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[TGS 2011]これからのソーシャルゲームとは。パネルディスカッション「経営から見るソーシャルゲームのインパクト」レポート
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印刷2011/09/22 19:07

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[TGS 2011]これからのソーシャルゲームとは。パネルディスカッション「経営から見るソーシャルゲームのインパクト」レポート

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 2011年9月15日,東京ゲームショウ2011のGREEブースで,「経営から見るソーシャルゲームのインパクト」というパネルディスカッションが行われた。急激な広がっているソーシャルゲームに,ゲーム会社はどう対応するのか,また経営にどう影響するのかなどが議論されたパネルディスカッションの模様を紹介しよう。


新しい市場としてのソーシャルゲーム


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コナミデジタルエンターテイメント執行役員 上原和彦氏
 ディスカッションの最初は,KONAMIがソーシャルゲームに大きく注力した理由が質問された(KONAMIは2011年第1四半期にソーシャルゲームの売り上げがコンシューマゲームのそれを上回ったことでも有名)。

 これに対し上原氏は,「今までのビジネススタイルに,新しいビジネスの市場がプラスされたというイメージ。新しい市場ができたので,そこに新しいコンテンツを提供する」と語った。KONAMIのソーシャルコンテンツに登録したユーザー数はこの1年で1000万人を超えており,この成長速度は驚異的の一言に尽きる。

 経営的に見ると,「KONAMIはさまざまな事業を展開している。アミューズメント時代,ファミコン時代,高性能機の時代,ハンドヘルドの時代,といった節目があって,いま新しい節目が来たという形でコンセンサスがとれている」と述べ,またユーザー層に関しても「年齢層は変わっていない。より楽しんでいただいている層は,リテラシーの高い20代〜30代」と指摘した。

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セガモバイルニューメディア事業部MNM2部長 岩城農氏
 続いて,KONAMI同様にコンシューマの老舗であるセガに所属する岩城氏が,この現象に対する感想を以下のように語った。「遊び方が変わった。ゲームを介したコミュニケーションが重視されるのがソーシャルゲームの面白いところ。本質的に面白いゲームを提供している状態だと思う」とし,また社内的には「ユーザー層も遊ぶ場面も,投資回収の期間も従来のゲームとは違った傾向にあり,ポートフォリオを考えるうえでみすみす看過すべきジャンルではない」と考えているという。「年齢層で見ればプレイヤーは同じかもしれないが,ユーザーの個性にあわせてゲームの選択肢が増えている」というのが氏の見解だ。

 また,グロウエン氏は従来のゲームとソーシャルゲームの違いについて以下のように語った。「サービスモデルにシフトしているし,配信の方法も変わった」とし,「新しい広大なマーケットが存在し,また流通から見ても小売店の棚を争う必要はなくなった」。アメリカではソーシャルゲームユーザーの平均年齢が40代であるという点についても,「ユーザーベースは多岐にわたっており,ゲームによって異なる。また1つのゲームが世界中で遊ばれているケースもある」「より多くのユーザーにアプローチできているのがソーシャルゲームの特徴で,30代のユーザーでも男女比が1:1になっている」とした。


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Electronic Arts Interactive (Playfish) Japan ジェネラルマネージャー アラ・マック・グロウエン氏
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グリー 代表取締役社長 田中良和氏


コンシューマゲームとソーシャルゲームの違い


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 これに対し上原氏は「フックの部分は感性。そこはデータでは計り知れない」としながらも,「そこから先の反応については,データがものをいう」と語った。「我々はコンテンツメーカーなので,フックの精度をいかに高めるかがミッション。ここにはコンシューマゲームの経験が活きる」という言葉には,長年の経験に基づいた自信が感じられる。

 また売り上げが逆転したことにより,KONAMIはコンシューマから撤退してソーシャルゲームに移行するといった誤解があるが,氏は「コンシューマゲームには年間を通じ売れる時期がある。たまたま第1四半期で逆転したが,売れるタイトルはしっかり売れている」と述べた。
 「しばしばコンシューマゲームとソーシャルゲームは食い合っていると言われるが,食い合っているのではなく市場全体が広がっているというイメージがある」というのが上原氏の見解だ。

 また岩城氏は,ソーシャルゲームとコンシューマゲームの,開発におけるスピード感の差について,「ソーシャルゲームでは意思決定をいかに早めるかを重視し,制作チームはコンシューマとは比較にもならないくらい小規模」であると語る。また決定的な違いとして,「ソーシャルゲームでは1日の中のどの時間に,どれくらいの売り上げを上げるかというところを目標に立てて,運営を回していく」と述べ,「サービスと考えて作るのか,コンテンツと考えて作るのか。サービスとコンテンツは両極ではないにしても,セガのようなレガシーカンパニーにとってはサービスを意識してやっていく必要がある」と補足した。

