連載
「帰ってきた買い物Surfer」第1回は,「ロックスミス」のためにエレキギターを買ってきたよ! ただし予算は……(「買い物Surfer」第4回)
ところで皆さんは,かつて4Gamerで3回だけ掲載された「買い物Surfer」という連載を覚えているだろうか? たぶん,「そんなの知らない」という人のほうが多いのではないかと思う。事実,4Gamerのどのスタッフに聞いても,「ああ,そういえばそんなのもあったね……」と遠い目をしながら言われてしまうほどの影の薄さなのだ。ねえ,何でみんな目をそらすの? ちゃんと目を見て話そうよ。
もともとは4Gamerのスタッフが個人的に買ったものを紹介するという趣旨で始まった(らしい)連載だが,そもそも各人の自主性に任せていたら,こうなるのも時間の問題だったと言えるだろう。だが,そんなだらけきった風潮に敢然と反旗をひるがえし,ただ一人立ち上がったヤツがいた。そう,gingerこと筆者である。編集者の鑑にして,4Gamerの輝ける星と自称するシャイなあんちくしょうだ。
というわけで,すっかり忘れ去られた存在となっていた本連載を5か月ぶりに復活させ,勝手に「帰ってきた買い物Surfer」と改題してお届けしてしまおうと思う(編注:「買い物Surfer」第4回です)。後で怒られるかもしれない。おまけに,もうこれっきり帰って来ないんじゃないかという予感がひしひしとするが,後のことはほかの誰かに任せればいいよね?
「ロックスミス」公式サイト
ギターとは,天に飛翔するための翼である
日頃からHM/HRとアニソンばかり聴いており,高校から大学時代にかけて結構熱心にアコースティックギターを練習していた筆者だが,もともと趣味が多すぎたこともあり,社会人になってからは時間がなくてギターとは疎遠になってしまっていた。だが筆者のロック魂は死んだわけではなく,ただ深い眠りについていただけなのだ。
そう,目を閉じれば今も思い出すのは,筆者の登場を待ち構える大観衆……の夢。それまで会場に流れていたSEもすでに鳴り止み,1万5000人の忠実なるメタルアーミーを飲み込んだここウェンブリー・アリーナは熱狂の予感をはらみつつ,水を打ったように静まり返っている……気がする。
静寂の中で徐々に高まりつつあった緊張感がついに最高潮に達したその時,突如鳴り響いた雷鳴のごときドラムフィルと共にステージに駆け出す筆者。その左手がフレットの上を光の速さで駆けめぐり,奏で上げる天上の調べ。満面の笑みを浮かべた観客が言葉を交わす。「ここは天国かい?」「いいや,オハイオさ」。会場は一瞬のうちに狂乱の渦に飲み込まれていく……予定だ。ところで,ウェンブリー・アリーナってオハイオのどのへんですか?(編注:イギリスのロンドンです)
まあ,そんなわけで,筆者の魂は常にロックと共にあったと言っても決して過言ではない。本物のエレクトリックギターとベースをゲーム機に接続して演奏を楽しめるというロックスミスの登場は,再びギターを手に取る絶好の機会ではないだろうか?
だがしかし,筆者が持っているのはアコースティックギターとエレクトリックベースとドラムスティックだけ。うーん,とても肝心な何かが足りない。ロックスミスはベースでのプレイも可能だが,せっかくだからギターで遊びたい。されど,手持ちのギターはアコースティック。ぐぬぬ……。
――と,その時,筆者の耳にウェンブリー・アリーナの大観衆の歓声が聞こえた気がした。ただの気のせいだろうか? いや,違う……誰もが筆者の演奏を待っているのだ! そう確信したとき,筆者の体を電流が流れた。ならばもう,思い悩むことは何もない。ロックスミスで必ずや世界一のギタリストになってみせる! そして筆者は一大決心し,思い切ってエレクトリックギターを買ってしまうことにしたのだ。長い前フリだったが,ここからがようやく本題ですよ!
