パッケージ
Dragon's Dogma
  • カプコン
  • 発売日:2012/05/24
  • 価格:通常版:7990円 / イーカプコン限定版:1万1990円(いずれも税込)
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「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
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印刷2012/03/29 00:00

インタビュー

「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾

 PlayStation Storeで展開されている「ゲームアーカイブス」は,かつてPlayStationで発売されたタイトル群を,PlayStation 3やPSPでプレイできるというダウンロードサービスだ。
 2012年2月23日に,ゲームアーカイブスの配信タイトル数が700本を突破したことを記念して,ゲーム業界を代表するクリエイターの中から7名に“思い出の一本”(と最新作について)を語ってもらおう,というのがこの企画の主旨である。

ゲームアーカイブス700本突破記念インタビュー一覧

○第1弾 北瀬佳範氏 (スクウェア・エニックス)※2月23日掲載
○第2弾 須田剛一氏 (グラスホッパー・マニファクチュア)※3月1日掲載
○第3弾 水口哲也氏 (キューエンタテインメント)※3月8日掲載
○第4弾 馬場英雄氏 (バンダイナムコゲームス)※3月15日掲載
○第5弾 名越稔洋氏 (セガ)※3月22日掲載
○第6弾 小林裕幸氏 (カプコン)※3月29日掲載
○第7弾 小島秀夫氏 (コナミデジタルエンタテインメント)※4月5日掲載予定

「PlayStation Store」公式サイト


 その第6弾となる今回は,「Dragon's Dogma」(2012年5月24日発売予定),「バイオハザード6」(2012年11月22日発売予定),「戦国BASARA」シリーズなどを手がけている,カプコンの小林裕幸氏に話を聞かせてもらった。
 小林氏の選んだ思い出の一本は,1995年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売された「Jumping Flash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」だ。
 本作は,ポリゴンを使った3D空間をジャンプで跳び回るアクションゲームで,超高度へのジャンプや落下する際の浮遊感覚など,独特の爽快感や斬新さで注目された作品だ。小林氏は,本作のどのようなところに注目したのだろうか。

小林裕幸(こばやし ひろゆき):カプコン CS開発統括 副統括 兼 編成部 部長/プロデューサー。1995年カプコン入社。「戦国BASARA」シリーズのプロデューサーとして広く知られ,過去に「デビル メイ クライ」シリーズ,「ディノクライシス」シリーズなどのプロデューサーを歴任。現在は「バイオハザード」シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務めるなど,複数のカプコン看板シリーズの開発を統括している。また,「Dragon's Dogma」のような新規IPの立ち上げにも意欲的に取り組んでいる。
画像集#008のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾

○「Jumping Flash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」とは

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 1995年4月28日に発売された,プレイヤーの分身「ロビット」を操作し,3D空間のステージに配置されたアイテムを集めながらゴールを目指していく,というアクションゲームだ。
 ロビットは3段階のジャンプが可能で,いずれも超高度のジャンプができるほか,ボタンを押している長さによって,ジャンプの高さや滞空時間が大きく変わるのが特徴。また,ジャンプして敵を踏む攻撃では,踏み付け前のジャンプの高さによって攻撃力が変化する。
 ちなみに,本作に登場する“ムームー星人”は,本作の発売以降,PlayStationの広告キャラクターとしても活躍した。

(C)1995 Sony Computer Entertainment Inc.
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ゲームアーカイブス
「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」紹介ページ



ジャンプして空を飛ぶという「Jumping Flash!」の本質は

今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある


4Gamer:
 本日は,よろしくお願いします。
 PlayStation Storeで配信されている「ゲームアーカイブス」の中で,小林さんに挙げていただいた思い出の1本は,1995年4月に発売された「Jumping Flash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」でした。

画像集#010のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
小林氏:
 僕がカプコンに入社したのは1995年4月で,6月に出た初めてのボーナスでPlayStation本体を買ったんです。「Jumping Flash!」は,そのとき本体と一緒に買ったゲームのうちの1本だったので,思い出深いですね。
 実は,今回のお話をいただいたとき,「Jumping Flash!」と「サルゲッチュ」のどちらにするか,悩んだんですよ。「サルゲッチュ」は,サルを網で捕まえたときのアクションが気持ち良くて面白かったんですけど,思い出に残るという意味では,やっぱり「Jumping Flash」が一番なのかなと。

4Gamer:
 それは,「Jumping Flash!」が,ポリゴンによる3Dグラフィックスを駆使した,PlayStationの特徴を生かしたゲームだったからですか?

