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コアな古典的RPGファンにこそ遊んでもらいたい。“GENERATION XTH”シリーズ最新作「迷宮クロスブラッド」のレビュー
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印刷2011/01/18 12:56

レビュー

Team Muramasaが手がける“GENERATION XTH”シリーズ最新作

迷宮クロスブラッド

Text by 川崎政一郎


 今回紹介するPCゲーム「迷宮クロスブラッド」は,2010年12月23日にエクスペリエンスから発売された,3Dダンジョン探索型のシングルプレイ用RPGだ。開発を行ったTeam Muramasaは,“GENERATION XTH”と名付けた世界観で,これまでいくつかのタイトルを手がけており,本作はそのシリーズ最新作という位置づけである。

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「迷宮クロスブラッド」公式サイト


 古くは「Wizardry」などに代表される3Dダンジョン探索型RPGは,日本で今も根強く支持されている。現在も,このジャンルのタイトルが続々と登場してきているのは,その証でもあるだろう。
 いちゲームジャンルとして昔から安定した人気があるが,その一方で,Windows PC/コンソールを含めると相当な本数が存在しており,人によっては少々新鮮味が薄れてきているかもしれない。

 そんななか本作は,コアなRPGファンにとっても,新鮮かつ十分に手応えのある作品に仕上がっている。まず,戦闘や各種メニュー画面など,基本的なゲームプレイが素晴らしく快適だ。例えばこの手のゲームの場合,操作性に関しては長時間プレイするにつれ,どこかしらで不満やストレスが出てきたりするものだが,本作の場合は操作に慣れていくにつれ,まるで手足の延長のように操れるようになってくる。

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 そしてもう一つ,本作の最大の特徴といってよいのが,徹底的にこだわった世界観である。これまで,パーティが冒険へ赴く動機,マイキャラ達の職業,アイテムや装備品など,多くの人が「3DダンジョンRPGだから」と,なんの疑問も持たずに受け入れてきた常識に対して,“GENERATION XTH”では,本シリーズならではの解釈がふんだんに盛り込まれているのだ。これがとても新鮮なのである。

 このシリーズの世界には膨大な裏設定が用意され,プレイ中,そんな世界の情報がちらりと垣間見えたりする。こういった演出による世界観の説得力,そしてゲームへの没入感はかなりのものだ。一言でいうと,制作者の愛情ある“こだわり”が随所で感じられるタイトルに仕上がっており,この手のタイトルに多く触れてきた人であればあるほど,そのこだわりを強く実感できることだろう。

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異形に立ち向かう「コードライザー」としての能力


 本作の舞台となるのは,近未来の東京をベースにしたパラレルワールド。この世界で人々は平和に暮らしていたが,突然“異形”と呼ばれるモンスターが現れ,人知を超えた事件が起こり始める。しかも異形の侵食によって,各地が次第に異空間(アビス)化するといった事態まで起こり出したのだ。

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 異形には通常の兵器が利かないため,その対策のために超科学を駆使する非公式組織“CPO”が世界規模で発足。そしてCPOの実働部隊として,“特務隊エクス”が結成された。エクスにとって最大の武器は,さまざまな情報が記載された“コード”と呼ばれるプログラムを元に,その内容を実体化させる“コードライズ”なる能力である。これを使うことで人間離れした能力を手に入れることができ,異形に対する数少ない対抗手段として期待が持たれる。

 プレイヤーが扮するマイキャラは,日輪学園の生徒としてごく普通に暮らしていたものの,異形との遭遇を機にコードライズ能力を持った稀有な人物として見出される。そして特務隊エクスの一員となり,異形を打ち破り東京のアビス化を食い止めるべく,CPOからのさまざまな任務に挑むことになる……。というのが大まかなストーリーだ。

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 コードライズで得られる代表的な能力には,大きなくくりで「ブラッドコード」「アイテムコード」などがある。ブラッドコードとは,歴史上の偉大な人物や神々らの能力が記されたDNAのようなプログラムだ。
 エクス隊員がブラッドコードを身につけることで,ざっくばらんに言うと,RPGにおける“職業”に就くことができる。戦術士,魔術士,聖術士,王騎士など,全部で23種類のブラッドコードがあり,RPGにおける代表職は一通り押さえられている。

ブラッドコード
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 ブラッドコードを身につけた状態で冒険すると,(RPGにおける職業と同様に)経験を積んでレベルアップしていく。また,一人のキャラクターはメインとサブの二つのブラッドコードを同時に装着できるのだが,この特徴的な要素「クロスブラッド」は,ゲーム名そのものにもなっている。
 サブのブラッドコードは,取得経験値がメインの半分になる点を除き,レベル制限などのペナルティはこれといってない。ブラッドコードの変更はいつでも自由に行え,しかも変更前のレベル情報も残されている。6人分のメンバーによるブラッドコードの組み合わせは幅広く,これによる戦術の追求は本作の大きな醍醐味だ。

