プレイレポート
ダンジョンRPGファンなら迷わずプレイすべし。さまざまなブラッシュアップによって洗練された「迷宮クロスブラッド リローデッド」プレイレポート
角川ゲームス×エクスペリエンスの協業タイトル第1弾となるXbox 360用ダンジョンRPG,「迷宮クロスブラッド リローデッド」が2011年11月10日に発売される。エクスペリエンスのXbox 360用ソフトとしては,PCからの移植作品である「円卓の生徒」が2月10日に発売されているが,本作も同じくPC用ソフト「迷宮クロスブラッド」をXbox 360向けにブラッシュアップして移植したものだ。
PCからの移植にあたり,タイアップアーティストによる新規OP/EDテーマの追加,16:9のHDグラフィックスへの対応,ユーザーインタフェースの最適化などが行われた本作を発売に先駆けてプレイしてみたので,ゲームの概要と合わせてそのプレイレポートお届けしよう。なお,PC版迷宮クロスブラッドのレビューを「こちら」に掲載しているので,ゲームの基本要素については,そちらを合わせて参照してほしい。
「迷宮クロスブラッド リローデッド」公式サイト
●舞台は「異形」が跋扈する20XX年の東京
まずは,かいつまんで本作の世界観を紹介しておこう。ゲームの舞台となるのは,「異形」と呼ばれるモンスターによって脅かされている20XX年の東京。街では,建物や構造物の異界(アビス)化や,異形によるハザード事件が続発しており,これに対抗するために密かに作られたのがプレイヤーが所属することになる特務隊「エクス」である。
通常兵器による攻撃がほとんど通用しない異形に対抗するための唯一の手段は,データを具象化する特殊能力「コードライズ」だ。エクス隊の隊員は,そのコードライズ能力を持った少年少女達(=コードライザー)によって構成されている。隊員達は,普段は日輪学園(ひのわがくえん)に通う生徒として過ごすかたわら,その陰では街を脅威から守るため,アビス化によって出現した都内各地の都市迷宮に足を踏み入れ,ハザード事件の捜査を行っていく。
ちなみに本作は,ストーリー的にはPCで発売された「ジェネレーション エクス」シリーズ3部作のその後を描いたものだが,ストーリー自体はそれぞれ独立しており,本作からプレイを始めても問題なく楽しめる。また,日輪学園に設置された「CPO司令部」にある情報端末では,過去の事件やエクス隊に関わる人物の情報などを記録した「XTHペディア」を読めるので,これまでの経緯が気になる人はそちらをチェックしておくといいだろう。
●のっけから悩みまくりの,自由度の高いキャラメイク
前作「円卓の生徒」が,ゲームを進めるにつれてパーティメンバーが増えていくストーリー型のダンジョンRPGだったのに対し,本作ではプレイヤー自身がキャラメイクを行い,最大6人のパーティを組んで迷宮に挑んでいくことになる。本作で最も頭を悩ませることになるのが,このキャラメイクだ。
キャラメイクでは,キャラクターの名前,性別,年齢,性格,容姿などを細かく設定できるのだが,このときに厄介なのが本作独特の用語や設定。パッと見ただけで意味を理解できる項目と,ちょっと分かりにくい項目があり,事細かに解説するには紙幅が足りないものの,初めて本作をプレイする人でも以下の2点を押さえておけば,キャラメイクで大失敗! という事態を避けられるだろう。
・「タイプ」
タイプは隊員の資質を表すもので,ファンタジーRPGなどにおける,いわゆる“種族”に相当する。当然,タイプによって初期ステータスが異なり,装備可能なアイテムも違う。
・「ブラッド」
ブラッドとは,いわゆる“職業”に当たるもので,メインとサブにそれぞれ設定できる(メインのみに設定することも可能)。メイン/サブに同時にブラッドを設定した状態を“クロスブラッド”と呼び,両方のブラッドのスキル,スペルを使えるといったメリットがあるが,その分,成長が遅くなる。また,キャラの性格(善/中立/悪)によっては選択できないブラッドがある。
上記のうち,ブラッドは条件を満たしていれば何度でも変更可能だが,タイプは一度決めたら変更できないので注意してほしい。基本的には,前衛系のタイプには前衛系のブラッド,後衛系のタイプには後衛系のブラッドを付けるようにし,前衛/後衛どちらにも属さない特殊系のタイプはゲームに慣れてから選ぶようにしよう。
キャラメイク時には,Xbox 360版オリジナルの新要素として戦闘時のボイスを選択できるようになっている点も見逃せない。ボイスは男女合わせて70種類用意されており,男性キャラに女性ボイス(もしくはその逆)を設定することもできる。
また,キャラメイクとは直接関係ないが,ボイス関連では主要NPCのセリフに声があてられているのもXbox 360版からの新要素。ゲーム内のセリフは一部のみに声があてられたパートボイス仕様になっているが,ジェネレーション エクスシリーズのプレイヤーならば,「あのキャラは,こんな声だったのか!」と新鮮な気持ちを味わえるだろう。
ちょっと話が脇道にそれてしまったが,本作では一度キャラクターを作成したあとでも,「性別」「年齢」「タイプ」の3つ以外はゲーム中で何度も変更できる(ただし「性格」の変更にはちょっとした手順が必要)ので,ひとまずは上述した2点,「タイプ」「ブラッド」に注意しつつキャラメイクしておけば大丈夫。じっくりと考えてこだわりのキャラクターを作成しようとすれば,1キャラ作るだけで1時間以上かかることもあり,冒険に出る前からやり込み甲斐がたっぷり。こうして作り上げた愛着の持てるキャラクターでパーティを組めば,いっそう感情移入できること間違いなしだ。
●その気になればとことん遊びこめる,圧倒的なゲームボリューム
