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ゲーマー向けでは珍しい開放型ヘッドセット「Corsair VIRTUOSO PRO」を試す。高価格ピュアアナログヘッドセットの実力は?
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印刷2023/12/27 08:00

レビュー

ゲーマー向けでは珍しい開放型ピュアアナログヘッドセットの実力は?

Corsair VIRTUOSO PRO Open Back Streaming/Gaming Headset

Text by 榎本 涼


 今回は,ゲーム周辺機器メーカーであるCorsairから登場した開放型ヘッドセット「VIRTUOSO PRO Open Back Streaming/Gaming Headset」(以下,VIRTUOSO PRO)を取り上げよう。

VIRTUOSO PRO Open Back Streaming/Gaming Headset
メーカー:Corsair
メーカー想定売価:2万8980円(税込)
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 高価格なものも増えたゲーマー向けヘッドセットの中でも,比較的高価格帯に位置するピュアアナログヘッドセットの本機。何と言っても注目すべきところは,ゲーマー向けヘッドセットではあまり馴染みのない開放型の機構を採用している点であろう。それではじっくり見ていこう。

VIRTUOSO PROの製品ボックス(左)と同梱物(右)。同梱物は上から時計回りに,キャリングケース,ポップノイズフィルター,ヘッドセット本体,マイクなしヘッドフォンケーブル,マイク有りヘッドセットケーブル,スプリッターケーブル
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開放型を謳うCorsairのピュアアナログヘッドセット


 Corsairのヘッドセットシリーズ「VIRTUOSO」の一製品であるVIRTUOSO PROは,白色と黒色,2色のカラーバリエーションを展開している。今回は白色を試用した。
 ヘッドセット本体は,白地のプラスチック素材にライトグレーの布素材と銀色または白色の金属素材で構成されていて,落ち着いたオーガニックな印象だ。

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 何と言ってもまず目を引くのは,イヤーキャップに開けられた多くの空気孔から,スピーカードライバーの裏側が見えるメカメカしいデザインであろう。開放型ヘッドフォンではよく目にする,見栄えのいい外観だ。

VIRTUOSO PROの右イヤーキャップ。スピーカードライバーを支える部分に,Corsairのシンボルマークが見える
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 エンクロージャ全体は,実測で約92(W)×97(D)×45(H)mmくらいのサイズだ。外周が100mm以下なので,割と小型に見える。

首像は一般的な成人よりも小さめなので分かりにくいが,エンクロージャは比較的小さい
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金属素材もそれなりに使われているので,重量はケーブルなしの実測約337gと決して軽くはないが,頭頂部に圧がかかる印象はない
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 イヤーキャップは,外周がプラスチック,空気孔が多く開けられている部分は金属製で,製品情報ページによると軽量なアルミニウム合金素材だそうだ。この部分は先述のとおり,デザインにおける一番のウリでもあり,見栄えがよい。

 イヤーパッドはライトグレーで,内周の直径が実測で約58mm,深さは実測約20mmだった。濃いグレーのスピーカーネットは,比較的厚みのあるスポンジ素材でできている。イヤーパッドのカバーは若干光沢があり,キメの細かい布素材で,スポーツ用メッシュ素材などではない。製品情報ページによると,内部のクッションは形状記憶フォーム素材だそうだ。カバーのきめ細かな素材とこのクッションのおかげで,装着時の肌あたりはソフトだ。

VIRTUOSO PROのイヤーパッド
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 イヤーキャップからイヤーパッドを取り外せないので,直接確認はできないが,スピーカードライバーの取付角度に傾斜はついてない可能性が高い。製品情報ページによると,ドライバーは50mmサイズで,周波数特性は20Hz〜40kHzと,96kHzサンプリングレートに近いハイレゾ再生ができるタイプのようだ。
 以前に,「Logitech G PRO X 2」の製品レビューで少し解説した新素材「グラフェン」をドライバーの振動板に使用しているそうで,これによって音の歪みが少なくなることが見込め,よりクリーンな音質が期待できる。効果のほどは,後段で試聴して確認しよう。

