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「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか
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印刷2011/11/14 17:00

レビュー

LGA2011のハイエンドデスクトップPC環境は誰のためのものか

Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz
Core i7-3930K/3.2GHz

Text by 宮崎真一


画像集#002のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか
 別途お伝えしているとおり,Intelは2011年11月14日17:00,ハイエンドデスクトップPC向けCPUの新製品となるCore i7-3000番台を発表した。開発コードネーム「Sandy Bridge-E」と呼ばれてきた製品シリーズだ。
 サーバー&ワークステーション向けCPUとコアを共用するハイエンド環境が刷新されるのは2008年11月に発表されたCore i7-900番台以来であり,首を長くして待っていたという読者も少なくないだろう。

 4Gamerでは,発表時点のラインナップである「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」(以下,i7-3960X)と「Core i7-3930K/3.2GHz」(以下,i7-3930K),そして両CPUに対応するIntel製マザーボード「DX79SI」を入手できたので,Sandy Bridge世代のハイエンドプラットフォームがゲーマーにとって魅力的な製品といえるのかどうかをテストから明らかにしてみたい。

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i7-3960Xの性能評価用エンジニアリングサンプル。製品名を示す刻印はないが,「QBE7 ES 3.30GHZ」とあり,3.3GHz動作のプロセッサだと分かる。なお,1000個ロット時の単価は7万6860円
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同じく性能評価用エンジニアリングサンプルとなるi7-3930K。「QB7C ES 3.20GHZ」の刻印がある。底面のキャパシタ配置はi7-3960Xと同じだった。1000個ロット時の単価は4万3090円

Core i7-3000番台解説記事



Turbo Boost 2.0で最大3.9GHz動作

4chメモリアクセス対応も大きな特徴


Socket Rと呼ばれるLGA2011対応ソケット
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 まずは,両製品の特徴を整理しておこう。製品概要は本間 文氏が紹介しているので,そちらもぜひ確認してほしいと思うが,CPUパッケージはLGA2011。対応ソケットは「Socket R」と呼ばれるもので,CPUの取り付け方法には若干の変更が入っている。
 当然のことながら従来のLGA1366やLGA1155との互換性はない。

4Gamerで入手した「Core i7-990X Extreme Edition/3.46GHz」の性能評価用エンジニアリングサンプル(いずれの写真でも右)と並べてみたところ。LGA1366と比べてLGA2011は一回り大きい
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LGA2011版CPUの取り付け手順。ソケット側に2本用意されたストッパーレバーを順に外す(※片方を外さないともう片方は外れない)のと,固定するときは逆順でレバーを下ろしていくのに気を付ければ,あとは従来のLGAパッケージ用CPUソケットと同じだ。ソケット側のピンが多いので,曲げたりしてしまわないよう気を付けたい
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CPUとセットで入手した「Siler」(開発コードネーム)ことDX79SI。CPUと同じく,性能評価用エンジニアリングサンプルだ。8層基板設計になっているという。i7-3960Xとi7-3930Kでは(動作するかどうは別として)65倍までのTurbo Boost 2.0倍率設定が可能だった
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 2製品はいずれも6コア12スレッド仕様のCPUで,定格クロックはi7-3960Xが3.3GHz,i7-3930Kが3.2GHz。Sandy BridgeコアのCore iプロセッサで初めて採用された「Intel Turbo Boost Technology 2.0」(以下,Turbo Boost 2.0)により,いずれも130WというTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)の枠内で,負荷に応じ,クロックは動的に引き上げられる。筆者が確認したところだと,i7-3960Xの場合,負荷が2コアまでにかかる状況では3.9GHz,4コアまでは3.7GHz,5〜6コアだと3.6GHzへと自動的にクロックアップがなされ,i7-3930Kの場合は2コアまでで3.8GHz,3コアまでで3.7GHz,4コアまでで3.6GHz,5〜6コアで3.5GHzといった具合である。
 ……「X」「K」の文字からも想像できるとおり,両製品は倍率ロックフリーのCPUなので,自己責任を覚悟すれば,この倍率設定は変更可能だが。