小林氏:
 そうですね。やはりPlayStationは「3Dのゲームを遊んでみたい」という気持ちにさせられるハードでしたから。
 当時,自分もPlayStationで「バイオハザード」という3Dのゲームを開発していたので,ほかのメーカーではどんな3Dのゲームを作っているんだろうと,クリエイターの目線で見ていました。半分は趣味でしたけど(笑)。

4Gamer:
 小林さんは当時,「Jumping Flash!」や「サルゲッチュ」のほかに,どのようなタイトルをプレイしていたんですか?

小林氏:
 僕自身が好きなジャンルということもあって,アクションゲームが多かったんですけど,「リッジレーサー」をはじめ,PlayStation初期の名だたるタイトルは,一通りプレイしました。

4Gamer:
 その中で,「Jumping Flash!」のどこに惹かれて購入したんですか? ゲーム内容や世界観がカッ飛んでいたこともあって,パッケージを見ても,どんなゲームなのか想像がつかなかった部分もあったと思うのですが。

小林氏:
 事前に雑誌の記事やPV映像などを見ていたので,3Dアクションゲームということはもちろん知っていました。
 確か,「プレプレ」の付録か何かだったと思いますが,体験版をプレイして,すごく面白いアクションだなと思ったのが購入したきっかけです。

※かつて,ソニー・コンピュータエンタテインメントが主催していた会員サービス「プレイステーション・クラブ」の特典として発行されていたCD-ROMマガジン

4Gamer:
 そういえば当時は,発売前のゲーム体験版を,雑誌などの付録に付けるのが流行り始めた時期でしたね。
 実際に「Jumping Flash!」をプレイした印象はどうでしたか?

小林氏:
 コアゲーマー向けというよりは比較的カジュアル系で,当時のPlayStationというハードに合ったタイトル,という印象でしたね。
 空高く跳べるというジャンプの気持ち良さが一番なんですけど,面クリ型でサクサク進めて,ボスバトルも面白く,アクションゲームとしての手ごたえがいい感じでした。けっこうコミカルな世界観も良かったです。

「Jumping Flash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」
画像集#004のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾 画像集#003のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾

4Gamer:
 「Jumping Flash!」を知らない若い人達が今遊んだとして,楽しめると思いますか?

小林氏:
 今のゲームと比べると,グラフィックスでは敵わない部分もあります。ただ,ジャンプして空を飛ぶというこのゲームの本質は,今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがあると思いますから,若い方も一度遊んでいただければと思いますね。……僕が作った作品ではないですけど(笑)。

4Gamer:
 先ほど,小林さんは「Jumping Flash!」が発売された1995年にカプコンに入社したとおっしゃっていましたが,入社してすぐに「バイオハザード」のチームに配属されたんですか?

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小林氏:
 そうですね。プログラマーとして入社して,研修が終わったら――当時はホラーチームと呼ばれていたんですけど――バイオチームに配属されました。もともと3Dのゲームを作りたいという気持ちがあったので,3Dゲームであるバイオチームに入れたのは嬉しかったですね。

4Gamer:
 その後,PlayStationプラットフォームでは,「バイオハザード」シリーズを中心に制作してきたのでしょうか?

小林氏:
 そうですね。「バイオハザード」の1〜3,「ディノクライシス」の1と2などに関わってきました。PlayStationプラットフォームでは「ディノクライシス2」が最後です。
 あと,僕がプロデュースを担当したタイトルだと,「ふしぎ刑事(デカ)」もゲームアーカイブスで配信されているんですよ。
 カプコンのタイトルとしては,ゲームアーカイブスの比較的初期から配信されていて,実は「BIO HAZARD DIRECTOR'S CUT」「DINO CRISIS」に続く3本目なんです。
 個人的には,味があって面白いゲームだと思っているんですが,正直な話,あまりヒットはしなかったので,「なんでバイオとディノの次に『ふしぎ刑事』を選ぶの?」と思うところはありましたけど(笑)。

4Gamer:
 「バイオハザード」や「ディノクライシス」は,どれも100万本を超えるセールスを記録していますよね。
 そう考えると,そういったタイトル群がゲームアーカイブスで配信されているというのは,往年のゲームファンとしては,感慨深いものがあります。

小林氏:
 今回,700本というゲームアーカイブスのタイトル数を見て,PlayStationには名作が多かったんだな,とあらためて思いました。
 中には,今でもシリーズが続いているものもありますし,当時遊んでいなかった人はこれから遊んで,こんなゲームがヒットしていたんだと,振り返っていただく機会が増えると嬉しいですね。それ以外でも,たとえば「ふしぎ刑事」を遊んでもらって,「こんなゲームもあったんだ」といった楽しみ方もあると思いますし(笑)。
 ゲームにはその時代時代の良さがありますし,今後もゲームアーカイブスがより発展していくとありがたいなと思います。

4Gamer:
 ゲームクリエイターとして,過去に自分が関わってきたタイトルが,PlayStation 3やPSPなどで“今この瞬間に遊べる”ということには,どのような想いを持っていますか?

