インタビュー
ボールは友達!――「ニコニコアプリ」でついにサービスインした「キャプテン翼 つくろうドリームチーム」開発者インタビュー
本作は,キャプテン翼をモチーフにしたオンライン対戦カードゲーム。プレイヤーは,サッカーチームのプレイヤー兼監督として,選手を集めて彼らを育成し,最強のサッカーチームを目指していくことになる。
キャプテン翼をテーマにしたゲームというと,古いゲーマーなら,ファミコンで発売された「キャプテン翼」を連想するかもしれないが,本作は,そんな旧作の雰囲気を残しつつも,近年のオンラインゲームらしさを内包させた作品に仕上がっている。
「キャプテン翼 つくろうドリームチーム」公式ページ
今回4Gamerでは,ニコニコアプリの運営を手がけているドワンゴの西本直樹氏と,キャプテン翼の開発元であるKLabの藤好 俊氏,安原智巳氏らに話を聞く機会を得た。
どういった経緯でこのプロジェクトがスタートしたのか,なぜ今ここで,キャプテン翼という題材をもってきたのか。開発時のエピソードや本作の狙い,そしてニコニコアプリそのものについてなど,さまざまな話が聞けたので,早速お伝えしていこう。
株式会社ドワンゴ ニコニコ事業本部 第5セクション セクションマネージャ 西本直樹氏 |
KLab株式会社 KLabGames部 制作統括グループ クリエイティブディレクター 藤好 俊氏 |
KLab株式会社 KLabGames部 バナナスタジオ プランナー 安原智巳氏 |
「キャプテン翼」をニコニコで展開する意味
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。
まずは「キャプテン翼 つくろうドリームチーム」のプロジェクトがスタートした経緯についてお聞かせください。
西本直樹氏(以下,西本氏):
そこで,KLabさんに「コンテンツを提供頂けませんか?」という話をしたら,「ニコニコ動画でぜひやりたい企画があります!」って即答していただいて。それが今回のキャプテン翼だったんですよ。
僕は,ファミコンで出ていた「キャプテン翼」にすごく燃えた世代なので,「ぜひ!」という話になりました。その後は,集英社さんとも話をさせていただきながら,割とトントン拍子で。
4Gamer:
ニコニコ動画でキャプテン翼をやりたいというのは,どういった狙いからでしょうか?
藤好 俊氏(以下,藤好氏):
本作は,いわゆるブラウザ/ソーシャルゲームに属する作品になると思うのですが,ソーシャルゲームでは,スポーツゲームでそれほど大きな成功を収めているタイトルがないなと感じていまして,逆にそこにはチャンスがあると考えていました。
で,スポーツゲームで成功するにはどうすればいいのかを考えていくなかで,「キャプテン翼」という名前は,以前から社内で話にはあがっていたんです。
4Gamer:
ターゲットとするプレイヤー層は,やはり年齢層も高めですか?