「CPU-Z」(Version 1.58)実行結果。上段がi7-3960X,下段がi7-3630Kのものだ。Vcoreなど,一部読めていない部分はあるものの,最低クロックが1.2GHzまで落ちることと,Turbo Boost 2.0によって定格以上のクロックに達することは分かる
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Sandy Bride-Eとコアを共用するサーバー&ワークステーション向けCPU「Sandy Bridge-EP」のブロック図より。2方向のリングバスが用意される
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DX79SIでは青色スロットがプライマリとなる
 L1&L2キャッシュ周りの構成はSandy BridgeコアのCore iプロセッサと同じ。ただ,L3キャッシュはi7-3960Xでコアあたり2.5MBの計15MB,i7-3930Kではコアあたり2MBの計12MBと,Sandy Bridgeコアの最大8MBから大きく増やされている。また,Sandy BridgeコアだとL3キャッシュは1方向のリングバスで共有されていたのに対し,Sandy Bridge-Eの場合,“内回りと外回り”2方向のリングバスで共有されているのも見逃せないところだ。

 メモリコントローラは,両製品ともクアッドチャネル(4ch)のDDR3-1600で,1.35Vと駆動電圧の低いDDR3L-1600によるクアッドチャネルアクセスもサポート。今回入手したDX79SIは8本のDIMMスロットを搭載しているが,DDR3-1600設定時にDual Rank(≒両面実装)メモリモジュール4枚までのサポートとなるため,たとえば8GBモジュールなど,大容量の両面実装モジュールを搭載しようとする場合は,4枚までが公式サポートとなる。

 そんな両製品の主なスペックを,今回の比較対象となる「Core i7-2600K/3.4GHz」(以下,i7-2600K)および「Core i7-990X Extreme Edition/3.46GHz」(以下,i7-990X)と比較したものが表1だ。

※1 統合型グラフィックス機能のL2キャッシュとしても機能するため,L3ではなく「LLC」(Last Level Cache)と呼ばれる
※2 Intel X58 ExpressのIOHによる
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オーバークロック設定時は

「TDPの枠」変更が重要に


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Socket Rのリテンションは特殊で,従来型CPUクーラー,少なくともプッシュピンで固定するタイプのクーラーとの互換性が失われている
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別売りとなる簡易液冷クーラー,RTS2011LC。ファン回転数は800〜2200rpmの間でPWM制御される。総重量は820g
 テストの前に,後述テスト環境で,簡単ながらi7-3960Xのオーバークロックを試してみよう。
 別記事でお伝えしているとおり,Core i7-3000番台にはCPUクーラーが付属しないため,ユーザーは別途,LGA2011用クーラーを用意する必要がある。LGA2011はリテンションが変わっているため,LGA1366やLGA1155用クーラーを(少なくともそのままでは)利用できない点は注意しておいてほしい。

 というわけで,今回用意したのは,Intelから発売予定となっている簡易液冷クーラー「RTS2011LC」だ。外観からして,AMDの「FX-8150/3.6GHz」初回限定版に付属するとして物議を醸したクーラーとほぼ同一の仕様ではないかと思われるが,こちらはLGA2011・1366・1155&1156対応となっている。また,ラジエータに取り付けられるファンも,FX-8150の限定版だと2基付属していたが,RTS2011LCの場合は1基のみの付属となっている。

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RTS2011LCの“枕”部分。ポンプを内蔵し,ヒートスプレッダとの接触部には銅板が採用されるというのは,簡易液冷ユニットによくある仕様だ。Asetekの技術を用いたものであることがポンプ部の記述から分かる
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120mm各ファン×1を取り付けられるラジエータ部と,取り付け金具。金具の部品点数は少なくないので,先にマザーボードへ組み付け,その後,マザーボードといっしょにPCケースへ組み込むのが正解ではなかろうか

 さて,オーバークロックはBIOS――正確にはUEFIだが,便宜上,BIOSとして話を進める――から,Turbo Boost 2.0の倍率を変更する方法で実施した。
 DX79SIの場合,上限値は65倍だったため,試しに全コア45倍に設定してみたところ,CPUコア電圧をデフォルトから1.4Vへに高める必要があったものの難なく動作。しかし,ストレスツールの「OCCT」(Version 4.0.0)から100%の負荷をかけて,その間の動作クロックを見てみると,瞬間的に4.5GHzへ上がることはあったが,ほとんどの場合,3.6GHz付近で推移してしまう。要するに,ただTurbo Boost 2.0の倍率設定を上げただけでは,TDPの上限にすぐ引っかかるというわけである。

