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「PSO2」のキャラクターを現実世界に。「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」のキーマンに意気込みを聞いた
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印刷2017/12/28 00:35

インタビュー

「PSO2」のキャラクターを現実世界に。「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」のキーマンに意気込みを聞いた

 「ファンタシースターオンライン2」PC / PlayStation 4 / PlayStation Vita 以下,PSO2)の5周年企画「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」が進行中だ。自分がクリエイトしたキャラクターを現実世界に出力できるという,あまり前例のない企画だが,セガゲームスのPSO2チームでは「いつか実現したい」と,ずっと温めてきたものだという。

3Dクリスタルフィギュアのサンプルを見ながらの取材となった
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 確かにアークス(PSO2のプレイヤー)であれば,ちょっと見逃せない話である。今回,4Gamerでは念願の企画が実現に至る経緯をはじめ,プロジェクトに懸ける意気込み,3Dクリスタルフィギュアの制作について,セガゲームス 酒井智史氏とアイジェット 松浦竜輔氏に話を聞いてきた。
 なお,プロジェクトの応募受付はすでに終了しているが,次回のチャンスがまったくないわけでもなさそうだ。マイキャラを愛するアークスはもちろん,抽選に落ちてしまった人も,応募できなかった人も目を通してほしい。

取材場所はDMM.make AKIBA(東京・秋葉原)。もともと撮影スタジオだったフロアを改装したため,妙に光源がいい
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通路はお洒落だが,作業部屋に入ると3Dプリンタがあったり,工作機械があったりするコワーキングスペースだ
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「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」特設ページ

「ファンタシースターオンライン2」公式サイト


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。さっそくですが,今回のプロジェクトが発足した経緯を教えてください。

酒井氏:
 初代「ファンタシースターオンライン」や「ファンタシースターユニバース」のときから,「マイキャラのフィギュアがあったらいいな」と考えていました。PSO2をスタートする前にキャラクターコンテストを実施していますが,その頃にアイジェットさんとお付き合いが生まれて,すでにテストを行っているんですよ。

4Gamer:
 5年前にプロジェクトが実現しなかったのは,技術面で制約があったからでしょうか。

セガゲームス PSO2シリーズ プロデューサー 酒井智史氏。言わずと知れた“PSO2の顔”であり,今回のプロジェクトの発案者でもある
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酒井氏:
 最初はクリスタルではなく,「普通のフィギュアにできないか」と検討していたんです。ただ,PSOシリーズのキャラクタークリエイト全般がそうなのですが,元々はバラバラのデータをゲーム内で組み合わせて表現しているので,完成データがゲーム内データしかなく,ゲーム内でキャラクタークリエイトされたデータをフィギュアを作るための3Dデータに書き戻す,ということができなかったんです。またポリゴン数の部分で,フィギュアにした際のクオリティが低く,売り物にするのは厳しいという判断でした。

 クオリティの部分だけで言えば,「クリスタルフィギュアならできるかも」という状態でしたが,キャラクターデータを書き出せない問題があったため,商品化しませんでした。それから5年が経ち,あらためてサンプルを見せていただいたところ,クリスタルフィギュアの解像度が上がり,それがすごく良くなっていたんです。ゲーム内のデータを書き出せる目途もついていたこともあり,「これだったら商品化できるかもしれない!」と思いましたね。

松浦氏:
 「これなら大丈夫だろう」と思って,お見せして良かったです。

酒井氏:
 しかも,5周年というタイミングでしたから,これを逃すと次に実現できるチャンスは,いつになるのか分からない。もう,「やるしかないだろ!」って感じでした(笑)。

4Gamer:
 とはいえ,実現に向けてのハードルは多かったのではないでしょうか。キャラクタークリエイトの仕様を考えると,制作を難しくしそうな要素がいくつも思い浮かびます。

酒井氏:
 例えば,キャラクターの周りに浮いているアクセサリですよね。3Dクリスタルフィギュアで,しっかりと再現できるのかという不安はありました。

4Gamer:
 サンプルを拝見しましたが,コスチュームの細かい装飾まで再現されていて驚きました。

かなり細かいところまで再現されている
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酒井氏:
 今回のプロジェクトを詰めていた時期というのが,ちょうどアニメ(「ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション」)を制作しているタイミングと重なっていたんです。アニメに大量のモブキャラを出すことになり,ゲームのキャラクターモデルを3Dグラフィックスソフト用に描き出すシステムを用意していたので,それを発展させたものを今回のプロジェクトにも採用することで何とかに形にできました。
 それ以前はパーツをかき集めて,1つ1つくっつける感じだったのですが,それだと1体のキャラクターモデルを完成させるのに膨大な時間がかかってしまいます。

