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[GDC 2012]2011年のソーシャルゲーム市場では何が起こっていたのか? 開発者の選ぶ注目タイトル10選
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印刷2012/03/06 20:13

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[GDC 2012]2011年のソーシャルゲーム市場では何が起こっていたのか? 開発者の選ぶ注目タイトル10選

 Game Developers Conference 2012(GDC 2012),ソーシャルゲーム・サミットのオープニングセッションにおいて,Playdomに在籍するスティーブ・メレツキー(Steve Meretzky)氏とデイブ・ロアル(Dave Rohrl)氏の2人が,2011年度のソーシャルゲーム業界を特徴付けた10作品を紹介した。

 昨年に引き続き開催となったこのオープニングセッションだが,今回は以前のようにソーシャルゲームシーンのトレンドを語るだけではなく,“2011年度のソーシャルゲーム”という枠組みの中で,実際にジャンルのトレンドを明確に位置づけた作品を,メレツキー氏とロアル氏が5本ずつ,計10本紹介するという形式になっていた。

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スティーブ・メレツキー氏
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デイブ・ロアル氏

 45分という時間枠のため,作品の1つ1つに対する細かい説明はなかったものの,“ゲームプラットフォームとしてのFacebook”が頭角を現してから丸5年が経過した,現在のソーシャルゲーム業界の動向が良くわかるものになっていた。

 以下で,両氏が上げた作品をセッションで紹介された順番にならって書き出していく。日本では知られていない作品が多いが,アメリカにおける現在のソーシャルゲーム分野を観察する上では,重要な10作だ。

 なお,枠組みはソーシャルゲームとのことだが,このセッションでは“Facebookをプラットフォームにするゲーム”に焦点が絞られていたようだ。


1.「Slotmania」(Playkita)

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 Facebookゲームの黎明期,各メーカーは必ずと言っていいほどポーカーゲームを制作していたものだが,今のトレンドはスロットマシーンゲームである。メレツキー氏が,そんなスロットマシーンゲームの中の代表作として挙げたのが,Playkitaというメーカーの「Slotmania」だ。2011年初頭のローンチから既に1年以上経つが,ソーシャルゲームの指標となるDAU(日間アクティブユーザー)は右肩上がりで,今では190万DAUを記録するほどになっている。

 メレツキー氏によると,カジノ系のゲームは誰でもプレイの仕方を知っているために取っ付きやすく,ほかのジャンルと比べてもメーカーごとのメカニズムに差がない。そのため,ソーシャルゲームの開発を始めたばかりの新興メーカーや個人開発者でも,参入しやすいのが特徴であるという。


2.「Zombie Lane」(Digital Chocolate)

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 Digital Chocolateがローンチした「Zombie Lane」は,Zyngaの「FarmVille」に代表される(ソーシャルゲームの中の)育成シミュレーションというジャンルの他作品と比べて,とりたてて大きな特徴を持ったものではないとロアル氏は言う。
 では,何がZombie Laneをヒット作にしているのかというと,それは「ゾンビという最近流行りのコンテンツを活かした少しおどろおどろしいテーマと,カジュアルゲームの融合」であるというのだ。

 また,このゲームのユーザー層には男性プレイヤーが多いようで,「男性でもハマれるソーシャルゲームの好例」としてロアル氏は捉えていた。


3.「Bubble Witch Saga」(King.com)

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 タイトーの「パズルボブル」に代表される「落ちものパズル」は,カジュアルゲームの金字塔とも言うべきジャンルだ。現在のFacebookゲーム上にも,このジャンルのゲーム性を根幹にした作品が溢れている。メレツキー氏によると,そんな落ちものパズルの中でも,「Bubble Witch Saga」がほかのゲームと異なるのは,「スーパーマリオブラザーズ」風のメタマップを用意して,パズルにストーリーを加味したことだという。

 また,Bubble Witch Sagaではプレイヤーのスキルレベルと,落ちものパズルには付きものである“運”の要素とのバランスがうまく取られており,その点でもファンを惹きつけているとのこと。パズル攻略に失敗するとプレイヤーのライフポイントが減っていくため,それを増やすためにポイントを購入したり,フレンズから分けてもらったりと,マネタイジングやバイラル(いわゆるをクチコミ広げるための施策)の仕組みも,しっかりとゲームに組み込まれている。


4.「Gardens of Time」(Playdom)

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 今,Facebookゲームの中で最もホットなジャンルが「HOG」(Hidden Objects Game)と呼ばれる宝探しゲームで,このジャンルで大きなヒットを飛ばしているのがPlaydomの「Gardens of Time」だ。Facebookゲームのランキングでは第3位に付ける人気を誇り,ピーク時には40万ものDAUを獲得する。MAU(月間アクティブユーザー)の23%,つまり4人に1人は1か月以上にわたってプレイし続けているというデータもあり,ソーシャルゲームの中では大ヒット作と呼べるだろう。

 ロアル氏によると,決してHOGジャンルの中の先駆けとは言えないGardens of Timeがヒットしたのは,持ち家のデコレーションを得るためにパズルを解き,デコレーションを設置していくことで新たなパズルがアンロックされていくというゲームシステムが,大きな理由になっていると解説する。

 ただ,HOGはほかのジャンルと比べてゲームシステムを入念に作り込む必要があり,このGardens of TimeとZyngaの「Hidden Chronicles」以外には,成功例を見つけるのは難しいとのことだった。


5.「Monopoly Millionaires」(Playfish)

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 IP(知的財産)を使ったゲームというのは,現在のソーシャルゲームのトレンドだが,中には大失敗してしまった例もある。「他社のゲームを酷評するのはしのびないが,後で上げる良例もEA(Playfishの親会社)なので」と話しながら,メレツキー氏はボードゲームの「モノポリー」をライセンスした「Monopoly Millionaires」を紹介する。

