レビュー
こんなの初めて……。“趣都”秋葉原を舞台とした唯一無二のストリップアクションアドベンチャー「AKIBA'S TRIP」のレビューを掲載
“趣都”秋葉原を舞台とした唯一無二のストリップアクションアドベンチャー
AKIBA’S TRIP
本作の主人公はごく普通の青年で,19歳の予備校生。行方不明になった友人を探してアキバの街を歩いていたところ,カゲヤシに襲われて瀕死の重傷を負わされるが,すんでのところで謎の美少女から血を与えられて一命を取り留める。気を失って倒れているところを秘密情報機関“NIRO”(国内情報調査機構)に保護された主人公は,美少女の血の力によって人でありながらカゲヤシの身体能力を身に付けた強化エージェントとして,アキバの平和を取り戻すために動き出す……。
とまぁ,プロローグの流れだけを見ればハードかつシリアスな伝奇ライトノベルとしても通りそうなストーリーなのだが,どっこいハードはハードでも,いわゆるバトル物とはちょいと違った意味で過激だ。
主人公が戦うことになるカゲヤシは驚異的な身体能力と再生能力を持つが,素肌を日光に晒すと灰になってしまうという弱点を持っている。ほかにもやり方がありそうなものだが,なぜかそこでNIROが編み出した戦法は,相手の服を剥ぎ取ることに特化した“ストリップアクション”で……つまり主人公は,エージェント専用の武器とか超能力とかそういったカッコイイものではなく,脱衣術を駆使してカゲヤシと戦っていくことになるのである。
この時点で大半の読者は,本作が“バカゲー”だということに気付いたと思うが,さてさて実際のところ,ゲーム的にはどんなものなのか。本稿で解説していこう。
「AKIBA'S TRIP」公式サイト
我脱がす,ゆえに我あり
脱衣術でカゲヤシを狩れ!
前述したように,相手の服を脱がすストリップアクションというシステムが本作のキモだ。カゲヤシとの戦闘では,まず頭部,胴部,脚部の3か所に着用している衣服にダメージを与え,耐久力を減らしてから剥ぎ取りにかかるのがセオリーとなっている。ダメージが十分に通っていなければ剥ぎ取れないし,逆にダメージを与えすぎれば剥ぎ取る前にビリビリにちぎれ飛んでしまうので注意が必要だ。剥ぎ取った衣服は自分で着用したり店に売ったりできるので,なるべくキレイに剥ぎ取りたいところである。
そこで目安となるのが,剥ぎ取り可能になったタイミングで画面上に出るボタン表示だ。△が頭部,□が胴部,◯が脚部と,それぞれの場所に対応しており,各ボタンを長押しすることで,相手の服に掴みかかることができる。複数人を相手にして,なおかつそれぞれ十分にダメージを与えている状態ならば,次から次へとノンストップで剥ぎ取りにかかる“連続ストリップ”モードに入ることも可能だ。
ただし,服を掴みにいくアクションは意外とスキが大きいので,敵の攻撃によって中断されてしまうこともしばしばある。とくに相手の人数が多い場合は,反撃する間もなく袋叩きにされてしまうので,使いどころはしっかり見極めないといけないだろう。
主人公もカゲヤシの体質を獲得しているため,日光を素肌に浴びると灰になってしまう。見た目に凝るのもいいが,着用する衣服はなるべく耐久力の高いものにするのが無難かも |
特定の衣服を剥ぎ取るには専門知識が必要。新たな脱衣スキルはミッションをクリアしたり,ファッション関係の本を購入したりして獲得していくのだ |
しかし,なぜかこの世界では,エージェントとカゲヤシの戦いに限らず,一般市民の喧嘩レベルでも服の脱がしあいが行われる。もはやストリップアクションは一般常識なのか,それともアキバのローカルルールなのか……とにかく深く突っ込むのはやめておこう。深淵を覗くものは何とやらって言うし。
武器や衣服は“ケプラー”と“タングステン”を使用することで強化が可能。これらの強化アイテムは,強化済みの装備を店に売却することでジャンク屋に並ぶので,所持金に余裕があれば回収もできる。ケチケチせずにどんどん使っていこう |
また,武器は素手や片手用,両手用といったカテゴリによって攻撃モーションが違う。最初は最低限のアクションしか覚えていないが,アキバに立ち並ぶさまざまな店舗でスキル本を購入すれば,強攻撃や移動攻撃など新たなアクションを覚えることが可能だ。スキル本は高価だし,すべての武器を極める必要はないので,初回プレイではお気に入りの武器に対応したアクションだけ覚えていくのがいいだろう。
ちなみに筆者は,システムをよく理解せずにゲームを開始したため,わけの分からんうちに募金のババァと喧嘩になり,そこへ乱入してきた警官の誘導棒でジーパンを引き裂かれた挙句,下半身パンツ一丁の状態で留置場にぶち込まれた。何を言ってるのか分からないと思うが,俺もどうしてそうなったのか分からなかった。気が付けば罰金を払って釈放されたあとも,下半身を露出したまま奪い取った募金箱(武器扱い)を抱えて,アキバの街を駆け回るハメになっていたのである。
リアルに再現された秋葉原と
エキセントリックな住人達!
