インタビュー
「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」に込めた原作愛と格ゲー愛について,アークシステムワークス森氏,井口屋氏にインタビュー
あと一歩で辿り着く“3D”という選択肢
4Gamer:
ちなみにアークシステムワークスでは,キャラクターグラフィックスを制作する際,最初に3Dモデルを作ってから2Dに落としこむ手法を使っているとお聞きしたのですが,今回も同じ形で制作されているのですか?
今回も基本的には同じ作り方をしています。アトラスさんから原作のキャラクターモデルをいただいたのですが,頭身がデフォルメされているPS2時代のグラフィックスだったので,さすがにそのままでは使えませんでした。ですから,キャラクターモデルに関しては全部ウチで作り起こしていますね。それをレンダリングして,ペルソナチームの監修を受けました。
森氏:
BLAZBLUEシリーズではおなじみの手法なので,さすがにそのあたりの技術力は高くなっています。
井口屋氏:
最初にキャラクターをお見せしたとき,「さすがアークさんですね!」と言っていただけたのは嬉しかったなぁ。「本当に3Dモデルから作ったんですか!?」と驚いていました。
4Gamer:
期待以上の仕事だったということでしょうね。ところで「P4U」を,3D対戦格闘ゲームにする案は出なかったんですか?
森氏:
それは出なかったですね。
井口屋氏:
BLAZBLUEチームをパートナーとして選んだ時点で,アトラスさんにも3D対戦格闘の線はなかったんじゃないでしょうか。
4Gamer:
BLAZBLUEチームにお願いするということは……という話になりますね,当然。
僕自身,3D対戦格闘に興味がないわけではないんです。僕が思った通りの形で作れるのなら,3Dでも全然問題ありませんよ。技術的にさらに進歩して,3Dグラフィックスであることが一切分からない状態まで持っていけたら,3D対戦格闘を作るのもいいなと思っています。
4Gamer:
もう一歩,技術革新が必要かもしれませんね。
森氏:
そうですね。実現してほしいものです。
井口屋氏:
大変そうですね……。その仕事,僕には振らないようにお願いします(笑)。
森氏:
3Dロボットアニメでも,一時期は違和感を覚えるものが多かったですが,最近は相当クオリティが上がってきていますし。サテライトの「アクエリオンEVOL」なんかは本当に見事です。
井口屋氏:
「スマイルプリキュア!」のエンディングもすごいですよね。
森氏:
見たよ(笑)。あれをリアルタイムで出来るんだったらぜひ3D対戦格闘を作りたい!
4Gamer:
まさかプリキュアの話になるとは……。
井口屋氏:
プリキュアはゲーム業界人なら結構見ていると思います。エンディングのクオリティが,シリーズを重ねるごとに上がっているのが面白いんですよ。
森氏:
まぁ,ウチの3Dグラフィックスではまだ“絵的な暖かさ”が足りないので,それが出せるようになったら,いつでも作りますよ。3Dで。
4Gamer:
森さんは以前,ガストのアトリエシリーズを褒めていましたよね。
森氏:
ロロナは本当に良く出来てますよ! あれは3Dグラフィックスというより,“絵”をそのまま落とし込んでいる感じです。そういった,新しい映像表現にチャレンジしている作品は気になります。
4Gamer:
ロロナは森さんの理想に近い映像表現の一つではあるのですね。
森氏:
「絵を動かす」という意味では,確かに一つの理想だと思います。……何年後にやれるかな(笑)。
参戦キャラクターに……菜々子と堂島さん!?
4Gamer:
ちなみに,参戦キャラクターのチョイスはどちらのアイデアがベースになっているんでしょうか。
森氏:
P3とP4の両方からキャラクターを出すことは最初から決まっていたのですが,参戦キャラクターについては,初期に井口屋が要望をリストアップしてアトラスさんに提出しています。
両社で候補を出し合い,最終的にストーリー設定面などをすり合わせた上で,アトラスさんが決定しました。実はりせちーもプレイアブルにしたかったんですが……最終的には実況という形に落ち着きました(笑)。
4Gamer:
原作ファンにも,りせちーをパーティに入れたかったという人は多かったですね(笑)。
井口屋氏:
かなりプッシュしたんですが……力及ばず……ダメでした……。
4Gamer:
そんなに落ち込まないでください!