Les Paulか,Stratocasterか。それが問題だ……
さて,こうしてエレクトリックギターの購入を決意した筆者だが,ゲームは別途購入するとして(今回はXbox 360版を購入した),ギターにかけられる予算を確認すべく財布や豚さん貯金箱,預金通帳などをチェックしたところ……アレッ,2万円しか残ってないよ? 20万円の間違いではない。正真正銘,福沢先生のワンペアである。これではWii Uだって買えやしない。「いくらなんでも,そりゃねえべさ」という声が聞こえてきそうだが,現実は厳しく,筆者の懐事情もそれに輪をかけて厳しい。皆さんの言いたいことはよく分かるが,今回はこれでどうにかしようじゃないか。
ギターにあまり詳しくない人でも何となく聞いたことがあるかもしれないが,エレクトリックギターの代表的なものには,GibsonのLes Paulと,Fenderの Stratocasterの2つがある。ロックスミスはこのうちのGibsonと提携しており,ゲームにはGibsonや同社傘下のギターブランドであるEpiphoneのギターが多数登場する。
こっちは2万円じゃ買えないどころか,予算を軽く10倍くらいオーバーしてしまうモデルで,ロックスミスとのセット販売に含まれているEpiphoneとMaestroのLes Paulは,その低価格モデルと考えてもらえばいいだろう。参考までに,各メーカーからたくさんのLes Paulタイプのギターが発売されているが,正式にLes Paulを名乗れるのは,Gibsonとその傘下ブランドの製品のみだ。
ここで筆者はハタと考えた。果たして筆者も,このなけなしの2万円でEpiphoneやMaestroのLes Paulモデルを買うべきだろうか? 予算を考えれば非常に現実的な選択肢であり,筆者もかなり心が揺れたが,先に述べたとおり,単体購入では割高であるというのは何となく悔しい。実に低い次元で頭を抱える筆者に,その時,天啓がひらめいた。そうだ,Les PaulがダメならStratocasterを買えばいいじゃない! これぞまさに発想の勝利である……と思う。
財布が許す限り,ギターには金をかけよ
しかし,大まかな方針は決まったものの,悲しいかな,当然ながら福沢先生のツートップではFender製のStratocasterにはまったく手が届かない。せめて,あと10人……いや5人の福沢先生がいれば! 床を転げ回ってひとしきり我が身の不遇と日頃の無計画な消費活動を嘆いたのち,今回はFenderのサブブランドであるSquierの製品で,実売価格2万円以下のものを狙うことにした。我ながら涙ぐましいが,もちろん税込み価格でだ。これでだいぶ絞られた。
現在は,ギターもクリック一つで簡単にオンライン購入できてしまう便利な世の中だが,初めてギターを購入する人に強くお勧めしたいのは,一度は実際に楽器店へ行き,自分で手に取って感触を確かめたほうがいいということ。2万円はギターの値段としては破格の安価だが,かといっておいそれと無駄遣いできる金額でもない。
ボディの形状や重さ,ネックの太さや指板(フレット)の仕上げなどはギターの弾き心地を大きく左右するポイントなので,実際に触れてみて自分が満足できるものを選ぶべきだ。これが,本稿で筆者が伝えられる唯一まともなアドバイスなので,これ以降はもう読まなくてもいいかもしれない。
そんなわけで,さっそく楽器店に足を運んだ筆者だが,そこで運命の出会いが待っていた。おお,神よ。高くて買えないと思っていたAffinityシリーズより上位モデルのVintage Modifiedシリーズが,税込み1万9800円で売られているではないか! 嬉しい誤算とはまさにこのこと。天命は我にあり! 筆者はこの時ほど,ギターの神に感謝を捧げたことはない。一応,同価格帯のギターを何本か試してみたのち,筆者はこのVMシリーズから,Vintage Modified Strat HSSを購入することにした。
この世はステージ,人間はみなギタリスト
Stratocasterといえば,ボディの前面に通常は3基のシングルコイルピックアップが搭載されているのが外見上の特徴となっているが,筆者が購入したのはその型番にもあるとおり,2基のシングルコイルピックアップと,1基のハムバッキングピックアップ(ハムバッカーとも呼ぶ)を装備した,いわゆるSSH(Fender的にはHSS)仕様のギターだ。ピックアップとは,弦の振動を電気信号に変換する装置のことで,大まかに言って,シングルコイルは歯切れのいいクリアなサウンド,ハムバッカーは甘く太いサウンドが持ち味だ。
Vintage Modified Strat HSSでは,使用するピックアップ(もしくはその組み合わせ)を5段階のピックアップセレクターによって設定でき,シングルコイルとハムバッカーのハーフトーンを出すといった使い方もできる。ちなみにスタンダードタイプのLes Paulには通常2基のハムバッカーが装備されており,Stratocasterとはサウンドの傾向が大きく異なるので,自分がどういった曲を弾きたいのかによって選ぶというのもありだろう。しまった,まじめに解説してしまった……。
そして1時間後。筆者は買ったばかりのギターを抱え,自室で一人悶絶していた。指がまるで動かない……。動け! 動け! 動いてよ! 今動かないとみんな(以下略)。おまけに久しぶりにギターを弾いたせいか,あっという間に指先が痛くなってしまった。でも,楽しい! ロックスミスでは,プレイヤーの腕前に応じてゲームの難度が自動調整されるため,へたっぴでも何となく弾けた気になって楽しく練習できる。現に見よ,テレビの中の観客達は筆者の華麗なリフワークに狂喜乱舞しているではないか! これならば,実際にウェンブリー・アリーナのステージに立つ日もそう遠い話ではないだろう。
あとほんのちょっとぐらいの練習と,オハイオ州の地図が必要かもしれないが(編注:ロンドンの地図が必要です),筆者にはStratocaster(約2万円)とロックスミスがついている。もはや勝利は約束されたも同然だ。早晩プロデビューする日に備えて,今からサインの練習をしておかなくちゃ。
ロックスミスのみでギターの練習をすることについて,個人的に考えるところもあるにはあるが,もはや字数が足りなくなってきた。だが,少しでもギターに興味があるなら,ロックスミスは大変素晴らしいきっかけとなることは間違いないので,まだ迷っている人はぜひ筆者のあとに続いてほしい。そして早くこの高みまで上って,筆者と激しいギターバトルをしようではないか。なぜならこの世はステージであり,人間はみなギタリストなのだから!
「ロックスミス」公式サイト
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