藤好氏:
想定する年齢層は若干上を見ていて,25〜35歳ぐらいを狙っています。
西本氏:
対象年齢層がニコニコ動画のユーザー層とマッチしているし,社内でもキャプテン翼ファンが多いので非常に盛り上がりましたよ。
KLabさんの方が凄く熱心に「ぜひやらせてください」と集英社さんを説得してくれまして,集英社の担当者の方も,その熱意を感じて「そこまで思ってくれる人がいるなら,ぜひやりたいですね」となったんです。
藤好氏:
私自身がファンだというのもあるんですが,かなりの意気込みでやらせていただきました。現場のスタッフもプレッシャーを感じながら作業していますし,やるからには今までのキャプテン翼ファンを納得させられるものに仕上げたいと。
西本氏:
キャプテン翼は,連載が始まって今年で30周年という節目の年なんです。だから,失敗は許されないと思っています。そんな心持ちで取り組んでいるプロジェクトなんです。
ファミコン版をリスペクト。しかし,ゲームの中身はあくまでオリジナル
4Gamer:
では,ゲームの中身について聞いていきたいと思います。
ゲームの内容を拝見させて頂きましたが,その……,我々としては「ファミコン版に似てる」と突っ込まざるを得ないのですが,その辺りにはついてはどうお考えなのでしょう。
そこは……,やはり“キャプテン翼のゲーム”となると,そうならざるを得ないと言いますか。
藤好氏:
ゲームを制作するとき,一番印象に残ったものを並べていくという形を取ったんですよ。「ターゲットが30代のファミコン世代」「キャプテン翼のゲームですよ」と提示したとき,メタファーで強いのはファミコン版のキャプテン翼ですよね。
で,例えばサウンドノベルや「ときめきメモリアル」がヒットした後に,同じスタイルのギャルゲーが出ても,システムは同じですよね。でもそれは普通のことというか,それ自体に変な違和感はないと思います。
しかし,同様のことをキャプテン翼でやると,やたら目立つんですよ(笑)。当時から非常に独自性が高かったし,それだけキャプテン翼というテーマとシステムがマッチしていた証明でもあるのだと思いますが。
4Gamer:
ただ,各種カットシーン描写こそ“それっぽい”ですけど,全体的なゲームシステムそのものは,まったくの別物ですよね。
藤好氏:
はい。ゲームの中身自体は完全に新規で作ったもので,あくまでも“試合のテイスト”が似ているという感じですね。ただ,それはキャプテン翼という作品それ自体の魅力であったり,オリジナリティでもあって。あのカットシーンが入った瞬間に「ああ,キャプテン翼だ!」となるんじゃないかなと。
4Gamer:
正直なところ,いわゆる多人数型のオンラインゲームを作るうえで「キャプテン翼」という題材は,ちょっと意表を突かれたんですよね。いや,こう提示されてみると「確かにニコニコ動画で展開するのは面白いな」と思うのですが。
キャプテン翼って,漫画やアニメもそうですけど,ゲームにも不思議な魅力がありますよね。ニコニコ動画でも関連した動画が沢山あったり,ネットでも話題や引用元になったりとか。その意味でも,ニコニコ動画とは相性がいいな,と思っていました。
安原氏:
社内でも,どういうゲーム内容にすべきかについて,いろいろな議論はありました。ただ,「キャプテン翼の皮を被った普通のサッカーゲーム」というのは,やはり違うだろうと。“キャプテン翼らしさ”っていうのを追い求めると,どうしてもああいうカットシーンは必要だろうという話になったんです。
4Gamer:
今作では,シナリオモードも用意されているみたいですが,ストーリーや舞台設定はどうなってるんですか?
藤好氏:
シナリオモードは,あくまでゲームを理解するためのチュートリアルとして考えていて,いわゆるオリジナルのシナリオが用意されたりというものではありません。本作は,対戦がメインのゲームになるので,それがより活発になるようアシストするのが目的の要素ですね。
4Gamer:
シナリオモードはあくまでチュートリアルで,「それを終えたら対戦を楽しんでね」と。
藤好氏:
はい。シナリオを進めて行くと,選手カードなどを手に入れる(相手チームから選手を引き抜ける)ことができるので,最初はシナリオモードでゲームのルールを覚えながら,カードを集めてもらえればと思っています。
用意されるカードは400枚以上。自分だけの“ドリームチーム”を楽しんでほしい
4Gamer:
対戦プレイがメインとのことですが,いわゆるマッチングシステムなどは,どういう仕組みになっているのでしょうか?
基本的には,非同期でマッチメイクされて試合を開始します。対戦をされた側は結果を後で確認する形ですね。具体的には,試合を挑む側は試合を実際にリアルタイムで指示を出してプレイして,挑まれた側は,自動的にほかのプレイヤーのマッチング対象となっていて,次回ログインした際に「試合が終わりました」と通知されます。
4Gamer:
同期的な遊び方はできるんですか?
