連載
海外ゲーム四天王 / 第67回:「Farming Simulator 2011」
ドイツのデベロッパ,Astragon Softwareの新作は,土と太陽の暮らしを余すところなく描いた問題作,「Farming Simulator 2011」だ。日本語版まで出た前作「Farming Simulator 2009」をパワーアップし,マニア垂涎の農業機械や農機具を取りそろえたという本作。第一次産業マニアなら見逃すことはできないだろう。しかも本作から「酪農」の要素まで加わったというから,これは見逃せない。
そんな本作を,ネタじゃなくて本気で農業機械や農機具に憧れているライターのUHAUHA氏が紹介する。
世界的に良好なセールスを記録した農場シミュレーション「Farming Simulator 2009」(邦題 ファーミング シミュレーター 2009 〜大地へ挑もう! ぼくらの農業生活〜 日本語版)。筆者を含め,日本中の農機具マニアが農作業に励み,広大な農場を走り回る何台ものトラクターやコンバインを眺めて「う〜ん,たまんねぇ」とつぶやいたのはほぼ間違いないところ。その続編となる「Farming Simulator 2011」が発売されたのだから,これはどうしてもやらねばならない。
「Farming Simulator 2011」公式サイト
本作の開発は,ビル解体業シミュレーション「Demolition Company」やレッカー車シミュレーション「Tow Truck Simulator 2010」,さらにフォークリフトシミュレーション「Forklift Truck Simulator 2009」などをリリースし,不覚にも本連載「海外ゲーム四天王」とは切っても切れない関係になりつつあるドイツのデベロッパ,Astragon Softwareだ。上記作品以外にも,船舶シミュレーション,木材伐採シミュレーション,スペースシャトルシミュレーションなど,大丈夫かと聞きたくなるほどマニアックなタイトルばかりリリースしているメーカーである。
ゲームモードは前作と同様,大農場主を目指して農作業に勤しむ「キャリア」(CAREER),農業機械や農機具を使用したミニゲームに挑戦する「ミッション」(Mission)のほか,本作で新たに,複数のプレイヤーと一緒に農作業を楽しめる「マルチプレイ」(Multiplayer)が追加された。
ちなみにマルチプレイモードでは,インターネットやLAN回線を使って,最大4人のプレイヤーが同じマップで農作業を楽しめるようだ。“ようだ”というのは,ホストとなるプレイヤーは大勢いるのだが,Joinしようとしてもうまくコネクトできず,自分でホストを立てても誰も入って来ないという悲しい状況が続いているからだ。未だにマルチプレイを楽しめていないのが切ないが,やっぱり欧州のプレイヤーが大半なのが原因なのかしら。
というわけで,ここではシングルプレイの紹介をするわけだが,実際のところ本作は,前作の強化版といった雰囲気に仕上がっている。したがって,前作をプレイしているならば,すぐに農作業に入れるが,新しい要素もいくつかあるので,やはりここは,チュートリアルを兼ねているミッションモードを一通りプレイしてからキャリアモードに挑戦するのが農業従事者としてのタシナミだ。
ミッションモードには「すべてのマーカーを通過してゴールしろ」「鋤(すき)で田んぼを耕せ」「放置されている農業機械を正しい駐車スペースに入れろ」など15種類のミッションが用意されている。クリアタイムによってゴールド,シルバー,カッパーのメダルが獲得できるので,挑戦しよう。ただし,前作よりシビアに調整されている印象で,どれもゴールドメダルを取るのに一苦労することになるだろう。
土と太陽の暮らし,農作業の流れを簡単に書いておこう。まず,作物を育てるスペースを決めたら,トラクターに鋤を取り付けて土を掘り返し,耕耘機で田んぼを耕す。そして小麦,大麦,キャノーラ,トウモロコシ,牧草,いずれかの種をまくのだ。
芽が出たら,肥料散布機で肥料を撒く(育つのが早くなるらしい)。作物が黄金色に変化したら,いよいよコンバインで収穫だ。農業の喜びを感じる瞬間である。
で,収穫したら醸造所か製粉所,あるいは港に運んで出荷すればお金が入るし,相場の変動で売値が上がるまでサイロに保管しても良い。こんな感じでお金を貯め,それで新たな農業機械や農機具を購入,さらに人を雇ってマップ全体に点在する田んぼで農作業をさせていくことになる。
ここでぜひ読者の皆さんに喜んでもらいたいのは,本作から,牧場で乳牛を飼育する「酪農」ができるようになったことだ。
ショップで乳牛を購入し,牧場に放って餌を与えるとミルクが得られる。もっとも,餌となる牧草や飼育用のトウモロコシを与えるだけで,搾乳から出荷まで全自動でやってくれるので便利だが,ちょっとはしょり過ぎのような気がしないでもない。せめて乳ぐらい搾りたかった。
ゲーム的には,餌にする以外に使い道のない(つまり売却できない)牧草や,出荷用とは別に餌用のトウモロコシを育てなければならないあたりが頭の使いどころだ。
また,牧草の収穫や,トウモロコシを飼育用に加工するためには専用の農業機械が必要になる。こうしたことから,ある程度農場を大きくして資金を貯めたのちに「酪農」に手を出さないと失敗するだろう。というか,失敗した。
ゲーム進行は,いかにも農家らしく全体にスローペースで,雇った人々が運転する何台もの農業機械が畑を走り回る様子をノンビリ眺めつつ,自分もトレーラーに作物を乗せてゆっくり港や製粉所へ向かう……うーん,いいねえ。
忙しく奮闘することなくプレイできるところが実に良い。人を雇ってしまえば,ゲーム画面をじっと見る必要はなくなるので,バックグラウンドで本作を動かしつつ,ネットに入ったり,仕事をしたりしながら,たまに雇用者がサボっていないか状況をチェック,そんな感じでプレイしている。
前作のレビューで「家畜が飼えたらなぁ」とか「島に人っ子一人いないのが寂しい」とか書いたが,本作で家畜が飼えるようなったし,島には歩行者もいるしで,些細な要望が反映されたことがちょっぴり嬉しい筆者だ。前作同様,本作もワクワクしながらプレイできた。
農業機械や農機具の種類も増えたが,しかし,やっていることは前作とほとんど変わらないし,テーマからしてプレイヤーを選ぶことは間違いない。今のところ日本語版の話は聞こえてこないが,ゲーム販売サービスの「Steam」では,29.99ドルで購入できるので,話のタネに挑戦してみるのも悪くないと思うなあ,ぼかぁ。
ゲームに登場するトラクター,コンバイン,トレーラーなどの農業機械,農機具は前作に比べて格段に増えており,DEUTZ-FAHR,KRONE,HORSCH,POTTINGER,VOGEL&NOOTといった主要農業機械メーカーから許諾を受け,細部まできちんと再現されているようだ。
“ようだ”というのは,現物を直接見る機会がほとんど皆無なうえ,ヨーロッパ製の農業機械であるため,本物とゲームのものが同じかどうか比較できないからだ。
MODのデータを読み込むことが可能で,MOD文化が盛んなヨーロッパを中心に,多くの人々が農業機械作りに精を出している。いろいろなサイトからさまざまな農業機械,農機具のデータを入手して楽しむのもアリだろう。今のところちょっと見つからないのだが,個人的には日本製のトラクターやコンバインで農作業をしてみたいと思っている。
|
- 関連タイトル:
ファーミング シミュレーター 2011 〜ミルクや作物を生産しよう! ぼくらの農場生活〜 日本語版
- この記事のURL:
キーワード
(C)2011 astragon software GmbH