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イメージエポックはパブリッシャとして“JRPG”とゲーム業界を盛り上げていく。2011年以降のプロジェクトが続々発表されたイメージエポック「新作発表会 兼 JRPG宣言決起会」レポート
発表会の冒頭で上映されたムービーでは,「JRPGは不要なのか?」「JRPGにはもう飽きたのか?」といった数々の問いかけのあと,「私たちは,そうは思わない!」というイメージエポックの力強いメッセージが掲げられた。そのあと,これまでイメージエポックが開発してきたJRPGタイトルが,スクリーンに次々と映し出され,続いて同社の代表取締役である御影良衛氏が登壇。御影氏は,イメージエポックが2011年からパブリッシャ事業に進出していくことをあらためて発表した。
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「イメージエポック」公式サイト
ここで御影氏は,JRPGを“Japan RPG”の略称と定義づける。JRPGは“クラシックスタイル”とも呼ばれ,海外では否定的な意味で使われることも多いが,そうした現状に対して「非常に悔しい。JRPGにも普遍的な面白さや,新しい可能性があると信じている」と見解を述べた。
コンセプトは“ロストゲーム”
騎士団の最後の一日を描いた「最後の約束の物語」
イメージエポックがパブリッシングするJRPGタイトルとして最初に紹介されたのは,2011年4月28日発売予定のPSP用ソフト「最後の約束の物語」だ。同タイトルは,滅びゆく楽園と運命を共にした黄金の騎士達の,最後の一日を描いたダークジュブナイルファンタジーで,コマンド選択式RPGとのこと。
「最後の約束の物語」公式サイト
御影氏によれば,同タイトルの難度設定は少々高めだが,喜多村さんの演じるリゼットのナビゲートに助けられる局面もあるとのこと。また御影氏は,喜多村さんの起用に際し,リゼットは“陰のヒロイン”と呼称されるほどゲーム中では頻繁に声を聞くことになるため,開発スタッフが検討を重ねた結果,決定したとのエピソードを披露した。
喜多村さんはそれに応えて,淡々とした中にもプレイヤーの労をねぎらうような表現を心がけたと述べ,仕上がりを楽しみにしていると続けた。
さらに喜多村さんは,ストーリーや世界観について「つらい人間関係や舞台背景があり,ストレートな内容が魅力的」と言及。それを受けた御影氏は,ゲームの設定を「ストーリーとしてはド直球だが,必ずしも王道展開ではなく,最後の1日の物語。1日で仲間や家族,一緒にいる人達が完全に滅ぼされてしまう」と説明した。
最後に,喜多村さんは,リゼットについて「凜とした女性で,年相応の女の子というよりは,任務を遂行する強い意志を持っています。そのためセリフや芝居のニュアンスも淡々としていますが,ちょっとした部分で可愛らしさや女の子らしさが垣間見れるようになっていますので,注目してください」と述べていた。
ニコニコ動画の人気キャラを新たな世界観で描く
「ブラック★ロックシューター THE GAME」
ゲストとして登壇したグッドスマイルカンパニーの代表取締役を務める安藝貴範氏は,ニコニコ動画でブレイクした「ブラック★ロックシューター」というキャラクターの生い立ちを説明。イラストレーターのhuke氏がpixivに投稿した1枚のイラストを皮切りに,それにインスパイアされたsupercellのryo氏が「初音ミク」をボーカルにした楽曲を制作したこと,さらにその曲に感銘を受けたhuke氏がオリジナルPVを制作し,ニコニコ動画に投稿した経緯などが簡潔に紹介された。
なお,このPVは現在370万回以上再生されており,オリジナルアニメも展開。グッドスマイルカンパニーが手がけたブラック★ロックシューターのフィギュアも25万体という異例の売り上げを記録している。安藝氏は一連の状況について,「ブラック★ロックシューターは“クリエイティブ心”をくすぐるコンテンツなのではないか」とコメントした。
御影氏によると,イメージエポックがJRPG版を手がけることになったのは,huke氏が,イメージエポックの代表的なクリエイター新納一哉氏に,「ぜひ作って欲しい」と希望したのがきっかけとのこと。最初の打ち合わせは,御影氏を含めた3人で「作ろう作ろう!」と騒いでいただけ,とのエピソードも披露された。
JRPG版は,シナリオに野島一成氏,アニメーションにUFOTABLE,キャストに坂本真綾さんほかを起用。先述した世界観の中,最終兵器「B★RS」が目覚めるという展開で,御影氏は「オリジナルをリスペクトしながら,皆さんが世界観を作り出していく一助になるようなゲームを目指している」とコンセプトを述べる。
またゲームシステムについては,「新納一哉が作るものなので,少し変わったものになるだろう」と述べ,今後の情報公開に期待してほしいとまとめた。最後に御影氏は,2011年にグッドスマイルカンパニーから関連フィギュアがリリースされるといったニュアンスの発言を残しているのだが,こちらも今後の発表を待ちたいところだ。
SCEJの河野プレジデントとセガの野村氏が
イメージエポックのサポートを表明
