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ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか。「エルミナージュ」「アンチェインブレイズ レクス」「ととモノ。」開発者によるダンジョンRPG座談会
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印刷2011/07/23 00:00

インタビュー

ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか。「エルミナージュ」「アンチェインブレイズ レクス」「ととモノ。」開発者によるダンジョンRPG座談会

ファンを増やしていくためには難易度の調整が必須

ただし,コア層を無視することだけは絶対にない


画像集#009のサムネイル/ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか。「エルミナージュ」「アンチェインブレイズ レクス」「ととモノ。」開発者によるダンジョンRPG座談会
――これは,シリーズ作品である「エルミナージュ」「ととモノ。」に限った話になってしまうのですが,ダンジョンRPGというジャンルに対して,新規のユーザー層というのはどれくらい入ってきているんでしょうか。

孫田氏:
 「エルミナージュ」は,新作を出すたびに新規のお客さんが増えているように感じますね。あとアンケート用紙に,色々と意見を書いてくれる人も目立つので,熱心なファンもたくさんいるんだと思います。

――性別的には,やはり男性が圧倒的に多いですか?

孫田氏:
 男性ファンがほとんどだと思っていたんですが,女性も目立っています。さすがに10代の方はあまりいないと思いますけど。

――一方の「ととモノ。」は,若い層に受け入れられている印象がありますが。

原神氏:
 そうですね。やはりイラストレーターの力が大きいのかもしれません。「ととモノ。」の1作目を作るときに「頭身は高めがいいんじゃないか」っていうスタッフの意見もあったんですけど,思い切って意図的に頭身を下げました。その成果は確実に出ていますね。1作目は大人の男性ファンが多かったんですけど,シリーズを重ねるごとにプレイヤーの年齢層が下がっていき,現在では女性ファンも増えてきています。

「剣と魔法と学園モノ。3D」
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――女性ファンが目立ってきているというのは意外な感じがします。勝手な想像なんですけど,ダンジョンRPGって“男のゲーム”という印象が強いので。

原神氏:
 そうですね。非常にありがたいことです。

――そんな,どちらかというと通好みのジャンルというイメージがあるダンジョンRPGを,今後さらに広めていくために,皆さんがとくに注意していることはありますか?

原神氏:
 プレイヤーの想像力を邪魔せず,後押しすることです。例えば「ととモノ。3D」には相性システムを実装したんですが,これによって,プレイヤーごとのパーティ構成がよりバラエティに富むようになります。あと,3DSの内蔵センサーを利用したアラウンドビュー機能も,ゲーム世界をより身近なものにする意味で,プレイヤーの想像力を後押しするはずです。

孫田氏:
 「エルミナージュIII」では,“ダンジョンロード”という機能を導入しました。これは,プレイヤーが作成したキャラクターをボスとしたオリジナルダンジョンが作成できる機能です。もちろんフェイスロードやスタイルロードで使用している画像も使用できますし,友達とデータを交換することも可能です。こういった“広がり”は,コアなファンに満足してもらうために欠かせないものだと考えています。

「エルミナージュIII」
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画像集#010のサムネイル/ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか。「エルミナージュ」「アンチェインブレイズ レクス」「ととモノ。」開発者によるダンジョンRPG座談会
阿部氏:
 「アンチェインブレイズ レクス」は,かなり理詰めで制作しているタイトルなんですが,プレイヤーの感性に訴えかけるダイナミックな演出なども意識して盛り込みました。
 あとゲームバランス的には,「導入部分は易しく,先へ進むに連れて頭を使う必要が出てくる」ような仕組みを心がけました。やはり,スタート直後でつまずいてしまうと,そこでプレイが止まってしまう恐れがありますからね。

孫田氏:
 難度をゆるくするべきか,コア層に合わせて歯ごたえのあるものにするべきかは,本当に悩みどころですねぇ。ただ「エルミナージュ」は,確実にコア向けですよ。作られたばかりのキャラのHPは8しかないですし,フロアマスターという,まず勝てないだろうというボスも登場させています。それでも,新規ユーザーにも楽しんでもらいたいので,チュートリアルシーンはかなり丁寧にバランスを取っていますけど。