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小林氏:
 たとえば,初代「バイオハザード」はもう15年前のゲームなので,若いユーザーさんからすれば,レトロゲームと呼ばれる部類に入ってしまいます。ただ,作った自分達が言うのもなんですけど,今遊んでも面白い,良くできたゲームなんですよ。
 とくに初代「バイオハザード」は,シリーズの礎となるものですし,最新作の「バイオハザード6」にもつながっていますから,できることならユーザーさんに知ってもらいたいという思いがあります。
 ただ今は,ユーザーさんがPlayStation用ソフトをプレイしたくても難しい状況ですから,そのハードルを下げてくれる,ゲームアーカイブスのような取り組みは,素晴らしいものだと思います。

4Gamer:
 なるほど。一方で,過去の名作が現行ハードで遊べるということは,いわば競争相手が増えると捉えることもできると思うんです。その点については,どのように考えていますか?

小林氏:
 確かに,ユーザーさんがゲームで遊ぶ時間を占有するという意味では,新作も旧作もライバルなのは一緒です。
 新作を作っている立場からすれば,やはり新作のほうを遊んでほしいですが,ユーザーさんが旧作を選んだとしたら,それは「今のゲームが面白くないからじゃないか?」と考えるべきかな,と思います。ですから,過去の名作達に勝てるような新しいゲームをどんどん提供して,お互いにいい形で競っていきたいですね。

4Gamer:
 いい形というのは,過去の作品をきっかけに新作を遊んだり,その逆であったりといったところでしょうか?

小林氏:
 そうですね。そうあってほしいです。
 カプコンでも,最近HDセレクション/コレクションといった形で,過去のタイトルをHD解像度でリメイクしたものをリリースさせていただいていますが,これもゲームアーカイブスと同じような意図があるんです。

4Gamer:
 ちなみに,現行機のグラフィックスで過去の作品を遊びたい,というユーザーからの声は大きいものなんですか?

小林氏:
 数字でいえば,これまでカプコンで出したHDタイトルは売れているという実績がありますから,ニーズはあると思います。
 ただ,「戦国BASARA」で言うと,先日発表させていただいた「戦国BASARA HD Collection」は,「戦国BASARA3」「戦国BASARA3 宴」から入ってきてくれた新しいユーザーさんに,シリーズの原点を知ってほしいというのが狙いなんです。

「戦国BASARA3」
(c)CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
画像集#007のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾

4Gamer:
 新規ファン層に向けたものなんですか。てっきり,シリーズファンに向けてリリースしているものだと思っていました。

小林氏:
 「戦国BASARA」シリーズは,PS2で展開を始めたタイトルですが,「戦国BASARA3」「戦国BASARA3 宴」から入ってきたユーザーさんが,PS2を持っているとは限りません。そのような方々に過去の作品を遊んでもらうには,PS3で動くものを用意するのが一番いいですよね。
 画質もHD化して綺麗にすれば,懐かしさを感じつつ,新鮮な気持ちで遊べるので,過去に遊んでいただいた方も,喜んでもらえると思うんですよ。

4Gamer:
 ただ,やはりファンは新作のリリースを期待していると思うのですが……。

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小林氏:
 もちろん,ファンの方々が最新作を待っているのは理解していますが,開発にはどうしても時間がかかります。後回しにしているわけではなくて,できる限り早く,順番に出していこうというスタンスなので,そこはご理解をいただければと思います。
 あと,僕としては,「戦国BASARA」は何かしらのタイトルを毎年出してきたことで成功してきたと思っているところがあるんです。だから,1年間何もリリースされるものがないと,ファンの皆さんが離れていってしまいそうで怖い,という気持ちもあったんです。
 試行錯誤した結果,「今年は『戦国BASARA』がない」となるよりは,「HDリメイクであっても出したほうがいいんじゃないか」という選択をして,「戦国BASARA HD Collection」を立ち上げたんですよ。

4Gamer:
 確かに,新作の開発には2〜3年かかりますから,ファンに待ってもらうのも一苦労ですよね……。以前,「戦国BASARA3 宴」ディレクターの山本さんにインタビューをさせていただいて,短い期間で新作をリリースするのは,かなり大変なんだと感じました。

小林氏:
 それはもう,大変ですよ(笑)。

4Gamer:
 中でも,武田信玄を入れた時のエピソードを聞いたとき,開発スタッフの方々は,ファンに喜んでもらうための苦労をいとわないんだな,と感じました。プレイヤー武将としての技を用意するだけじゃなくて,風林火山のコンボがあるとか,かなりこだわっていますよね。