藤好氏:
今後,同じ動画を見ている人同士で,「今対戦できる?」「いいよ」というように,すぐにリアルタイムで対戦を始められるようにしたいとは考えています。
現時点でこの機能を実装していないのは,ニコニコアプリの初動のユーザーさんの動き方が分かるまでは,控えようかなと。
西本氏:
ニコニコアプリ自体が新しい試みなので,大きなタイトルが出て,プレイヤーさんがわーっと来たときどうなるかというのは,本当に未知数ですからね。もちろん,その辺りの対策はしてあるんですが,ニコニコ動画では,ユーザーさんの盛り上がりが想像を超えることが多々ありますからね(笑)。
4Gamer:
ちなみに選手カードは,サービス開始の時点でどれくらい用意されているのでしょうか?
藤好氏:
原作の「ジュニアユース編」までに出てくるキャラクターで,名前のついている選手はひと通り揃えてあります。選手毎にレアリティの違うカードが複数枚用意される形で,総数でいうと400〜500枚ぐらいですね
安原氏:
例えば,同じ日向でも「ネオタイガーショットを撃てる日向はレア」みたいな形です。
4Gamer:
選手カードはかなりの枚数ですが,所持数に上限などはありますか?
藤好氏:
持てる上限は50枚で,そのうち16枚が補欠まで含めたチームメンバーということになります。で,一度入手したカードは図鑑に登録されます。上限が近づいてきた場合は,「合成してください」とメッセージが出ますので,不要なカードを強化したい選手の糧にして消費してもらえばと思います。
カードの合成は,ゲーム中では「特訓」と呼んでいて,例えば日向が翼を相手に特訓したとすると,日向の能力がアップする代わりに翼のカードが消えるという形です。
4Gamer:
ちなみに選手のイラストってのは,原作から引用されていたりするのでしょうか?
藤好氏:
基本的には,原作を参考にしてイラストに起こして,それを原作者である高橋先生に監修してもらっています。もちろん,漫画のコマから持ってくることも多々ありますね。
4Gamer:
カードの入手方法はどういったものがありますか?
藤好氏:
先ほど話したように,シングルモードで相手チームから引き抜くというのと,ガチャガチャ,あとは,トレードなどですね。
4Gamer:
ガチャガチャというのは,ゲーム内通貨でも買えるものですか?
藤好氏:
はい。ゲーム内通貨で買えるもの,課金専用のものがあります。あとはチームごとにも用意されていて,南葛中学校をコンプリートしたら,南葛中学校のシークレットカードが手に入るといった仕掛けがあります。
4Gamer:
必殺技を強化するなどの要素はありますか?
藤好氏:
必殺技を強化するというよりは,選手自体にレベルがあるので,それぞれレベルを上げていくという形になりますね。
4Gamer:
選手の配置ですが,たとえば翼ならミッドフィルダーにしたり,フォワードにしたりと自由にできるのでしょうか?
自由に配置することは可能です。ただし,選手ごとに得意なポジション,不得意なポジションがあるので,不得意なところでは試合中のパラメータが下がってしまいます。一番いいところに配置して,チームの総合力を上げるのがいいと思います。
4Gamer:
同じ選手でもフォワードカード,ミッドフィルダーカードと分かれていることもあったりしますか?
安原氏:
ありますね。たとえば翼や三杉は得意なポジションが多いですし,松山もミッドフィールダー/ディフェンダーで利用できます。
藤好氏:
レベルが上がっていくと,使えるフォーメーションが増えていきます。たとえば「4-3-3」ならフォワードが3人いないと能力の低下が起きたりします。
4Gamer:
エディットの機能も気になりますが,そこはどうでしょうか?
藤好氏:
将来的にはユーザーがより細かい部分のエディットをできるようにしたいですね。カスタマイズ範囲はユニフォーム,チームロゴ,オリジナル選手エディット,これができれば,ニコニコ動画のユーザー層によりマッチしたものになるのではないかと思っています。
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キャプテン翼 〜つくろうドリームチーム〜
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