インタビュー
L.E.D.×DJ YOSHITAKA×DJ Genki対談企画。BEMANIシリーズが今,若手を求める理由とは。キーマンの三人に話を聞いてみた
プレイヤーからコンポーザーへの転身
そういえば,DJ Genkiくんって腕前はどれくらいなの?
L.E.D.氏:
いや,DJ TOTTOに聞いたんだけど,どうやら凄いレベルらしいですよ。
DJ Genki氏:
む,昔の話ですけど……。
4Gamer:
彼は,「冥(Another)」をフルコンしたプレイヤーなんですよ。
DJ YOSHITAKA氏:
えっ,皆伝クラスも余裕レベル? それはびっくりだわ。
4Gamer:
フルコン達成当時,凄い話題になってました。そもそも,DJ GenkiさんがBEMANIシリーズを始めたきっかけってなんだったんですか?
DJ Genki氏:
一番最初は,小学生3年生のときに親が買ってきた,家庭用版の「Dance Dance Revolution」ですね。音楽が主役のゲームがあるんだって,そのときショックを受けた気がします。そのあと一時期「DrumMania」にハマってたんですが……ちょうど飽きた頃に「beatmaniaIIDX 11 IIDX RED」(以下,IIDX RED)が稼働して。気がついたらそればっかりやってました(笑)。
DJ YOSHITAKA氏:
IIDX RED! 懐かしいなあ。なら,作曲を始めたきっかけは?
DJ Genki氏:
高校生のときですね。IIDXシリーズのオフ会で,DJ Norikenに会ったのがきっかけです。仲良くなったあとに,DTMやってみようよって誘われて。彼は自分にとっての師匠のような存在で,今もずっと後を追っている感覚なんです。曲のクオリティも,なにもかも。
4Gamer:
その当時から,コンポーザーを目指し始めた?
DJ Genki氏:
最初は趣味でしたね。でも「冥」のフルコンを達成したとき,自分の中で,このゲームはやりきったと思えて。本格的にコンポーザーを目指したのは,そこからです。その後はまずHARDCORE TANO*Cに楽曲が収録されるために頑張って,一つ一つハードルをクリアしてきた結果が,今につながっているんだと思います。
DJ YOSHITAKA氏:
なんというか,時代を感じますね。L.E.D.さんと「彼らは俺達が忘れてしまったものを持ってるよね」って話をよくするんですけど。年を重ねると,やっぱり失われていくものってあるんです。もちろんそれは人によるのですが,視野が広がったぶん,尖れなくなるというか。
L.E.D.氏:
若い子達には,そういう僕達にできないことをやってほしいですよね。曲作りでも,それ以外でも。
今,若手に期待すること
4Gamer:
お二方が,若手に求めているものが分かってきました。
DJ YOSHITAKA氏:
僕らは常に変化を求めているんです。一つのシリーズをずっと作っていると,頭打ちみたいな感覚が,ちょっとずつ忍び寄ってくる。それを打ち崩すのが若い力――SOUND VOLTEX FLOORに期待することです。
4Gamer:
若手コンポーザー達が,BEMANIシリーズをすっかり変えてしまったって構わない?