Turbo BoostのメニューにTDC Current Limit OverrideとBusrt Mode Power Limitが用意されている。今回は最終的に前者を200,後者を300へ引き上げた
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 そのため,オーバークロック設定にあたってはTDPの枠を引き上げてやらねばならないが,DX79SIの場合,当該項目は,電流の上限値を設定する「TDC Current Limit Override」と,電力の上限値を設定する「Busrt Mode Power Limit」の2つとして用意されている。
 最初,前者をデフォルトの135から150へ,後者を156から200へ上げてみても,4.5GHzへ達する時間にあまり大きな変化はなかったので,今回は前者を200,後者を300へと思い切って上げてみたところ,全コアが4.5GHzで張り付くことを確認できた。ちなみにこの状態でOCCTを6時間実行し続けても問題は生じなかったので,安定動作したと言ってしまっていいように思う。

※注意
CPUのオーバークロック動作は,CPUやマザーボードメーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,CPUやメモリモジュール,マザーボードなど構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。


i7-2600Kやi7-990Xと比較

基礎検証やBF3のテストも実施


 というわけで,先ほど後述するとしたテスト環境だが,具体的には表2のとおりだ。前述のとおり,比較対象としてはi7-2600K,i7-990Xを用意している。本来ならSandy Bridgeコアの現行最上位モデルたる「Core i7-2700K/3.5GHz」を用意したかったのだが,調達の都合上,よりユーザーの多いi7-2600Kを用いることになった点はお断りしておきたい。

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SMD-16G68CP-16KL-Q-BK
Micronチップ搭載のDDR3L-1600対応モジュール4枚セット
メーカー:サンマックス・テクノロジーズ
問い合わせ先:パソコンショップ・アーク
パソコンショップ・アーク販売価格:1万1980円(※2011年11月14日現在)
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X79 PCH(のエンジニアリングサンプル)
 LGA2011版Core i7のテストにあたっては,4chのメモリコントローラに対応すべく,4枚セットのメモリモジュールを用意するのが得策だが,今回は秋葉原のPC&PCパーツショップであるパソコンショップ アークの協力により,サンマックス・テクノロジーズ製のPC3-12800モジュール4枚キット「SMD-16G68CP-16KL-Q-BK」を用意できたので,これを用いることとする。本セットは,Micron Technology製のメモリチップを両面実装し,1.5V駆動のDDR3-1600だけでなく,より低電圧な1.35V動作となるDDR3L-1600に対応するのも特徴だ。
 DX79SIに差したところ,デフォルトでは1.5V動作となったので,今回のテストは1.5V駆動で行っているが,試しに1.35Vへ設定したところ,とくに問題なくWindowsが立ち上がったことは付記しておきたい。

 さて,DX79SIの話が出たので軽く紹介しておくと,本製品はもちろんX79チップセット搭載のマザーボードだ。PCI Express(以下,PCIe)x16スロットは3本搭載しており,そのレーン数はCPUに近いほうから16+16+8。2/3-way SLI&CrossFireXに対応しており,製品には2-wayならびに3-way SLI用のブリッジコネクタも付属している。

拡張スロット構成は写真左からPCIe x16,PCIe x1,PCIe x16,PCI,PCIe x16,PCIe x1の計6本(左)。PCIe x16は左から2本がいずれも16レーン,右端が8レーン動作だ。基板上にはPericom Semiconductor製のPCIe 3.0信号スイッチ「PI3PCIE3415」も搭載されているのが分かる(右)
画像集#031のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか 画像集#032のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか
DX79SIには2-wayおよび3-way用のSLIブリッジコネクタが付属する(左)。メインの電源部は,ヒートスプレッダを外して見る限り8フェーズ構成(中央)。ルネサス エレクトロニクス製のDriver-MOSFET「R2J20657BNP」を搭載している。右はDX79SIの背面だ
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Serial ATAポートは6Gbps×2,3Gbps×4。「SATA 6-9」と書かれた空きパターンも見えるが,基本的にはIntel 6シリーズと同じ構成だ
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2系統の1000BASE-T LANは,PCH側の論理層に対応する物理層と,PCIe x1接続のIntel製コントローラ「82574L」によってもたらされる
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USB 3.0コントローラはルネサス エレクトロニクス製の「μPD720200A」(D720200AF1)。おなじみの定番製品である