 イヤーキャップに取り付けられた二点留めのアームは,ヘッドバンドとの接続部分まで金属製だ。角が面取りされていて,高級感もある。

アームは一般的な二点留め。高級感のある見た目だ
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 エンクロージャは,後方に目視で約100度,前方に約30度弱くらい回転する。

エンクロージャは後方に大きく回転するので,持ち運びに適した“開き”状態にできる
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 ヘッドバンド両端の接続部分には,表にCorsairのシンボルマークが白色で印刷されており,内側にはL/Rの文字がエンボス加工されている。
 銀色で内蔵型のスライダーも金属製だ。裏表両面とも,印刷やエンボス加工された目盛の表示はないが,長さ調整するとクリック感があり,10段階に長さを変更できる。

ヘッドバンドの内側に,左右を示す文字が刻まれている
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ヘッドバンドのスライダーを伸び縮みさせた様子
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 ヘッドバンドは白いプラスチックフレームで,最大幅は実測約37mm。頭頂部の表側にCorsairのブランド名が印刷されたオーガニックっぽい布素材が取り付けられている。
 内側はイヤーパッドカバーに近い布素材でクッションがカバーされている。クッションは刺繍で3分割されており,あまりゲーマー向けヘッドセットでは見かけない,ちょっと洒落たヘッドバンドクッションだ。

ヘッドバンドの頭頂部には,Corsairロゴが書かれた布が貼り付けられている
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ヘッドバンド内側のクッション。刺繍部分だけはクッションが薄くなっている
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 ライトグレーのケーブルと白いプラスチックに金属を組み合わせた端子のヘッドセットケーブルは,ブームマイクがケーブルに付いているものと,マイクなしのものの2種類が付属する。ケーブルの長さは,端子部分を除いた実測で,マイク付きケーブルが約191cm。マイクなしのケーブルは同じく約193cmだ。どちらもゴム製のケーブルタイが取り付けられている。

付属のマイクブーム付きケーブル(上)とマイクブームなしケーブル(下)。どちらのケーブルもPC側接続端子は,普通の4極3.5mmミニピン端子になっている
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ヘッドセット側の接続端子は二股に分かれていて,左右のエンクロージャにそれぞれの端子を接続するゲーマー向けでは珍しいタイプだ。左側に接続する端子は,金メッキプラグの根元が四角い形状をしていて,左右を間違えて接続しないように工夫されている
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 どちらのケーブルも,ヘッドセット側は2極ミニピン×2本の端子を左右それぞれに接続する珍しい形式だ。

 ケーブルのほかに,4極3.5mmミニピン×1を3極3.5mmミニピン×2に分割するスプリッターも付属する。見た目はケーブルと同じで,端子を除いた長さは実測約17cmだ。2つの端子にはそれぞれヘッドフォンとマイクのアイコンがエンボス加工されている。端子の先端は,滑り止め加工された持ち手部分もすべて金属製だ。

 ところで,VIRTUOSO PROのケーブルがなぜこのような仕様になっているかというと,これはヘッドフォンと単体マイクを組み合わせた「プロ用途」を想定してのことだろう。VIRTUOSO“PRO”と製品名にもあるとおり,プロ用途を想定すると,ヘッドセットのマイクではなく単体マイクと組み合わせて使いたいユーザーもいよう。Corsairも傘下のElgatoブランドでスタンドマイク製品を販売しており,これと組み合わせて使ってもらいたいのだろう。その場合,ヘッドセットのマイクがついたままだと,配信などで見栄えが悪い。
 つまり,マイクブーム付きケーブルとマイクブームなしケーブルをそれぞれ用意して,ヘッドセットのマイクを使用する場合はマイク付きを,別途単体マイクを使用する場合はマイクなしケーブルといった具合に使い分けることで,VIRTUOSO PROをヘッドセットではなく,通常のヘッドフォンのように使えるというアイデアだろう。