原神氏:
 「ととモノ。」に関しては,難度を下げています。若いゲーマーや,キャラの魅力に惹かれて入ってきた人も多いですからね。ただ,自分の中ではかなり易しくしたつもりでも,ダンジョンRPGに不慣れな人からしたら,かなり厳しいらしいんですよ。なのでうまく誘導する仕組みを盛り込んだり,適度に魔法を使っていれば倒せる強敵を登場させたりと,バランシングには注意して制作しています。

――ダンジョンRPGでは,初心者にプレイしてもらうための工夫も大切だと思うんですが,それを踏まえたうえで,同時に上級者にも満足してもらうためには,どのような工夫が必要と考えていますか?

原神氏:
 「ととモノ。」に関しては,ライトユーザーのためにかなり難度を下げてはいるんですが,だからといってコアユーザーを無視していいかといったら,そんなことは絶対にないです。ライトユーザーのために簡単な部分も入れつつ,コアユーザーに向けて歯ごたえのあるものを用意するのが,一番大事だと思います。

阿部氏:
 「アンチェインブレイズ レクス」も同じような感じですね。ゲーム本編は標準的なプレイヤーを想定しているんですけど,クリア後のお楽しみに関しては,上級者でも楽しめるように,やり込みがいのあるものにしています。

「アンチェインブレイズ レクス」
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孫田氏:
 「エルミナージュ」シリーズは,メインルートでエンディングまで行くだけならそんなに難しくないですよ。むしろコアな人からすれば,クリア後のエクストラダンジョンが本編みたいな感じですかね。一度ゲーム本編をクリアすると,モンスターが強くなる要素も盛り込んでいます。

――なるほど。長時間プレイしてくれるだろうコアプレイヤーに対しては,充実したやり込み要素を提供するわけですね。しかし,ダンジョンRPGのクリエイターとしては,どうしても難度を上げたいものなんでしょうか。

原神氏:
 ダンジョンRPGの開発者って,基本ドSだと思うんですよ。戦闘バランスを考えるにしても,「モンスターの倒し方」より「プレイヤーの倒され方」を意識してしまうような(笑)。ただ,プレイヤーに苦痛を与えるわけにはいかないので,遊び手が納得のいく範囲で難度を調整するのが,腕の見せどころと言えるかもしれませんね。


協力プレイはこれからも続けていきたいが

本音を言うとアイテムは自分で探してほしい


「剣と魔法と学園モノ。3D」
画像集#019のサムネイル/ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか。「エルミナージュ」「アンチェインブレイズ レクス」「ととモノ。」開発者によるダンジョンRPG座談会
――今後,より広い層にダンジョンRPGの魅力を訴求していくためには,どのような変革が必要だとお考えですか?

原神氏:
 ダンジョンRPGって,一人で楽しむイメージが強いと思うんです。ただ,横の広がりを考えるのであれば,ほかのプレイヤーと一緒に楽しめるような仕掛けが必要になりますね。「ととモノ。」は学園ものなので“ほかの生徒”が存在しますし,世界観的には全然いけると思うんですよ。ただ,プレイヤーの没入感を削ぐようなことはしたくないので,邪魔にならない形を保ちつつ,ダンジョンRPGをみんなで遊んでいるような空気を作り出していきたいです。

阿部氏:
 Wizardryが好きな人に向けて作ったからといって,Wizardryっぽく作って,はい終了ではダメだと思うんですよ。やはり新しい仕組みを常に取り入れていくことが大事なんじゃないかなと思いますね。

孫田氏:
 ダンジョンRPGっていうと,男性のコア層がメインというイメージが強いので,女性にも受けるような感じにしたいですね。まあ,コア層を大事にしながら,ライト層にも訴求していくっていうのは難しいと思うんですけど。あとはネットワークで何かしらの情報を伝えていきたいです。アイテム交換なども面白いと思いますしね。ただ,アイテム交換をするのなら自分で探したほうが面白い,という思いもありますが(笑)。