 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション11.1準拠だが,今回は試験的に,「バトルフィールド 3」でのテストも行うこととした。テストは,米田 聡氏によるGPU検証記事から,比較的負荷の低い「GOING HUNTING」シークエンスを利用。このとき,GPUがスコアをできるだけ左右しないよう,2つのアンチエイリアシングはいずれも無効化し,さらに異方性フィルタリングは1xに落とした「特別設定」とする。
 また,ゲームベンチマークに先立って,「Sandra 2011」(SP5 Version 17.80)による基礎検証も行いたい。

 なお,先ほどi7-3960Xは4.5GHzへのオーバークロックに成功しているが,本条件で取得したデータはi7-3960X@4.5GHzのスコアとして,定格動作時と区別するので,この点もご注意を。


コア間の帯域幅は増えたがレイテンシも増大

L2&L3キャッシュは順当に進化


 というわけで,まずはSandra 2011のテスト結果から見ていこう。
 グラフ1は,コア間の帯域幅を見る「Inter-Core Bandwidth」のスコアをまとめたものである。ここでは6コア同士,i7-3960Xとi7-3930K,そしてi7-990Xのスコア差に注目してほしいが,i7-990Xと比べると,i7-3960Xでは45%,i7-3930Kでは36%と,大幅な向上が見られる。コア間の帯域幅には共有キャッシュメモリの性能がモノを言うケースが多いだけに,Sandy Bridge-Eコアの双方向リングバスが効果を示した気配だ。

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 一方,グラフ2の「Inter-Core Latency」からは,コア間のデータ転送におけるレイテンシが増大していることも見て取れる。やはりi7-990Xと比較すると,i7-3960Xで約14%,i7-3930Kで約19%と,帯域幅向上分の対価は払わされている印象だ。
 もっとも,i7-3960X@4.5GHzだと,i7-2600Kに迫るほどにまでレイテンシを短縮できており,動作クロックの引き上げによってレイテンシの大きさは補えることも見て取れる。

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 続いてグラフ3は,メモリ周り全般の帯域幅を見る「Memory Bandwidth」の結果だが,ここではクアッドチャネルメモリアクセスの威力が遺憾なく発揮されている。Core i7-3000番台はi7-2600Kおよびi7-990Xに対してダブルスコア以上と,その効果は絶大だ。

画像集#043のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか

 グラフ4,データブロックサイズごとにメモリバス帯域幅を見る「Cache and Memory」だと,L2キャッシュに収まる256KBまでの範囲,そして,L3キャッシュに収まる16MBまでの範囲で,いずれもCore i7-3000番台がi7-990Xよりも高速化されていることが分かる(※16MBまでの範囲でi7-3930Kのスコアが上位モデルよりも若干落ちるのは,L3キャッシュ容量が12MBに留まるためだ)。
 L2,L3キャッシュのいずれも,i7-990Xから高速化されていると言っていいだろう。

※グラフ画像をクリックすると,スコアの詳細をまとめた表3を別ウインドウで開きます
画像集#044のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか

 基礎検証の最後は,グラフ5に示した「Memory Latency」。ブロックサイズごとのメモリレイテンシを見ていくわけだが,ここではどういうわけか,16MB以上で,異様にレイテンシが大きいという結果になった。同じ16MBでi7-3960Xはi7-990Xより良好なスコアを示しているだけに,i7-3930Kでこういう結果になるのは解せないのだが,何度計測し直しても傾向に変化がなかったことからすると,何かしらの差別化がなされているのかもしれない。

※グラフ画像をクリックすると,スコアの詳細をまとめた表4を別ウインドウで開きます
画像集#045のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか

 総じて見ると,Core i7-3000番台では,コア間やメモリ周りの帯域幅が大幅に向上している。同時に,帯域幅の引き上げには付きもののレイテンシの増大もあるが,それはユーザー側で動作クロックを引き上げれば対策も可能,といったところになる。i7-3630Kのメモリレイテンシは不可解だが,i7-3960Xに関していえば,L2・L3キャッシュとも,i7-990Xから順当に進化していると言えそうだ。