 グロウエン氏は,世界市場を相手にサービスしていくチームに必要とされるものとして,「小さいチームで始めて,徐々に規模を大きくするようにしている。ノウハウの継承が可能な形での拡大が大事だ」と語る。また「ソーシャルゲームは商品からサービス指向へと変化しているが,この2つは異なるモデル」であることを指摘する。
 一方,これからの課題として「データが蓄積されるのは良いことだが,古いデータをどうするか,またデータの規模が大きくなったときの扱いの難しさといった問題がある」と語った。


日本のソーシャルゲームの海外展開


 さて,世界市場という点については,「フィーチャーフォン向けのゲームをスマートフォンにほぼそのまま移植してもダメだ」と言われていたが,日本では問題なかった。これは世界でも同じなのだろうか。

 この問いについて,田中氏は「半分はそうだと思う。FacebookのゲームもHTMLとFlashのゲームなので,意外と静的だ」と言いつつも,「ゲームは文化でもある。どういうゲームを遊んできたかという経験が,ユーザーの体験の中で1つの文脈となり,それがUIになる。日本ではフィーチャーフォンをベースにしたUIが文脈として存在したが,海外にはそれは存在しない。そこに障壁がある」ことを指摘する。しかし全体的な見通しとしては,「その障壁を乗り越えれば,海外でも通用するだろう」と語る。

 また海外展開という点では,OpenFeintの買収が大きなトピックだ。
 これに関しては,「ソーシャルゲームにおいて一番重要なのは多くのユーザーに使ってもらうということ。ゲームそのものが面白いことも重要だが,共有されていることが重要」「OpenFeintは海外で多くのユーザーに使われているので,この点において大きな価値がある」と田中氏は述べた。

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 同様に海外展開において問題とされるのは,日本のソーシャルゲームの課金率の高さだ。この課金率を維持できるかどうかが海外展開におけるハードルになるのではないかという懸念は,しばしば口にされる。
 田中氏は,「日本のソーシャルゲームの課金率が高いのは,ゲームデザインが洗練されたから。多くの人がより長く,より楽しく遊ぶようになった結果,課金率の向上としてそれが反映された。事実,2年前まではGREEのソーシャルゲームも収益性は悪く,改良の結果現在の課金率に至っている」と指摘し,海外でも課金率を高めていくことはできると語った。実際,プラットフォームは違うがFacebookではFacebook Credit導入後,課金率が上昇しているという報告もあり,海外だから課金率が低いという図式はFacebookでも通用しなくなりつつある。

 海外展開での課題について,上原氏は別の面に論及する。「フックの部分がやはり問題になる。最初の掴みに差がある」という氏の言葉は,日本における「洋ゲー」に対する一般的な反応の鏡面と言えるだろう。しかし氏は「とはいえKONAMIは世界的に成功したコンシューマタイトルをいくつも持っている。そのノウハウが活かせるなら道は開けているし,多少の差があるならそれを経験として積み上げていく」と,ゲーム制作の老舗ならではのアドバンテージを示した。こういった既存IPの利用については,グロウエン氏と岩城氏も同じ見解を示している。

 また上原氏は,「なんだかんだで中身。中身が面白ければユーザーはついてきてくれるし,それは日本であっても世界であっても変わらない。日本発のコンテンツで,世界と勝負したい」と語る。岩城氏はこれに加え,「ローカライズ,カルチャライズは重要になるだろう。SNSそのものにもその傾向は見て取れる」と補足した。


世界に進出するプラットフォームに求められること


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 逆に,世界に進出していくにあたって,デベロッパがプラットフォームに求めるものは何だろうか。上原氏は,「ユーザーの数と,サービスの種類」「コンテンツメーカーなので,ユーザーのいるところには,ゲームを提供していく。『どこにどれだけのユーザーがいるのか』が重要」と言う。

 グロウエン氏は「難しい問題だ」としながらも,「第一に,世界的な組織を作るだけの資金が欠かせない。第二に,ソーシャルゲームは地域ごとに異なるサービスを行なっており,世界の各地域で個別にサービスを提供できるようになっていなくてはならない。そしてまた,それらは個別でありながらも,つながっている必要がある」ことを指摘する。

 そしてまさにいま世界展開を目指すGREEの田中氏は,「今のサービスを,全世界で今のまま再現する」ことを目指していると語る。だが「これが非常に難しい」と氏は続けた。「GREEを運営するために日本国内でも何百人が必要になる。これが全世界ということになると,今の何倍ものスタッフが求められる」というのは,単純な算数であり,覆せない事実だ。

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 「いま日本で行っているサービスと同じサービスを提供するために,何倍ものマンパワーが必要になる。これをきちんとやることは大変なことだけれども,きちんとやればそれ自体が価値になる」と語った田中氏は,すでにそのための仕事を始めていることを明らかにした。
 氏は,「現状,世界的なプラットフォームとしては,コンシューマゲーム機を別にすると,FacebookとTwitterくらいしかない」と言う。「しかし,プラットフォームが1つで済むということは考えられない。そこに参入のチャンスがある」。