森氏:
僕はアイギスが参戦する時点で満足でしたよ。
井口屋氏:
アイギスは人気キャラクターということもあり,アトラスさんとしてもぜひ入れたいと言っていました。あとは,美鶴と明彦も他のキャラクターとは少し立場が違い,かつ格闘ゲームでも扱いやすそうなので,最初からリストに入れていました。
森氏:
リストに入っていたといえば,堂島さんも面白いね。
4Gamer:
え,堂島さんってどういうことですか!?
ウチのスタッフの堂島さん人気が半端なくて(笑)。
井口屋氏:
堂島さんがペルソナの代わりで,菜々子が堂島さんを召喚して戦うというネタも出ていました。「さすがにそれはちょっと……」とアトラスさんにたしなめられてしまいましたけど(笑)。
森氏:
警視庁仕込みの柔術でペルソナと渡り合う!
井口屋氏:
菜々子が怖がると,堂島さんが出てきて戦うんです!
4Gamer:
その案は怒られると思います! 見てみたかったですけど(笑)。しかし,やはり格闘ゲームとして扱いやすそうかどうかが,参戦リスト入りのポイントなんですかね。
井口屋氏:
いえ,ペルソナのキャラクターは,使用する武器が全員異なっているので,どのキャラクターも使えると思っていました。その中で,最初に参戦させるキャラクターをアトラスさんと詰めて行った形です。
森氏:
揉めたのはやはり「投げキャラ」を誰にするかという点ですね。格闘ゲームとしては,投げキャラがいないと面白くないじゃないですか。外見的にはクマが向いているんですけど……なぜ完二にしたのかと(笑)。
井口屋氏:
やはり完二は,スキンシップを積極的に求めていかないとな……と。“戦慄のガチムチ皇帝”ですし。
4Gamer:
アッー!
井口屋氏:
……と,いうのはさすがに冗談ですが(笑)。完二が投げキャラになったのは,武器がパイプ椅子で,格闘ゲーム的にも変わったアクションができるそうだから,という理由からです。かなり楽しいキャラクターになりましたよ。
4Gamer:
なぜ武器のチョイスがパイプ椅子なんでしょうか。
森氏:
格闘ゲームの面白い武器といえば,完二かサムスピの王虎(※大きな石柱)か,と言われるレベルにしたかったんですよ!
4Gamer:
では,美鶴と明彦の衣装が原作と比べて大胆に変わったのは,なぜなんでしょうか?
森氏:
先程もお話したように,原作での時間の流れの中で,二人の立場が微妙に変わっているためです。しかし,最初に二人のデザインが上がってきたときはびっくりしたね。
参戦キャラクターが決まったあと,アトラスさんが設定を作り,ラフデザインを送ってきたのですが,それを見たときの我々の驚きっぷりといったらもう(笑)。
森氏:
美鶴先輩がスニーキングスーツみたいなのを着ているところにも驚愕しましたけど,真田先輩に至っては「お前に一体何が起きたんだ!?」っていうレベルの変化でしたからね。
4Gamer:
絶対ヒグマとかと戦ってきていますよね。すっかりワイルドになってしまって……タルンダばかり使っていたあの頃の先輩はどこに……。
井口屋氏:
その辺については,コンシューマ版のストーリーにも絡んでいますので,ぜひお楽しみに。ストーリーモードは,どのキャラクターも相当楽しいことになっていますよ。
4Gamer:
ちなみに,本作の新キャラについては……?
森氏:
アーケードのストーリーモードに,P4Uオリジナルキャラクター“ラビリス”が登場します。「ペルソナ3 フェス」やドラマCDで名前だけ登場していたキャラクターですね。
井口屋氏:
クマでプレイすると,5戦目にイベント戦キャラとして登場しますよ。背中のウイングが変形した,巨大な斧を武器として使用するパワータイプのキャラクターなんです。ラビリスは今回の事件が発生した原因に絡んでいて,ストーリーの鍵を握るキャラクターですね。
4Gamer:
アイギスのような機械仕掛けっぽい体ですが…?
