことがどうしても納得できなかったんです。最初にチームの皆とかなり議論したのですが,「鬼武者Soul」はリセットがないゲームにしようと,私の意見で押し切りました。
4Gamer:
なるほど。
杉浦氏:
箱庭ゲームでは,拡張に制限を設けないと,ある段階を超えたら領土が広すぎてわけが分からないものになっていきます。最初は丁寧に作っていたはずなのに,だんだん雑になってしまったり(笑)。
とくに日本人は,限られた空間の中でクオリティを高めていくことが得意ですから,領地の拡張も,ある程度までで制限しています。ただ,いったん配置した施設も自由に再配置できますから,じっくり城下町作りにいそしめると思います。
ただ,城下町を育てている最中でも「幻魔が攻めて来ました」というようなイベントが起きますから,まったく戦わなくていいというわけにはいかないですし,城下町を育てるだけでもいろいろイベントは用意されています。
4Gamer:
ブラウザゲームでは,箱庭系のゲームも多いですよね。こちらも競合しませんか?
杉浦氏:
今回,最もこだわった部分は,プレイヤーがどこに自分の拠点となる領地を置くか,47都道府県の中から選べるようにしたことです。
とはいえ戦国時代が舞台ですから,ゲームの雰囲気を壊さないよう,たとえば愛知県なら「尾張・三河」というように,当時の国名も併記しています。
また,プレイ開始時には,ご当地の有名な武将を1人入手できるようにして,ほかの武将を集めて育成しながら,自軍を構成していけるようにしています。
4Gamer:
自分の出身地なり,現在住んでいる場所なりを拠点にしたら,領地にも愛着が湧きそうですね。ただ都道府県というのは,海外展開するには向いていないところがあるんじゃないですか?
杉浦氏:
確かに,海外展開を考えるうえでは,都道府県別という部分は本当に悩みましたが,「三国志も,群雄割拠の時代は国が多かったしなあ……」といった少しお気楽な感じで考えて,ある程度は割り切っています。まずは日本でヒットしないことにはその先を考えることができませんから。
4Gamer:
47都道府県ということは,北海道とか沖縄も含まれるんですよね。そのあたりはどうなっているんですか?
杉浦氏:
当然,沖縄も含まれます。ただ,沖縄にはほかの地域のような城がありませんから,沖縄だけのために,首里城のグラフィックスを作ったんです。スタッフからは「沖縄だけ別作業ですか……」と言われましたけど(笑)。
ただ,沖縄の話は結局発端に過ぎなくて,「せっかくだから,47都道府県すべてに特色を出そう」ということになってしまいました。
4Gamer:
それはまた,こだわりましたね……。
杉浦氏:
最終的に,自分の領地に表示される背景は,静岡なら富士山,滋賀なら琵琶湖というように,全都道府県で異なるものになりました。また城下町でも,神奈川県なら「鎌倉の大仏」,京都府なら「清水寺」というように,ご当地だけで作れる施設を用意しています。
「鬼武者Soul」のほとんどの施設は,レベルが上がるとグラフィックスが進化してくんですが,たとえば城なら,最初の外観は木造ですが,2段階目で立派な館,3段階目になると城になる,という感じになっています。城も一律同じものではなく,兵庫県なら姫路城,長野県なら松本城というように,地域ごとにグラフィックスを変えています。……スタッフは本当に悲鳴を上げていましたけど。
また,各都道府県には「鬼」「人」「幻魔」3陣営のいずれかが割り振られる形になっています。たとえば秋田県は人,岩手県は鬼,青森県は幻魔といった感じです。それぞれ領地のBGMも変えているんですよ。
通常の「合戦」では隣国同士で対決
リアルの地域の競争意識を盛り込んだ対戦
4Gamer:
今までの話だと,箱庭系の育成シミュレーションの要素が強いように感じますが,「鬼武者Soul」には,対戦要素もあるんですよね?
もちろんです。ただ,イベントの「天下分け目戦」では,さまざまな都道府県のプレイヤーと戦えるんですが,通常の「合戦」は,隣国のプレイヤーとしか行えない仕様になっています。
たとえば,東京都のプレイヤーが合戦に勝って,神奈川県の領地の特産物をコンプリートすると,対戦相手のご当地施設の設計図が手に入って,自分の城下町に鎌倉の大仏を置けるようになるんです。
このように,隣接する地域とのリアルな“因縁の対決”のような図式を,ゲーム内に盛り込んでいるんです。
4Gamer:
普段は隣国としか合戦しないんですね。
杉浦氏:
今回は,地域ごとのコミュニティ意識を高めるのが面白いだろうと考えたんです。
たとえば,都道府県が違うプレイヤー同士でもフレンドにはなれますが,ギルドに相当する「一門」は,同じ都道府県のプレイヤーとしか組めないようになっています。
4Gamer:
それは珍しい取り組みですね。
杉浦氏:
私個人としては,同じ都道府県のプレイヤーで「一門」を組むことで,ローカルな話題でチャットが盛り上がるというようなコミュニティになることに期待しています。
4Gamer:
そのほか,一門にはどのような要素があるんですか?
