インタビュー
[Gamescom]新作「Tomb Raider」のディレクターにインタビュー。プレイヤーは,若き娘ララ・クロフトの成長する姿を追う
1996年にセガ・サターン,PlayStation,そしてPC向けにリリースされた第1作「Tomb Raider」と言えば,当時の海外作品としては珍しかった女性キャラクター,ララ・クロフトを主人公に,世界各地に眠る秘宝を巡って冒険するという3人称視点型の3Dゲームだ。そして,「アクションアドベンチャー」という新たなカテゴリーを生み出したことでも知られる,90年代の超人気作品である。
ララ・クロフトは,ニュース誌にことあるごとに登場し,さらにはU2のコンサートツアーのマスコットキャラにも選ばれるなど,3Dゲーム世代の顔役としてゲームのメインストリーム化にも一役買った。
そんなTomb Raiderシリーズも,新作の早期投入を優先して旧式のゲームエンジンやスタイルに固執したため,次々とリリースされる高品質なゲームの影に埋もれてしまいがちだった。今世紀に入ってからも,シリーズ新作は発売され続けてはいたが,ここのところは大きなセールスに結び付かない様子で,ヒットしたと呼べない状況が続いていた。
その理由を,「テフロン加工されたような,あまりにも強過ぎるキャラクター」にあると考えたのが,Stewart氏の率いる開発チームCrystal Dynamicsだ。そこで,より生身の人間に近いヒーロー像を実現するために,“リブート”という形で,Tomb Raiderおよびララ・クロフトの再生を行い,心機一転してすべてを作り直したのが,海外で2013年3月5日にリリースされる予定のTomb Raiderとなるわけだ。はたして,どのようなゲームになるのか,Stewart氏からじっくりと聞いてきた。
「TOMB RAIDER」公式サイト
極限状態に追い詰められたララが,サバイバーとして開花するサマ
4Gamer:
よろしくお願いします。まず,StewartさんがどのようにTomb Raiderに関わっているのかを教えてください。
Karl Stewart氏 (以下,Stewart氏):
はい。Crystal Dynamicsで,グローバル・ブランド・ディレクターとして,活動しており,Tomb Raiderのブランドやフランチャイズ化,そして開発チームのマネージメントなどを中心に行っています。
4Gamer:
Stewartさんの経歴は長いのですか?
Stewart氏:
Eidos Interactiveにきて,もう7年くらいになりますね。「Age of Conan: Hyborian Adventures」や「Batman: Arkham Asylum」のほか,「Tomb Raider: Legends」「Tomb Raider: Anniversary」,そして「Tomb Raider: Underworld」までプロデュースしていますが,当時はシリーズの専属ではなく,社全体のライブラリの1つとして,Tomb Raiderに関わっているだけでした。
2009年になって,ロンドンからCrystal Dynamicsのあるサンフランシスコ・ベイエリアに移り,以来企画からずっとTomb Raiderの新作1本に集中しています。
4Gamer:
ということは,もう3年越しのプロジェクトになるわけですか。
Stewart氏:
ええ。でもロンドンにいたころから構想が始まっていましたから,実際には4年になりますね。
4Gamer:
それでは,新作「Tomb Raider」の基本的な設定から教えてください。
Tomb Raiderは,21歳の若くて冒険心に溢れたララ・クロフトという女性の,人生で初めての冒険を描いたものです。冒険といっても考古学チームに加わった船旅というだけでしたが,それが日本海沖で難破してしまい,ララは1人で孤島に打ち上げられてしまうのです。
その島でララは,同乗していた船の生存者だけではなく,我々が“スカベンジャー”と呼んでいる,過去に何らかの理由で島にやってきて,そこから出られずに定住してしまった集団に遭遇します。そして,過酷な状況の中で奮闘しつつも島の謎に迫っていき,やがて彼女自身が,か弱い無垢な若者からタフなサバイバーへと成長していく姿を追っています。
4Gamer:
つまり,今回はすべての物語が,1つの島の中で描かれているということですか?
Stewart氏:
はい。残った仲間と脱出するまで,島から出ることはありません。
4Gamer:
それは,これまで世界中を駆け巡ってきたTomb Raiderシリーズとしては随分と違った切り口ですね。
Stewart氏:
ええ,まったく違います。でも,そういった過去の作品をもう一度よく検証してみると,ララはさまざまな環境の中で奮闘してきましたが,彼女のパーソナリティに着目したことはありませんでした。世界各地を飛び回りはしますが,どこの場所とも,そしてそこに住む誰ともじっくりと接するようなことはなかったのです。
シリーズを再構築するにあたって,孤島という環境の中でならララが成長していく姿をしっかりと描いていくことができると考えました。1つの島ですが,島そのものもさまざまな地域をフィーチャーすることで,飽きが来ないような作りになっています。マップは,「ハブ」(いわゆる拠点)となる場所を持ついくつかの区画で構築されており,ララは後戻りしたりもできますから,NPC達との人間関係も構築されることになり,その成長過程も表現しやすくなるわけです。
4Gamer:
ゲームの雰囲気がかなり重厚というか,リアルに描かれているように感じました。
Stewart氏:
ララの成長過程を描くうえで,彼女を極限にまで追い詰める必要があるからです。(Gamescom 2012会場の)デモでは,ララが最初に殺すことになるスカベンジャーと対峙しますが,この「やらなければ自分がやられてしまう」という状況において,ララのサバイバルの本能が開花していきます。ですから,ゲームのトーンをこれまでよりもダークに,シリアスに描かなければならないと考えました。
4Gamer:
デモでは,スカベンジャーの親分と対峙するまでに30分掛かっていましたが,そこに達するまでに相当な苦難を乗り越えるというか……,緊迫感の描かれ方は相当なものでした。
Stewart氏:
そうなんです。デモはゲームの開始時点から1時間ほどの内容ですが,相手を1人倒すまでに,それなりの心理的な積み重ねを経ているわけです。「ダーク」と言ってもグロテスクという意味ではないんです。
4Gamer:
デモの場面だけでも,何度も何度も落っこちたり転がったりして,もう身も心もズタズタになってますからね。わき腹抱えて歩いてたり,もう傷だらけでララが可哀想なくらいに(笑)。
Stewart氏:
大丈夫。入浴シーンはないですけど,川を渡ったりするときには,血痕や泥がある程度取れていくようになってますから(笑)。
卑弥呼や邪馬台国がストーリーに絡む!?
