レビュー
これはギャルゲーの皮を被った本格ダンジョンRPGだ。難度とインセンティブのバランスが秀逸な「ToHeart2 ダンジョントラベラーズ」
本作は,先述したように「ToHeart2」のスピンオフ作品である。原作を未プレイでも問題なく楽しめるストーリーにはなっている……が,やはりヒロイン同士の掛け合いや,ストーリー展開を満喫したいなら,ある程度原作の知識はあったほうがいいだろう。原作である「ToHeart2」にはPSP版も存在するので,ダンジョントラベラーズをより深く楽しみたいという人は,ぜひ原作のほうもプレイしてみてほしい。
それではさっそく,本作のめくるめく夢色ファンタジーランドっぷりを本稿にてお伝えしていこう。
製品版にセーブデータが引き継げる
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ファンディスクの一コンテンツが
大きくパワーアップしてPSPで登場
ひと癖もふた癖もある女の子達に囲まれながら,学生生活を送っていた主人公 河野貴明。彼は,トラブルメーカーのまーりゃん先輩により,“ゲーム世界にダイブして遊べる”といううらやま……もとい怪しげなゲームの実験台として選ばれ,ほかの女の子達と共に無理やりゲームをプレイさせられる。ところがプレイ中,ゲームが誤作動を起こし,貴明一行は別世界へワープしてしまった。彼らは戸惑いながらも,元の世界に戻るべく,元凶であるまーりゃん先輩を探すためにダンジョンへと潜るのだった……。
というのが,本作のプロローグとなっている。その後,普通のファンタジーRPG的展開が待っているのかと思いきや,なんとこの世界,出てくるモンスターがほとんど女の子の姿をしているのだ。おまけに味方陣営も,女の子だけが戦う力を得ており,男連中はお飾り主人公だったり,「村人A」になっていたりする。深く考えると混乱しそうだが,ひとまずそんな感じで,女の子VS.女の子というシチュエーションが成立するのだった。
目覚めればそこはタマ姉のボイン……もとい異世界。貴明達の運命やいかに!? |
敵も味方も女の子だらけ,これぞまさしく両手に華? |
さて,ここまで読むと,女の子同士がキャッキャウフフするだけのRPGのように思えるかもしれない。しかし本作は,オーソドックスではあるものの,かなりやり応えのある難度となっている。3DダンジョンRPGといえば,不朽の名作「Wizardry」や,最近ならば「世界樹の迷宮」シリーズなどが有名だろうが,ダンジョントラベラーズもそれら同様,しっかり考えながら戦っていかないと,ザコ敵相手にパーティが壊滅させられることもある。ダンジョントラベラーズの女の子は強いのだ。
パーティメイクの悩ましさはダンジョンRPG中最強か
仲間になる女の子が総勢19人も登場!
味方パーティは,最大5人のメンバーを組み合わせて自由に編成できる。仲間になる女の子の数は19名も存在するので,好きなヒロインでパーティを固めてもいいし,後述するクラスをバランスよく配置してもいい。というか,筆者は仲間が増えるたびに,パーティ編成をどうするかで小一時間は悩んだ。だってどのヒロインも魅力的なんだもの!
そんな,実に悩ましいパーティ編成だが,以下に紹介する3つのシステム,「ミニイベント」「強力スキル」「パーティスキル」を考慮しつつ,最終的なメンバーを決めるのがいいだろう。
まずはミニイベントから解説しよう。ダンジョンを探索中,ある条件を満たしていると,キャラクター同士の会話が発生することがある。条件はさまざまなのだが,原作において仲のいいキャラ同士や,関わりの深いキャラ同士をパーティに編成しておくと発生するものが多い。とくに原作ファンならば,このミニイベントを見るためにパーティ編成を工夫してみるといいだろう。
とはいえ,原作ファンでも気付かないようなキャラの組み合わせや,敵がドロップするアイテムなどが条件になっていることもあるため,結局は試行錯誤するハメになるのだが,そこは愛で乗り切ろう。
本作では,特定のクラスやメンバーがパーティに含まれている場合,戦闘中に一定条件を満たすことで合体技が使える。これが協力スキルだ。敵の能力を探るサポートスキルであったり,強力な一撃を敵にぶちかます攻撃スキルだったりと,基本的に有用なものが多い。条件を満たすのはなかなか大変だったりするが,5人でパーティを組んでいれば,簡単に条件が整うものもあるので,攻略に行き詰まったときには協力スキルを軸にしたパーティ編成を考えてみよう。
上記の2つよりも発動させやすく,安定した効果が期待できるのがパーティスキルだ。発動条件は非常にシンプルで,特定のメンバーでパーティを組んでいるとパッシブスキルが発動するというもの。
一例として,“85以上”というパーティスキルを紹介してみよう。何が85以上かって,そりゃぁバスト85センチ以上ということですよ。つまりボインメンバー4人以上を含めてパーティを編成すれば,“85以上”が発動するというわけだ。
ちなみに,バスト80以下のメンバー4人以上を含めてパーティを編成すれば,もうお分かりだろうが“80以下”というパーティスキルが発動する。……プレイヤーのフェチや欲望がパーティに恩恵をもたらすとは,恐るべしアクアプラス……。
ほかにも,クラスメイトや姉妹といった括りでパーティを編成すると,パーティスキルが発動したりするので,先述した2つのシステムを考慮しつつ,自分だけのパーティを編成しよう。
“見た目が変わる”ことに注目せざるを得ない
充実(?)のクラスチェンジシステム
