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Arma 3
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ミリタリーFPS「ARMA 3」をレビュー。他の追随を許さない,リアルな戦場シミュレーションに挑戦しよう
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印刷2013/11/29 14:10

レビュー

リアルな戦闘シミュレーションを体験したい? それならこれ

ARMA 3 日本語版

Text by BRZRK


 Bohemia Interactiveの看板タイトルである「ARMA」シリーズの最新作,「ARMA 3」の日本語版がズーから発売中だ。2001年に発売された「Operation Flashpoint」を開発したチェコのBohemiaが,続編の方向性についてパブリッシャと意見が相違し,袂を分けたあと(「もっとカジュアル向けに」と発売元に要求されたことが原因と言われている),新たに制作したのが「ARMA」シリーズで,その最新作が本作となる。

画像集#001のサムネイル/ミリタリーFPS「ARMA 3」をレビュー。他の追随を許さない,リアルな戦場シミュレーションに挑戦しよう

「ARMA 3 日本語版」公式サイト


 今でこそ,人気MOD「DayZ」が動くゲームとして世界的に知られるようになったタイトルだが,それまではコアすぎるミリタリーFPSとも言えるニッチな存在で,かくいう筆者も「DayZ」の存在がなければ,本シリーズに触れることはなかったかもしれないという感じだ。

 「ARMA 3」では,Bohemia初の試みとして「アーリーアクセス」という販売形態が採用されている。これは,β版を有料販売し,製品版のリリース後,無料でアップグレードするというもので,途中で資金を得ながら開発が続けられるため,中小メーカーにとって大手パブリッシャに頼らずにすむというメリットがある。成功例としては「Minecraft」があるが,ユーザーにとっては制作途中のゲームを購入することになり,ある種の賭けのような側面もある。ある程度のファンがいる人気シリーズだから,やれることかもしれない。

キャンペーンモードの一場面。楔形隊形で林を進むが,この直後に敵襲を受け,分隊から犠牲者がでてしまった
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拠点で命令を待つ兵士。胸と両肩には夜間,視認できるようにIRパッチが貼り付けられている。こういうところが,たまらなくリアル
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 発売中の日本語版はもちろん製品版だが,例えばキャンペーンなどのコンテンツが追ってリリースされるというダンドリになっており,どこでゲームを紹介していいのかよく分からないという,ゲームメディア泣かせ。というわけで,キャンペーンモードのエピソード1の配信が終わったこのタイミングで簡単にレビューしてみたい。別にサボっていたわけじゃないんです。

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ストラティス島を舞台に戦いの火蓋が切られる


 キャンペーンモードは,2030年代半ば,つまりちょっと未来の架空の島が舞台となる。プレイヤーは,内戦終結から5年が経過した地中海の小島,ストラティス島に駐屯するNATOの平和維持部隊員で,撤退する準備を進めているところだ。
 主人公や,その仲間は「やっとこんなシケた島から出られるぜ」というムードなわけだが,もちろんこれは危険なフラグ。突如として近隣のアルティス島に本拠を置くAAF(Altis Armed Force)が平和維持部隊に攻撃を開始し,あっという間にNATO軍の拠点は制圧される。帰還はもちろん先延ばしとなり,敗走しつつ味方主力との合流を目指すことになる。

 
 主人公はようやく,ストラティス島で活動していた米英部隊と合流し,ともに力を合わせて現状を把握し,悪化の一途を辿る状況を打開するため,破壊工作や強襲作戦を行うことになるというのがストーリー。だが,AAFの攻撃は激しさを増す一方で,対する主人公達はそれをしのぐことで精一杯で,ストーリーどころではない。

