イベント
「マジック・ザ・ギャザリング」4年ぶりの基本セット“ファウンデーションズ”とは何なのか。WotCのプロデューサーにGen Con会場で聞いてみた
ちなみに基本セットとは,マジックの基本的なカードを収録したカードセットで,有り体にいえば初心者向け製品ということになる。しかし現在明らかになっている情報では,スタンダードフォーマットで5年間は使用可能という,基本セットとしては異例の告知が行われ,話題を呼んでいる。また収録されるカードが一部ではあるが公開されており,そのチョイスでも注目を集めている。《全知/Omniscience》《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》《審判の日/Day of Judgment》など,いずれも強力なカード揃いなのだ。
今回4Gamerでは,先日アメリカ・インディアナポリスで開催されたGen Con 2024会場にて,本作のエグゼクティブプロデューサー・Max McCall氏に話を伺う機会を得た。「ファウンデーションズ」はどのようなセットなのか,またどのような狙いで作られたものなのか。制作者の生の声をお届けしていこう。
取材協力:こあらだまり
「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト
新時代の基盤となる基本セット「ファウンデーションズ」
4Gamer:
イベント期間中にもかかわらず,お時間をいただきありがとうございます。まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
Max McCall氏:
本作のエグゼクティブプロデューサーを務めるMax McCallです。2011年から2014年にかけてマジックの開発に関わり,2018年に再びマジックの担当になりました。以降,「フォーゴトン・レルム探訪」「神河:輝ける世界」「Warhammer 40,000」「サンダー・ジャンクションの無法者」といったカードセットを手掛けました。
4Gamer:
ありがとうございます。ちなみに,McCallさんご自身が一番好きなカードを伺ってもいいでしょうか。
McCall氏:
《露天鉱床/Strip Mine》ですね(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
ではまず,「ファウンデーションズ」のコンセプトを教えてください。
McCall氏:
「ファウンデーションズ」は,マジックを“皆のもの”にするために作られました。ほかのすべてのマジックのセットがそうであるように,「ファウンデーションズ」には,すべてのマジックプレイヤーのためのカードが含まれています。またそれだけでなく,マジックの遊び方を学ぶのに最適なセットであることを意図しています。
4Gamer:
つまり,新しいプレイヤーに向けたセットということですか。
McCall氏:
そうです。マジックは学ぶのが難しいゲームであり,我々もまた初心者がマジックを学ぶのに最適なバージョンを,長らく用意できていませんでした。
4Gamer:
確かに,基本セットとしては4年ぶりのリリースになります。
McCall氏:
そうです。先ほど“皆のもの”と言いましたが,この皆にはマジックをまだプレイしたことがない人も含まれています。このセットがFoundations(基盤・根幹)と名付けられたのも,これがマジックの新しい時代の始まりであり,そして屋台骨になることを意図してのことなのです。
4Gamer:
長らく基本セットが出ていなかったのは,どうしてなのでしょうか。
McCall氏:
単純に,プレイヤーの皆さんが新しい基本セットを望んでいなかったからです。つまり最初は良くても,2つ目,3つ目となると興味を示してもらえないという問題がありました。しかし「ファウンデーションズ」は違います。誰もが興奮するようなカードセットを用意し,その上に新たな製品を展開していく。またスタンダードで長期間使えるセットだというのも,重要なポイントです。
4Gamer:
なるほど。「ファウンデーションズ」のカードは,スタンダードで今後5年間,使用できることが発表されていますね。
McCall氏:
“最低でも”5年間です。私達はその有効期間をまだ決めかねています。うっかり“永久”と言ってしまうと,きっと後悔してしまうでしょうから(笑)。なので,さしあたって5年にしているわけです。
4Gamer:
しかし,「ファウンデーションズ」への収録が発表されているカードには,かなり強力なものが含まれています。例えば《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》や《審判の日/Day of Judgment》など。
McCall氏:
そのとおり。「ファウンデーションズ」にはこうした強力なカードが多く含まれています。これらはまさに,新時代を築く支柱になるべく意図されたものなのです。そして強いカードはこれだけではありません。新しいカードもあれば,戻って来るカードもあります。
「ファウンデーションズ」には,私達がマジックをどう考えているのか,そして今後登場するすべてのセットを,私達がどうデザインしていくのかの哲学が込められています。そしてそれらに,皆さんはきっと興奮することでしょう。
4Gamer:
発表によれば,「ファウンデーションズ」はスタンダードだけでなく,モダンや統率者戦でも使えるとのことですが……。
McCall氏:
はい。「ファウンデーションズ」のカードセットには,モダンや統率者戦向けのものが含まれています。これらのカードはまだ公開していませんが,近いうちに発表できると思います。
4Gamer:
つまり,すべてのフォーマットに対応するということですか。
McCall氏:
そうですね。「ファウンデーションズ」は,特定のフォーマットを対象としていません。あるカードはモダンで使われるでしょうし,別のカードはスタンダードで使われるでしょう。ただ「ファウンデーションズ」のすべてのカードが,すべてのフォーマットで使われるわけではありません。
4Gamer:
分かりました。本作の世界観の部分についても,少し聞かせてください。キービジュアルにはアジャニをはじめとしたプレインズウォーカーの面々が描かれていますね。
McCall氏:
アジャニと魁渡,リリアナ,チャンドラ,ビビアンですね。彼らは人間と非人間,あるいはそのほかの異なる属性の組み合わせから選ばれたキャラクターです。例えばチャンドラは情動的で炎のようなキャラクターであり,そういった性質でファンの皆さんから愛されています。
4Gamer:
個人的には,ジェイスがいないことに驚きました。彼は日本のプレイヤーにとても愛されているので,いなくなるのはとても残念です。
McCall氏:
ジェイスは過去のシリーズにおいて,いささか複雑なキャラクターになりすぎてしまいました。なので,これからのマジックに必要な,より英雄的なキャラクターに道を譲るために,彼には今回のイメージビジュアルからは退いてもらいました。
ジェイスの活躍が見たい人は,「サンダー・ジャンクション」の物語を見ていただくのがいいと思います。彼の出番があるはずですよ(笑)。
4Gamer:
なるほど。本作の背景世界についてはいかがでしょうか。
McCall氏:
マジックにはさまざまな背景世界がありますが,「ファウンデーションズ」では,そのすべてから少しずつ要素を取り入れたいと考えています。それぞれの世界からピックアップされたカードを切っ掛けに,プレイヤーが好みの世界を見つけて,その世界に飛び込めるようにしたいのです。
例えば,もしあなたが神河の世界が好きであれば,「ファウンデーションズ」には神河由来のカードがあります。あるいはサンダー・ジャンクションが好きなら,それもあります。ブルームバロウ,ニューカペナ,ドミナリアも同様です。それらすべてが少しずつ登場するのが「ファウンデーションズ」なのです。
4Gamer:
では,「ファウンデーションズ」そのものからは少し離れますが,マジックの流通形態について質問させてください。最近,日本ではコンビニなどでもマジックが購入できるようになりましたが,今後もそういった施策は続いていくでしょうか。
McCall氏:
私は日本を訪問したとき,カードショップがたくさんあるのを見てきました。日本でのマジックは,そういったショップでの流通が大半ですね。そして私達は,ご質問のとおりコンビニなどでもマジックを手に取れるよう,努力を重ねているところです。「ブルームバロウ」におけるベーシック・ブースターが,まさにその一つですね。
4Gamer:
おっしゃるとおりです。
McCall氏:
「ブルームバロウ」は発売されたばかりですから,ベーシック・ブースターが皆さんにどう受け入れられたかはまだ分かりません。ただ日本の市場は私達にとっても重要ですので,これからもより多くの場所で購入できるよう,働きかけていきたいと思っています。
4Gamer:
分かりました。日本を訪れたことがあるとのことですが,その時はどんな印象を持ちましたか。
McCall氏:
日本では,東京と京都に行ったことがあります。秋葉原や新宿のカードショップにも足を運びましたが,アメリカと比べると,どうしてもプレイスペースに限りがあるようでした。でも皆さんとても楽しそうにマジックをプレイしていたのを覚えています。それが日本でもっとマジックが遊ばれるよう,私達が新しい施策を打ち続ける理由でもあります。
4Gamer:
「ファウンデーションズ」の発売を楽しみにしている日本のマジックファンに向けて,何かメッセージをいただけますか。
McCall氏:
私達は,マジックが誰にとってもより良いゲームになるよう取り組んできました。そして「ファウンデーションズ」と,それに続く来年以降のセットを,皆さんに提供できることを楽しみにしています。これにより,私達は誰もが楽しく,友達を誘って遊ぶのに適したカードを作ることができるようになるのです。日本でも,そして世界中のどこでも,マジックを楽しむすべての人が,もっと増えてくれることを願っています。
4Gamer:
ありがとうございます。ちなみになんですが,McCallさんが「ファウンデーションズ」を使ってデッキを組むなら,どんなデッキにしますか。
McCall氏:
そうですね……やっぱりコントロールデッキでしょうか。たくさんドローをして手札を抱えて,その後ゆっくり対戦相手を負かしていくんです。だから「ファウンデーションズ」に《漆月魁渡/Kaito Shizuki》のようなカードが入っているのは大変喜ばしいことです。
おっと,でも私が好きなカードが《露天鉱床/Strip Mine》だということは忘れないでください。私がコントロールデッキを使っていて,対戦相手が楽しいかは別問題です。私はあまり気にしませんけど(笑)。
4Gamer:
(笑)。本日はありがとうございました。
コントロールデッキがお好きだというMcCall氏がプロデューサーを務めた基本セット「ファウンデーションズ」は,11月15日に発売予定だ。まだまだ明らかとなっている情報は少ないものの,マジック新時代の基盤となるセットとのことで期待が高まる。公式サイトほかでの情報公開にも目を光らせながら,来たる発売日を楽しみに待ちたいところだ。
「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト
著者紹介:Im Karton
海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」をはじめ,アメリカ「Gen Con」,フランス「Festival International des Juex」などを訪問。昨年はSPIEL Essenに行きたい旅行者向けのガイド「Essen Spiel Guidebook 2023」を同人誌として刊行。
tackman
Im Kartonメンバー。訪問時は文字を書いたり写真を撮ったりする。「Civilization IV」でストラテジーゲームにハマり,「Civilization: The Board Game」(2010)でボードゲームにハメられた。好きなボードゲームは「イノベーション」「テラフォーミング・マーズ」など。
- 関連タイトル:
マジック:ザ・ギャザリング
- 関連タイトル:
マジック:ザ・ギャザリング アリーナ
- 関連タイトル:
マジック:ザ・ギャザリング アリーナ
- 関連タイトル:
マジック:ザ・ギャザリング アリーナ
- この記事のURL:
キーワード
(C)2020 Wizards of the Coast LLC
(C)2020 Wizards of the Coast LLC
(C)2020 Wizards of the Coast LLC