小林氏:
 カプコンのスタッフは皆,「ユーザーさんと向き合って,喜んでもらおう」というサービス精神を持っているので,プロデューサーとしてはありがたい限りですね。
 例えば「宴」なら,信玄を入れる前で29人という状態でした。これが30人になればボリューム感が出るし,区切りとしても気持ちいいですよね。
 データでは1人増えるだけなんですけど,数字のマジックといいますか,29人が30人になると何倍ものスケール感に捉えられるので,「もうひとがんばりしてあと1人足そう」となるんです。きっかけは,そういうちょっとしたことなんですよ。
 半面,スタッフの中には,「これだとボリュームが少ないんじゃないか」という,強迫観念的なものがあって,結果的に,いつもすごいボリュームになってしまうんです。プロデューサーとしては,「そこまでがんばらなくていいから,もうちょっとペース配分しようよ」と言いたくなることもあるんですけど(笑)。

4Gamer:
 開発スケジュールを聞いたときは,「時間がない中で,そこまでやるのか!」と思いました。

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小林氏:
 ユーザーさんの要望に応えようという姿勢は当然持っているんですけど,予想を超える何かをやっていこう,入れるなら入れるなりに最低限のことはしていこう,とも考えているんです。
 ユーザーさんの要望を100%叶えることは当然できませんし,要望に応えるだけだと,シリーズとしては,たぶんファンが減っていくと思うんですよ。ですから,期待されていないことかもしれないけど,すごく喜んでもらえるかもしれないネタをこちらから提案していくことで,新たなファンに入ってきてもらえる間口を作っていくんです。

4Gamer:
 なるほど。

小林氏:
 「戦国BASARA3」では,それまでメインだった伊達政宗と真田幸村を一歩下げる展開をして,徳川家康と石田三成の二人を主人公に立てました。結果として,非常に人気の高いキャラクターになりましたし,売上面でもシリーズで一番高いものになったので,新規ユーザーの獲得はできたんじゃないかなと思っています。
 これは「戦国BASARA」シリーズに限った話ではないんです。今はプロデューサーとは違う立場で関わっている作品ですが,「DmC Devil May Cry」など,ほかのタイトルでも同様のチャレンジを続けているんです。

※シリーズキャラクターの人気投票「戦国BASARA 第1回BSR48選抜総選挙」では,石田三成は伊達政宗に次ぐ2位,徳川家康(青年)は8位を獲得している(関連記事)。

4Gamer:
 「DmC」も,ダンテが“天使と悪魔のハーフ”だったり,デザインが大きく変化したりと,大幅な方向転換が図られていますよね。

小林氏:
 「デビル メイ クライ」シリーズで僕が直接担当したのは1と4ですが,「デビル メイ クライ」も,すごく生みの苦労があった作品なんです。
 今でも覚えているんですけど,PS2の「バイオハザード CODE:Veronica 完全版」に「デビル」の体験版を付けたとき,アンケートでは「こんなの作ってる暇があったら,バイオの新作を作れ」というご意見が多かったんです。でも,PlayStation 2でいろいろな新作が出てくる中でチャレンジしていたタイトルなので,やはり諦めたらダメだと思って,それでも頑張って作ったんです。
 そのときのチャレンジがあったからこそ,第1作からもう10年が経った今,「DmC」を作れているということですから,チャレンジを続けてきて良かった,という思いはありますね。


カプコン初のオープンワールドゲーム「Dragon's Dogma」

世界で通用する“共通言語”として王道のファンタジーを


4Gamer:
 チャレンジといえば,小林さんは,「Dragon's Dogma」という新規IPの立ち上げも行っていますよね。せっかくですので,「Dragon's Dogma」の話も聞かせてください。
 新しいIPというだけでなく,オープンワールドタイプのゲームをリリースするのは,カプコンとしては初めてですよね。実際に制作してみて,どうでしたか?

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小林氏:
 オープンワールドですから,画面に見える場所には,今いる場所からシームレスにたどり着けるようなフィールドを実現したいという思いは,当然,最初から持っていました。ただ,オープンワールドだと,使用できるメモリや容量に制限があるので,かなりグラフィックスを犠牲にしないと実現できないだろうと考えていたんです。
 でも,「Dragon's Dogma」のスタッフ達があきらめずにがんばってくれたおかげで,サンドボックス型に近いクオリティの絵で,オープンワールドを実現できました。今は,ほぼ完成形に近い状態ですが,素直にすごいと思えるものになっています。スタッフ皆の粘り勝ちだと思いますね。

4Gamer:
 「Dragon's Dogma」のオープンワールドって,どれくらいの広さがあるんでしょう。

小林氏:
 数字ではお答えできないんですけど,かなり広いです。
 オープンワールドなので当たり前ですが,舞台になる半島の端から端まで移動できます。山あり谷ありと地形も起伏に富んでいますし,ダンジョンのように地下に潜れる場所もあります。
 ちなみに,フィールドにはモンスターのほかに動物もいるので,動物と戯れて遊ぶこともできます。そのほかにも,木になっているリンゴを弓矢で取るような,ストーリー本編には関係ないお遊び要素もたくさん入っているので,寄り道をしようと思ったら,いくらでもできるんですよ。

4Gamer:
 時間の流れもあるんですか?

