プレイレポート
初代「かまいたちの夜」を彷彿させる世界観に,数々の新機軸が融合。「真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)」プレイレポート
結果,初代「かまいたちの夜」は,累計125万本以上の出荷を誇る,アドベンチャーゲームとしては異例の大ヒット作品となった。プレイヤーの中には,ゲーム内に登場する「シュプール」の撮影場所となった,ペンション「クヌルプ」へ足を運ぶ熱心なファンもいるほどで,この作品を「サウンドノベルの最高傑作」と評する声は今なお多い。
本日(12月17日)発売となった「真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)」(PlayStation 3 / PlayStation Vita)は,シリーズ3作目「かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相」から数えると,実に5年ぶりとなるファン待望の最新作だ。「雪山のペンションを舞台とした本格ミステリー」という設定からも分かるように,初代「かまいたちの夜」の世界観を色濃く受け継いでいるのが特徴である。
その上で,ハードの機能を活かしたオンラインモード「みんなでかまいたち」の実装,キャラクターボイスの追加(フルボイスではなくパートボイス),情報の断片を組み合わせて仮説を成立させる「推理システム」の導入など,新たな試みも積極的に盛り込まれている。本稿では,筆者が実際に「真かまいたちの夜」をプレイした感想を交えながら,本作の魅力を紹介していきたい。
「真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)」公式サイト
ノベルゲームとしての基本的な遊びやすさは健在
「推理システム」ではプレイヤーの推理力が試される
サウンドノベルに限らず,テキスト量が膨大なアドベンチャーゲームにとってはこの上なく重要な,バックログ機能やスキップ画面からのジャンプ機能も,当然完備されている。ページ単位でジャンプすることもできるし,フローチャートを使って一気にジャンプすることも可能だ。選択肢を選び直したいときや,気になるシーンを再確認したいときなどは非常に重宝するだろう。なおフローチャートには,選んだことのある選択肢を確認する機能も用意されているので,リプレイアビリティはすこぶる高い。
また,本作から新たに「おさわり選択肢」と「推理システム」というシステムが追加された。おさわり選択肢は,カーソルを動かして怪しい場所を調べるという,ポイント&クリック型のシステムだ。PS Vita版ではモーションセンサーに対応しており,本体を動かして,部屋の中をくまなくチェックできる。
一方の推理システムは,ゲーム中に得られた情報の断片を組み合わせ,推理によって導き出された答えを選択肢として出現させるというシステムだ。ちなみにメインシナリオ(ミステリー編)のクライマックスでは,プレイヤーの洞察力や推理力が一気に試されることになるので,適当にプレイしていて「あれ……何だっけ?」なんてことがないように気を付けよう。
余談だが,推理システムが発動した際,「かまいたちの夜」ファンにはお馴染みの名曲「ひとつの推理」が流れるのは,シリーズをやり込んできたプレイヤーにとっては非常に嬉しい要素だ。筆者も初代「かまいたちの夜」からプレイしている熱心なファンの1人なので,「開発者さん分かってるなぁ!」と素直に喜んでしまった。
疑心暗鬼が生む恐怖に打ち勝ち,犯人の凶行を阻止せよ
本作はストーリー性に重きが置かれた作品なので,本稿ではストーリー展開に関する突っこんだ内容は語れないが,ミステリー編をプレイした限り,主人公の設定や作品全体の雰囲気など,初代「かまいたちの夜」を彷彿させる要素が至るところに見られた。大雪によって隔離されたペンションという巨大な密室は,まさにそれを象徴しており,閉塞感から来る恐怖を存分に味わうことができる。
また序盤では,普通の宿泊客として登場していた登場人物達が,第一の殺人以降,事件の容疑者として疑わしく思えてくるという展開も,ゲーム世界への没入感を高めてくれる。誰も信用できないという不安は,次々に起こる殺人事件によって恐怖へと変わり,やがて絶望へと変化する。初代「かまいたちの夜」を最初にプレイしたとき,ほとんどの人が最悪のバッドエンディングを経験したはずだ。本作のミステリー編をプレイしていると,そのときのトラウマがふつふつと蘇ってくるに違いない。
参考までに筆者は,トゥルーエンディングにたどり着くまでに,少なくとも5〜7つくらいのバッドエンディングを体験した。そのどれもが非常に凄惨な内容で,文字どおり唖然としてしまった。しかし,バッドエンディングには事件のヒントになるようなシーンも見え隠れしており,いくつか経験しておくことで,事件への理解が深まるのも事実。なので,初めてプレイしてなかなか真相にたどり着けないという人も,ぜひ諦めずにプレイを続けてほしい。得られた情報を冷静に整理していけば,ふとしたきっかけで真相への扉を開けることができるはずだ。
ちなみに,本作には怖いだけのシナリオはほぼ存在しない。中には,フッと肩の力が抜けるようなシーンや,思わずクスリと笑ってしまうようなシーンも用意されている。とくにミステリー編の序盤はユーモアに満ちており,その後起こる惨劇などまるで予感させないような展開の連続だ。
さすがに物語中盤以降,そういったシーンは減ってくるが,それだけに,序盤と中盤以降の展開の,良い意味でのギャップに感心させられるはずだ。プレイした際は,そういった恐怖とユーモアのバランスの良さも楽しんでほしい。
シリーズのファンなら買って損はなし
この冬最高のミステリーを満喫しよう
本作には,個性的な登場人物が多数登場するが,そんな中,主人公「坂巻快人」の個性をあえて控えめに設定している点は,プレイヤーの没入感を高める要因として大いに評価できる。事件を推理するうえで,主人公があまりに強い個性を持っていると,プレイヤーはニュートラルな思考をとりにくくなるものなのだ。
ただ,少しドジなところやちょっぴり弱気なところは,1〜3の主人公「透」と共通している部分があるし,それとは逆に,推理するときの毅然とした態度なども,透同様非常に凛々しく描かれているので,魅力的な主人公であることは間違いない。
また,本作を語る上で欠かすことのできない要素として,キャラクターボイスの実装についても紹介しておこう。キャラクターボイス(パートボイス)は物語の重要なシーンに挿入され,ストーリー展開を盛り上げるのに一役買っている。今までの「かまいたちの夜」シリーズにはボイスはなかったので,これはシリーズにとって,大きな変革と言っていいだろう。
初代「かまいたちの夜」が,シンプルなグラフィックスと効果的なサウンド演出でプレイヤーの想像力を刺激し,強烈な没入感を生み出していただけに,ボイスの実装を素直に喜べないシリーズファンもいるかもしれない。しかし,少なくとも筆者がプレイした範囲では,パートボイスが没入感の妨げになるような場面には遭遇しなかった。初代「かまいたちの夜」を体験していない新規プレイヤーにもアピールする要素であることは間違いないし,シリーズをさらに成長させるための進化として,素直に受け止めたいところである。
まだすべてのシナリオをクリアしていないので,作品の総合的な評価については語れないのだが,少なくともサウンドノベルというジャンルが嫌いでない人であれば,文句なしに「買い」の1本だと断言できる。100人同時にプレイできるというオンラインマルチプレイモード「みんなでかまいたち」や,ゲームを通じてお互いの相性を占える,PS Vita版のみの2人用(カップル向け?)モード「ふたりでかまいたち」などにより,従来作と比べて遊びの幅もグッと広がっているので,この冬,最高のミステリーを体験したいという人は,ぜひ購入を検討してみてほしい。
「真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)」公式サイト
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真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)
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