4Gamer:
ララは,これまでのシリーズのように上流階級に属する人なんですか?
Stewart氏:
いえ。本作ではララを,地に足のついた一般人として描いており,彼女の家族の社会的なステータスなどについては語られません。今後,シリーズ化されるにしたがい,彼女の背景についても触れることになると思いますが,少なくとも本作では,超高級な豪邸が出てくるとか,そういったことはないです(笑)。
4Gamer:
分かりました。では,ゲームに登場する,スカベンジャーという集団についても教えてください。
Stewart氏:
スカベンジャーは,この孤島に座礁するなり,流れ着くなりして帰る方法を失った遭難者達で,荒くれ者ばかりというわけでもなく,医者や技術者なども混じっています。ララが手を下した相手はロシア語訛りでしたが,西太平洋という立地条件から,周辺地域のさまざまな集団が流れ着いており,生きるために1つの社会構造を形成しています。このあたりも,ストーリーが進むにつれて解明されていくことになります。
4Gamer:
先ほど話していた「ハブ」というコンセプトも,シリーズでは新しいものですね。
Stewart氏:
この島は,ジャングルや砂浜沿いなど複数の区画に分かれており,それぞれの区画にはハブ,つまり拠点が用意されています。ララは,その場所を中心にしてクエストを得ることができ,一度ハブに到達すれば,そこからは即座に以前のハブに戻ることができるようになっています。区画の中では自由に移動でき,そのあたりもこれまでのシリーズとは大きく異なるシステムです。
4Gamer:
前の区画に戻ることで,何ができるんですか?
Stewart氏:
メインストーリーを追い掛けるだけなら,前のハブに戻る必要はありません。ただ,本作では新しい道具や武器を入手できるようになっており,例えば,以前は登れなかった岸壁で,ロッククライミングに挑戦できるようになったりします。また,実績やトロフィーのアンロックのために,特殊アイテムを収集して回りたい場合も十分に想定できますね。マップ中をくまなく歩き回ることは,ララの冒険者としての立場も強調されることになります。
4Gamer:
それは,かなりボリュームのある作品になりそうですね。
Stewart氏:
ええ。たいへんな仕事になっちゃいましたよ,ホントに(笑)。メインストーリーだけなら,慣れれば10時間くらいでプレイできますが,そうしたサイドクエストをすべてこなすとなると随分と時間がかかるでしょうね。区画の1つ1つは,過去のTomb Raiderのどのマップよりも大きいですし,その中にはいろいろなものが詰め込まれていますから。
4Gamer:
それは楽しみです。ところで,これまでに公開されているデモでは,灯篭や鳥居,“ヒミコ”や“ヤマタイ”といったキーワードまで,日本文化のメタファーが各所に散りばめられていますよね。
Stewart氏:
日本文化圏にある島ということで,それなりのリサーチをしています。もちろん,ファンタジーですから脚色していますが,日本の皆さんにも,それなりに満足していただける内容にまとめられていると考えています。
4Gamer:
Tomb Raiderというゲームであるからには,ララは墓地を探索することになるんですよね?
Stewart氏:
深くはお話しできませんが,何層にもわたって潜り込んで行くことになりますよ。
4Gamer:
つまりララは,ヒミコの墳墓を“トゥーム・レイディング”するということですか?
Stewart氏:
まあ……,それはプレイして確かめてください(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。先ほど今後のシリーズ化に関しての話題がありましたが,これは,この新しい「Tomb Raider」がシリーズ化されていくということですね。
そういうことです。現時点では詳しく発表できないのですが,シリーズ化を念頭に企画していますし,E3 2012のMicrosoftのメディアブリーフィングでは,本作ではDLCを用意することも公表しました。また,ゲームというよりもフランチャイズとしてTomb Raiderを育てていきたいと思っています。マーチャンダイジングはもちろん,すでに映画化も決定しており,本作でも脚本家らとの調整を行っています。
4Gamer:
シリーズ化だけではなく,1990年代に一世を風靡したララ・クロフトの栄光を再現するということですね。
Stewart氏:
そうですね。そんな作品に携われることを,非常にうれしく思っています。ゲーム産業の歴史を振り返ってみても,Tomb Raiderほど成功した作品は数えるほどしかないですから,そんな作品を再構築できる幸せをヒシヒシと感じます。
4Gamer:
今後,さまざまな展開が期待できそうですね。本日はありがとうございました。
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