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[GDC 2012]「SimCity」のリードデザイナーが教える,ゲームデザインの基礎
このセッションは,Librande氏が講師を務めているゲームデザインのワークショップでどんなことが行われているかを紹介するもので,ゲームというものがどのような要素から成り立っているのかが分かりやすく説明されていた。以下にその模様をお伝えしよう。
Librande氏は,Cogswell Polytechnical Collegeや,自身が所属するMaxisで,ゲームデザインのワークショップを開催している。PCではなく,サイコロやカードといったものを使うのが特徴とのことだ。
セッションの冒頭で,Librande氏は自身が考えるゲームデザインの要素を図版で示した。そこには「スタート」「ゴール」「障害」「判断」「ルール」「インタラクティブ性」といった要素が描かれている。言葉で説明すると,「スタートから一定のルールの中,障害をさまざまな判断で回避しながらゴールまでたどりつくもので,インタラクティブ性を備える」ものがゲームということになるだろうか。
これら要素を理解するために,ワークショップで行われた内容を以下に紹介しよう。
このワークショップでは,ポーカーチップを使ったゲームがテーマになった。テーブルの上にさまざまなポイントがつけられたチップが置かれており,自分のチップを弾いてそれらのチップにヒットさせると,自分のものになってポイントがもらえるというルールのゲームである。
最初は「先に100ポイント集める」ということがゴールになっているが,ゲームを繰り返すうちに「多くのコインを集める」「ヒットさせたコインをテーブルの下に落とす」などにゴールが変わっていく。さらに,プレイヤーに知らされない「シークレットゴール」というものも追加される。
時間が絡むものや,「〜すると負け」というネガティブなゴールもある |
ワークショップの参加者が作ったゴールのカード |
こうやってゲームを遊ぶうち,ワークショップの参加者は「ルールを変えず,ゴールだけを変える」ことでゲームの性質が大きく変わることを学べるわけだ。
ここでは,ピンポン玉をカップに入れる,という単純なゲームが使われた。このゲームに障害の要素を加えて,より面白くしようという狙いだ。
簡単に入っても,まったく入らなくてもゲームとしては面白くないので,ゲームの難度調整にあたる作業と言えるだろう。Librande氏よれば,このワークショップではプレイヤーの邪魔をするだけではなく,“有利にさせるような障害”をつくる課題も出されるという。
セッションでは,ワークショップの参加者が実際に制作した障害の写真も披露された。
それを見た上での個人的な感想なのだが,障害の設置には難度調整という面のほかに,ゲーマー心を刺激されるというか,ちょっとやってみたくなる気持ちを起こさせるような効果があるのではないだろうか。下にその写真を掲載するので,確認してほしい。
ゲームのルールを簡単に紹介しておこう。7×7のマスが並んだスペースに,24体のゾンビと1体の人間が置かれ,ゾンビと人間側が互いに行動してゲームが進む。ゾンビがすべて倒れたら人間側の勝ち,ゾンビ側のうちどれか1体でも人間のいるマスに入ったらゾンビ側の勝ちとなる。
さて,ここで上記スライドに掲載されたインストラクションカードの「Turn Order」の項目を見てほしい。ゾンビ側はサイコロの目によってランダムに動くという設定が書かれているが,人間側には「自分が考えた設定を入れよう」と書かれている。つまり,この設定を考えるのがワークショップの課題と言うわけだ。
ゴールや障害のワークショップと比べると,難度調整はかなりやっかいそうである。これに加えてLibrande氏は,ゲームにふさわしい人間側のキャラクターを作ることも要求したとのことだ。例えば「祈る」「十字を切る」といった行動をとる「聖職者」や,「げっぷする」「ビンを投げる」といったことを行う「街の酔っ払い」などである。
Librande氏によると,キャラクターを作りこむことで,プレイヤーがゲームに感情移入しやすくなるという。また,複数のキャラクターを組み合わせることで,新たなストーリーが生まれる可能性があるとのことだ。
基本的には1対1でトランプのカードを出し合い,数字の大小で勝ち負けを決めるゲームだが,スート(スペードやハートなどトランプのマーク)ごとに,特定の条件下で発動するルールを自分で設定できるのが特徴だ。例えば「スペードを出して負けた場合,そのカードを机から床に落とせ。表が出たら勝ち」といった感じである。どことなく「Magic: The Gathering」風だ。
ちなみに,攻撃系はスペード,癒やし系はハートなど,ルールの効果によって割り当てられるスートが決められているほか,ルールにはそれらしい名前をつけることになっているという。このあたりは「100 ZOMBIES」にもあった,プレイヤーの感情移入を誘う仕掛けだろう。
どう考えても途中で飽きそうだが,Librande氏は賞金という仕掛けを用意していた。しかも,最初はポーカーチップだったのが,次はクッキーに,さらにその次には10セント硬貨に……とグレードアップ。1ドル札が賞金となった回はたいそう盛り上がったそうである。
Librande氏によると,このワークショップは「報酬の力を見せつける」ことを意図したものだったとのことだ。
以上がセッションの内容である。普通にゲームをプレイしている分には,さまざまな要素が絡み合ってゲームが成立しているとは感じないので,なかなか新鮮な印象を受けた。自分がプレイしているゲームから,今回紹介した要素を探してみるのも面白いかもしれない。
- 関連タイトル:
シムシティ
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