井口屋氏:
そのあたりも,コンシューマ版のストーリーモードの中で語られることになります。ラビリスの声優である竹達彩奈さんが,シナリオを読みながら感極まって泣いてしまうような内容ですよ。
4Gamer:
それは非常に楽しみです! ……しかし,やはりファンとしてはサブキャラたちの出番があるのかどうかという点も気になりますね。菜々子とか菜々子とか菜々子とか!
井口屋氏:
現時点では何も言えません……今後の情報公開をお楽しみに(笑)。
アーク×アトラスによる「BLAZBLUE RPG」制作の可能性は……?
4Gamer:
これは例えばの話ですが,今回の共同開発がきっかけで,次はアークシステムワークスからアトラスへ,格闘ゲームのRPG化企画を持ちかける……という可能性はありますかね?
森氏:
やってみたい気持ちはありますが,もしRPGを作るなら,自分で作ってみたいです。出来る限りのことは自分でやりたい人間なので(笑)。
4Gamer:
なるほど。BLAZBLUEは比較的RPGにしやすそうなお話ですし,以前から妄想していたんですけど,しばらくはなさそうですね。
やるんだったら,まずはアドベンチャーゲームにしたほうが……って,アドベンチャー部分はもうコンシューマ版に搭載されていますね。……あっ!
4Gamer:
何か閃きました!?
森氏:
ラグナを手術するゲームとか! 杉田くん(※ラグナの声優 杉田智和さん)が「アッー!」って叫びながら,麻酔なしの手術をされるんですよ!
4Gamer:
それ「カドゥケウス」じゃないですか!
森氏:
まぁ,さすがにそれは冗談ですけど(笑)。もしやるんだったら,やっぱり自分自身でやりたいですね。でも,ペルソナチームがブレイブルーのRPGを作ってくれるというのなら,見てみたい気はします……どうなるのかな。
4Gamer:
アトラスらしい,非常にシブいシステムになりそうですよね……。
森氏:
橋野さん達がどういうアプローチをしてくるのか,正直気になりますね。今回は僕らなりにペルソナに対するアプローチをしましたから。クリエイター集団としてのペルソナチームが,BLAZBLUEをどう調理してくれるのか,非常に興味深いです。……ペルソナ的に考えて,やっぱり舞台は学園かな。
4Gamer:
なぜ!?
森氏:
いや「BLAZBLUE学園」とか面白そうじゃないですか(笑)。あ,それなら祁答院さん(※「コープスパーティー」の原作者)に作らせたほうが面白いかも。プラチナとノエルがどれだけ陵辱されるか楽しみです!
4Gamer:
それは「コープスパーティー」とコラボした時にやってください!
森氏:
そうだね(笑)。
4Gamer:
……最後の最後に話が思わぬ方向に脱線してしまいましたが,それでは,締めとしてファンへのメッセージをお願いします。
森氏:
「P4U」には,ウチで作ってきた格闘ゲームの息吹が込められています。僕の作っている格闘ゲームはすべて続編が出ていますので,その辺にもぜひ期待していただければと思います!
あとBLAZBLUEシリーズもよろしくおねがいします! BLAZBLUE史上最大のお祭り「BLAZBLUE REVOLUTION」(ぶるれぼ)」決勝大会が,2012年3月24日にディファ有明にて開催されるのでぜひぜひ!
井口屋氏:
P4Uは,ペルソナファンの期待も,格闘ゲームファンの期待も裏切らない出来になっていると思います。2012年夏にはコンシューマ版も発売予定となっているので,今後の展開も見据えつつ,ゲームセンターでP4Uをやり込んでいただければと思います!
4Gamer:
ありがとうございました!
いよいよアーケード版の稼働がスタートし,大きな盛り上がりを見せている本作。2012年夏にはコンシューマ版の発売も控えており,格闘ゲーム部分だけでなく,「ペルソナ4」の正統な続編となるストーリーモードにも期待が集まる。今後の2D対戦格闘ゲームの“スタンダート”となり得るポテンシャルを秘めた「P4U」に,今後とも注目していきたいところだ。
「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」公式サイト
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- ライター:マフィア梶田
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