杉浦氏:
一門専用の町である「一門市」では,メンバーが資源を持ち寄って育成することで,「兵法書」と呼ばれる消費型の合戦ボーナスが入手できるなど,さまざまなメリットがあります。ただ,「一門」はかなりゆるいつながりになるように意識していて,「一門に入っていないと何もできない」というような作りにはしていませんので,安心してください。
4Gamer:
では,合戦はどのような形式になるんでしょうか?
杉浦氏:
合戦は非同期の自動進行で,いわゆるカードゲームのスタイルになっています。
プレイヤー各自が武将5人の攻撃部隊を組んで対戦します。プレイヤーレベルや部隊のパラメータから,同程度の強さのプレイヤー同士が対戦できて,かつ同じプレイヤーとの対戦が続かないよう,マッチングには配慮しています。
4Gamer:
ゲームの進行は,合戦をして特産物を集めて城下町を作ったり,武将を収集・育成してさらなる合戦に臨んだりというサイクルになるんですか?
杉浦氏:
そうですね。そのほかにも,ストーリーを楽しめる「クエスト」を用意しています。
ストーリーは,織田信長が桶狭間で敗れたのち,ギルデンスタンと契約するところまでは「鬼武者」シリーズと同じで,それ以降は「鬼武者Soul」オリジナルの展開となります。
シリーズファンの方々にとっては,以前の物語をもう一度なぞっても面白くないでしょうから,きちんとシリーズの世界観を踏まえたうえで,「鬼武者Soul」に登場するさまざまな武将がストーリーに絡んでいく,という内容です。織田信長や豊臣秀吉は,シリーズでのイメージが強すぎるので,要所要所で顔をのぞかせる,というような扱いになります。
4Gamer:
となると,「鬼武者」シリーズの外伝のような流れになるんですか。
杉浦氏:
そうですね。ゲームの序盤では,まだまだプレイヤーの領地も小さいですから,クエストも近隣を探索するような内容です。実績を積むことで,次第に「上洛せよ」といったようなものになっていきます。さらに上洛して京都で実績を挙げていくと,今度は朝廷から各地で起きている問題を解決するような依頼が受けられるようになるんです。
そして,大型アップデートごとに,訪ねることができる地域が追加されていって,それに応じてストーリーも進みます。今のところ,1回目のアップデートは「奥羽大乱」と題した,東北地方をめぐるような内容を秋に実施予定です。ちなみに,クエストをクリアしていく過程で,伊達政宗らの武将をはじめ,さまざまなアイテムが手に入るんですよ。
4Gamer:
クエストのゲーム部分はどのような流れなんですか?
杉浦氏:
アドベンチャーゲームのように,ストーリーのテキストやNPCの立ち絵などが表示されますし,ミッションごとにボスとの対戦も用意しています。また,ほかのプレイヤーと協力して討伐するレイドボスも登場する予定です。
ソーシャルゲームを意識して操作は簡単にしていますが,演出部分はリッチなものになっていると思います。
ちなみに,クエストに登場する幻魔は「鬼武者」シリーズに登場したもので,背景も原作のステージをキャプチャしていますので,シリーズファンの方には,そういったところにも注目していただきたいですね。
登場する武将は合計600人以上
容姿や設定には「鬼武者Soul」ならではのアレンジも
4Gamer:
合戦に使う武将についても教えてください。
杉浦氏:
武将は4段階に進化して,段階が上がるとパラメータが上昇します。また,3段階目まで進化させると,スキルが使えるようになります。パラメータが上がるだけでは面白くないので,グラフィックスも段階ごとに変化します。正式サービス開始までには,400人以上の武将を用意する予定です。
4Gamer:
400人でそれぞれ4段階に進化するということは,合計で1600パターンですか。準備が大変そうですね……。
杉浦氏:
描くイラストレーターさんもチェックする我々も大変ですが,見た目の変化を励みにプレイしてくださる方も少なくないですから,そこはこだわり抜きました。
4Gamer:
400枚というと,有名な武将は,ほぼゲームに登場する感じでしょうか。
杉浦氏:
そうですね。ただ,400人というのは,固有イラスト付きの武将の数で,それ以外にも各都道府県に5人ずつ,合計235人の「ご当地武将」を用意しています。ご当地武将までいくと,かなりの歴史マニアでないと分からないと思いますよ(笑)。
ちなみにご当地武将は,特産物と同様に,合戦で勝って特産物を揃えると,相手の都道府県のものを入手できるようになっているんです。
ご当地武将は,同じ武将でも5段階程度の能力差があるので,武将を何人も入手していくうちに,すごく能力の高い武将とめぐり合えるかもしれません。
4Gamer:
最初から能力の高い,レアな武将の入手難度はどうなっているんですか?