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アイテムコード
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 もう一つの“アイテムコード”は,冒険で手に入れたさまざまなコードを実体化して装備/使用できるというもの。この装備アイテムは,和洋折衷から現代風,SF系まであらゆるものが登場するが,本作ではこれらの装備品すべてが,マイキャラの外見に反映されることに注目したい。アイテムの合成/強化システムも豊富で,性能のみならず外見も含め,装備アイテムを揃えていくのが実に楽しい。

 話は前後するが,マイキャラの外見に関しては,キャラメイク時に“髪型,目,口,輪郭”など全14パーツの部位を選べる。テンプレートの一例をスクリーンショットとして紹介しよう。
 基本的にタッチがアニメ絵路線である点は,本作が最も人を選びそうな要素となっているが,このキャラメイクについて「作り込める」と感じる人は多いだろう。マイキャラにどれだけこだわりを持てるかは,RPGとしての最重要ポイントの一つだが,先に説明したアイテムコードも含めて,マイキャラのグラフィックスまわりはとてもよく出来ている。

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独特な世界観に洗練されたシステムの数々
3Dダンジョン探索型RPGとしての完成度は非常に高い


 都内の各地にて,異形がさまざまな事件を引き起こすようになり,マイキャラ扮するエクス隊は日輪学園内に設置された司令部を拠点に,事件解決のためダンジョンへと赴いていく。
 話の大筋としては,行方不明となった若者が年老いた状態の死体で発見されるという,“急老症”なる怪事件が次々と起こり,これを究明していくプロセスで,さまざまな人物や事件が新たに浮かび上がってくるのだ。

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 MAP上には同程度のレベル帯のダンジョンが常に複数用意されており,メインシナリオ以外の自由度は比較的高めだ。あまりに自由すぎるとゲームバランスが気になるところだが,本作では一定レベルごとにキャップが課せられており,これを解除するためのメインクエスト達成が必要となる。自由すぎず,一本道すぎずのバランスが良く,お仕着せのメインシナリオをやらされている感じはしない。

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 ダンジョンの多くは2〜3の少なめのフロア数で構成されており,割と早いペースでダンジョンを渡り歩くことになる。ダンジョンごとに景観は大きく異なり,学校や病院,高層ビルや地下鉄車内など,景色がテンポ良く切り替わっていく。
 これら各ダンジョンでの異形との戦いやクエストを通じて,我々がよく見知った世界が次第にアビス化しつつあることを,ひしひしと感じ取ることができるだろう。街を行きかう人に聞き込みを行って攻略のヒントを得るなど,単なるダンジョン探索RPGとはひと味違うところも好印象だ。

 ダンジョンの攻略やバトルシステムについては,このタイプのジャンルから大きく外れてはおらず,各掲載画像を見てもらえば大体分かるとおり,オーソドックスな作りといえる。実際にプレイしてみて印象に残ったのは,操作性がかなり快適なこと。キーレスポンスやローディングが早いのはもちろん,ミニマップやオートマップが無条件で使えたり,初めて遭遇する敵は目安となるレベル数が表示されたりと,親切な作りになっている。
 戦闘コマンドの入力時は,Enterキーの押しっぱなしで素早くリピートが行えるが,呪文使用時はうっかり防止のため直前で止めてくれたりと,細かい気配りが効いている。

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 個人的に,GENERATION XTHシリーズは本作が初プレイだったのだが,その感想を一言でいうと「もっと早くから知っていればよかった!」である。アニメタッチのイラストにライトノベル風の設定など,ちょっと軽めの雰囲気に見えることから偏見を抱いている人もいるかもしれないが(まあ,プレイ前の筆者のことだ),実際にプレイしてみると,全然そんなことはないと気付かされるはず。

 何よりプレイしていて,制作者の深い思い入れを随所で感じられる点が良かった。現代の東京をベースにした世界観そのものは,この手のタイトルでは必ずしも珍しいものではないが,GENERATION XTHシリーズは独自の解釈が実に面白いのだ。極端な話,3Dダンジョン云々を抜きにして,本作の世界観に触れていくだけでも十分楽しめるほどの完成度と言ってよい。例えば,昔の「真・女神転生」シリーズなどが好きな人であれば,本作が刺さる可能性はかなり高いはず。

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 しかも,これがWindows PCの国産タイトルというところが,古くからのPCゲーマーとしては嬉しい。「迷宮クロスブラッド」というタイトルはもちろんのこと,GENERATION XTHシリーズならびにTeam Muramasaという開発チームにしても,3Dダンジョンに対して一家言ある人なら,ぜひ注目してもらいたい。

「迷宮クロスブラッド」公式サイト

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    迷宮クロスブラッド

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