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ASIAGRAPHに「ロックマン」や“萌え”をテーマにした部門/賞が新設。ASIAGRAPH 2011キックオフイベントをレポート
ASIAGRAPH(アジアグラフ)とは,「世界の第一線で活躍するアジアの研究者とクリエイターが集い,先端技術の発表や作品の展示を行う」という総合イベント。2011年で8開催目を数える歴史のあるイベントで,「ASIAGRAPH 2011 in Tokyo」は,2011年10月20日から22日の3日間にわたり,東京都・江東区の日本科学未来館にて開催される予定だ。
ASIAGRAPH 2011公式サイト
ASIAGRAPHは,人材育成,新文化産業の創出,CG産業の国際プロモーションの三つを,その趣旨としているが,中でも,その作品展示の場である「CGアートギャラリー」の「公募展示部門」では,毎年公募で集まった作品の中から入選作を決定・展示しており,今や,アジアを代表するCG作品公募展となっている。
その公募展で今回,カプコンと虎の穴の2社が協力し,特別部門「ロックマンアワード 2011」および特別賞「虎穴賞」が設けられることとなった。今回は,その主旨説明が行われた,キックオフイベントの模様をレポートしよう。
ASIAGRAPH 2011のCGアートギャラリー公募展示部門は,以下の5部門に分かれている。
・第一部門 CGアート作品公募部門 「CGアートギャラリー」
・第二部門 動画(アニメーション)作品公募部門 「CGアニメーションシアター」
・第三部門 学生(25歳以下)アニメーション作品公募部門
・第四部門 こどもCGコンテスト部門
・特別公募部門 ロックマンアワード2011
第一部門はCGアート(静止画)が対象,第二部門と第三部門は動画(アニメーション)が対象,第四部門は中学生以下を対象としたものだ。
今回新たに設立された「ロックマンアワード 2011」では,静止画と動画の2分野で作品が募集される。
なお,虎穴賞は「『萌え』るキャラクター,イラストレーション作品。オリジナルであること,二次創作や模倣作品は対象外」という課題で,第一部門の特別賞という分類となる。
「ロックマンアワード 2011」および「虎穴賞」の新設にあたって喜多見氏は,「例年の作品募集に加え,カプコンさん・虎の穴さんと一緒に,新しい作品のジャンルの発表の機会を作る取り組みをしていきます」と語った。
「ロックマンアワード」はその名の通り,ロックマンを題材にしたCG作品を対象とする部門だが,テーマを設けた形での作品募集は,ASIAGRAPHでは初めての試みとなる。そのため喜多見氏は,当初は参加者が集まるのか,そもそも応募してもらえるのかという不安を抱えていたそうだ。
しかし,実際に第一次募集をかけてみたところ,わずか1か月ながらハイレベルな作品が多く集まったとのこと。
なお喜多見氏は,普段から交流のある海外のアーティストに今回のロックマンアワードの話をすると「それは面白い! ロックマンは大好きだ。ぜひやりたい」といった返事が戻ってきて,「日本のコンテンツは大変な影響力をもっている」と,あらためて実感したそうだ。喜多見氏は「第二次募集では日本の皆さんにも優れた作品を応募してほしい」とまとめた。
第一部門の特別賞である「虎穴賞」については,「ASIAGRAPHと虎の穴で何か一緒にできないか」と話していた中で,虎の穴から,「日本オリジナルの“萌え”のイラストレーションを集めたい」という提案を受けたことがきっかけになったとのこと。
“アジアにしかない,アジアの人がみんな好きだというものを追求する”こともASIAGRAPHの目的であるため,ロックマンアワード同様,海外からの作品にも期待しているという。
虎穴賞の優秀作品は,グッズ化など新しいビジネスチャンスにつながる?
