インタビュー
ゲーム機から直接“ゲーム実況”が出来る日はいつ?――ついに生放送配信が可能になったPS Vita用アプリ「ニコニコ」バージョン2.00と,その今後について聞いてきた
今回は,そんな「ニコニコ」についての話を,アプリ開発元であるキテラスの代表取締役社長 鈴木慎之介氏,コンシューマーエレクトロニクス事業部長 齊藤寛明氏,そして事業企画セクション 担当セクションマネージャーの野田明日香氏らに聞いてきた。
バージョン2.00に関する話はもちろんだが,ゲーム機用の「ニコニコ」アプリに期待したいことと言えば,やはり「ゲーム実況」機能だろう。4Gamerでは,とくにゲームプレイ動画の配信機能の今後について,突っ込んで聞いてみたので,ゲーム実況の将来に興味がある人は,ぜひご一読あれ。
PS Vita用アプリ「ニコニコ」公式サイト
「キテラス」公式サイト
「草を生やせる」「その草を刈り取れる」
バージョン2.00の新機能
なかでも特徴的なのは,視聴者が「www」のいわゆる“草コメント”を入力すると,画面に草(のエフェクト)を生やしたりといった遊び要素で,配信者側は,この草を鎌で刈り取ることができ,配信者と視聴者でちょっとしたコミュニケーションが取れる機能(遊び)が実装されている。
ほかにも,生放送中の映像を集中線や擬音でコミック風に演出したり,そんな機能要るの?と思える要素がいくつも盛り込まれているのだが,「PS Vitaとニコニコ生放送を組み合わせることで,新しい玩具として使ってもらえれば(鈴木氏)」と言った話からもうかがえるように,これらの要素は,PCやスマートフォンからの配信とはまた違った,“ゲーム機ならではの使われ方/遊ばれ方”を志向した結果なのだという。
なお,本アプリのコンセプトを打ち出したのは鈴木氏だが,“草コメント”などは斎藤氏をはじめとした現場のスタッフが(勝手に)盛り込んだ機能で,それに対し鈴木氏は当初,「こんなくだらない機能!」と否定的だったという。しかし,そんな思いに反してニコニコ超会議2のユーザーから評判は大変良かったそうで,「なんか負けたって気分になりました」と鈴木氏は笑いながらこぼしていた。
齊藤寛明氏 |
鈴木慎之介氏 |
また,「PS Vitaからの生放送は,とにかく配信までの手順を簡単にしてあります(野田氏)」とのことで,ガイドに沿ってボタンを押していけば,煩雑な設定なしにすぐに生放送を行えるのも,PC版などに比べて,大きな試みの一つとなっている。鈴木氏は,「キテラスの目的は,ニコニコ動画の価値をいろいろな角度から高めること。これが生配信をやってみようという,一つのきっかけになってくれれば」と語る。
実際,ニコニコ生放送を自分でやってみようと思うに至るまでには,実際の準備や心理的な障壁の高さなど,いろいろなハードルもあると思うのだが,動画配信を「気軽な遊び」として捉え,その普及に努めるのが「ニコニコ」,および開発元のキテラスの目指すところなのだろう。
生主側の画面。右端の「◁」を左にスライド(タッチ操作)して引き出すと,各機能が使える |
ペイント機能。描き途中も視聴者の目に映る。スタンプも配置できる |
マンガ風に演出できるエフェクト。集中線や擬音が付く |
草コメント。機能としての正式名称は,「w(ダブル)コメント」 |
PS Vitaから“ゲームの実況”は今後可能なのか
さて。「PS Vitaで生放送を」という意味でいうなら,いわゆる“ゲームの実況”をゲーム機からそのままできないのか,という点も気になるところ。今回は,あくまでPS Vitaの内蔵カメラを使った生放送機能の実装が主なフィーチャーだったが,キテラスの開発陣としては,ゲーム実況も視野に入れているという。
4Gamer:
「PS Vitaで生放送が」ということでいうと,やはりゲーマーとして気になるのは,直接“ゲーム実況”ができるようにはならないのか,という点だと思うのですが,ニコニコ――とくにゲーム機用のアプリ――で,そういった機能の実装の予定はどうなっているんでしょうか。