原神氏:
 自分以外のパーティの存在を感じられる部分を強化していきたいですよね。やはりアイテム交換をやっちゃうと,自分で集める楽しみがなくなってしまうので。個人的には,強敵を複数のプレイヤーで倒すとか,攻略しづらいダンジョンを協力しながら進んでいくとか,そういう感じが望ましいですね。
 目的を達成したら「ありがとう。またね」みたいな,軽いつながりでいいと思うんですよ。「ととモノ。3D」でも,すれ違い通信を使った試みを導入していて,ほかのパーティを少しでも感じられるようにしています。今後はそれをもっと発展させていきたいです。

――ネットワークの広がりも大事だと思うんですけど,一人でコツコツと遊ぶのが好きな人も多いですよね。確かにそこのバランスは難しいと思います。

孫田氏:
 コアな人には「邪魔されたくない」という意識がありますからね。でもどこかで自分のパーティを見せたいという思いもあると思うんですよ。なので,自慢するためのフィールドを用意できたら面白いんじゃないかと考えたことはあります。でも仰るとおり,バランスが難しいですよね。妄想を後押しする形のシステムが用意できれば,一番スマートなのかもしれません。

――Wizardryでいうところの,酒場でのすれ違い的な感じですね。

原神氏:
 そうですね。あるクエストを攻略中に,ほかのプレイヤーにおいしいクエストを受注されていた……みたいなことがあっても面白いと思います。「このクエスト,次に受けようと思ってたのに先に取られちゃったよ」みたいなね。でもそういったシステムを軸にしてしまうと,バランシングがとても難しくなります。予算と時間をいただければ,ぜひやらせてもらいたいんですけど(笑)。


3DダンジョンRPG開発者が好きなダンジョンRPGとは?


「アンチェインブレイズ レクス」
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――ちなみにお三方は,自分以外のお二方が手がけた作品に対して,どんな印象をお持ちでしょうか。

原神氏:
 うちのスタッフはエルミナージュが大好きで,よく遊んでいます。あの難度の高さを考えると,エルミナージュの開発者はドSなんだろうなぁと思っているんですけど……。

孫田氏:
 そうですねっていうと変ですけど(笑)。開発スタッフは,ドS的なものが本当に好きですね。

原神氏:
 ここはカットされちゃうかなぁ(笑)。では阿部さんに対して質問なんですけど,アンチェインブレイズ レクスは,イラストレーターさんの管理とか大変じゃなかったですか?

阿部氏:
 そうですね。皆さん,生活のサイクルから仕事のスパンまで全然違うので,なかなか調整がつきませんでした。

原神氏:
 もう一枚描いてよ,とか思ったりしませんでした(笑)?

阿部氏:
 いやいや,ちゃんとやってもらってますよ(笑)。今回は開発期間が長かったから問題なかったところもあるんですが,スケジュールがもう少しタイトだったら,難しかったかもしれませんね……。イラストレーターに関して,ゼロディブさんはどうですか?

原神氏:
 いや,本当に皆さんいい先生ですよ。とんでもない枚数をしっかり描いてくださってますし,本当にありがたく思っています。

――エルミナージュもそうですけど,キャラメイク型の作品って,イラストレーターさんの負担とかたいへんじゃないですか? とくに一人のにお任せするとなると。

孫田氏:
 うちはモンスターとメインビジュアルが外注なんですが,スタイルロードやフェイスロードで,プレイヤーさん自身が工夫してくれているので,それほど厳しくはないですね。

――ちなみに,「ととモノ。」は今回3DS版が発売されますが,実際に開発してみてどうでしたか?

原神氏:
 本当にいいハードだと思いますよ。でもやはり,新しいハードはしんどいですよね。「何が出来るか」を手探りで確認しなければならないので。今回アラウンドビューという,内蔵センサーに連動した「見渡す」機能を盛り込んだんですが,開発機にはケーブル類がつながっているので,実際に確認する際には苦労しました。実機で確認できたのが本当につい最近だったんですが,意図したとおりの効果が確認できたときには,感動もひとしおでしたね。

――ダンジョンRPGを立体視でプレイするというのは,ジャンル的にもマッチしているような気がしますが,その点はどうですか?