4Gamer:
 なるほど。
 今回のプロジェクトは応募受付期間(2017年10月27日〜11月13日)が終了していますが,555名の枠に対して,どれだけの応募があったのでしょうか。

酒井氏:
 2500以上ですね。開始前は「応募あるのかな? 少なかったらどうしよう……」と不安でしたが,想定以上の反響でした。

4Gamer:
 ところで,555名だったのは5周年だからですか。

酒井氏:
 最初は200名くらいという話でしたが,「1人でも多くの方に届けたい」と思い,「5周年だから5並びにしたい!」と僕がお願いしました(笑)。

アイジェット 制作部 マネージャー 松浦竜輔氏。3Dクリスタルフィギュアの制作責任者を務める。ちなみに同社はDMM.comの完全子会社
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松浦氏:
 自分もその場にいましたが,思わず真顔になっちゃいましたね(笑)。制作において自動化できる部分が少ないので,これはすごいことになりそうだぞと。

4Gamer:
 1体の3Dクリスタルフィギュアを完成させるには,どのような工程があるのですか。

酒井氏:
 プレイヤーに用意してもらったデータを書き出すときにも人が張り付き,3Dグラフィックスソフト用のデータになった後も質感や色,パーツの重なり具合を調整しています。そこまで終わって,やっとDMMさんにお渡しできる状態になります。

松浦氏:
 セガさんからデータを受け取ったら,色味の調整を行います。モノクロ出力なので,そのままでは白飛びや黒潰れが起きてしまうんですね。
 3Dクリスタルフィギュアでは「点の集まり」として出力されるので,そのための変換処理も行ないます。ここでパーツの重なりも調整します。ほとんどが手作業なので,募集枠が2倍以上になったら,やっぱり真顔になりますよ(笑)。

酒井氏:
 すべて仕上げたデータのプレビューはDMMさんとセガ側でクロスチェックを行い,ここで問題がなかったら出力を開始できるというわけです。

松浦氏:
 データ上のチェックで何もなければ,あとはレーザー加工機で出力できるはずですが,もしかするとうまくいかないキャラクターがあるかもしれません。さまざまなパターンをテストしていますが,実際にやってみないと分からない部分もあります。

4Gamer:
 色味の調整についてお聞きしたいのですが,髪の色が白に近い場合,出力しても違和感がない色になるように濃淡を変更しているのでしょうか。

松浦氏:
 そうですね。そのままだと質感がなくなってしまいますから。

4Gamer:
 1体のキャラクターデータの処理に要する時間は?

松浦氏:
 キャラクター次第ではありますが,簡単なものなら1時間程度で終わるという感じです。データによっては,その数倍かかります。
 ある程度のフォーマットはできていますが,やはりキャラクターごとの調整は必要です。装飾の細かいコスチュームには時間がかかりますし,キャスト(種族の1つ)は質感がまったく異なるので,専用の処理をかけることになります。

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酒井氏:
 ある程度は自動でできるようになってはいますが,やはり1体1体違うものなので,人の手がかかる部分はまだあります。それが,555パターンも届くことになるので,1体1体が試行錯誤になると思っています。

4Gamer:
 3Dクリスタルフィギュアは,ガラスの内部でレーザーを衝突させて削っていくのでしょうか。

松浦氏:
 レーザー交差点が高温になることで,ガラスに傷をつけていく形です。ですから,データでは座標点だけのものになっています。

4Gamer:
 なるほど。
 再現性において重視しているのは正面だけですね?

松浦氏:
 はい。ぜひ正面から眺めてください(笑)。側面や背面からだと雰囲気が残っている程度です。

酒井氏:
 今回は背面に黒い背景を置いて,キャラクターがはっきりと見えるようにしていますよ。

4Gamer:
 全方位に対応することは難しい?

松浦氏:
 できないことはありませんが,全方位に対応すると質感が落ちます。

正面。寄って見ると点の集合体であることが分かる
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側面は写真のとおり,ふんわりとしたシルエットになっている
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頂部も同様だ

松浦氏:
 今回は正面から見たときの視野角を重視していますから,視線を少し上下に変えると,ゲームとは異なる部分もあります。ゲームを完全に再現すると,点群同士が透過してしまうため,正面から見たときにほかのパーツより前側にあるかのように見えることがあるからです。

ある程度の視野角に対応しているので,写真のように少し斜め方向からでも立体感を得られる
画像集 No.010のサムネイル画像 / 「PSO2」のキャラクターを現実世界に。「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」のキーマンに意気込みを聞いた

4Gamer:
 と言いますと?