鈴木氏:
4Gamerさんには,絶対にそこを突っ込まれると思っていました……。
ユーザーさんからもその声が大きいのは重々承知しており,こちらでも当然考えています。今回,ようやく生放送の機能自体を実装できたので,これからライブラリを整えて,各ゲームメーカーさんが扱いやすいような環境整備を,と考えている段階です。
4Gamer:
なるほど。
PlayStation Vita自体のスペックが高いので,アプリに生放送という機能を持たせること自体に問題はありませんでした。しかし,PS Vitaの性能をフルに活かすようなゲームで,さらに生放送のための処理を加えるというのは,なかなか難しい問題で。タイトルとアプリで,リソースの“食い合い”が起こるんです。
4Gamer:
生放送のためにゲーム機の処理能力を使ってしまうというのは,ゲームメーカーにとってはやりづらいポイントですよね
齊藤氏:
そうなんです。ですから,仮にそういう機能を実装するためには,弊社から生配信用のライブラリを提供させて頂く形になるわけですが,ゲーム機から直接“ゲーム実況”を行うためには,ゲームの最初の設計段階から考える必要があります。
鈴木氏:
カジュアルゲームだとか,アドベンチャーゲームのような作品であれば,比較的対応もしやすいのだろうとは思うんですが,ゴリゴリ3Dを使っているようなタイトルだと,なかなか難しい。ですから,まずはタイトルやメーカーさんを絞りながら対応を進めて,チューニングを並行して行い,一歩ずつ実現させるというアプローチが必要になると思います。
4Gamer:
ただ,PS Vitaの話ではありませんが,次世代機――例えば,PlayStation 4などでは,プレイ動画の配信機能がハードウェアの特徴としてフィーチャーされていますよね。動画の処理のためのチップも専用に用意されていたりするので,状況が一気に変わるのではないですか?
いやあ,そこは僕らも凄く期待しているところですね。僕らからすると,ソニーさん次第という感じなんですが,お声がけいただけるなら,ぜひやりたい。PlayStation 4とニコニコ動画は,親和性も高いと思いますし。
4Gamer:
ゲーム動画の実況配信は,世界的なトレンドになってきていますから。日本ではニコニコ生放送が中心ですが,海外だと「Twitch」などで人気の配信のほとんどはゲームですし。
鈴木氏:
最近では,スクエニさんがニコニコ動画での「ドラクエX」のプレイ動画配信を公認してくださったり,ゲームメーカーさん側の雰囲気も変わってきました。今後,より加速するだろうゲーム実況の波に乗るというのは,戦略的にも重要だと思っています。
4Gamer:
一時期,PlayStation 3などでも,プレイ動画をYouTubeにアップできるタイトルがいくつかありましたが,いまいちはやりきらなかった印象はあります。しかし,次世代機ではどうなるのか?というのが興味深いんですよね。
鈴木氏:
ゲームは,ハードウェアの性能を使い切るのが前提のソフトウェアなので,どうしてもオマケである動画配信までは開発リソースは回りきりません。しかし,PlayStation 4のように最初からハードウェアの設計として,動画の処理が組み込まれているものには,とても可能性を感じますよね。
4Gamer:
ゲームメーカー側からすると,後付けとかで簡単に対応できる形になっていると,動画配信への対応もしやすくなりますからね。
鈴木氏:
ええ。まだ道半ばではあるんですけれど,今回のPS Vita版「ニコニコ」のバージョン2.00も,そうした次の展開への布石になればと思っています。もっと気軽に,ゲーム実況,ひいては生放送そのものができるような世の中にしていければ嬉しいですね。
4Gamer:
分かりました。今後の取り組みを期待しております。
―――7月17日収録
PS Vita用アプリ「ニコニコ」公式サイト
「キテラス」公式サイト
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