ゲーム性能は確実に向上しているが

オーバースペックな場面も少なくない


 というわけで本題,ゲーム性能の検証である。
 グラフ6は,「3DMark 11」(Version 1.0.2)における「Entry」「Performance」「Extreme」各プリセットのスコアをまとめたもの。CPUへの重み付けが大きいEntryプリセットに注目すると,i7-3930Kのスコアはi7-2600Kから1%増し,i7-3960Xは3%増しだ。「スコアを順当に伸ばしている」とはいえるものの,インパクトが大きくないのも確かである。

画像集#046のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか

 そこで,Entryプリセットから,CPU性能のチェックに利用できる「Physics」スコアを抜き出してみると,i7-3960Xとi7-3930Kが,i7-2600Kやi7-990Xと比べて大きくスコアを伸ばしていることが分かる(グラフ7)。Physicsテストでは,オープンソースの物理エンジンライブラリ「Bullet Physics」を用いて,CPUのマルチスレッド性能を測るものだが,ここでは,Sandy Bridge-Eの持つ,6コア12スレッド処理と広帯域なメモリ周りの性能が遺憾なく発揮されているわけだ。

画像集#047のサムネイル/「Core i7-3960X&3930K」レビュー。LGA2011の「Sandy Bridge-E」は,ハイエンドPC環境に何をもたらすか

 続いてグラフ8,9は,DirectX 11世代のFPS「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)における「Day」と「SunShafts」,2つのシークエンスにおける平均フレームレートを追ったものになる。
 よりグラフィックス描画負荷の低いDayシークエンスだと,スコアは概ねCPUグレードごとに並んでいる。そのなかでもグラフィックス負荷が低く,いきおいCPU性能がスコアを左右しやすい1280×720ドット時だと,i7-3930Kとi7-2600Kのスコアがほぼ同じで,i7-3960Xはi7-2600Kに6%ほどのスコア差を付けていることが分かるが,グラフィックス描画負荷の高いSunShaftsだと,スコアは完全に横並びとなった。

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 グラフ10は,今回,特別にテストしたBF3のテスト結果だが,先のGPU検証時にもある程度見えていたとおり,スコアはほぼ横並び。i7-990Xのスコアが若干低めに出ているため,それと比べるとCore i7-3000番台やi7-2600Kは優位と言えなくもないが,そのくらいだ。BF3をプレイするだけなら,i7-3960Xやi7-3930Kはオーバースペックというわけである。

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 グラフ11は「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)の結果。i7-990Xのスコアが若干低めである点も含め,傾向はBF3と同じだ。

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 なら,描画負荷の低い「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)ならCPUの差が出やすくなるかというと,結果はグラフ12のとおり。i7-3960Xのスコアが芳しくなく,しかもi7-3960X@4.5GHzは最下位に沈んだ。Call of Duty 4のように,旧世代のゲームエンジンを採用したタイトルだと,マルチスレッドへの最適化が進んでいないが,そうなると,むしろ6コア12スレッド対応というのは,むしろマイナス要因になるということなのだろう。

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 一方,CPUテスト時にはキャッシュやメモリ周りの性能がスコアを左右しやすい「Just Cause 2」だと,まさにそのキャッシュ周りが効いてか,i7-3960Xとi7-2600Kのスコアが高い(グラフ13)。Sandra 2011で見られた不可解なメモリレイテンシ結果が響いてか,i7-3930Kが下位に沈んでいるのも目を引くところだ。

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 グラフ14は,「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)の結果だ。1280×720ドット時のスコアだけ見ると6コアの優位性らしきものもなくはないが,全体的にはほぼ横並びと見るのが適切だろう。

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 ゲーム性能検証の最後はグラフ15に示した「DiRT 3」だが,ここでは1280×720〜1920×1080ドットすべての解像度でi7-2600Kのスコアが突出している。DiRT 3では多少なりともマルチスレッドへの最適化が進んでいるのだが,それでこの結果なので,やはり6コア12スレッド処理がむしろ不利になっているということになりそうである。