マイクブームなしケーブルをVIRTUOSO PROに装着した状態
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 音響面での理由もありそうだ。通常のゲーマー向けヘッドセットは,左右のケーブルが1本にまとめられて,片方のエンクロージャにつながっているものが多い。しかし,本来音響的には左右のエンクロージャからそれぞれケーブルを引いて中央で出すほうがよいとされる。VIRTUOSO PROはこれを踏襲している。少しでも音響特性を向上させようという設計思想だろう。

 さて,先にケーブルの説明をしなければならなかったが,マイクも見ていこう。VIRTUOSO PROのマイクブームは,ブーム部分がライトグレーの布素材でカバーされており,実測で長さは約11.8cm,重量は約10gだ。ブームはとても柔らかく柔軟性が高いので,狙ったところに配置できる。
 付属のポップノイズフィルターは黒いスポンジ素材で,実測で長さが約38mm,直径は約20mmくらいとなっている。

ケーブルにL字型でつながったマイクブーム
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スポンジ素材のポップノイズフィルターを取り付けて装着した状態。マイクを口の近くに持ってこれる
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 白いマイク部分は,実測約22×8mmくらいのサイズで,マイクの空気孔は実測約6×2mmくらいの幅がある。マイクの反対側にも,実測約5×1mmくらいの孔があった。ただ,製品情報ページによると,VIRTUOSO PROのマイクは単一指向性なので,裏側の空気孔はダミーであろう。

マイクの空気孔は棒状(左)。裏面にも細い孔があるものの,ダミーのようだ(右)
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 製品情報ページによると,マイクの入力周波数特性は100Hz〜10kHzとあり,アナログにしてはやや狭い印象だ。意図的に不要な低周波と高周波をカットする特性にしているのかもしれない。

ケーブルの根元にあるマイクミュートスイッチ
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 ケーブルとエンクロージャの接続部分は,マイクを接続する左側の接合部が円形ではなく四角いはめ込み式となっていた。マイクなしケーブルも左側端子は同じ形状で,ケーブルの左右を間違うことなく正しい位置に取り付けられる設計と言えよう。
 ちなみに,マイク付きケーブルの端子裏側には,マイクミュートスイッチがある。スイッチは片手で操作できるが,小さいのであまり扱いやすいとは言えないと感じた。

 このユニークなケーブルには,若干気になる点もある。左側ははめ込み式なので問題ないのだが,右側は単に差し込むだけなので,接続が甘いと右エンクロージャの音が鳴らないことがある。きちんと差し込めば簡単に抜けることはなさそうだが,実際試用しているときに何度か「右の音が鳴らない?」ということがあった。また,左側がはめ込み式なので間違えないと思っていたが,左右をよく確かめないで接続したら逆だったということもあった。ケーブルを交換するときは,ヘッドセット本体のアーム部分にある「L/R」表示をきちんと確認したほうがよさそうだ。

VIRTUOSO PROを首像に装着した状態
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 VIRTUOSO PROを装着した印象だが,側圧はそれなりにあるので,頭を振ってもそうそう外れることはない。一方で,形状記憶フォームクッションと柔らかいカバー素材のおかげか,あまりストレスは感じなかった。どちらかというと,やや柔らかめの装着感で,よくできていると感じる。ただ,夏場はこの柔らかい布素材のカバーが蒸れるかもしれない。

●VIRTUOSO PROの主なスペック
  • 基本仕様:アナログ接続対応,開放型エンクロージャ採用
  • 公称本体サイズ:未公開
  • 公称本体重量:約338g(ケーブル含む)
  • 公称ケーブル長:約1.8m
  • 接続インタフェース:4極3.5mmミニピン×1,3極3.5mmミニピン×2(スプリッターケーブル),
  • 搭載ボタン/スイッチ:マイクミュートスイッチ
《ヘッドフォン部》
  • スピーカードライバー:50mmドライバー
  • 周波数特性:20Hz〜40kHz
  • インピーダンス:32Ω
  • 出力音圧レベル:116±3dB
《マイク部》
  • 方式:未公開
  • 周波数特性:100Hz〜10kHz
  • 感度:−42±3dB
  • インピーダンス:2.2kΩ
  • S/N比:未公開
  • 指向性:単一指向性
  • ノイズキャンセリング機能:未公開