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指揮官として残存兵をまとめる英軍の上官。過酷な状況でも,信頼できる上官の存在が隊員を後押ししてくれる
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ときにはトラックの荷台に乗りながら前線へ行き,そこで近未来型ハンヴィーのような車両に乗り替えることも
街灯すらない山間部では,日が暮れると一気に視認性が低下する
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 エピソード1でこのボリュームか! と思えるほどの内容の濃さで,海中で行動したり,夜闇作戦に挑んだりと,ミリタリーファンにとってグッとくるシチュエーションが盛りだくさん。ただ,これはオペフラ以来おなじみのことだが,1ミッションが長めで,しかも遠すぎて豆粒にしか見えない敵と銃撃戦を繰り広げたりなど,プレイはとにかく疲れる。
 FPSに慣れた筆者でさえ神経を張り詰めて戦うことになるので,かなりしんどいが,そのぶんミッションを完遂したときの気持よさは格別だ。

夜になると周辺は暗くなり,ナイトビジョンゴーグルがなければ身動きすら難しくなる
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 なお,2013年12月にエピソード2が配信され,キャンペーンの完結編となるエピソード3は来年に配信される見通しだ。エピソード1には登場していない勢力も出てくるようで,物語の続きが非常に気になってしょうがない。早く時間が進んでほしい。


「Steam ワークショップ」を使えば,違う遊び方も


 いかにも本作らしい,忘れてはならない要素として,熱いコミュニティが作成する豊富なミッションやMODの存在が挙げられるだろう。本作はValveのデジタル配信システム「Steam」のサービスの一つ「Steam ワークショップ」に対応しており,MODの検索から導入までが非常に楽になっている。
 Steamの「ARMA 3」製品ページ「Stream ワークショップ」のバナーをクリックすると,ユーザーが作成したさまざまなミッションがズラリと表示される。

映画「ブラックホーク・ダウン」を想起させる出撃シーン。味方のヘリが撃墜され,大混乱に陥るところも再現されている
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 筆者も評判が高いミッションをいくつか遊んでみたが,いずれも力の入れ具合がすさまじく,これが無料? という気持ちになってしまうものも少なくない。
 面白いと思ったのは,映画でもおなじみの「ブラックホーク・ダウン」の再現ミッションだ。もっともブラックホーク・ダウンの強襲作戦が行われたのは地中海の小島ではなくソマリアで,年代の違いによって兵士の装備もまったく異なるため,あくまでもブラックホーク・ダウン風なのだが,かなりそれっぽい雰囲気が楽しめる。
 さらに,とある有名スニーキングアクションを再現したMODもあり,こちらは未完ではあるものの,本当に好きで一生懸命再現しようとしているのが感じられる努力作だ。

超高高度からパラシュート降下を練習できるMOD。景色に見とれてパラシュートを開き忘れないように
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パラシュート降下訓練を行うために会話する上官は,なぜかパンツいっちょ。作者のセンスが光る
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 「Steam ワークショップ」でミッションを探すときのTipsだが,「SP」と書かれている場合はシングルプレイ,「CO」または「COOP」は協力プレイ,「PvP」は対人戦をテーマにしたものとなっている。これ以外にも,例えば人質救出訓練や降下強襲訓練,タクティカルトレーニングなど,プレイヤーの上達を手助けするようなものも配信されているので,知らなかったという人はぜひ探してほしい。


ハードルは高いが,遊んでみる価値の高いマルチプレイ


 最後に,マルチプレイについて紹介しよう。現在,ユーザーが立てたほとんどのサーバーはCo-op,つまり協力プレイで,たまに「チームデスマッチ」「キング・オブ・ヒル」のサーバーもあるのだが,基本的に協力プレイがメインと言ってしまっても構わないだろう。

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 ただ,中にはかなり複雑なミッションになっているサーバーもあるので,プレイの前にサーバーの名前をブラウザで検索しておくのがいいだろう。
 サーバーを設置しているユーザーがWebサイトを運営していれば,提供しているのがどういうミッションで,何を目的としているのかの説明が掲載されている場合が多く,事前の予習ができるからだ。禁止事項など細かいルールが書かれていることもあるので,それらが掲載されている場合は目を通しておくべきだろう。