また河野氏は,先日,初めてイメージエポックのオフィスを訪れたときの感想を「目をギラギラさせている,希望を持った北米の起業家のようだった」と表現。御影氏をはじめとする若いスタッフ達が「何かやってくれそうだ」と感じたと続けた。
河野氏の言葉を受けた御影氏は,JRPG自体はイメージエポックが創出したものではないが,最近は新作タイトルが少ないことに言及。これまでリリースされたタイトルはほとんどクリアするほどJRPGに入れ込んでいる御影氏は,この状況を正視して「しょうがない,自分達でタイトル数を増やそう」と決めたと述べる。
それを聞いた河野氏は,ゲーム業界を活性化させるためにはシェアを拡大するのではなく,パイを広げることが重要とし,その新しい仲間としてイメージエポックが名乗りを上げてくれたことに感謝していると述べた。
オンラインではNHN Japanでブラウザゲーム
「ニコニコアプリ」でソーシャルゲームを展開
一つは,2011年夏から展開する予定のブラウザシミュレーションRPG「シュヴァリエ・サーガ・タクティクス」だ。プラットフォームはPC / PlayStation 3 / スマートフォンで,ゲーム部分はイメージエポックが,ネットワーク部分は4Gamerでもお馴染みのNHN Japanが開発を担当する。
ゲストとして登壇したNHN Japanの代表取締役社長 森川 亮氏は,同タイトルの特徴として三つのポイントを挙げる。最初のポイントは,“次世代型ブラウザゲーム”であるという点で,森川氏によればシステム的にもビジュアル的にもコンシューマゲームに近いとのこと。また御影氏も,2008年にリリースした「ルミナスアーク」の通信対戦が,海外で高い評価を受けたことから,いつかシミュレーションRPGでオンライン対戦を実現させたいと考えていたと述べる。
2番目のポイントは,ソーシャルゲームの要素で,同タイトルは時間をかけて本格的に遊ぶことが可能だが,短い時間でも楽しめる仕掛けも盛り込んでいるという。詳細は,スマートフォン版の情報公開に伴って発表されるとのこと。
3番目のポイントは,三つのプラットフォームが連動している点。これは,単に同じ内容にするのではなく,それぞれの価値を連携させることで新しい楽しさを提供していく,としか説明されなかったが,御影氏は「基本無料のサービスなので,実際に手に取って判断していただきたい」と述べる。
森川氏は「両社のタッグで,日本のみならず世界に展開していきたい」と展望を述べ,また御影氏も「3プラットフォームの連携は世界でも例がない。オピニオンリーダーになれるよう,完成度の高いものをリリースしたい」と意気込みを見せた。
夏野氏は「ソーシャルゲームのような“ながらゲーム”は,携帯電話では大きな成功を収めているが,PCではまだ本格的ではない。そこでニコ動で何かできないかと考えていた」と企画の経緯を説明。また御影氏は,チビキャラで人気のCHAN×COさんをイラストレーターとして起用したことを発表した。なおゲームシステムは,後日あらためて公開されるが,発表会後の囲み取材では,プレイヤー各自が自分だけのブラック★ロックシューターを育てて,ほかのプレイヤーと交流していくような内容になる,との説明がなされた。
2012年以降リリースに向けて四つのプロジェクトを展開
近日中にセガから新作リリースも
また2012年以降の予定として,四つのプロジェクトが紹介された。一つめは,TYPE-MOONとの完全新作プロジェクトで,開発は3年程度を見込んでいるとのこと。御影氏は,この情報からでも,プラットフォームやゲームのジャンル,規模が予想できるのではないかと述べる。
二つめは「ARK」プロジェクトで,イメージエポックのオリジナルシミュレーションRPGの企画とのこと。三つめの「MARS」プロジェクトは,JRPGクリエイターと共同で進めるもので,これまた御影氏は「勘のいい人なら誰だか分かるのでは」と述べていた。四つめの「REMUS」プロジェクトは,古いPCゲームやオールドRPGを,イメージエポックがJRPGとして再構築するというもの。御影氏は「弊社スタッフは再構築を得意としているので,伝統あるタイトルがもう一度遊べるようになる」と展望を述べた。いずれのプロジェクトも,2011年以降,情報を公開していくとのことだ。
発表会の最後,御影氏は,イメージエポックがパブリッシャとしては新参者で,ゲーム開発もまだまだ完璧ではないと述べ,「しかし去年より今年のほうが,今年より来年のほうがいいゲームを作るという意志で精進していきます。いつかイメージエポックのゲームで感動したといっていただけるようになりたいです」と抱負を述べる。
22歳でゲーム開発者としてデビューし,現在29歳となった御影氏は,その間,多くの先輩からチャンスと愛を与えてもらったと述べ,「今後は先輩達から受けている恩を,今の中高生,小学生,そしてこれから独立する会社に与えていけるようになりたいと切に思っています。今後もよろしくお願いします」と締め括った。
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ブラック★ロックシューター THE GAME
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最後の約束の物語
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