 Monopoly Millionairesは,配色などはモノポリーらしさをしっかりと表現していると言えるが,電子化されたゲームならではの多様性がなく,同じ設定を繰り返すだけという単調さがネックになった。また,招待したフレンズに罠を仕掛けて負けさせるというような,バイラル要素としてはチグハグな部分もプレイヤーを諦めさせる理由になっているようだ。結果,リリース直後の2011年5月には90万を越えるDAUを獲得しながら,現在は10万DAUを下回ることもあるという状態なのだという。


6.「The Sims Social」(Playfish)

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 「The Sims Social」は,Monopoly Millionairesと同じメーカーによるライセンス型ゲームではあるが,2011年度のFacebookゲームのランキングでは「CityVille」に次ぐ第2位のポジションを獲得し,1か月目で160万,さらに去年末には930万DAUにまでユーザー層を広げたゲームだ。シリーズ累計で1億本を越える一大ブランド「The Sims」が,ソーシャルゲーム市場にも通用することを証明してみせた。

 インタフェースの配色などは「The Sims 3」を彷彿とさせるが,数々のパラメータは簡略化されているのがThe Sims Social の特徴である。また,「Ask Friends」(友人に質問)といったバイラル的な要素がきめ細かく作られており,The Sims本編同様に,追随する類似作品を寄せ付けないほど完成度の高い作品になっているとロアル氏は説明した。


7. 「CastleVille」(Zynga)

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 Zyngaの「Ville」シリーズの最新作でありながら,これといった目新しさのないシリーズものである「CastleVille」が900万DAUの獲得に成功したのは,ひとえに“商品としての価値”の高さゆえであるとメレツキー氏は話す。実際,プレイした人の定着率はかなりのものであるようで,現在でも700万DAUという,ここ最近のZynga作品にはなかった持続性があるという。

 2年前のGDCで,Zyngaは「FarmVille」をたった5週間で作り上げたと,制作スピードの速さを語っていたものだが,CastleVilleはZyngaの株式上場の機を見て開発が進められていたもので,それなりに時間もかけられている。その成果は,より奥深いストーリーやアニメーション,さらには75人のオーケストラ団によるオリジナルサントラの制作といった多方面に見聞できる。

 メレツキー氏は,「Facebookの育成/建設シミュレーションは既に成熟期に入っており,ヒット作を生み出すにはそれなりの投資が必要である」と分析していた。


8. 「Social Empires」(Social Point)

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 あまり人気作とは言えないゲームであるが,次にロアル氏によって紹介されたのはSocial Pointの「Social Empires」だ。これは,「CittyVille」に「Warcraft」のようなストラテジーゲームの要素を加えたようなスタイルになっており,ソーシャルジャンルの中ではコア向けのゲームに属する。

 ロアル氏は,2009年に登場した「Kingdoms of Camelot」や「Backyard Monsters」のようなコア層に向けたゲームを引き合いに出し,「2年前のセッションではコア向けストラテジーの話はもうしないと約束したけど」と前置きしながら,Social Empiresにはモンスターとの戦闘というコアゲームの要素がありながらも,仲間との共闘によるボーナスや,ギフトといった要素でソーシャル性が非常に高くなっているのが魅力的だという。

 Social Empiresも,ローンチから1年近く経ちながらまだ成長を続けており,今では130万DAUを超えるほどになっているとのことで,コア向けゲームが奮わないFacebookゲーム市場に一石を投じる形となった。


9. 「Triple Town」(Spry Fox)

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 本来ならインディ系ゲームの代表作としてメレツキー氏が候補に挙げているはずだったというSpry Foxの「Triple Town」だが,GDCの直前にメレツキー氏が属するPlaydomに買収されてしまった。ただ,この買収劇自体は,ソーシャルゲーム市場における旧来の“パブリッシング・モデル”の台頭を物語るものだとして,新たな角度での紹介となった。

 これまで,ソーシャルゲーム市場では,Zyngaのような“ポッと出のメーカー”が,短い間に巨万の富を築き上げるというサクセスストーリーが多くのゲーム開発者の興味を惹き付けていたが,最近では市場も成熟してしまった感があり,ノウハウのない新興メーカーが参入しづらくなっている。そこで,Playdomのような既存のメーカーがパブリッシャとなり,インセンティブと引き換えに,大手の持つ広報能力や知名度を新興メーカーに提供するというのが,ここで紹介された動きだ。実際,Triple Townには,Playdomからのフィードバックで改良された部分が少なくないとのこと。


10. 「Words with Friends」(Zynga)

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 今年に入ってFacebookプラットフォームで1位になるなど破竹の勢いを見せるのが,Zyngaの「Words with Friends」。手持ちのアルファベットを並べて言葉を作っていくだけの,昔からある「Scrabble」というゲームであり,ロアル氏もここまで成功するとは思っていなかったらしい。しかも,元々Facebook向けに制作されたわけではなく,iPhone向けのモバイルゲームとして登場したものであった。

 Scrabbleは,欧米人なら誰でもプレイしたことのあるボードゲームであり,そのルールの分かりやすさが人気の獲得に繋がったとロアル氏は解説する。また,気軽にオンラインで対戦相手を見つけて遊べることが功を奏して,MAUは43%という高いリピーター率を誇る結果になっていることにも触れた。

 このWords with Friendsのような成功作品は滅多に見られないものの,今後はモバイルゲームからソーシャル市場へのコンバート作品が増えてくるではないかと,ロアル氏は今年のトレンドを予測している。

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    Facebook向けアプリ

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