小林氏:
 もちろん,朝,昼,夕方,夜といった時間の概念もあります。夜なら,街中から人がいなくなりますし,フィールドでは新たなモンスターが出てくることもあります。夜は危険なのでランタンを点けないといけないといった,日常的な生活感も,ゲーム中で再現しています。

4Gamer:
 「Dragon's Dogma」に登場するモンスターは,ハイ・ファンタジーで定番とされている,ほぼそのものの姿で描かれていますよね。ゲームで言うと,作品ごとにアレンジするなり解釈を変えるなりで,オリジナリティを出すのが主流だと思うのですが,なぜ王道を選んだのでしょうか。

小林氏:
 「Dragon's Dogma」は,ファンタジーの世界に入り込んで冒険する,というコンセプトのゲームで,当然ですが海外展開も視野に入れています。ワールドワイドでハイ・ファンタジーを楽しんでもらうにはどうしたらいいか,ということを考えた結果です。
 言葉も文化も違うユーザーさんに遊んでもらうために,直球勝負で挑んだんです。

「Dragon's Dogma」
(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED
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4Gamer:
 「Dragon's Dogma」では,ワールドワイドで通用する“共通言語”にモンスターを利用したと。

小林氏:
 ええ。
 国内外を問わず,ファンタジーを題材にしたゲームはたくさんありますが,モンスターや世界観が個性的なもののほうが多いですよね。
 たとえば,ドラゴンのデザインが一般的に浸透しているイメージとはかけ離れた,エッジの効いたものだったとすると,ユーザーさんに受け入れられなかったら,買ってもらえない可能性もありますよね。
 なので「Dragon's Dogma」では,「ファンタジーならこれだ」と世界中の人達が共通で認識できるモンスターを出すことにしたんです。
 もちろん,オリジナリティがまったくないというわけではなくて,「ポーン」という人間とは異なる種族を作ったり,オリジナルのストーリーを用意したりといった面では,遊びの要素を一から作っています。

4Gamer:
 システム面やストーリーといったところで,カプコンらしさを出していこうということでしょうか。

小林氏:
 そうですね。
 たとえば,ポーンは“異界渡り”と呼ばれる人間とは異なる種族で,自発的な意志や感情を持たないという設定なんです。
 ゲームのシステム的に説明すると,ポーンは主人公の仲間になるサポートキャラクターで,AIで動くNPCです。「Dragon's Dogma」では,4人パーティを組んで冒険にでかけられるので,最大3人のポーンを連れていくことができます。

4Gamer:
 確か,ポーンの種類にも違いがあるんですよね。

画像集#016のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
小林氏:
 ポーンのうち1人はメインポーンと呼ばれ,プレイヤーが姿形を自由にエディットできます。残りの二人はサポートポーンと呼ばれ,これは基本的に,別のプレイヤーのメインポーンを借りる,という考え方なんです。
 PS3/Xbox 360をインターネットにつないでいれば,ほかのプレイヤーのメインポーンを,サポートポーンとして雇うことができます。ポーンは,貸し出した先で冒険をすれば成長するだけでなく,冒険で得た知識を持って帰ってきて,モンスターの弱点や有利な戦法を,プレイヤーに教えてくれるようになるんですよ。
 サポートポーンは,ゲーム内のとある場所で雇うのですが,もともとゲーム内には,何百体ものサポートポーンを用意しているので,オンライン/オフラインどちらでも楽しめます。

4Gamer:
 「Dragon's Dogma」は,“オープンワールドアクション”と謳っていますよね。発表当初から気になっていたのですが,なぜRPGではなくアクションというジャンルにしたんですか?