指定されたエリアを制圧するのが目的となる「キング・オブ・ヒル」。守り続けていると経験値が入り,空からの兵器輸送を依頼することが可能になるようだ
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 さて,今回は知り合いを集めてマルチプレイを遊んでみたのだが,これがかなりハマる
 例えば,AIキャラクターと拠点を奪い合うタイプの大規模戦闘ミッションの場合,敵の頭が良く,へたにベースを空にして敵陣へ向かってしまうと,そのスキを突いて制圧されてしまうといったことが起きたりする。
 だいたい,参加プレイヤーの人数が足りないと,敵AIが強いためジリ貧の展開になってしまうのだが,それだけに,不利な状況を覆して勝利したときの達成感はかなり高い。

ギリースーツで身を包み,スナイパーライフルで敵を攻撃。1発で相手を仕留められなければ別の敵を呼び寄せてしまう可能性がある
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 また,いわゆるWAVEタイプ(敵が波状攻撃してくる)のミッションも面白い。当然,敵の攻撃は最初ゆるやかで,ライフル兵しか出現しなかったりするのだが,WAVEが進むにつれ狙撃手や装甲車などが登場し,防衛に苦労させられる。
 プレイに上達することで,手強い装甲車を破壊することもできるようになり,さらに長時間生き続けられるのだが,とはいえ最終的には必ずメタメタにされてしまうんですけどね。

 大手メーカーのミリタリーFPSに比べ,ルールや交戦ポイントが把握しづらく,ビギナーにあまり親切でないため,マルチプレイのハードルはかなり高め。
 しかし,ひとたび味を知ると後戻りができない面白さを持っている。いわば噛めば噛むほど味が出るスルメのようなゲームで,筆者も,一緒に遊ぶ知り合いも,アドレナリン全開で定期的に集まってプレイするようになってしまった。

仲間の健闘をたたえて,敬礼! グッジョブ!
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不満点はあるものの,満足度も高い


 圧倒的リアリティで戦場の雰囲気が楽しめる,と書くといい響きだが,リアルであるということは,それだけ手間がかかるということでもある。
 例えば,使用する銃器によっては,ターゲットの距離に合わせて照準器を調整(つまりゼロイン調整)しなければならない。また,調整機能のない銃器を使用する場合は,アイアンサイトやスコープを覗き込み,弾道計算をしつつ射撃しなければ弾は当たらない。
 普通のミリタリーFPSを楽しんでいるプレイヤーには驚きかもしれないが,むしろこれが正しい手順であって,実際の銃器の射撃では必ず行われることだ。これをリアルと思うか,面倒と思うかで,本作に対する評価は変わってくるだろう。
 もっとも,せっかく2030年代が舞台なんだから,自動的に補正してくれる照準器があっても良かったんじゃないかなぁと思ったりもするけど。

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 ローカライズは英語音声の日本語字幕となっているが,未翻訳の部分が割と少なくなく,キャンペーンモードで部隊長らしき人物の会話が英文字で書き出されてしまったりする。そのため,筆者はミッションの内容が把握できずに困ったことがある。
 また,航空機がなぜか「空気」となっていたり,意味は分かるがどうなんでしょ,と思う部分もあるので,これについてはぜひパッチなどでなんとかしてほしいと思う。

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 現在もコンテンツの配信が続いているという,正直,製品として完結していない部分のある「ARMA 3」なのだが,エピソード1の配信が行われたキャンペーンモードは,地味ながらも戦争体験という点では他の追随を許さない迫力ある内容になっている。
 マルチプレイもまたユーザー側に完全に任せている状況だが,熱意あるプレイヤーが日々新たなミッションを制作しており,「Steam ワークショップ」により検索や導入も簡単。かなり長期間遊べるのは間違いない。
 万人に勧められるタイトルかと言えば,必ずしもそうではないだろう。至れり尽くせり,誰でも手軽に遊べるというミリタリーFPSの対極に位置する本作だけに,プレイヤーを選んでしまうところは仕方がないが,リアルな戦場を体験したいという人は,今からでも全然遅くないので,ぜひプレイしてほしい。

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「ARMA 3 日本語版」公式サイト

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