レビュー
「噂が現実になる」RPGが12年の時を経てリファイン。色あせない魅力と新たな可能性を秘めたPSP「ペルソナ2 罪」
ペルソナ2 罪
とはいえ「ペルソナ」シリーズは,「真・女神転生」シリーズではやや希薄だったキャラクター性に大きく注力しており,冒険の舞台やストーリー展開が,よりプレイヤーの身近なものになっている。さらに「ペルソナ3」「ペルソナ4」では,キャラクターデザインの変更に加え,ポップなファッション性や音楽性がより全面に押しだされ,数多くの新規ファンを獲得しているのだ。
「ペルソナ2 罪」公式サイト
今回紹介する「ペルソナ2 罪」は,タイトル通りペルソナシリーズの2作目となる作品だ。10年以上の時を経てリファインされた本作は,戦闘システムの改良や新規オープニングムービーの追加,ダウンロードクエストをプレイできる「シアターモード」の搭載など,さまざまな面でパワーアップ。PS版をプレイしていなかった人はもちろんのこと,すでにPS版をプレイ済みの人でも,あらためて楽しめる作品に仕上がっている。とくに後者にとっては,プレイ中いつでも,ゲーム難度を「EASY」「NORMAL」「HARD」の3段階から選べるようになった点が嬉しい要素と言えるだろう。
本稿では,新たに生まれ変わった「ペルソナ2 罪」の特徴的な要素を紹介しつつ,ゲームの魅力を解説していこう。
しかしいつしか,街では「セブンスのエンブレムは“呪いの紋章”で,身に付けていると容貌が破壊される」という噂が広まっていた。そして,その不気味な噂は現実のものとなり,それをきっかけに,街では“噂が現実になる”という奇妙な現象が発生したのだ。
とある事件がきっかけで「ペルソナ」という別人格を召喚できるようになった主人公達は,街で起こっている現象の真相を探るべく調査を開始する。次第に明らかになっていく噂と事件の関係真相とは一体……。
というのが,「ペルソナ2 罪」の大まかな導入ストーリーだ。PS版が発売された1999年は世紀末ということもあり,ノストラダムスの大予言を筆頭とするミステリアスな噂が飛び交う,オカルトブームのまっただ中にあった。そんなタイミングで発売されたPS版「ペルソナ2 罪」は,その時代の空気を反映したかのような興味深いストーリーで,ゲームファンから大きな注目を集めていた。
ちなみにPSP版では,一部のキャラクターや団体名がPS版から変更されているが,ストーリー展開は基本的に同じだ。PS版では,上記のキャラクター名/団体名が原因の一つとなり,国外版が発売されなかった経緯があるので,この点に関しては仕方のないことだろう。
さまざまな改善により,PS版に比べ段違いにプレイしやすくなったバトル
バトルシステムは,ペルソナ1と同じくターン制のコマンド選択式である。PSP版では,パーティステータス画面が改善されていたり,メンバーの行動順が表示されるようになっていたりと,全体的に戦況を把握しやすくなっているのが特徴だ。
またPS版では半オートバトルが採用されていたが,PSP版では1ターンごとにコマンドを選択できるようになっており,バトルの戦略性が大幅にアップ。さらに,複数のメンバーが協力して技を繰り出す“合体スキル”時に,キャラクターのカットインが表示されるようになったり,ペルソナ出現時の演出をスキップすることが可能になっていたりと,演出/プレイアビリティもバランス良く向上している。
ちなみにPS版では,行動順設定によって自動的に合体スキルが発動していたが,PSP版ではメニュー画面から合体スキルを選択でき,その上,合体スキル発動者の順番も自由に決められる。PS版では少々運任せだった部分を,PSP版では自分の意志で操れるようになったわけだ。PS版の半オート戦闘に不満を持っていた人は,プレイヤーの意志を介入させやすくなったPSP版のバトルを,ぜひ確認してもらいたいものだ。
なお合体スキルは,発動者全員の行動順位が回ってくるまで発動できない。一見扱いづらそうな大技ではあるが,PSP版では行動順位が常に確認できるため,実際にプレイしてみると,戦術に組み込むのはそんなに難しくはない。とくにペルソナシリーズは,攻撃側の属性と防御側の属性の“相性”が非常に大きな意味を持っているため,安定した効果が期待できる合体スキルの使い方次第で,バトルの行方はいかようにも変化するというわけだ。
もどかしくも楽しい悪魔とのコンタクト
タロットカードを集めてペルソナを召喚/降魔せよ
PS版では,コンタクトしている悪魔の「足下のライト」と「感情アイコン」を頼りに交渉を進める必要があったが,PSP版では「感情グラフ」が表示されており,コンタクトしている悪魔の状態を簡単に確認できるため,PS版よりも悪魔との交渉がスムースに行える。パーティの戦力を向上させるには,より強いペルソナを得ることが必須とも言える本作において,コンタクトシステムの簡略化は有り難い変更と言えよう。