 一方,このようにソーシャルゲームの市場が拡大し,また成熟するにつれ,ソーシャルゲームの開発費は順調に上昇している。
 この点について田中氏は,「スマートフォン自体もどんどん高性能になるし,それに伴ってソーシャルゲームの開発費も高騰していくのは間違いない」と認めた。しかし,「ソーシャルゲームの面白さの本質は見た目ではなく,ユーザー間のインタラクションにある。コストをかけていくにしても,見た目に全部その予算を投じるのではなく,バックエンド,サーバやデータベース,あるいはゲームデザインもより重視されなくてはならない」と語る。

 「将来的には,ユーザーのインタラクションのアルゴリズムを練り上げるのがゲームデザインになっていくだろう。見えないところのデータ作りこそがゲーム作りになっていく」というのは,氏ならではのビジョンと言えるのではないだろうか。


ソーシャルゲームという時代の変化


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 ソーシャルゲームは,ゲーム業界に大きな影響を与えている。この変化の時代を,個人としてどのように感じているのだろうか。

 上原氏は,今が「節目の時代」であることを再確認する。そして「この節目は,インターネット環境の変化などを前提とし,必然として生まれた」と推測する。「しかし,我々が培ってきたものは活きると思う。どんな時代になろうとも,情熱を持ってものを作り,サービスしていけば世界を取れると思う」という氏の言葉からは,ソーシャルゲーム時代にキャッチアップした確信が感じられる。

 岩城氏は,「ゲーム環境がモバイルに移行していく。いつでも,どこでも,それぞれの遊び方で遊べる。ユーザーの遊び方,ゲームの捉え方も独自になっていっている」と分析する。そのうえで,「その変化するニーズを満たすことが重要になってくるし,それは作り手にとって表現の幅を広げることにもなる。面白い時代になった」と語るとともに,「ソーシャルビジネスのなかで,最初にゲームが成功したというのは,ゲームのポテンシャルを示していると思う」と,ゲームの持つ力に対する自信を見せた。

 グロウエン氏は,「素晴らしい革命が起きてきた」と述べ,「初めてソーシャルゲームに取り組んだとき『これはいったいどうなるのか』と思ったし,『こんなものをゲームと呼ばないでくれ』と言う人もいた。しかし今,ソーシャルゲームには世界的に勢いがある。みんながゲームを通じて1つになっている。ゲームは社交の場となっている」と語った。


GREEのこれから


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 最後に,変化する時代に対するGREEのビジョンについて質問された。
 田中氏は「インターネットには,ホームページの時代があり,メーリングリストがあり,メールマガジンになり,ブログ,SNS,Twitterと移ってきた」「だが,やってきたことはテキストを作って友人に見せるということだ」「テキストを作って見せる,その方式が変わるたびに,インターネットはより大きなコミュニケーション,プラットフォームに生まれ変わっている」と言う――「そして今,ゲーム業界とソーシャルコミュニティ業界が合体して,ソーシャルゲーム業界ができている」

 「そういった意味で,かつてメルマガと呼ばれていたものが今ではしばしばTwitterで代用されるように,ソーシャルゲームという名前が3年後や5年後に残っているかどうかは分からない。けれど名前が変わったとしても,コミュニケーションが増大するという方向は強くなっていく。
 今後も,もっと革命的なコミュニケーションサービスが生まれてくるだろう。ソーシャルゲームもまた,形を変えながら,しかし本質的にはゲームとコミュニケーションの融合というテーマを追い求めて,もっともっと変化していくし,それに伴い規模も大きくなる」という田中氏の視点は,ソーシャルゲームをも1つの通過点としてみているようだ。そして,「未来を待っているのではなく,未来を実現させていく側に回っていきたい」。そう田中氏は語る。

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 また,「コミュニケーションの革命というのは,一度終了しつつある」と田中氏は言う。「常時接続されるコンピューティング環境が広く普及したという点において,スマートフォンの登場で一つの山を超えた」というわけだ。
 だが氏は「現状,コンピューティング・プラットフォームは携帯も家電も全部違うが,これは今後5年から10年の間に統合されるだろう。これが次の大きな革命になる」と述べ,「この革命のなかで求められるサービスは何か,その中でゲームビジネスはどう変わるべきかというのが重要なポイントになる」とした。

 最後に田中氏は,「家庭用ゲーム機を買える人は,地球上で5億人から10億人程度だったのではないか。しかし,スマートフォンでゲームが遊べることで,20億人,30億人がゲームを楽しめるようになる」と指摘する。
 「スマートフォンでのゲームが現れなければ,地球上でコンピューターゲームを知らないまま死んでいった人が10億人,20億人といただろう。それがいま革命的に変化しようとしている。

 この規模の人の人生を変えるチャンスに携われるなどというのは,滅多にないことだ。僕自身はゲーム業界だけの人間ではなく,インターネット業界の人間でもあるが,ゲーム業界の革命に参加して,ゲームを人類の一部の人の楽しみから,人類すべての人の楽しみに変化させていきたい」と語り,ディスカッションを締めた。

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