小林氏:
 本当は,アクションRPGという言い方をしてもいい内容なんですけど,RPGという言葉を使うと,どのようなゲームなのか想像しにくくなるかな,と考えたからなんです。
 RPGって,実は曖昧な言葉で,いろいろな解釈ができますよね。社内でもそうだったんですけど,やはり人によって捉え方が違うので,解釈が幅広くなってしまうんです。

4Gamer:
 そうですね。もともとはテーブルトークRPGから普及した言葉だと思いますが,「D&D」のような,プレイヤーキャラクターが成長する仕組みをコンピュータ上でシステムとして再現した類のゲームが,RPGと呼ばれるゲームの礎のようなものになった気がします。

小林氏:
 「Dragon's Dogma」は,巨大なモンスターにしがみついたり,小さいモンスターを抱え上げたりといった「つかむ」というアクションをはじめ,いろいろと派手な技を出せたりと,アクションがウリの一つであることは事実なので,ジャンルをアクションとしたんですよ。

4Gamer:
 そうだったんですか。

小林氏:
 「Dragon's Dogma」は手触りの良いアクションゲームで,オープンワールドという特徴もあるから「バイオハザード」や「デビル メイ クライ」とは違うんですよ,と伝えることから始めて,そこから「こういうRPGのような要素もあるんです」と説明したほうが分かりやすいですよね。
 RPGの要素については,ユーザーさんに伝えたいことがまだまだたくさんあるので,これから発売日に向けて,どんどん露出していこうと考えています。

4Gamer:
 なるほど。確かにそのほうが伝わりやすそうです。
 ただ,アクションゲームだと,戦士系や魔法使い系といった職業ごとに難易度に差が出たり,そもそもアクションゲームが苦手だと先に進めなかったりする可能性もありますよね。

画像集#012のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
小林氏:
 アクションが苦手でも大丈夫です。「Dragon's Dogma」の戦闘は,実は頭脳戦で勝てるような仕組みになっているんです。たとえば,グリフィンやサイクロプスといった巨大なモンスターでも,しっかりとした戦術を立てて戦えば,3人のポーンに戦わせて,自分は遠くで見物していても勝てるんですよ。

4Gamer:
 それなら,アクションが苦手でも平気そうですね。

小林氏:
 モンスターの弱点や戦術によって,最適なパーティの編成は様変わりするので,どの職業のポーンをパーティに入れるか考えないといけないんですけど,ポーンには職業の違いはもちろん,性別や体格など,個性的なキャラクターがたくさんいます。
 また,インターネットを通じて世界中のプレイヤーからポーンを借りられるので,擬似オンラインゲームのような感覚で,冒険を楽しんでいただければと思います。

4Gamer:
 「Dragon's Dogma」は,ハイ・ファンタジーの王道を突き進んでいるタイトルですが,日本人にも受けると考えていますか?

小林氏:
 「Dragon's Dogma」の場合,洋ゲーだと思われているところがあるので,とくに日本では独自の展開をして,遊んでいただくきっかけ作りが必要だと思っています。
 ですから,日本のアニメ/コミックファンが好きな「ベルセルク」とのコラボであったり,ゲームの中の話ではないですけど,「ロードス島戦記」の水野 良先生に書き下ろしていただいたストーリーを収録した小冊子を,先着特典として用意しました。主題歌をB'zにしたのも,日本の皆さんに喜んでもらうことを考えてのものです。

4Gamer:
 やはり,日本製に見えないゲームだと,そういったプロモーション面での工夫も必要になるんですね……。

小林氏:
 もちろん,ゲームとしての完成度には自信がありますし,ジャンルという意味では,けっこう幅広い層に受け入れられるものになっていると思います。
 キャラクターの成長や武器防具のカスタマイズなど,RPGが好きな人が楽しめる要素もしっかり入っています。また,戦闘も,映画の主人公のように戦える手触り感になっています。ハイ・ファンタジーが好きな方には,本当に冒険している感覚を味わえる世界が広がっていますし,ストーリーもかなりボリュームがあります。
 あとはプロモーションで頑張って,ユーザーの皆さんにどれだけ認知してもらえるかですね。発売後も含めて,今まさにその取り組みを考えているところです。

4Gamer:
 先程,「戦国BASARA」の話でも挙がりましたが,最近のゲームでは,長く遊んでもらうために,ボリューム重視の傾向があると思います。いつまでも遊べるのはユーザーにとってありがたいことですが,メーカーとしては,次に発売されるゲームを買ってもらいたいという気持ちもあると思います。そのあたりのバランス取りは,どのように考えているんですか?