原神氏:
 まさに,3Dで3DダンジョンRPGを楽しめるのは3DSだけですからね。ぜひ一度,実際に触れてみてほしいです。

「剣と魔法と学園モノ。3D」
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――ちなみに,お三方が個人的に好きなダンジョンRPGを教えてもらってもいいでしょうか。Wizardryは別格になっちゃうので,あえて外すという条件で。

孫田氏:
 自分は一番最初の「女神転生」がお気に入りでしたね。当時,中学生がプレイするにはやや難しいゲームでしたけど,かなりはまってました。

原神氏:
 「女神転生」は確かに面白かったですね。僕は最近の作品になってしまうんですけど,「世界樹の迷宮」シリーズはすごく面白かった。ダンジョンRPG人気が一瞬陰ったタイミングでリリースされて,しかもマッピングをシステムに盛り込むという,DSならではの遊びを提示しているあたり,素直に感心させられました。しかもそれを,プレイヤーが受け入れていたのを見たときには,他人事ながら「よかった」と思いましたね。

「エルミナージュIII」
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阿部氏:
 僕も「世界樹の迷宮」と「女神転生」の両方が好きなので,言われちゃいましたね(笑)。ほかのタイトルでいうと,「エルミナージュ」シリーズも大好きです。

――「エルミナージュ」シリーズって,メーカーさんからのウケが良い印象がありますよね。

孫田氏:
 本当ですか……ありがとうございます。頑張ります。

原神氏:
 「Wizardry」は別格ですけど,本当にいい作品でしたね。「WizardryIV」では,主人公が冒険者から魔王になって,「何考えてんだ」って思いながらも,その発想に感心させられました。こういう考え方もあるんだなぁと。


――そろそろお時間のようなので,最後に,直近の最新作のアピールと,読者に向けてのメッセージをお願いします。

原神氏:
 今回の「剣と魔法と学園モノ。3D」は,裸眼立体視で3DダンジョンRPGが楽しめる作品となっていますので,ぜひプレイしてほしいなと思います。また,ペットシステムやアラウンドビュー,すれ違い通信といった,プレイヤーの想像力を後押しするような機能も,多数盛り込んでいます。初心者にも分かりやすいように丁寧に作っていますので,ダンジョンRPGの入門編としても楽しんでほしいですね。よろしくお願いします。

阿部氏:
 この中では唯一の新規オリジナルタイトルということになりますが,「アンチェインブレイズ レクス」は,サウンド,シナリオ,キャラクターデザインを含め,とてもいい作品を作れたと自負しております。ボリューム的にも相当ふくらんでいるので,手応えのあるゲームを探している人には,ぜひ手にとってほしいです。そして,3DダンジョンRPGのドキドキ感を満喫してもらいたいと思っています。

孫田氏:
 「エルミナージュIII」には,スタイルロード,ダンジョンロード,サウンドロードといった新機能を搭載しています。ゲームバランスやボリュームに関しても,IIから大きくパワーアップしていますので,ぜひ期待していてください。

――ありがとうございました。

画像集#011のサムネイル/ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか。「エルミナージュ」「アンチェインブレイズ レクス」「ととモノ。」開発者によるダンジョンRPG座談会

 ダンジョンRPG市場にあまり元気がない現状は,古くからのファンにとって寂しいものだろう。しかしダンジョンRPGの開発者達も,その状況をただ黙って見ているわけではない。今の市場に受け入れられるべく,さまざまな工夫をこらして,ダンジョンRPGの良さをより多くの人に伝えようと苦心しているのだ。座談会でも話題になっていた,「難度調整」や「人気イラストレーターの起用」などは,その好例といえるだろう。そして「横の繋がり」を意識したネットワーク機能なども,今後より一層進化していきそうな雰囲気だ。
 今後,ダンジョンRPGがどのように進化していき,ゲーマーからどのように受け入れられていくのだろうか。今回,ダンジョンRPGに対する熱い想いを語ってくれたお三方の活躍にも注目しつつ,ダンジョンRPGの新たな夜明けに期待したい。

「エルミナージュIII 〜暗黒の使徒と太陽の宮殿〜」公式サイト

「アンチェインブレイズ レクス」公式サイト

「剣と魔法と学園モノ。3D」公式サイト

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    エルミナージュIII 〜暗黒の使徒と太陽の宮殿〜

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