同人誌・同人ソフトの販売店「コミックとらのあな」を全国20店舗で展開している虎の穴だが,1994年に1号店をオープンしたときに秋葉原は“電気の街”だったが,今やアニメやゲームにメイドさん,そしてAKB48まで集まる街になったと述べた。
「虎穴賞」の募集対象は,先にも書いたように“萌え”をテーマとしたCG作品(静止画)となるが,“萌え”とは何かについて,吉田氏から説明がなされた。
吉田氏によれば,この“萌え”という言葉の定義を「2次元のキャラクターに対して,初恋のような気持ちを抱くこと」と述べた。吉田氏は,恋心をいだいてしまうような魅力的なキャラクターイラストを描いてほしいが,二次創作や模倣は対象外となると付け加えた。
もう一つ,吉田氏が「ASIAGRAPH自体がなくなってしまう可能性がありますので」と冗談交じりに話して会場の笑いを誘いつつも,くれぐれも気をつけてほしいと述べたのが,“露骨な性的描写が含まれる作品は失格になる”という注意事項についてだ。
“こんな萌え作品を大募集”として,吉田氏は例としてスライドでイラストを紹介した。ちなみに,下の写真にあるイラストレーターのTONYさんの作品は,応募作品として考えると“難しい”部類に入ってしまうようである。
吉田氏は,ASIAGRAPHという枠の中でこうした“萌え”の作品を募集することについて,躊躇する部分もあったらしい。しかし,日頃は硬派なイラストなどを描いているアーティストの中に「女の子を描きたい」と思っている人も多いらしく,そうした話を受けて「ならば,あえてやってしまおう」と虎穴賞の新設を決心したそうだ。
吉田氏は「皆さんの中にも,日頃は真面目なクリエイティブをやられている方が多いと思います。ですが,覆面でも応募を受け付けますので,日頃溜まっている“クリエイティブな欲求”を虎穴賞にぶつけていただけないか」と呼びかけた。
また吉田氏は,虎穴賞応募作品の中から優秀なものについては,同社からのイラスト依頼やグッズ化などのチャンスがあり,また「コミックとらのあな」店舗での特別展示会といった取り組みも計画していると付け加えた。
吉田氏は,いわゆる“痛車”を例に挙げ,「今は“痛い”と表現されていますが,10年後ならば当たり前になっているんじゃないかと思います。『あ,痛車にお乗りなんですね。いい痛具合ですねえ』と言うような(笑)」と,今後はより“萌え”が定着し一般化していくだろうと,冗談交じりではあるが強く言い切った。
そして,今まで“萌え”とは違う分野で活動してきたクリエイターが,新しい仕事や,新しい才能を開花するきっかけになってほしいと,虎穴賞の目指すところを述べ,スピーチを締めくくった。
「ロックマンアワード2011」では,開発者が驚くような作品が生まれてくることを期待
北林氏は,もともとアジア圏でも人気があるロックマン(※海外ではMEGAMAN)ではあるが,「ロックマンアワード 2011」にどういった作品が集まるかについては,「内心ドキドキしていた」という。
しかし,第一次募集で実際に応募された作品には,ゲームのパッケージイラストなどを制作する際には出てこないような発想で描かれた作品が多く,「この発想はなかった」と驚きも大きかったそうだ。
ファミリーコンピュータで発売された処女作「ロックマン」では,ヒーローといえば赤がイメージカラーなのに,ロックマンの身体はなぜ青いのか? という素朴な疑問について,ファミコンでは赤の発色があまりきれいではなく,青だといい発色を出せたので,ロックマンは青いヒーローになった(と聞いている)と,誕生秘話を明かした。ちなみに初代「ロックマン」は,7人のスタッフが約6か月で完成させたとのこと。
そして,「ロックマン X」シリーズ,「ロックマン DASH」シリーズ,「ロックマン エグゼ」シリーズ,「ロックマン ゼロ」シリーズ,「ロックマン ゼクス」シリーズ,「流星のロックマン」シリーズと,実に多種多様な派生シリーズを含む展開をしてきたことを紹介。
