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印刷2017/09/05 12:00

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「レイストーム」20周年CD-BOXの記念イベント「REAL ZUNTATA NIGHT 2」をレポート。当時のZUNTATAメンバーや開発スタッフが思い出を語った

 タイトーは2017年9月2日,渋谷のLoft9で「REAL ZUNTATA NIGHT 2 〜もっと!レイシリーズを語れ!!〜」を開催した。

 このイベントは,アーケード用STG「レイストーム」稼動開始20周年を祝したCD-BOX「Ray’z Music Chronology」関連記事)の発売を記念したもの。同BOXには「レイフォース」「レイストーム」「レイクライシス」の楽曲が,アーケード版やコンシューマ版,アルバム版などさまざまなバージョンで収録されているうえ,今年リリースされたスマートフォン版でのアレンジ曲や,TAMAYO(河本圭代)氏&Cyuaさんのユニット・BETTA FLASHによる新規アレンジなども含まれている。アレンジ版を別にすればプラットフォーム違いで同じ楽曲が複数収録されいているのだが,イベント内でZUNTATAのばび〜(石川勝久)氏が語ったところによると,「AC版は基板特有のクリック音が乗るものの,アタック感を演出していて,これはこれでいい」とのことだ。

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 オープニングアクトを務めたのは,元ZUNTATAのCOSIO(小塩広和)氏。イベント終盤にはミニライブが予定されていたため,そこで演奏されるであろう主要楽曲を避けた,同氏いわく「マニアックな選曲」でのDJプレイを行った。

会場で提供されたコラボフード&ドリンクは,DJプレイ中にほとんどが売り切れに。このほか,店内ではTAMAYO氏が楽曲を手掛けた「武刃街」と「ザ・フィアー」のサウンドトラックCDや,Tシャツなども販売されていた
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 トークショーの第1部で登壇したのは,ばび〜氏とレイシリーズのBGMを担当したTAMAYO氏,レイシリーズのSEを担当した中西宗博氏,そしてコメンテーターとして呼ばれたなかやまらいでん氏の計4名。Ensoniq製のPCM音源チップ・OTISの「音を出すことすら苦労する(なかやま氏)」仕様に難儀したことなど,話題は1990年代初頭のタイトーにおける作曲事情からスタートした。

タイトーで作曲に使われていた,Ensoniqのシンセサイザー「SQ-1」(右の写真)。開発用の改造が施されているうえ,裏蓋が常に外されていてROMを容易に差し替えられるようになっていたという。なお,実機はタイトーの海老名開発センター閉鎖にともない廃棄されている
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 TAMAYO氏の作曲スタイルはタイトル先行で,レイシリーズに関しても同様とのこと。つまり,レイクライシスのBGMである「少女の行為はもう終わったのか」「女の子にはセンチメンタルなんて感情はない」もタイトルありきで,後から曲が作られたそうだ。タイトルを考えるときには,映画を見ながら印象に残ったセリフをピックアップするなどしてイマジネーションを膨らませていくという。

 ポニーキャニオンのサイトロン・レーベルから1994年にリリース「レイフォース」のサウンドトラックCDには2冊のブックレットが同梱されていたが,これは普通のブックレットを付けようとしていたZUNTATA上層部と,設定資料集的なものを付けたいと考えたばび〜氏が衝突した結果,独自にブックレットをつけることになったためだという。“自家製”の動きは1996年のZUNTATA Records立ち上げから加速し,メンバーはQuarkXPressやPhotoshop,Illustration,3DCGエディタなどを使えるようになっていったとのことだ。

公開されたブックレット未使用の写真素材。謎めいたアンビエンスを持つ写真だが,実はタイトー中央研究所の会議室だったり川崎の路上だったりする
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 なかやま氏はレイシリーズ楽曲の解説として,レイフォース「Penetration」とレイストーム「Geametroic City」の類似性について言及。この2曲はメロディや使用コードこそ違うものの,BPMやパート構成が酷似しているため,聞いたときに似たような印象を受けるとのことだ。これは両作を関連付けるための工夫かと思いきや,TAMAYO氏のコメントは「考えたこともなかった」というもの。ある程度のコンセプトはあったようだが,大部分は直感的なセンスによる帰結らしい。

曲構成がそっくりなので似た印象を受ける2曲
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フランス語歌詞版「CERAMIC HEART」の内容を表現するために描かれた“セラミックハートちゃん”のマンガ。下地の紙はカレンダーの裏だとか
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2GBのHDDや64MBのMOなどに時代が感じられる,Mu-Nakanishi(中西宗博氏)のシステム図。デスクの左側に詰まれたX2000Proはタイトーが販売していたカラオケ機で,当時のZUNTATAメンバーはみんなカラオケ曲に携わっていたという
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 なかやま氏によるレイシリーズ楽曲解説の第2弾は,レイクライシスの「ラベンダーの咲く庭」について。同氏は,この楽曲を構成するメロディの複雑さを実際にキーボードで演奏し,「ピアノだと不協和音になる」など,絶妙なバランスのうえに成り立っていることを語った。スマートフォン版「レイクライシス」(iOS/Android)で同曲のアレンジを担当した下田 祐氏も,「トリッキーすぎる」「譜面を見て再現しても同じにならない」など,かなり苦労したそうだ。