小林氏:
 難しいところですね……。
 タイトルを作っているメンバーは,そのゲームをずっと遊んでもらいたいという気持ちがあると思います。すぐクリアできておしまいというようなームは作らないよう,ボリュームには気を遣っていますから。
 たぶん,過去作が現行ハードで遊べるという話に似ていると思うんですが,どちらかというと,シリーズの過去作品のほうがライバルなんですよ。「前作のほうが面白かった」「前作と比べて,ボリュームが物足りない」とは言われたくないですから。

4Gamer:
 1タイトル1タイトルで,ユーザーが満足できるものを作って,判断は任せるという感じですかね。

小林氏:
 かといって,内容を変えすぎると「これは違う」と言われますし,変えないと「何も新しくない」と言われますし,けっこう難しいんですよね(笑)。
 それでも,ゲームクリエイターが「自分達が作ったゲームを遊んでほしい」と思って,がんばって魅力のあるゲームを作れば,ユーザーさんは,新しいゲームを遊んでくれるんじゃないかなって思います。


シリーズ最多販売本数の「バイオハザード5」を超えるべく

レオン&クリスの初共演や3人目の主人公に挑戦


4Gamer:
 シリーズで前作を超えないといけないという意味では,カプコンでは「バイオハザード6」が最たる例だと思いますが,どのような取り組みをしてきたんですか?

画像集#018のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
小林氏:
 前作の「バイオハザード5」は,ワールドワイドで580万本と,「バイオハザード2」を抜いてシリーズ最多の販売本数を記録しました。「バイオハザード6」を制作することが決まったときに,まずは「5」のどこが受けたのか,一番大きい北米マーケットの調査から始めました。
 ユーザーがいいところ,ダメなところと評価した部分と,僕自身が感じた部分の比較分析をしながら,「5」を超えるために「6」ですべきことを決めていったんです。「5」以上のことをしなきゃいけないのですが,当然「5」にとらわれ過ぎてもダメなので。

4Gamer:
 どのようなところから決めていったのでしょうか?

小林氏:
 今の段階でお話できるところでいうと,まず,シリーズで人気も高く,リクエストも多かったキャラクターのレオンを出すことを決めました。また,「バイオハザード」「バイオハザード5」の主人公のクリスも人気があるので,シリーズ初の共演にしましょうということになったんです。
 ただ,新規のユーザーさんはレオンやクリスのことをよく知らないですし,二人とも年齢的にはいいオッサンです。アニメでも映画でもそうですが,やはりプレイヤーの年齢層に近い若手の主人公がいてこそバランスが取れるものなので,シリーズ初の3人目の主人公として,若手の新キャラを作ったんです。
 さっきの話に当てはめると,レオンやクリスを出すというのがファンの要望に応えることで,3人目の主人公が,僕らとしてのチャレンジですね。

「バイオハザード6」
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画像集#006のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾

4Gamer:
 オッサンといえば,発表会で公開された,レオンのビジュアルに衝撃を受けた人も多かったようですね。

小林氏:
 「バイオハザード6」の舞台は2013年ですが,シリーズの物語が1998年から始まって,リアルな時系列で物語が進んでいるので,レオンが渋くなるのは,しょうがないんですよ。ただ,前例もあるので,あまり心配はしていません。

4Gamer:
 前例ですか?

小林氏:
 「デビル メイ クライ4」のときも,同じようなパターンだったんです。このときは,新しい主人公としてネロというキャラクターを立てて,それまで主人公だったダンテをけっこう渋くして登場させたので,ユーザーさんの反響がどうなるかと心配していたんですけど,ダンテの人気のほうが高かったんですね。人気のキャラは渋くなってもかっこよければ受け入れられるんだ,というのが「デビル メイ クライ4」発売後の結論なんです。

4Gamer:
 ちなみに,「バイオハザード6」で3人目の主人公がどのようにストーリーに関わってくるんでしょうか? さわりだけでもいいのでお聞きしたいのですが……。

画像集#019のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
小林氏:
 「6」はまだ言えないことが多いので,すみませんが,今後の発表を待っていただければと。
 本当は,全部話してしまいたいんですけど,発売まで期間があるならあるなりに,発売日までワクワク感を持続させるシナリオ作りとして,公開する情報を順番に出していく必要があるんです。
 インタビューのときに,きわどいところまで話しちゃうことはありますけどね(笑)。

4Gamer:
 ワクワク感を持続させるシナリオ作り,というのは?

小林氏:
 たとえば,コントローラを持ってゲームをスタートしてからクリアするまで,と考えていただければ,分かりやすいと思います。
 ゲームを始めた瞬間に,すべてのストーリーが分かってしまったら,続ける気力がわかないですよね。また,ワクワクするようなことを出し続けて,テンションが振り切った状態が続くと疲れてしまいますから,時にはあえて休ませることも必要です。
 ゲームの情報を出す場合でも,そういった盛り上がりのメリハリをつけて,常に売るためのストーリーを持って,発売日までワクワク感を作っていきたいんですよ。

4Gamer:
 なるほど。ゲームのシナリオを作るのと似ている部分があるんですね。

小林氏:
 そうですね。ユーザーさんに買ってもらうためのシナリオは,すごく考えないといけません。ゲームを作ることだけに集中できるなら楽なんですけど,昔のように,いいゲームを作ったら皆が買ってくれるという時代はもう終わったので,

4Gamer:
 発売に向けての盛り上がりを作ることも含めて,プロデューサーの仕事も変わってきているんですか?