ホームオーディオ系とモニターヘッドフォン系の中間くらいのマイルドな音質傾向


 ここまでの紹介を踏まえて,VIRTUOSO PROをテストしていこう。まずはヘッドフォンの特性からだ。繰り返しになるが,VIRTUOSO PROは,ピュアなアナログヘッドセットであり,計測テストはいつもどおりPCで行っている。サウンド出力および入力はともに,リファレンス機材となるデスクトップPCに組み込んだ「Sound Blaster ZxR」に,VIRTUOSO PROをアナログ接続して計測をしている。
 テスト自体は,いつもどおり2種類の検証を行う。

  • ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによるヘッドフォン出力の周波数特性計測と試聴
  • マイク入力テスト:マイク入力の周波数特性および位相計測と試聴

 ヘッドフォン出力時の測定対象は,アナログヘッドセットで遅延はないので,出力遅延計測は行わず,周波数特性のみ計測する。具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」で示しているので,そちらを参照してほしい。
 また,マイク入力の測定対象は,周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は,「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」にまとめたとおりだ。

ヘッドフォン出力品質テスト用のリファレンス波形
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 それでは,VIRTUOSO PROの出力周波数特性から見ていこう。ヘッドフォン出力時の周波数特性は,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したデータを示す。
 低域は100〜200Hz付近,高域は5〜6kHz付近を頂点とする軽いドンシャリだが,見てのとおり,500Hzから1.8kHzくらいの谷はあまり低くないので,低域と高域の山との差が小さい。つまり,ドンシャリがきつくなく,中域もしっかり再生できると予測できる。また,高価格帯製品らしく,グラフが割と滑らかなのも印象的だ。凸凹が少ないと音程による音量差が少なくなってスムーズな音質傾向になるのでいい。
 一方,8kHzより上の超高域は,10kHz付近から落ち込みが始まっている。16kHz以上の落ち込みはテスト環境由来なので気にする必要はないが,高域再生に特徴のある(というか高域が強い製品も多い)開放型らしくないような気もする。

VIRTUOSO PROのヘッドフォン出力特性。赤線がリファンレンス波形
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 この結果を念頭に置いて,ステレオ音楽を試聴してみた。周波数特性のとおり,やり過ぎない程度にしっかりと低域が再生されており,高域の歪みも確かに少ない。中域もしっかりしていて,周波数バランスは良好だ。
 最近,何製品かレビューしたモニターヘッドフォン系の音とは異なり,低強高弱とまでは言わないが,低域がモニター系よりもしっかりしているので,どちらかというと「ホームオーディオ」系にやや近いと思う。いいか悪いかで言うと「良」なのだが……,なんだろう。あまり開放型ヘッドフォンを試聴している気がしない。

 もちろん開放型ヘッドフォンもいろいろなスタイルの製品があるので,一概に「これじゃないとダメ!」と決めつけるのはよくないと思う。だが,ハイエンドの開放型ヘッドフォンで感じる半端ない開放感は感じられず,半開放型(セミオープン)あたりのヘッドフォンで聞いてるような印象を受けるのだ。
 実際,VIRTUOSO PROの音漏れは,半開放型に毛が生えたくらいの音漏れ量だ。ハイエンドの開放型ヘッドフォンは,「外に向かって音出してるの?」というくらい盛大に音漏れする傾向にある。外に向かってもガッツリ音が出ている分だけ密閉感がなく,超高域も強く再生されるので開放感を感じるのだが,VIRTUOSO PROの音質傾向は,そっち方向ではない。超高域は,グラフどおり抑えめな印象で,全体の音質傾向も上品かつマイルド。もう少し超高域の倍音を感じられるほうが,開放型ヘッドフォンっぽいと思う。