パーティメンバーがいずれも可愛い女の子ということで,あまり重要視しない人もいるかもしれないが,各キャラのクラスを忘れるわけにはいかない。
ヒロイン達にはそれぞれ,前衛型の「ファイター」,スピード重視の「スカウト」,回復や攻撃魔法を習得できる「マジックユーザー」,そして戦闘力はないがサポート能力に長けた「メイド」という4つのクラスが割り振られている。クラスごとに覚えられるスキルが決まっているのだが,クラスの枠内で,スキルの割り振りはプレイヤーが自由に行える。欲望を抑え,真摯な姿勢でダンジョントラベラーズに取り組みたいなら,これらを考慮した上でパーティバランスを考える必要がある。
各キャラのレベルがある程度上がると,前記した4クラスの上位にあたる2次職にクラスチェンジできる。クラスチェンジのルートは,各クラスごとに2〜3タイプが用意されており,どの2次職にクラスチェンジするかによって,パーティ編成や戦い方が変化する。
本作の戦闘バランスは,キャラクターの見かけによらず相当シビアなので,前衛だらけのパーティや,サポートキャラのみのパーティなどを編成してしまうとアッサリ“詰む”ことになるだろう。好みのキャラを選びつつ,攻略に要求されるパーティバランスを維持するのは,本作ならではの楽しみ方と言えるかもしれない。
なお,レベルリセットをすることで,クラスをレベル1からやり直すことができるので,スキルの振り方を直したり,別の2次職を試してみたいときにはこのシステムを活用してほしい。また,クラスチェンジすると衣装も変わり,より華やかな見た目になったり,とんでもなくセクシーな衣装になったりする。……こういう誘惑がところどころにあるから,ダンジョントラベラーズのパーティ編成は違う意味でも難しいのである。
“行動順”と“行動の妨害”が鍵を握る
オーソドックスながらも歯応えのあるバトル
捕獲と聞いて,よからぬことを妄想した諸兄もいるかもしれないが,このゲームは一般向けの健全なゲーム,正直残念ではあるが,捕獲しても特別なことはできないので,変な期待はしないように。とはいえ,捕獲の条件が“敵を弱らせる”ことなので,散々いたぶったあげくに手篭めにしている……と考えると胸が熱くなる。
ちなみにモンスターを捕獲すると,ステータスや弱点(!)を閲覧できるようなるほか,使い勝手のいいアクセサリーとして装備できるようになるので,収集のモチベーションもさらに上がるというもの。なおボスモンスターは捕獲できないが,討伐すれば肌色が多めのCGが閲覧できる。序盤のボスは敵に操られたヒロインが多いので,お馴染みのヒロイン達のCGもバッチリ楽しめるという寸法だ。
戦闘システムは,キャラクターの素早さや装備した武器の速度を基準に,敵味方が速い者順に行動していくコマンドバトルとなっている。素早いキャラに軽い武器を持たせればドンドン順番が回ってくるが,威力のある重い武器を持たせると,なかなかターンが回ってこずにヤキモキさせられるわけだ。
加えて,魔法には“詠唱時間”があり,詠唱中はずっと無防備になるというデメリットがある。そして,敵から大きいダメージを受けると,一定確率で(クリティカル攻撃の場合はダメージに関わらず固定確率で)妨害され,詠唱や効果が途切れてしまう。また、歌やダンスといった強力なサポートスキルは,効果中は同様に効果を妨害される可能性がある。詠唱時間のほうは素早さや装備で多少補えるが,これら強力なスキルを妨害されると厄介なので,敵の行動タイミングを計りながら行動する必要がある。
しかし,同様のルールは敵にも適用されているので,強力な魔法攻撃をしてくるボスとの対戦時には,詠唱妨害要員をパーティに入れておくなど,戦術的な編成が欠かせない。ちなみに,画面右端には行動順が表示され,どのタイミングで魔法が発動するかも分かるようになっている。加えてRボタンを押せば,敵を“チェック”することができ,現在かかっているバフやデバフ,詠唱時間やダンス中などのステータス状態が手軽に見られるので,手強い敵との戦闘時には,そういった情報をフル活用しつつ戦術を組み立てたい。なお,物理スキルなどは即時発動となるため,妨害されることはない(そして敵の妨害もできない)。
ファンディスクとダンジョンRPGの華麗な融合
新たなファンを生むことになりそうな注目作
筆者自身は当初,ダンジョントラベラーズを「イラストの閲覧がメインのライトなRPG」だと思ってプレイしたのだが,実際に遊んでみて,その期待はいい意味で裏切られた。本作はまさに,「ギャルゲーの皮を被った本格RPG」といったところ。パーティ編成やキャラクタービルドが攻略に直結しているゲームデザインや,歯ごたえ満点の戦闘システムは,女の子達の肌色多めのグラフィックスを見るための“取って付けたおまけ”では決してないのだ。
もちろん,RPG部分を除いて考えてみても,「ToHeart2」のファンディスクとして申し分のない内容に仕上がっており,各ヒロインのイベントやイラストもしっかり網羅されているので,一粒で二度美味しいとしか言いようがない。原作ファンは言わずもがなだが,女の子のことが嫌いではない3DダンジョンRPGファンにも,声を大にしてオススメできる一本だ。
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- 関連タイトル:
ToHeart2 ダンジョントラベラーズ
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