DJ YOSHITAKA氏:
もちろん変わってはいけないところと,変えていかなければならないところがあるので,そのハンドリングを僕らがしっかりやっていく必要はあると思います。ですが,若手の力は歴史を作る起爆剤となるので,僕らの作る環境をどんどん利用して,自分を売り込んで貰いたいです。
4Gamer:
「SOUND VOLTEX BOOTH」稼動から1年以上が経過し,SOUND VOLTEX FLOORもまもなく1年を迎えます。変化の兆しは感じられるでしょうか。
DJ YOSHITAKA氏:
劇的に変わりましたよ。公募には,今も想定以上の応募がありますし,逆に選考に手間取ってしまって申し訳ないくらいです。採用された人達の喜びの声が,さらに周囲を触発するという好循環で,最初こそ運営に不安がありましたが,今ではそれも吹っ飛びました。
4Gamer:
SOUND VOLTEX FLOORから,すでに数多くのコンポーザーがデビューしましたが,お三方がとくに注目する方はいるしょうか。
DJ YOSHITAKA氏:
いやもう,全員に注目してほしいですね。JAEPO2013のステージ(関連記事)でも発表しましたが,SOUND VOLTEX FLOORで採用されたアーティストが,ほかのBEMANIタイトルでも活躍できるようになります。彼らがBEMANIシリーズで暴れ回る時代は,そう遠くないはずです。
L.E.D.氏:
僕はSOUND VOLTEX FLOORのアーティストさん達に加えて,HARDCORE TANO*Cの人材には,今後も期待したいと思っています。今まで参加してくれた人達は,皆さん素晴らしいクオリティでしたので。……と言うと,逆にプレッシャーになっちゃうかな(笑)。
DJ Genki氏:
僕も「SOUND VOLTEX」のアーティストではないんですが,HARDCORE TANO*CのARANさんが一押しです。まだ20歳なのに,海外のアーティストにも負けないすごいクオリティで。あと,Massive New Krewさんも凄いですね。どちらもHARDCORE TANO*CのCDに収録されているので,興味があったらぜひ聴いてみてください。
4Gamer:
お話を聞いていると,SOUND VOLTEXが大きな革命を起こすことになりそうですね。
DJ YOSHITAKA氏:
そうなるといいですね。今後もグルーヴが広がって,盛り上がることを期待しています。一緒にイベント出たり,ドッキリを仕掛けたりする日が来るかもしれません(笑)。
L.E.D.氏:
そうなってくれるといいよね(笑)。
4Gamer:
ところで,JAEPO2013でお披露目された「SOUND VOLTEX II -infinite infection-」は,今どうなってるんでしょう。そろそろ稼働が近いのでは?
DJ YOSHITAKA氏:
着々と準備を進めておりますので,もうしばらくお待ちください。次回作では新しいFLOORアーティストもたくさん採用されてますのでご期待頂ければと。
4Gamer:
稼動を楽しみさせていただきます。では最後に,これからコンポーザーを目指そうという人達に,お三方からアドバイスをいただければと。
DJ YOSHITAKA氏:
そうそう,具体的なアドバイスって,どっかで言いたいって思ってたんですよ。というわけでここで。まずジャンルとして人気なものは,SOUND VOLTEX FLOORの公募の中でも激戦区になります。つまり,同じジャンルで同じアプローチをしてくる人達が,けっこういるってことです。そのときに,何を基準に採用を決めるかというと……これが凄く難しい。
4Gamer:
人気ジャンルというと……dub stepとか?
DJ YOSHITAKA氏:
そうですね。流行りのワブルベース※を使った楽曲は,募集ジャンルを問わず応募が多々あります。皆さんが想像する数より,かなり多いです。だから,ちょっとしたマイナス要素があっただけで,本来採用になって然るべき人が,落選してしまうことが頻繁にある。もし人気ジャンルで勝負するのなら,自分にしかない武器・アプローチが絶対に必要になります。
もちろんタイミングも非常に重要なので,一度落選した楽曲でも,コンテストのコンセプトに合ってるなら,ブラッシュアップしてまた送ってもらっても全然OKです。
※ワブルベース/Wobble Bass……人間の声のようにも聞こえる,揺れた音程のベース音のこと。フィルターの音域を大きく変化させることで,うねるような音を作り出す。
L.E.D.氏:
あるいは,あえて違うジャンルを選んでみるとかね。もちろん人気ジャンルの曲は必須なんだけど,予想外のところからのアプローチだって,同じくらい必要なんです。若手の皆さんから提示していたらけると嬉しいかなと。
4Gamer:
予想外のジャンルですか。
L.E.D.氏:
例えばIIDXシリーズだったら,昔はHIP HOPやHOUSEも多かったじゃないですか。でも今は少ないですよね。もちろん,それは今の流行じゃないのかもしれないけど,そういう固定観念を打ち壊すようなものこそを,若手に出してもらいたいと僕は思ってるんです。
DJ YOSHITAKA氏:
若い人達には,僕らの世代にはできないことが,必ずあると思うので。もっと尖って,研ぎ澄ましていく方向で曲を作ってほしいですね。
L.E.D.氏:
そうそう。それがきっかけでトレンドが変わることだって,十分にありえるんですから。
4Gamer:
DJ Genkiさんは,なにかアドバイスはありますか?