 サラウンドゲームタイトルではどうであろう。VIRTUOSO PROはピュアアナログヘッドセットなので,別途バーチャルサラウンドプロセッサを用意する必要がある。今回もほかのアナログヘッドセットと同様に,サラウンド試聴はEPOSのUSBサウンドデバイスである「GSX 1000 2nd Edition」(以下,GSX 1000 2nd)の7.1chモードで試聴した。GSX 1000 2nd側の設定は,以下のとおり。

  • EQプリセット:ニュートラル
  • サウンドの指向性:ニュートラル
  • 残響レベル:無効

 まずは「Fallout 4」を試す。例によって,ヘリの前でぐるぐる回って定位の変化を確認するが,少し動いただけで位置の変化を把握できる定位の良さは,今どきの製品らしい。ヘリに乗り込んだあとのローター音も,定位を問題なく聞き取れる。ヘリのエンジン音やローター音,着陸時の効果音といった低域は,モニターヘッドフォン系より強く,明らかにそれらとは異なる聞こえ方をする。とはいえ,低域が前に出すぎるわけではなく,モニターヘッドフォン系よりはやや強いという程度だ。強すぎる低域はいらないが,ほどほど低域もあったほうがいいゲーマーに向いている。
 また,中域がしっかり存在するので,無線ボイスの音量も十分だ。全体の音量感も,GSX 1000 2ndと組み合わせれば平均音圧レベルが低いFallout4でも十分だった。

 次に「Project CARS 2」でテストを行った。前後の敵車のエンジン音はもちろん簡単に聞き分けられるし,敵車とすれ違うときの音の移動も把握しやすい。ただ,モニターヘッドフォン系より低域がやや強いので,エンジン音などが若干(あくまでも若干だが)強くなり,「今まで聞こえなかった音が聞こえる」ところまではいかないように感じる。
 一方で,低域が少し強く,超高域が少し弱いせいか,ヘッドセットによってはうるさく感じられるProject CARS 2の効果音が耳に痛くない。やり過ぎない程度に低域を少し出し,全体としてはややマイルドな聞こえ方を目指しているのかもしれない。グラフェンを使用したドライバーのおかげか,歪みも聞いた感じは明らかに少ないし,それもマイルドな音質傾向に貢献しているのだろうか。興味深い。

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 PC版「MONSTER HUNTER: WORLD」(以下,MHW)は,いつもどおり村の中を歩き回って,自分で操作したときの聞こえ方を確認する。
 まず,中域がしっかりしているから,サラウンドの音情報が多く聞こえる。これはどちらかというと高価格帯のモニターヘッドフォン系に近い鳴り方だ。ただ,低域がしっかり存在しており,おそらくこれが少し音情報をマスクしているのか,びっくりするほど音情報が多く聞こえるわけではない。
 一方で,水車の回転や鎖の音など低域たっぷりの効果音は,強すぎとは感じないがしっかり聞こえており,こういうところはやはりモニターヘッドフォン系とは異なるなと思う。足音は強すぎず,ほどほどだ。高域がたっぷりの効果音や,風の音や水しぶきのようなノイズに近い音は,しっかり聞こえるがやはりマイルド。ここまで来ると,VIRTUOSO PROの珍しい音響特性は,意図的な調整により実現しているのではないかと感じる。

 耳に痛くなることなく,きちんとサラウンドの効果音を聞き分けられるという意味では,あまり同じ路線のヘッドセットにお目にかかった記憶がない。なかなかユニークな製品と言ってよいだろう。

 PS4版MHWでも試してみた。例によって,DUALSHOCK 4のアナログオーディオ入出力に本製品を接続したうえで,ゲーム内サラウンドを有効にして試聴している。
 別のレビューでも触れたが,どうやらDUALSHOCK 4のアナログオーディオ出力は,GSX 1000 2ndよりもずっとドンシャリなようだ。PCでは一貫して確認できる中域がしっかり再生される印象はなく,低域と高域が強い感じだ。
 ただ,VIRTUOSO PROは,低域がやや強く超高域がやや弱いので,音はやはり全体的にマイルド。低音の効いた効果音は,それなりにしっかり再生される。PS4でもやはり開放型ヘッドフォンらしい感じの音ではなく,VIRTUOSO PRO特有の,マイルドで聞きやすい音質傾向が確認できた。