なかやま氏が実際に演奏して解説を行う
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後のミニライブのために待機していたら,話題が「ラベンダーの咲く庭」に触れたため,急遽ステージに上げられた下田氏
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 休憩を挟んだトークショー第2部では,ばび〜氏に加えて「レイストームHD」PS3 / Xbox 360)のプロデュースなどを担当した現マーベラスのアオキヒロシ氏と,レイシリーズのプランナーである山下智久氏,そしてファン代表のCHAKO氏が登壇した。

 最初にアオキ氏が語ったのは,レイフォースが誕生した時代のアーケード用STG界隈について。レイフォースが開発中だった1993年は,セイブ開発の「雷電II」とカプコンの「ストリートファイターII」が大ヒットした後で,ボムや扇状ショット,キャラクターセレクトを採用したタイトルが増え,逆に古い形式のタイトルが勢いを失った“STGの転換期”と言える時代だったようだ。そんな中で,前方集中ショットや固定プレイヤーキャラクターを採用していたレイフォースは,時代に逆行するストイックなスタイルだったという。

当時の主要メーカーからリリースされたアーケードゲームを表にまとめて解説するアオキ氏。なお,CHAKO氏は顔出しNGとのことでボカシを入れている
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 ただし当時としては斬新だったロックオンレーザーは,開発チームや営業チームなどの理解をなかなか得られずに苦労したらしい。ゲーム内にも,ロックオンすると上昇してこない敵やロックオンレーザーで撃つべき弱点が飛び出ているボスなど,プレイヤーにゲームのセオリーを暗に教えている箇所が多数存在する。とはいえ企画チームでも持て余した部分はあったようで,AREA5ボスのオーディンはロックオン対象となる要素の組み込みを忘れており,プログラマが勝手に「ダメージを受けて高度が下がった時に狙える」というシステムを作成したという。

 壇上では,お蔵入りとなった「R-Gear」の映像など開発資料が披露されたり,レイフォースのサントラに掲載されていた設定資料は主にばび〜氏とYack.(渡部恭久)氏が企画チームの断片的なアイデアをまとめる形で作り出したことが明かされたりと,レイシリーズにまつわるトークが繰り広げられた。また,“燃料投下”を求めるCHAKO氏の声に応じる形で,ドナ・マクガイアの年齢が12歳くらいであることが,その場で決定した。

さまざまな資料をもとにトークが進められた
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1面まで作られていたR-Gear。レイストームのサンダーレーザーはこの時点ですでに実装されている
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セガサターン版レイストームこと「レイヤーセクションII」の,エンジンブロックをパージするEDにツッコむ一幕。ムービーで折りたたまれているウイングや,商標問題で改題した前作をなぜか引き継いだタイトルなど,レイヤーセクションにはまだまだ謎が多いようだ
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かつてタイトーが配布していた小冊子「TILT」から,若かりしころの山下氏の顔写真を晒すアオキ氏
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CHAKO氏の同人誌に山下氏が寄稿していたレイクライシスの初期案。レイシリーズとは異なる新規タイトルとして構想されており,水口哲也氏の手掛けた「Rez」に近いようなシステムだったが,目指す精神世界的なイメージをデザイナーに伝えるのが困難だったため,実現しなかったという。しかし,隠しラスボスであるInfinityのステージはやりたかった表現に近いそうだ
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ドナは12歳くらいということに決定
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 イベントのクライマックスには,ZUNTATAとBETTA FLASHによるミニライブが行われた。ZUNTATAが演奏したのは,MASAKI(森 正樹)氏による「Penetration」の新規アレンジと,「GEOMETRIC CITY」の“electric shock ver.”。新規アレンジの「Penetration」は準備期間の都合上ショートバージョンだったが,いずれフルバージョンを聴ける機会があるかもしれない。

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 BETTA FLASHが演奏したのは「ray’z BEYOND Live Ver.」と「安置 -Antithese- ZTT night Ver.」,「CERAMIC HEART by Schnack」の3曲。短い時間ではあったが,機会が少ないBETTA FLASHのライブということもあり,100人を超える観客は熱心に聴き入っていた。

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最後にはプレゼント抽選会が行われた。資料用として保管されていた「Ray’z PREMIUM BOX -BEYOND-」やスタッフのサイン入り海外版ポスターといったレア物から,別の方向性でレアなTAMAYO氏お手製のセラミックハートちゃんアクリルキーホルダーまで,さまざまなアイテムが来場者に贈られた
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 今後,Cyuaさんは9月10日に渋谷で開催される「Remember Girls Power !! 2017」(若年性癌の患者や研究を支援するチャリティーライブ)に出演。なかやま氏は10月29日に東京流通センターで開催される「M3」(音楽・映像系の同人即売会)に出展する。興味のある人はチェックしてほしい。また,なかやま氏とBETTA FLASHは2018年2月24日の「東京ゲーム音楽ショー2018」(関連記事)にも出展するとのこと。そのほか,ZUNTATAの30周年を記念した何かが予定されているようなので,ファンは要注目だ。

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ZUNTATA公式サイト「Z-Field」

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