インタビュー
「メトロ ラストライト」の音声収録現場に密着。主人公アルチョム役のてらそままさきさんと,日本語版プロデューサーに聞く“ローカライズの極意”
セリフを体に通して,“生きたもの”にする。
てらそままさきさんを交えてのインタビュー
アルチョムは20代という設定で,てらそまさんとはかなり年齢が離れていますよね。
てらそまさん:
自分の娘よりも年下ですね。
赤石沢氏:
前作をお願いした時に「僕でいいの?」と確認されました(笑)。
てらそまさん:
前作でもそうだったんですけど,「無理に若いキャラクターを作らなくていい」とのことでしたので,キャラクターの内面をつかみつつ,自分の声のままで素直に演じています。いざ収録に入ったら,量は多いし,尺を合わせる必要はあるしで,キャラクター作りで悩んでる暇もなかったですが(笑)。
4Gamer:
経験豊富なてらそまさんでも,ゲームの収録は戸惑いますか。
てらそまさん:
映画やドラマと比べると,ちょっと特殊ですよね。とくに海外モノだと,尺に合わせるという条件がありますが,尺の制限があると,気持ちを込めるのにも限界が生まれてしまいます。
赤石沢氏:
いざ読んでいただく段階になって,どうやっても時間内に入りきらないことが分かるということが,申し訳ないことに現場ではよくある話なので……。
普段の倍くらいの速さで読み上げてもらってから,結局大慌てで「今すぐ直します!」って。
てらそまさん:
今日も前作の音声を聞き直したけど,ものすごいスピードでしゃべってるところがあったよね。
4Gamer:
先ほど収録を見学させていただきましたが,スタジオ外のスタッフ(ディレクターやエンジニア)と,細かにやり取りしながら収録を進めていたのが印象的でした。
てらそまさん:
そりゃもう,そうでないとできません。役者のほうで勝手にセリフを切ったりするわけにはいかないですからね。それに,台本はあくまで台本で,実際に人が読み上げると違和感が出たり,音になりにくい言葉があったりするんです。そういった部分をチェックしていただいて,逐次修正しながら進めていきます。
赤石沢氏:
今日収録を行ったのは幕間のモノローグで,音声と同時に字幕でも表示されるんですが,耳で聞いてわかりにくい部分は,可能な限り修正します。キャストの皆さんには苦労をかけるばかりですが……。
台本に書かれたセリフが僕らの身体を通ると,エモーション(感情)がかかって“生きたもの”になると思うんです。それをできるだけ臨場感あふれるものにしたいというのは,ジャンルを問わず思っていることです。
4Gamer:
さきほど赤石沢さんから,本作はロシアが舞台で,馴染みのない地名や人名が多く,それらをできるだけ少なくしていると聞きました。てらそまさんは読み上げるときに苦労があったかと思いますが。
てらそまさん:
うん,ご苦労です(笑)。「トレチャコフスカヤ」でさえたいへんなのに,それに人名だの駅名だのがくっついて,考えて発音するまでの負荷がどんどん高まってきてね。
最初は意地を張って「初見で行けますよ!」とか言ってたけど,いざ収録になると「三行目のここにトレチャが来るぞ」みたいに構えちゃって(笑)。でも,収録を続けていくうちに,頭に刷り込まれてきました。
赤石沢氏:
僕も立ち会いながら,緊張してました。
てらそまさん:
ゲームはわかりにくい用語がたくさん出てきますが,僕らはそれを,さも分かっているように,スムーズに読み上げるのが仕事ですからね。
赤石沢氏:
シーンも飛び飛びで収録するのですが,こちらの心配がいらないくらい,気持ちをパッと切り替えてもらえます。何度立ち会っても,この名人芸には驚かされますね。
てらそまさん:
尺の確認に加えて,原語のエモーションが,セリフのどの部分にかかっているのかもチェックしています。ですから,収録後は疲労感がけっこうありますね。それに加えて,年齢からか台本の文字が小さいと読みにくくなってきて(笑)。
4Gamer:
20代のキャラクターにはそぐわないコメントが……(笑)。アルチョムを演じたのは前作に続いて2回目となったわけですが,改めてどのような人物だと思われましたか。
てらそまさん:
そうですね……。彼の根幹にあるのは,人間に誰しもが持っていてほしい「人としての有り様」だと思います。人は悩んで,ときにはブレもして,このゲームのように戦争も起こすのだけど,最後の心根の部分で「人としてどうあるべきか」という思いを持っている,というのがアルチョムを演じるにあたって心がけたことです。
キャラクターとしての外枠はできるだけ固めず,声だけが印象に残るようにはせずに,ですね。
赤石沢氏:
海外版のキャッチコピーが「Last Hope,Last Chance」で,それはアルチョム自身のことなんですよ。てらそまさんにはそれをお伝えしていないのに,キッチリと掴んでいただいてたんだと驚いて,同時に感動しています。繊細かつ悩める主人公が,静かに奮闘する物語を,てらそまさんの語りを通じて楽しんでほしいですね。
4Gamer:
では最後に,読者に向けてのメッセージをお願いします。
てらそまさん:
2作目ということで,前作を気に入ってプレイしてくれる方も多いと思います。気に入ってもらったタイトルに再び携われる,こんなに幸せなことはありません。今作も可愛がってください。
赤石沢氏:
日本版の売りは,吹き替えにあります。また,本作はゲーム中の音声を日本語・英語・ロシア語に切り替えることができますので,日本語だけといわず,ほかの言語に切り替えて何度も遊んでいただいて,そこから感じ取れるニュアンスの違いを味わっていただけたら幸いです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「メトロ ラストライト」公式サイト
- 関連タイトル:
メトロ ラストライト
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メトロ ラストライト
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(C) Copyright 2013 and Published by Koch Media GmbH. Deep Silver is a division of Koch Media GmbH, Gewerbegebiet 1, 6604 Höfen, Austria. Developed by 4A Games. 4A Games Limited and their respective logo are trademarks of 4A Games Limited. Metro: Last Light is based on the internationally bestselling novel METRO 2033 by Dmitry Glukhovsky. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners.
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