マイクは広帯域・低ノイズで十分実用に耐える


マイク入力品質テスト用のリファレンス波形
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 続いて,VIRTUOSO PROにおけるマイクの入力品質を評価しよう。こちらも先述したとおり,Sound Blaster ZxRにVIRTUOSO PROのケーブルを接続して計測している。入力レベルは高めなので,Windows側でのマイクブーストはオフ。今回の設定は「Mic Input = 81」,「Mic Boost = 0dB」にした。結果は以下のとおり。

VIRTUOSO PROのマイク入力特性。赤線がリファンレンス波形
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 製品情報の仕様よりも,ずいぶんと広範囲の周波数帯域をカバーしている。低域のピークは,たしかに公称値にある100Hz付近で,高域のピークも10kHzだが,実際はそこからなだらかに落ち込んでいるので,結局20〜16kHzくらいをカバーしている印象だ。いわゆるドンシャリ型で,一番深い谷が500Hz付近。最近のマイク入力テストでは,このドンシャリ波形を一頃よりもまたよく見るようになった気がする。モノラルマイクのようで,位相は完璧だ。

 実際に自分の声を録音して聞いてみると,広帯域を集録してドンシャリなので,相当いい音質に聞こえる。500Hzが谷の底ということもあるのか,結構パリっとクリーン,かつメリハリの利いた音質傾向だ。狭帯域のネットワーク越しでも,ボイスチャットの声が聞こえやすいと推測できる。
 これだけ広い帯域にわたると環境にもよるだろうが,高域中心のヒスノイズは,ヘッドフォンでモニターすると聞こえるものの,低域のルームノイズは,テスト環境ではまったく聞こえなかった。指向性マイクを用いたパッシブノイズリダクションとしては,十分その役目をはたしていると言えよう。

 先述のとおり,Corsairは本製品を単体マイクと組み合わせて使う用途も訴求したいのではないかと思うが,実況配信用ではなく,普通にボイスチャットをしながらゲームをプレイするなら,VIRTUOSO PROの付属マイクでも品質は十分と感じるゲーマーは多いと思う。
 ただ,アナログ接続は環境によってノイズを拾うので,気になる場合は,ノイズリダクションやノイズキャンセリング機能を備えるサウンドデバイスで,これらを有効にするのがいい。


ライバル不在のユニークな製品

3万円を出したいと思わせる色気には欠ける


 VIRTUOSO PROの音質傾向は,ホームオーディオ系とモニターヘッドフォン系の間くらいに位置する。歪みが少なく超高域が少し弱いこともあり,音は結構マイルドと,競合する音質傾向が思い当たらないユニークな製品だ。
 おそらくゲーマー向けやモニターヘッドフォンのようにカリカリの音質傾向よりも,やり過ぎない程度に少し低域もあって,効果音が耳にうるさくない落ち着いた音でプレイしたい,という人に向いた製品ではないだろうか。マイク品質もかなりいいと思う。

 とはいえVIRTUOSO PROは,正直,評価が難しいヘッドセットだ。筆者が開放型ヘッドセットに期待する方向性ではなく,開放型を謳う必然性は,あまり感じない。もっと踏み込んで書いてしまうと,ハイエンドのヘッドフォンやヘッドセットを試聴したときに「うわっ,これ欲しい!」と思わせる……色気とでも言おうか。高くても購入意欲をそそる,「製品の持つ色気」に欠けるという印象を受ける。
 外観はオーガニック系で決して悪くなく,あくまで音質傾向の話なのだが,3万円近い価格も考慮すると,書きづらいがこういう結論になる。

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CorsairのVIRTUOSO PRO製品情報ページ


  • 関連タイトル:

    Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)

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