「ペルソナ3」「ペルソナ4」ではバトル終了後,比較的簡単にペルソナカードを入手できる。なので初めて「ペルソナ2 罪」をプレイした人は,悪魔とのコンタクトを面倒くさく思うかもしれない。しかし,悪魔のアクション/リアクションの面白さや,交渉を成功させてタロットカードを得る達成感は,本作ならではの魅力とも言えるだろう。
ちなみに,タロットカードを手に入れただけでは,ペルソナを召喚することはできない。実際にペルソナの能力を得るには,ベルベットルームという場所に行き,イゴールなる老人を通じてペルソナを召喚/降魔してもらわなけばならないのだ。召喚の際,タロットカードが必要になるのだが,ペルソナの種類によって必要となるタロットカードの枚数が変わってくるので,その点はご注意を。
なおペルソナとキャラクターにはそれぞれ相性があって,相性が悪いとスキルを使う際の消費SPが大きくなるなど,ペナルティが生じる。逆に相性が良ければ,ペルソナが特別な力を発揮したりするので,その辺りの事情を考慮しつつタロットカードを集め,ペルソナを召喚し,降魔させるキャラクターをアレコレ工夫してみよう。
ゲームの攻略にも密接に関わってくる噂システムを使いこなそう
「噂が現実になる」。この,都市伝説関連書籍の帯コメントのようなフレーズを実際にシステム化したのが,本作のウリの一つである「噂システム」だ。「ペルソナ2 罪」では,人から聞いた噂話を広めることによって,その噂を現実のものとすることができる。流布する噂によって,ショップで販売されるアイテムの種類や値段が変わったり,カジノの景品や懸賞の品揃えが変わったりすることもある。また,特定の悪魔の出現を操作できる噂もあるため,ドロップアイテムやタロットカードの入手頻度にも影響を及ぼすことになる。このように噂システムは,使い方次第でゲームの攻略難度を変化させることができるほど,大きな意味を持つシステムなのだ。
街で集めてきた噂は,葛葉探偵事務所でお金を払うことで広められる。ものによっては高額な料金を払わなければならないが,有益だと思える噂に関しては,所持金の許すかぎりどんどん広めていこう。ちなみに噂は,一度流してしまうと取り消すことはできないので,その点については注意してほしい。
「シアターモード」でダウンロードクエストを楽しもう
PSP版で新たに追加された要素の中でもっとも興味深いのは,「シアターモード」の存在だろう。これは,珠?瑠市にある施設“クライマックスシアター”で映像を視聴できる(クエストをプレイできる)モードだ。ここでは新たなクエストをダウンロードコンテンツとして楽しむこともできるため,ちょっとした息抜きとしても利用できそうだ。
またここでは,映像作品を視聴するたびにポイントが加算され,会員のランクが上がっていく。ランクが上がっていくにつれ,施設の案内人“ミツギ モトコ”の対応が変化するらしいのだが……?
プレイできるクエストは,「デビルサマナー 葛葉ライドウ」シリーズでディレクターを務めた山井一千氏が手がけている「カリスマの教室」や「ペルソナ泥棒」が最初から収録されているほか,さまざまな内容のものが配信される予定だ。ちなみに4Gamerでも,ペルソナ2 罪とのコラボレーションクエストを用意しているので,ダウンロードが可能になったら,ぜひチェックしてみてほしい。
10年以上の月日を経ても色あせない面白さ
より遊びやすくなった「罪」を知り「罰」に備えよう
しかし,攻撃側と防御側の相性で展開が大きく変化するスリリングな戦闘システムや,プレイヤーの興味をグイグイと引きつける秀逸なストーリー展開などは,昨今のゲームと比べてもまったく見劣りしない。また新規オープニングムービーや,合体スキル時に挿入されるカットインなどの追加なども,キャラクターファンからすれば嬉しいポイントだろう。
なお本作は,メモリースティックへのメディアインストールにも対応しているので,ロード時間もオリジナル版に比べてかなり短い。オリジナル版のロード時間の長さに泣いた過去を持つ人は,ぜひPSP版でリベンジを果たしてほしい。そして,「ペルソナ」シリーズといえば,BGMの良さも人気の秘密だが,PSP版ではBGMをオリジナル版とリミックス版の両方から選択できるというのも嬉しいところである。
「ペルソナ」シリーズには「3」や「4」から入った,という人も多いと思うが,本作は昨今の「ペルソナ」シリーズに通じる要素も多いため,比較的違和感なく遊べるのではないだろうか。ちなみにペルソナ2といえば,オリジナル版では「罪」と「罰」の2作品がリリースされていた。現在のところ,「罰」のリリースは正式に発表されていないが,よほどのことがない限りは発売されるはずである。そのとき「罪」をプレイ済みであれば,より深く「罰」を楽しめることは間違いないので,興味のある人は今のうちに「ペルソナ2 罪」をプレイしておくといいだろう。
「ペルソナ2 罪」公式サイト
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(c) Index Corporation 1996,2010 Published by ATLUS