レビュー
協力プレイに絶妙な陰謀がミックスされた心理戦ボードゲーム
ルーム25(新版) 多言語版
時は近未来,囚人達によるやらせなしのデスゲームで,歴代最高視聴率を誇るテレビ番組があった。そのゲームのルールは,5×5の25部屋で構成された危険な迷路の中から,制限時間内に脱出するというもの。プレイヤーはこのゲームの参加者として,唯一の出口であるルーム25を目指すことになる。
François Rouzé(フランソワ・ルーゼ)氏がデザインを手がけ,フランスのアナログゲームメーカー・MATAGOTが2013年に発売した本作は,日本ではホビージャパンから「ルーム25(新版) 多言語版」(価格:3800円/税抜)として販売されている。プレイ時間は約30分と手軽に楽しめ,かつ「人狼」のような正体隠匿型ゲームの要素も取り入れられたこのタイトルを紹介していこう。
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「ルーム25(新版)」公式サイト
ディストピアの閉鎖空間で繰り広げられる心理戦
人数やプレイスタイルに応じていくつかのモードで遊ぶことができる「ルーム25」
だが,まずは一番ポピュラーで面白い「疑念」モード(4〜6人用)を遊んでみよう。
死の迷宮に挑む囚人(プリズナー)は,科学者やオタク,ギャルなど個性豊かな6人が用意されている。ゲーム的な能力差はないが,いかにもB級映画っぽい雰囲気だ。
プレイヤー同士が協力して迷宮からの脱出を目指す「疑念」モードだが,プレイヤーの中にはテレビ局側が用意した裏切り者である「ガード」が含まれる。プリズナーの勝利条件が制限時間内の脱出であるのとは反対に,ガードはそれを阻止することが目的だ。つまり,協力するふりをしながら脱出を妨害し,機会があればプリズナーを殺そうとするのだ。
自分がプリズナーとガードのどちらであるかは,ゲーム開始前に配られる役割カードによって決まる。例えばプレイ人数が5〜6名なら「プリズナー4枚 / ガード2枚」が配られるので,プレイヤーの中には必ず1名もしくは2名のガードが含まれる。しかし人数が4名の場合は,「プリズナー4枚 / ガード1枚」なので,ガードが一人も居ない可能性がありうる。いったい誰が裏切り者なのか,疑心暗鬼の状態で推理しながら遊ぶのが,この「疑念」モードの醍醐味というわけだ。
自分のキャラクターと役割を把握したら,次はゲームの舞台となる迷路タイルの配置だ。まず中央に「セントラルルーム」を置き,その周囲にタイルを伏せたままランダムに配置していく。5×5の形を作ったら準備完了。セントラルルームに駒となるプリズナーフィギュアを配置してゲームはスタートとなる。
プレイヤー達は10ターン以内に出口である「ルーム25」を見つけ,全員そろって脱出しなければならない。しかし各タイルにはプレイヤー達を脅かす危険な罠が仕込まれている。
各プレイヤーは,1つのターンで2回行動できる。スタートプレイヤーから時計回りに一回ずつ行動し,2周したところでターンエンドだ。各行動は4種類4枚のアクショントークンで表されており,その内訳はそれは以下の通り。
- 「確認」(緑):隣の部屋1つをこっそりのぞく。
- 「移動」(ピンク):隣の部屋に移動する。
- 「押し出し」(黄):同じ部屋にいる誰か1人を,隣の部屋に強制移動させる。
- 「操作」(青):自分のいるタイルを含む1列を,まるごと縦か横にずらす。
これらアクションの中でも,とく大切なのが緑のトークンである「確認」アクションだ。
セントラルルームの周囲に配置された各タイルには,四隅が緑色の「安全な部屋」,黄色の「要注意部屋」,赤色の「危険な部屋」がある。同じ色の部屋であってもタイルごとにさまざまな特徴があるが,黄色の部屋には何らかのデメリットがあり,赤の部屋は死の危険がある。「確認」アクションでは,このタイルをこっそりめくって見ることで,その部屋の危険度を確かめられるのだ。
ちなみに「確認」によって分かった情報のうち,具体的な部屋の名前はほかの人に言ってはならない。「安全」「危険」「あまりよくない」といったことはしゃべって構わないが,真実を言う義務もない。即死部屋を安全だと言ったり,出口である「ルーム25」を危険と言い張ることだって可能だ。
ピンクの「移動」はもっとも基本的な行動だが,注意と覚悟が必要でもある。移動先のタイルがオープンになり,地形の効果が適用されるからだ。もしも即死部屋に踏み込んでしまったら,その時点で脱落だ |
計画通り!――黄色の「押し出し」はほかのプレイヤーを抹殺したいときはもちろん,危険な罠から味方を救い出すときにも使えるアクションだ |
そしてポイントなのが,各プリズナーがこうした行動をアクショントークンを使って「予約」しなければならないところだ。毎ターンの初めに,キャラクターシートの横に伏せた状態で配置しなければならないので,同じ行動は2度行えない。また他人がどう行動するかも,事前に知ることはできない。
この仕組みがもどかしさを生んで本作を盛り上げてくれるコアのメカニクスなのだ。予約済みのアクションは,自分にとって不利益になろうとも,取りやめることはできない。それが予想外の結果を招き,プレイヤーの計画をあっさり破綻させる。とくに複数のプレイヤーが「操作」のアクションを選んだときなどは,相当にカオスなことになる。
協力+裏切りの絶妙なバランス
「ルーム25」は,魅力的な世界観とシンプルなルールが魅力のボードゲームだ。なにより「どんなゲーム?」と聞かれたら,「映画の『CUBE』みたいな脱出ゲーム」と答えれば,多くの人に興味を持ってもらえるだろうし,ルール自体は非常に単純ですぐに覚えられる。
それでいて,誰が裏切り者なのかを探るという正体隠匿系ゲームの奥深さも備えているのが面白い。ガードは自分がガードであるとバレてもゲームから脱落することはないし,招待を明かしてしまえばアクションを「予約」する必要がないというメリットもある。もちろんプリズナーから直接攻撃を受ける危険性はあるものの,プリズナーが2名いるなら,そういった役割分担をする戦術も有効だろう。
こういった協力型のゲームはプレイヤーの熟練度に差が出やすく,結果としてベテランプレイヤーのリーダーシップに全員がついていく展開になりがちだが,それだとただついていくだけのプレイヤーが楽しめない場合があった。本作はそこに正体隠匿系ゲームの要素を加えたことで,独特の緊張感を出すことに成功している。
今回は紹介できなかったが「疑念」以外のモードも面白く,とくにルールを熟知した人同士でやる「対立」モードの心理戦はかなり熱い。機会があればぜひ遊んでみてほしいタイトルだ。
なお版元であるMATAGOTによれば,2015年中には本作の続編「Room25 Season2」も登場予定とのこと。Season2ではキャラクターごとの特殊能力が加わるなど,追加のルールも登場するそうだ。日本語版が出るかどうかは未定だが,こちらも楽しみにしておこう。
「ルーム25(新版)」公式サイト
- 関連タイトル:
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