DJ Genki氏:
そうですね。ひたすら頑張ることが大事だと思います。今は同人やニコニコ動画など,作品を大勢の人に見られる場があり,そこに注目している人も多いはずです。まずは,そこから活動をはじめるといいんじゃないかと。あとは,自分の目指す所が何を必要としているか,そのニーズに合わせた作品作りができるようになれたら,大きいですね。
4Gamer:
お三方の活躍,BEMANIシリーズの更なる発展に期待したいと思います。本日はありがとうございました。
シリーズを支えてきたベテランのお二方に,新人コンポーザーを交えてみっちりと語ってもらった今回の対談。ゲームプレイヤーが開発側にまわるという話はときおり耳にするが,DJ Genki氏を筆頭に,BEMANIシリーズにおいても,今後そういった流れが加速することは想像に難くない。新しい世代のコンポーザー達が作る,BEMANIシリーズの新たな展開に期待しよう。
さらに言えば,多くの人が実感をもって感じているように,DTMの普及と動画サイトの隆盛,あるいは同人活動という創作スタイルなどの普及によって,音楽との付き合い方もまた,大きな変化を迎えている。その中において,BEMANIシリーズを始めとしたリズムゲームが担ってきた役割,これから果たすべき役割は,決して少なくないのではないだろうか。そんなことを考えさせられる1時間半だった。
転機を迎え,ますます必要とされるだろう次代のアーティスト達。彼らの活躍から,よりいっそう,目が離せない。
――2013年4月10日収録
インフォメーション
「SOUND VOLTEX II -infinite infection」が「博麗神社例大祭」に参戦決定!
2013年5月26日に開催される東方Projectオンリーイベント「博麗神社例大祭」のKONAMIブースに,「SOUND VOLTEX II -infinite infection」が正式稼働に先駆け,出展されることが明らかとなった。当日は,以下の楽曲の先行プレイが可能とのことなので,同作に期待しているファンは,ぜひ会場まで足を運んでみよう。
サークル名 アーティスト名 曲名 EastNewSound EastNewSound feat. 茶太 星霜輪廻〜Repeat〜 豚乙女 豚乙女 待チ人ハ来ズ。 Silver Forest さゆり (Silver Forest) 蒼空に舞え、墨染の桜 石鹸屋 石鹸屋 東方妖々夢 〜the maximum moving about〜 舞風-MAIKAZE 舞風-MAIKAZE/沙紗飛鳥 神々の祈り SYNC.ART'S SYNC.ART'S feat. 美里 エピクロスの虹はもう見えない Unlucky Morpheus Unlucky Morpheus 魔境堕天録サリエル
■「例大祭」概要
・ 名称:博麗神社例大祭
・ 内容:東方Projectオンリー同人誌即売会
・ 日程:2013年5月26日(日)
・ 開催時間:10:30〜15:30
・ 会場 東京ビッグサイト 東ホール
・ 公式サイト:http://reitaisai.com/
■東方アレンジ作品募集中!
BEMANIが運営するコンテンツ募集サイト「SOUND VOLTEX FLOOR」では,音楽やイラストなどさまざまなコンテンツを随時募集しています。
この度東方リミックス楽曲・イラストコンテストの開催が決定しました! キミの作品がゲームになるチャンス!!
詳しくは「こちら」。
「SOUND VOLTEX II -infinite infection」公式サイト
「HARDCORE TANO*C」10周年イベント,2013年9月7日開催予定
インタビュー中にも出てきたハードコアテクノレーベル「HARDCORE TANO*C」の10周年イベントが,2013年9月7日に開催される予定だ。具体的な場所など詳細については現在のところ未定だが,決り次第告知が行われるとのこと。
最新情報は,HARDCORE TANO*Cの公式サイトや,オフィシャルTwitter,またDJ Genki氏のTwitterなどで発表されるとのことなので,興味のある読者はそちらをチェックしておこう。
「HARDCORE TANO*C」公式サイト
「SOUND VOLTEX BOOTH」公式サイト
「beatmania IIDX 20 tricoro」公式サイト
- 関連タイトル:
SOUND VOLTEX BOOTH
- 関連タイトル:
beatmania IIDX
- 関連タイトル:
SOUND VOLTEX II -infinite infection-
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(C)Konami Digital Entertainment
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