ただ,プレイしていると本当にアキバにいるかのような感覚が味わえるのも,また事実。……まぁ,少なくとも筆者の知っているアキバは,住人がお互いの服を剥ぎ合うような羅生門ではないのだが,その辺はスルーで。
とにかく,メイドさんやカメラ小僧,そして募金ババァ(宿敵)など,そこに住む人々も非常に生き生きとしており,エキセントリックな行動でプレイヤーをニヤニヤさせてくれるので,街の雰囲気はとても良い感じだ。
そうそう,本作で主人公の敵となるのは基本的にカゲヤシだが,場合によっては筆者VS.募金ババァのように,一般市民と戦うこともある。限定フィギュアを求めてヒートアップしたオタク達の暴動に巻き込まれたり,カツアゲを止めに入ったり,はたまたとくに理由はないが,喧嘩を売りたくなったり。戦い方はカゲヤシと変わらないが,一般市民の場合は,裸にされると灰にならずに逃げていく。ただ,カゲヤシは一般市民に紛れて生活しているため,そうとは知らずに剥いた相手が灰になった……ということも多い。
なお,考えなしにアキバで暴れ回ると,住人達から嫌われてしまうのでその点には注意しよう。最終的には,こちらの姿を見ただけで逃げていったりするので,無闇に一般市民を襲うのはやめたほうがいい。ま,女と見たらとりあえずは襲いかかって,服をバリバリー(やめて!)する筆者が言えたことではないがね。
カゲヤシは,NIROが改造したスマートフォンのカメラで撮影することにより,判別できる。人混みを撮影してそこに写らないヤツがいれば,そいつがカゲヤシだ |
女の子を剥けば当然あられもない姿を見せてくれる。カゲヤシを倒すためだし,しょうがないよね? |
サブミッションを放置しておくと,タイミングによっては消えてしまうこともあるので,メインストーリーを進める前にこなしておくといい |
おっと,“妹”の話題に目ざとく反応したそこのシスコン君,喜べ。本作の主人公には妹がおり,部屋に行って会話したり,コスプレをしてもらったりできる。ただ,妹が兄をエラく嫌っているうえに相当な銭ゲバで,何か頼みごとをする場合は必ず金を要求されるということが問題なんだが……まぁ金さえ払えば,一時的とはいえ「お兄ちゃん大好き!」などと可愛いことを言ってくれるので良しとしよう。
ちなみに本作では,主人公のとった行動によってストーリーの結末が変化する。記事冒頭でバカゲーとは書いたが,筆者の場合,終盤かなりシリアスで切ない展開になってしまい,かなり驚かされた。メインストーリーはなかなか“魅せる”内容になっている。
大体10時間前後でゲームを1周できるので,繰り返しプレイするのは比較的ラクだし,いわゆる「強くてニューゲーム」状態で装備品などを引き継ぐことが可能。さらに,1周すると追加要素として,最高難度の“オタク”モードが解除され,主人公のキャラクターモデルも変えられるようになるので,やり込み推奨だ。
細かな粗がどうでもよくなる確かな魅力
アキバ好きなら押さえておきたいアイデア勝ちの秀作
ただ不思議なことに,そういった“気になるところ”は,本作をプレイしていると次第に気にならなくなってくる。むしろ,独特の魅力に引き込まれる部分のほうが大きい。随所に見られるハジけた発想の数々によって,本作は非常にユニークなゲームに仕上がっているのである。少なくとも,筆者は吸血鬼に脱衣で立ち向かうような作品を見たのは,本作が初めてだ。しかもそれが,ゲームとしてしっかりと成り立っているのが凄い。
これは間違いなくアイデア勝ち。開き直りっぷりがすこぶる好印象である。濃いオタクネタが多数登場するので,どうしても苦手だという人もいるだろうが……フィーリングが合えば間違いなく楽しめる作品だ。とくに,アキバ通を自負する人には強くオススメしたい。脱がせばいいと思うよ。
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