ダンジョンRPGの楽しみは,探索,戦闘,アイテム収集の楽しみだと言い換えてもいいだろう。もちろん本作でも,これらの要素は非常に充実している。さらに,本作ではそこにもう一つ“ストーリー”の要素が追加され,プレイヤーは行方不明になった若者が年老いた姿で発見される「急老症」なる怪奇事件と,事件に深く関わりがあると思われる謎の“黒騎士”の調査のためにダンジョンを探索していくことになる。
ストーリーはCPO司令部で受けられる“任務”をこなす形で進めていき,ストーリーの進展に伴って新たなアビス(=ダンジョン)への進入許可が与えられる。各地に出現したアビスには,廃校舎や廃ビル,地下坑道など,一種のオカルトスポットが異界化したものが多く,場所によってガラリと見た目の雰囲気も変化する。ゲーム中には,14か所以上の都市迷宮と90以上のマップが存在しており,そのボリュームはかなりものだ。
当然ながら,これらのアビスは異形の巣窟となっており,数々の脅威がエクス隊を待ち受けている。その中でも,「手配異形」と呼ばれる強力なモンスターとの戦闘は,本作におけるハイライトの一つ。実は本作では一定レベルごとにレベルキャップが設定されており,その制限を解除してさらにレベルを上げるためには,この手配異形を討伐していく必要があるのだ。
また,手ごわいの手配異形ばかりではなく,通常の雑魚モンスターとの戦闘でも気を抜くことはできない。本作では序盤のうちから全体攻撃スキルを使ってきたり,5〜6体のグループ単位で増援を呼んだりする敵が出現するため,下手をすると最初のダンジョンであっさり全滅なんてことも起こりうる。そこで必要になってくるのが,アイテム収集によるキャラクターの強化なのだが,これがまた途方もなくやり応えがある。
本作では基本的に,敵との戦闘後に見つかるコードチップ(宝箱のようなもの)から装備品(や装備の元となるジャンク)を入手していくのだが,何が入っているかはプレイヤーの運次第であり,強力なアイテムを発見したときの喜びは思わずガッツポーズしたくなるほど。身に着けた装備品のグラフィックスが,基本的にはすべてキャラクターの見た目に反映されるというのも楽しい要素だ。見た目のかっこよさ(可愛さ)を取るか,性能を取るかでまた頭を悩ませそうだが,ある程度ゲームを進めると装備品の見た目を変えられるようになるので,お洒落と性能の両立を目指してみるのもいいだろう。
ここまででも,かなりのやり込み要素が詰め込まれていることがお分かりいただけたと思うが,本作ではさらに,本編クリア後に追加されるダンジョンやクエスト,そして通称“シズラーブラッド”と呼ばれる特別なブラッドコードまであるのだからたまらない。本編を一通りプレイしたあとも,シズラーブラッドでキャラを育成しつつ新たなダンジョンに挑戦したり,実績の全解除を目指したりと,まだまだ遊び続けることができるのだ。
●さまざまなブラッシュアップが施され,より洗練された作品に
さて,本作はPCからの移植作品ということで,PC版とのゲーム内容の違いが気になる人もいるかもしれない。とくに気になるのはゲーム難度だと思うが,本作はPC版迷宮クロスブラッドの“完全移植”を目指して開発され,ゲームバランスの調整などは行われていない。そのため,PC版同様の緊迫感あるゲームプレイを楽しめるので,歯ごたえのある冒険を期待している人もご安心を。内容的にも,PC版の最新パッチにあたる「リーサルパッチ Ver.1.200」までのコンテンツが含まれており,同パッチで追加された新ダンジョンや新モンスターなどもバッチリ収録されている。
PC版との差異を細かく見ていくと,筆者がプレイした限りでは,一部のモンスターグラフィックスやゲーム内テキストがコンシューマ向けに調整されているのを確認できたが,違和感はまったくなかったと記しておきたい。そうした重箱の隅をつつくような変更点よりも,PC版では控えめに言っても地味だったOPムービーや日輪区の全体マップ画面がブラッシュアップされたり,NPCにボイスが追加されたり,シズナ先輩がバスタオル姿になったりといったプラス要素の変化のほうが大きく,ゲームとしてより洗練されたという印象を受ける。
またPC版では,非常に快適な操作性がウリの一つとなっていたが,Xbox 360版の操作性も負けず劣らず快適。移動や戦闘がスムーズに行える(ボタン押しっぱなしでの高速戦闘も健在)のはもちろん,Xbox 360向けにリファインされたインタフェースにも不自然さは見受けられない。
個人的には,各キャラのコックピット周り(画面下にあるキャラクターの顔アイコン部分)のデザインが変更されたことで,AC(回避力)やTH(命中値)を移動中,常に確認できなくなった点が何となく落ち着かないのだが,隊列変更時など必要なときにはちゃんと確認できるので実質的には問題ないだろう。
上述のとおり,キャラメイクの段階からやり込み甲斐があり,本編のボリュームもたっぷりで操作性も快適,しかもPC版からの要素を踏襲しつつXbox 360版ならではの改良も加えられているとなれば,生粋のダンジョンRPGファンならば本作をプレイしない手はないだろう。全体的に欠点が少なく,移植のお手本とも言える完成度の高い作品だ。ゲーム開始時からできることが多く,ブラッドやタイプといった用語の使い方にも本作独特の癖があるため,初心者にはやや分かりにくい部分があることは否めないが,円卓の生徒で初めてダンジョンRPGの面白さを知ったという人が,次のステップとして遊ぶ作品としてもオススメしたい。
「迷宮クロスブラッド リローデッド」公式サイト
- 関連タイトル:
迷宮クロスブラッド リローデッド
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(C)Experience Inc. Published by KADOKAWA GAMES
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