杉浦氏:
やはり,能力の高い武将ほど入手しにくくなります。
ただ,これも私がこだわった部分なのですが,「鬼武者Soul」では,武将のレア度表記はしてないんです。
たとえば,レア度を表記してしまうと,「レアだから使う」「コモンだから使わない」といったように,レアリティだけで価値を判断してしまう方も出てきてしまいますよね。
4Gamer:
そうですね。
杉浦氏:
もちろん,「鬼武者Soul」でも武将ごとに能力差があって,パラメータでいえば差別化されています。ただ,プレイヤーの皆さんには,イラストやプロフィールなどを基準に,好きな武将でプレイしていただきたいという思いから,最弱クラスの武将でも最強クラスまで強化できるアイテムを用意しました。
「鬼武者Soul」では,武将を集めるというよりは,自分の好きな武将を育成するという意味合いのほうが強くなっているんですよ。
4Gamer:
ちなみに,その強化アイテムは有料ですか?
杉浦氏:
有料アイテムも予定していますが,課金しなくてもゲーム内で入手できるようにします。ですから,時間をかければ,非課金でも最強クラスまで育成は可能です。
また,「鬼武者Soul」では合戦で武将を手に入れられますが,何枚かの武将をセットにして販売する,「MHF」でいうとブースターパック方式での販売も行う予定です。入手難度のランク分けをした形で販売する予定なので,ガチャほど低確率のものにはならないと思います。
4Gamer:
有料のブースターパックでしか手に入らない武将はありますか?
杉浦氏:
それはまったく考えていません。有料だと入手確率が高くなるというだけです。
4Gamer:
育成寄りとはいえ,やはりこの手のゲームであれば,武将のコレクションも目的の一つになりますよね。武将を揃えることでインセンティブのようなものはありますか?
もちろんです。たとえば,史実に沿って関連のある武将,たとえば茶々・初・江の三姉妹を揃えると「浅井三姉妹」という“役”が完成して,それに応じたプレゼントが贈られます。
また現在企画段階のものですが,月替わりでお題を提示する“連携”というものも検討しています。これは,たとえば「ライバル月間」に武田信玄と上杉謙信を部隊に入れておくと特別な効果が発動する,というものです。
4Gamer:
武将でいえば,カプコンには「戦国BASARA」シリーズがありますが,どのように差別化しているんですか?
杉浦氏:
「戦国BASARA」とは別の方向で,キャラクターの個性をかなりアレンジしていますね。たとえば,伊達政宗は美少年キャラにしましたし,上杉謙信は女性説を採用しました。ちなみに,上杉謙信は,過去の恋愛話もストーリーに盛り込んでいるんですよ。
多数のプレイヤーが参加できるイベント「天下分け目戦」「幻鬼戦」も用意
4Gamer:
プレイヤー全員で参加するという,「天下分け目戦」について教えてください。
「天下分け目戦」は,プレイヤー全員が東軍と西軍に分かれて,5つの古戦場でさまざまな都道府県のプレイヤーが入り乱れて合戦を行う,という期間限定イベントです。
プレイヤーは,用意された古戦場の中から1つを選んで参戦するのですが,一度決めたら期間中に変更はできません。各戦場とも勝利ポイントの多かったほうが勝ちとなり,3つ以上の古戦場で勝利を収めた側が最終的に勝利する,という流れで開発中です。
4Gamer:
自軍が勝利した場合のメリットは何でしょう?
