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教育現場での「Minecraft」活用事例が紹介された「Minecraft × Education 2015」トークセッションの模様をレポート
基調講演の模様はこちらでお伝えしたが,本稿では「Minecraft」の教育分野への応用をテーマとしたトークセッションの模様をレポートしよう。トークに参加したのは,西町インターナショナルスクール/スーパーサイエンスキッズ・アカデミー校長 堀井清毅氏,教育/ITライターの神谷加代氏,早稲田大学 基幹理工学部 齋藤大輔氏,そして「Minecraft」の実況動画などで知られるぬどん氏の4名である。
トークの冒頭では,登壇者達がいかにして「Minecraft」と出会ったかが各自の口から語られた。
堀井氏は,数年前に自身のお子さんが「Minecraft」に夢中になったことをきっかけに,教育に取り入れられないか考え始めたという。現在では,自身が校長を務めるインターナショナルスクールにて,教育用に調整が施されたバージョンである「MinecraftEdu」を使った取り組みを行っている。
神谷氏は,お子さんから「Minecraft」を遊びたいという要望を受け,初めてその存在を知ったとのこと。最初は新たなゲームソフトを購入することに反対だった神谷氏だったが,お子さんが遊びながら自発的にいろいろ調べたり,動画を作って情報発信したりする姿を見て,「これまでのゲームとはちょっと違うかもしれない」と考えたという。今では,自身でもプレイしているそうだ。
齋藤氏はYouTubeでβバージョン時の「Minecraft」を見て,「ものすごくシンプルなゲームだ」という印象を受け,興味を持ったと話す。同時に,子ども向けプログラミングスクール界隈でも話題となっていたことから,大学生のソフトウェア開発教育にも使えるのではないかと研究を始めたという。その研究で,被験者達のコミュニケーション能力の向上が見られたことから,「Minecraft」はプロジェクト開発などの教育ツールとして非常に優れているという結果を得たとのことだ。
ぬどん氏は2010年に動画配信サイトで話題になったことから,「Minecraft」に興味を持ったという。とくにブロックを壊して素材として入手し,それを目の前に置くというシンプルな操作がハマる要因になっているのではないかとし,「極限までデフォルメした仮想現実」と表現。それが教育向けコンテンツとして評価される要因になっているのではないかと分析した。
続いて,「Minecraft」と教育の関係について登壇者達がどのように考えているか,より掘り下げたトークが展開された。
堀井氏は,現実に即した課題解決型の学習を行っているとのことで,子どもを2つのグループに分け,一方は通常の地域,もう一方は資源が少ない地域で,互いのエリアに干渉しないという取り決めのもと,街作りを行うという事例を紹介した。
この場合,最初はそれぞれのグループ内で何事も無く物事が進んでいくが,資源が不足しがちな後者のグループでは,街の開発が進むにつれ,前者のグループとの違いをはっきり感じるようになる。環境保護や資源保護といった問題を頭では分かっている子ども達だが,こうやって実際に地球上で起こっている状況を疑似体験することで,どうすればいいのかを現実的な問題として自発的に考えるようになるというわけである。
神谷氏は,お子さんが「Minecraft」に必要な情報をやり取りするためにSkypeを使い始めたことを紹介した。ゲームの中で作った物を他人に見せたり,情報収集の結果を共有したりといったように友達を巻き込んでいく過程が,遊びとして成立しているとのことで,親の立場としても,そういった状況をきちんと受け入れて対応していく必要があると語った。もちろん,子どもがコミュニケーションツールを利用することに関しては,親がしっかりとした知識を持ち,責任を持って管理すべきとのことだ。
齋藤氏は,自身の研究を紹介した。その内容は非常にシンプルで,まず被験者達に設計書を書かせ,それをもとに建築物を作らせ,そののちテストをしてパスしたらOKというもの。これはソフトウェア開発におけるウォーターフォール・モデルの手順とまったく同じ流れであるため,ソフトウェア開発の導入には適しているという。
とくにPCとライセンスがあればすぐに環境が整い,さらにオンラインでつながっていれば物理的に離れていても共同作業が可能となるところが大きな利点とのことだ。この点に関しては堀井氏も,子ども達が自宅に帰ってから自分で学習する機会が得られると評価していた。
ぬどん氏は,プレイ動画の実況配信という観点から,「Minecraft」は,プレイヤーが配信で視聴者に見せたい物を作るためのツールに近い使われ方をしていると指摘した。作る過程をすべて見せるのは,非常に時間が掛かるため,動画配信には向いていないというわけだ。また,プレイヤーがそれぞれの思想でさまざまな物作りを行えるのも,ツール化する要因として語られた。
もちろん,「Minecraft」は万能コンテンツではない。たとえば子ども達がプレイにのめり込んでしまい,日常生活に支障が出る状況も十分に考えられる。ぬどん氏は「自分で目的を作れるので,いくらでも続けたくなる」と,親がプレイ時間を管理するといった方法の効果には疑問を呈し,「自分の意志で止められるよう訓練するしかない」と語った。実際,ぬどん氏は「Minecraft」を遊んでみたいという人達に対して,「もしあなたが受験生だったら,やらないほうがいい」とアドバイスしているという。
さらにぬどん氏は,「仕事や勉強はつまらない」「ゲームは面白い」といった世間一般の認識にも問題があるとし,子ども達に「Minecraft」以外にも面白いものがあるということをきちんと教えていくことが重要なのではないかと語った。それによって,たとえば仕事や勉強に面白さを見出すことができれば,「Minecraft」以上にのめり込む可能性もあるというわけだ。
以上が,今回のトークセッションの内容となる。「Minecraft」の教育分野への応用をテーマにしていることから,聴講者の大半は教育関係者だったのではないかと推測されるが,筆者としては,一人でも多くの人に「Minecraft」が最先端の教育現場で活用されているという事例,ひいては何かにつけて批判されがちなゲームというエンターテイメントを教育に取り入れようとする試みがなされていることを知ってもらえれば幸いである。
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