小林氏:
 変わってきています。今はゲーム以外にも面白いエンターテイメントが数多くあるので,その中で,どうゲームを遊んでもらうかということを考えないといけません。
 PlayStationの時代は,純粋な開発の仕事が中心だったんですけど,プロデューサーとして,販売することにも関わらせてもらいました。そのときと今では,売り方も全然違っていますね。「バイオハザード6」でタイトルの存在と同時に発売日を発表したような展開も,今では求められるわけです。

4Gamer:
 あれは確かに驚かされて,発売日はしっかり記憶に刷り込まれましたね。

小林氏:
 「バイオハザード」シリーズとしても,僕自身が関わったタイトルとしても初めてです。僕の知る限り,カプコンとしても,ほぼ前例はないんじゃないですかね。

4Gamer:
 今回,発売の半年以上前に発売日を発表できたのはなぜですか?

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小林氏:
 「6」の開発は,もう2年半くらいやっているんですけど,すごくいいチームで,安定してプロジェクトが進んでいるんです。スタッフの信頼感,MTフレームワークという開発環境,PlayStation 3とXbox 360という,「5」で十分に経験を積んだプラットフォームなど,いろんな要素が重なって,発売できるという自信につながったので,ディレクターと話をして,腹をくくって発売日を決定してしまおうと。
 でも,なかなか難しいとは思います。僕も今後,全部のタイトルで同じことをやろうとは思いませんし。

4Gamer:
 腹をくくれたというのは分かるんですけど。プレッシャーになりませんか?

小林氏:
 すっきりした気持ちのほうが大きいですね。
 これが,「6」の制作発表だけだと,人に会うたびに「いつ出すの? 今年? 来年?」って聞かれますし,その都度「何もいえないです」みたいな返事をしなきゃいけませんでしたけど,そういうことはもう聞かれませんから(笑)。

4Gamer:
 現在「Dragon's Dogma」と「バイオハザード6」が同時進行で進んでいて,ほかにも「戦国BASARA」シリーズがあってと,小林さんは複数の人気タイトルの陣頭指揮をとっているわけですが,大変ではないですか?

小林氏:
 もちろん大変ではありますけど,「バイオハザード6」ならプロデューサーとして平林がいますし,「Dragons Dogma」や「戦国BASARA」シリーズでも,表には出ていませんが,プロデューサーがいるんですよ。また,優秀なディレクターもいて,彼らがあってこその自分がいるんです。いいチームを預からせてもらっているので,そういう意味では,恵まれていると思っています。
 開発現場上がりの人間としては,ちょっとジレンマというか寂しさを感じているところもありますが。

4Gamer:
 それは,どういう部分ですか?

小林氏:
 以前「戦国BASARA」や「デビル メイ クライ」を担当していたときは,1本に集中できたんです。今はチームの規模が大きいというのもありますが,人に任せないといけないことが多すぎて,自分自身の意見を反映させるのが難しいところがあるので。
 本当はもっと,キャラクターやアートの1枚1枚にまでこだわりたい気持ちはあるんですけど,それをやるとスタッフの皆に迷惑がかかるので,我慢しています。

4Gamer:
 直接関われる制作業務が少なくなってしまったということですね。

小林氏:
 そうですね。今は3タイトルを見ていますけど,それでもスタッフの皆に迷惑をかけていると思っているので,直接関わる本数は減らすことを考えないといけないかなと感じています。
 自分がプロデュースするタイトルに直接関われる部分が少なくなっていますけど,それ以外のタイトルにも,部長としてアドバイスするようにもなってきたので,そういう別の面白さも増えてきていますから。

4Gamer:
 もっといろいろと話をお聞きしたいのですが,残念ながらそろそろ時間も迫ってきたので,最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。

画像集#021のサムネイル/「今のゲームに匹敵するくらいの楽しさがある」。カプコンの小林裕幸氏が語る思い出の一本は「Jumping Flash!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第6弾
小林氏:
 本当にお待たせしました。カプコンが送る完全新作オープンワールドアクションゲーム「Dragon's Dogma」が5月24日に発売されます。アクションが好きな方なら確実に楽しめますし,今までのRPGとは違う切り口ではありますが,RPGが好きな方も楽しめる要素が入っています。今後も情報を発信していきますので,ぜひ注目してください。
 近日中に体験版も配信する予定なので,まずは体験版を遊んでいただければと思います。よろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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