杉浦氏:
「天下分け目戦」に参加したプレイヤーには,合戦の勝利数に応じてあるポイントが配布されます。そのポイントで武将などを入手できる,専用のガチャを回せるのですが,勝利した軍のプレイヤーは,入手できるポイントが2倍になります。ちなみにガチャは課金ではなく,ゲーム内イベントとして導入する予定です。
4Gamer:
ということは,自軍が勝っても負けても“損”はしないということですか。
杉浦氏:
そうです。最終的に自軍が勝てばポイントが2倍になるので,専用ガチャができる回数も増えるという仕組みです。
もう一つのイベント「幻鬼戦」は,人/鬼/幻魔の各陣営に分かれて,プレイヤーが指定されたアイテムを集め,それを投入する量を競うというものです。「幻鬼戦」に勝利した陣営のプレイヤーには,封印クエストの開放が行われて,それらをクリアすると,優れた武将やアイテムなどが入手できます。
「天下分け目戦」同様,プレイヤーには投入した資源に応じてポイントが付与されて,専用ガチャに使えます。勝利陣営なら,そのポイントは2倍になります。
4Gamer:
ただ,物量戦となると,人口の多い地域が有利そうですよね。
杉浦氏:
陣営ごとの人口差で有利不利が決まらないようには配慮します。具体的には,人口に対する投入アイテム量の割合を算出して,その値が大きかった陣営が勝利になるという,偏差値式のような形にする予定です。ですから,あえてプレイヤー数の少ない都道府県を選んで,上位を狙うといったプレイスタイルを取ることもできるでしょう。
自分の所属する都道府県がどのくらい勝っているのか,あるいは負けているのかといったデータは,途中経過を見せていくつもりなので,けっこう盛り上がるのではないでしょうか。
なお「天下分け目戦」と「幻鬼戦」はそれぞれ,4週間に1回程度の頻度で実施を予定しています。
4Gamer:
ちなみに,自分の所属する都道府県の変更はできますか?
杉浦氏:
簡単な手続きで他県に「亡命」ができます。ただ,あまり頻繁に「亡命」ができるようだと,さまざまな都道府県の特産物を簡単に集められてしまいますから,「亡命」にはある程度の回数制限を入れるつもりです。
4Gamer:
そのほか,「鬼武者Soul」でこだわっている部分に,どのようなものがありますか?
武将や,プレイヤーのナビゲーターを務める「小姓」はボイスを入れています。ちなみに,小姓にも沖縄限定のグラフィックスがあるんですよ。
4Gamer:
沖縄県は,かなり優遇されている感じですね。
杉浦氏:
優遇というか,47都道府県で展開することを考えたときに,沖縄県をほかの地域の流用にしてしまうのはどうかと考えたんです。きちんと琉球王朝を再現して,薩摩と戦えるようにしましょうと。
北海道は領地を治めていた武将が存在しましたから,城や小姓はアイヌ仕様ではありません。ただ,アイヌの武将は用意しています。
4Gamer:
いろいろと話を聞かせていただいたことで,ようやくゲームのコンセプトなどが分かって来ました。確かに,戦国シミュレーションRPGとしても箱庭系ゲームとしても,競合する他社の既存タイトルとは,かなり異なるゲームになりそうな気がします。
杉浦氏:
言ってしまえば,私の趣味と主観が強く反映されています(笑)。
最近の傾向としては,シミュレーションRPGタイプのブラウザゲームでは,対人対戦よりも,自分の箱庭やキャラクターを育成する要素のほうが,より好まれる傾向にあることも考慮しました。
今,想定している「鬼武者Soul」の遊び方も,クエストでストーリーを楽しみつつ,城下町や武将を育ててもらうのがメインだと考えています。演出やビジュアルにも相当力を入れていますので,そこも楽しんでいただきつつ,自分の育成した城下町や武将を見てニヤニヤしていただければと(笑)。
その先は,お客様の声を聞きながら,各要素のどこを強めていったらいいのか,考えることになるでしょう。
4Gamer:
対戦を希望する人は,合戦や「天下分け目戦」を遊べばいいと。
杉浦氏:
ええ。いろいろな遊び方ができて,それぞれを極められるゲームにしたつもりです。器用貧乏と言われるかもしれませんが,それはそれでいいかなと考えています。今の合戦で物足りないというなら,追加で開発して実装すればいいわけですし。
サーバーは基本的に全プラットフォーム共通
「いつでも」「どこでも」遊べることを目指す
4Gamer:
「鬼武者Soul」は,PCとスマートフォンアプリでの提供が予定されていますが,データは共有できると考えていいんですか?
杉浦氏:
そうですね。自宅ではPC版,外出中はスマートフォンアプリで遊ぶということができるように開発中です。
4Gamer:
基本はPCのオンラインゲームということで,さまざまなポータルサイトに提供することも可能だと思いますが,複数のポータルサイトで「鬼武者Soul」を展開する予定はありますか?