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Gulftownからは消費電力がかなり低減

別売り液冷クーラーの能力は高い


 Gulftownと同じ32nm High-kプロセスを採用しつつ,最大15MBものL3キャッシュを搭載し,動作クロックは4GHz弱にまで達するSandy Bridge-E。TDPはGulftownと同じ130Wで変わらないが,実際の消費電力はどの程度になるだろうか。いつものように,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,システム全体の消費電力を計測してみよう。テストにあたっては,OCCTの30分間連続実行時を「高負荷時」,その後,30分放置した時点を「アイドル時」としている。

 その結果はグラフ16のとおり。さすがにSandy Bridgeコアのi7-2600Kと比べるとi7-3930Kで若干,i7-3960Xでかなりの消費電力引き上げとなっているが,i7-990Xよりは確実に低い。とくにアイドル時で25W以上というのはインパクトがありそうだ。
 なお,i7-3960X@4.5GHzは,CPUコア電圧を1.4Vへ高めていることもあり,さすがに消費電力が高くなった。

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 グラフ17は,グラフ16の両時点におけるCPU温度を「HWMonitor Pro」(Version 1.1.2)で取得し,コアごとの平均を取ったものだ。テスト時の室温は26℃で,テスト環境はPCケースに組み込まず,バラック状態においたときの結果となる。
 CPUクーラーがそれぞれ違う――LGA1366とLGA1155では製品ボックス付属のクーラーを用いている――ため,横並びの比較には向いていないが,全コアに100%の負荷がかかり続けている高負荷時にi7-3960Xとi7-3930Kのスコアが70℃を下回ってきたのは注目すべきだろう。簡易液冷クーラーは,ラジエータを適切に冷却できれば,かなりの冷却能力を持つと言える。

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 なお,気になる簡易液冷クーラーの動作音だが,毎度筆者の主観になってしまうことを断ったうえで述べると,定格動作を行っている限りは非常に静か。ただし,i7-3960X@4.5GHzにまでオーバークロックを行い,CPU温度が上昇してくると,かなり耳に付くようになる。端的にいえば「うるさい」レベルだ。


ゲーム用途での上積みは大きくない

「最新のハイエンド環境」であることにこだわる人向け


 最後に,システム全体が持つ総合性能の目安として,「PCMark Vantage」(Build 1.0.2)の結果をグラフ18表5に示した。画像処理やムービーのトランスコード性能,ムービーの再生能力などを見る「Memories」「TV and Moviews」でCore i7-3000番台は優位性を見せる一方,Webページのレンダリングや音楽ファイルのトランスコード,データの圧縮,HDD検索,ウイルススキャンなどといった処理の性能を見る「Music」や「Communications」「Productiity」ではi7-2600Kの後塵を拝しており,総合結果ではi7-3960Xがi7-2600Kと同等,というところに落ち着いている。

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 以上のテスト結果から言えることは,「Core i7-3000番台の性能は,デスクトップPC向け最上位モデルとして,まずまず順当に向上してはいる。しかし,ゲーム用途で得られるi7-2600Kやi7-990Xからの“上積み”は非常に少なく,そもそもCPUよりもGPU性能が問われるケースではほとんどメリットを感じられないこともある」という,厳然たる事実だ。もっとはっきり言うと,純粋にゲーム用途へフォーカスした場合,今回取り上げたどのCPUを選んでも大した違いはない

テスト中の様子。RTS2011LCは電源が入るとポンプ部とファンが青く光る
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 違いがあるとすると,それはプラットフォームのほうだろう。X79は確かにスペックダウンしたが,それでも,マザーボード側で2ポートのSerial ATA 6Gbpsが用意される。これはX58にはなかったものだ。また,CPUからは40レーンものPCI Express 2.0インタフェースが出ているため,デュアルGPUなら16レーン×2のフルスペック動作を行え,また,シングルGPU時にも,フルスペックの16レーンでグラフィックスカードを動作させつつ,x8やx4接続の高速ストレージカードなどを複数枚利用できるメリットもある。

 Core i7-3000番台は,X79プラットフォーム込みで魅力を感じる,極々少数のニッチな層に向けた製品なのだ。そういった層に向けて,多少なりとも確実に性能を引き上げたプロセッサをちゃんと出してきたこと,それ自体に意義がある存在なのである。

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