「今回のロックマンアワードの考え方ともシンクロする部分があり,共感しています」と続け,ロックマンアワード 2011では,「ゲーム開発者が驚くような作品が生まれてくることを期待しています。上手い人達とはぜひお仕事を一緒にしたいなとも思っていますので,チャレンジしてみてください」と,応募を呼びかけた。
コンテンツが“横へ広がる”時代のプラットフォームを目指して
川村氏は,ASIAGRAPHと虎の穴やカプコンの繋がりについて説明する予定で,原稿も事前に準備していたのだが,吉田氏と北林氏の話を聞いて「思い当たるところがあったので,違う方面からの話をします」と,急遽内容を変更。
川村氏は,「私も某N社に所属していたとき,“鉄ナントカ”とか,“塊ナントカ”とか,“太鼓のナントカ”とかのプロデューサーを務めてきましたが,開発の人間も知らないような技が出ることはあるようです。バグだったり,プログラマーが,ひっそり仕込んでいたりするのかもしれませんね」と,先に来場者から北林氏に向けて質問された,「ロックマン3」の裏技の話題に言及した。
また,氏が33歳で某N社に入社するまでは,ゲームのキャラクターにあまり“萌え”を感じなかったが,某ゲームの開発中に,あるキャラクターに惚れ込み,萌えを感じるようになったそうだ。
ちなみに,川村氏が担当のスタッフに「可愛いね」と伝えて褒めると,魚心あれば水心というか,“一応”上司である川村氏を尊重してなのか,より好みに近づけて仕上げてくれたそうだ。
その後も川村氏の勢いは止まらず,“ダンシングナントカ”というアーケードゲームの話に。この作品,社内プレゼンのときは,会議室から人があふれるほどの注目度だったという。それまで“真面目”なゲームを作っていたイメージとはかけ離れていたため,リリース後には「N社ご乱心?」と言われることもあったとか。
開発時は,ポリゴンモデルの女性を作るにあたり,デザイナーが「実はやりたかったんです」とカミングアウトすることもあったそう。
先に吉田氏が述べたように,“日頃は真面目なクリエイティブをしている人達”の中に,潜在的な“萌えクリエイティブ”の欲求があるのは間違いない,ということだろう。
ちなみに川村氏は,某N社在籍中に“ダンシングナントカ”の家庭用を出せなかったのが,いまだに心残りなそうである。
最後に川村氏は気を取り直して(?),「今は,コンテンツをAndroidやiPhoneでも何でも遊べる時代です。ゲーム業界もこれまではプラットフォームに釘付けされていた“縦”の社会でしたが,今後は“横”にコンテンツが増殖していくでしょう」と述べ,「ASIAGRAPHを一つのプラットフォームとして,クリエイターの皆さんには何らかの作品を発表し,そこから世に出てほしい。ASIAGRAPHは,いろんな企業さんと共に,プラットフォームになっていきたいなと思います」と,今後のASIAGRAPHやコンテンツビジネスの将来について展望を語り,スピーチをまとめた。
ASIAGRAPH 2011年度CGアートギャラリー公募展示部門への応募期間は,2011年5月16日よりすでに開始されており,締切は2011年7月15日(金)となる。「我こそは」と腕に自信のある人は,公式サイトで募集要項に目を通し,作品を応募してみてほしい。
また,冒頭で述べたように,2011年10月20日〜22日の3日間,日本科学未来館で「ASIAGRAPH 2011 in Tokyo」が開催される。ASIAGRAPHは,JAPAN国際コンテンツフェスティバル (コ・フェスタ)の公式イベント「デジタルコンテンツEXPO2011」の一環 として開催されるもので,入場は無料。近郊在住の人は,興味を持ったら会場に足を運んでみてほしい。
ASIAGRAPH 2011公式サイト
- 関連タイトル:
ロックマン DASH 3 PROJECT
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