考えています。基本的には,ポータルを問わず,サーバーを共通にすることを認めてもらうよう,チャネリングを検討していただいている各社にはお願いしています。
「鬼武者Soul」では,少なくとも47都道府県のコミュニティができ上がることになります。サーバーを分けてしまうと,それぞれが分散して,小さなコミュニティになってしまうんですよ。全体として大きなコミュニティのほうが盛り上がるのは確実ですから,ポータルやプラットフォームに依存しないコミュニティの形成を目指したいんです。大人の事情でゲームをつまらなくするのは嫌ですよね。
4Gamer:
PCだけでなく,家庭用ゲーム機での展開もできそうな気がしますが,そのあたりはどのように考えているのでしょうか?
杉浦氏:
まだお話できることはないのですが,ブラウザが動作するハードであれば,展開は可能ですし,興味はあります。通信機能としては3G回線があれば十分遊べますし。
4Gamer:
お話を聞いている限りでは,それほどお金を使わなくても十分遊べる内容になっていそうです。
杉浦氏:
ゲームの中で何を目指すか,どう遊ぶかにもよると思いますが,少しずつ進めて,長く遊んでくださる方なら,無料でも全部楽しめるようになっています。
4Gamer:
有料アイテムは,武将のセット販売と,武将強化アイテム以外に何か考えていますか?
杉浦氏:
箱庭ゲームなので,時間短縮アイテムは用意しようかなと思っています。ちなみに,ガチャは「天下分け目戦」「幻鬼戦」のポイントを使える無料のものは用意しますが,有料ガチャは今のところ考えていません。
有料アイテムに関しては,実際にサービスをスタートしてみないと何が必要とされるか分からないという側面もあるので,「最低限必要だろう」と思われるものを準備している程度なんです。
あとはテストを始めてから,ゲーム内の状況を見つつ,お客様のご要望でどんなものを追加したらいいのか,決めていきたいと考えているところです。
目標会員数は1年で100万人
名所と絡めたコラボレーションも検討中
4Gamer:
それでは,今後の展開なども教えてください。
サービス開始前に2回の事前テストが予定されていますが,それぞれ何を検証するのでしょうか?
杉浦氏:
1回目は基本的なゲームバランスのチェックですね。2回目は,「天下分け目戦」と「幻鬼戦」をやってみて,データベースなどのチェックを行う予定です。
4Gamer:
会員数は,どのくらいを見込んでいますか?
杉浦氏:
PC版とスマートフォンアプリを合計して,サービス開始から12か月で100万人以上を目標にしています。App storeのランキングでも,トップを目指します。
4Gamer:
最後にあらためて,「鬼武者Soul」のどのような部分に期待してほしいか,メッセージをお願いします。
「鬼武者Soul」は,自分だけの城下町を作って,自分が大好きな武将を好きなように育てて,ニヤニヤ楽しむゲームです(笑)。さらにニヤニヤできるよう,クエストにはオリジナルストーリーも用意しました。
見た目だけだと競合タイトルとあまり変わらないように見えるかもしれませんが,実際にはまったく異なる中身になっています。
ゲームとしては本格的ですが,なるべく短時間で遊べて,張り付いてプレイしなくとも楽しめるものを目指していますので,ブラウザゲームは初めてという人も,張り付きプレイには疲れたという人も,楽しめると思います。私自身,「鬼武者Soul」はかなり満足していただける出来だと自負しています。
事前テストから,「開発隊」掲示板を設けますので,テスターに当選した方はぜひご意見・ご要望を書き込んでください。私自身も,回答したいと考えています。ぜひ,よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
今回のインタビューで,杉浦氏に話を聞いたことで,「鬼武者Soul」がどのようなゲームなのかをうかがい知ることができたのではないだろうか。
また,杉浦氏が運営プロデューサーとして,5年近くにわたり「モンスターハンター フロンティア オンライン」を運営してきた経験や,同作を日本国内で有数のオンラインゲームに育て上げたノウハウが注ぎ込まれていることが,筆者にはひしひしと伝わってきた。
ともあれ,47都道府県のリアルなコミュニティ意識をゲームに取り込む試みが「鬼武者Soul」にどのような展開をもたらすか,非常に楽しみなところである。
「鬼武者Soul」では,2012年4月23日14:00まで,事前テスト「戦国体験 初陣」のテスターを募集中だ。このインタビューを読んで興味を持った人は,ぜひ応募してほしい。
「鬼武者Soul」公式サイト
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