酒井氏:
 スカートの中身とかですね(笑)。

4Gamer:
 ああ,だからスカートの奥は“深遠なる闇”なんですね。まったく別の理由があると思っていました。

酒井氏:
 ゲームのキャラクターを再現していますが,細かいところでは違う部分がある。その違和感を消すことに苦労していますね。

4Gamer:
 ほとんど手作業ということは,2万5000円(税・送料込)という価格はギリギリではないかと思うのですが?

酒井氏:
 大量生産品ではない,オーダーメイドの一品モノですので,高価だと感じられるとは思いますが,それなりに頑張っています(苦笑)。
 PSO2のキャラクターはサイズがバラバラなので,できることなら3Dクリスタルフィギュアのサイズもそれに対応したかったんです。ただ,そうするとAさんは2万円だけど,Bさんは10万円という状態になりかねない。今回はクリスタルのサイズを統一することで,価格を下げています。

4Gamer:
 キャラクターのポーズにも制限がありますね。

酒井氏:
 ポーズによっては,どうしてもポリゴンの重なりなどが問題になってしまいます。クリスタルの中に可能な限りキャラクターを大きく再現できるポーズのなかから,比較的汎用性の高いものに絞らせてもらっています。
 ちなみに,もし第2弾をやるとしたら,どんなポーズが欲しいですか。

画像集 No.011のサムネイル画像 / 「PSO2」のキャラクターを現実世界に。「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」のキーマンに意気込みを聞いた
このフレーム
4Gamer:
 そうですね。自分ならフレーム単位で指定したいです。例えば,「待機中」の最後のほうのフレームとか。

酒井氏:
 そういうことを言うと思ったんですよ(笑)。フィールドでのアクションも欲しくなりそうですね。

松浦氏:
 フレーム単位の指定や,武器とマグの追加はシステム次第ですが対応可能ではあります。

酒井氏:
 現在のデータを描き出すシステムでは,武器やマグはデータに入っていないので,そこに対応できるシステムの開発が必要になりますね。

松浦氏:
 今回のクリスタルのサイズだと,武器やマグが加わるとキャラクターがかなり小さくなってしまうという課題も出てきます。

酒井氏:
 ゲームでもそうですが,皆さんから寄せられる要望というのは,だいたい検討の俎上には載せているんです。ただ,もろもろの技術面や工数上の理由があってオミットされている部分があります。まずは商品化にこぎつけられたので,今後については現状を踏まえての要望をいただきつつ,どのあたりまで実現できれば,より満足度の高い商品になるのかを検討していきたいですね。

「飛行形態」(ロビーアクション)を利用した変形っぽいもの
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4Gamer:
 今回は縦置きの商品になりますが,横置きも選べるようになるといいですね。キャストは変形しているポーズを選びたいでしょうし。

松浦氏:
 変形しているキャストのデータは,すごく大変です。パーツの重なりが多く,それをヘタに動かすと変形した雰囲気がなくなってしまうので。

今回の商品仕様では,横幅のあるキャラクターはトリミングされる部分が大きくなってしまう(写真はテストバージョンのもの)
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4Gamer:
 もし「キャスト変形バージョン」のデータを変換するなら,どれくらいの時間がかかりそうですか。

松浦氏:
 今はちょっと見当もつきません。

4Gamer:
 先ほどのお話では,今回の募集受付では約2000名が抽選に落ちたことになりますが,第2弾の予定はありますか。

酒井氏:
 これで終わりにするつもりはありません。アークスにとって夢のある話ですし,少し時間をください。
 ともあれ,まずは555名の実現ですね。これからいろいろな問題が出てくるはずなので,それを解決できるのか,そのうえで自動化できるのか,手に入れたお客様が満足されるクオリティだったか。こうした課題への対処ができてから,次のステップに進みたいと思います。

4Gamer:
 分かりました。どうもありがとうございました。



 オンラインゲーマーにとって,自分のキャラクターを手元に置いておけるのは,確かに夢のような話だ。
 今回,セガゲームスの厚意により,筆者のキャラクターも3Dクリスタルフィギュア化されることになった。サンプルをじっくりと観察して得られた情報を元に,“銀河で一番カワイイ俺のキャラ”のクリエイトに励んだので,完成した暁には追ってレポートをお届けしたい。プロジェクト第2弾に望みがあるということもあり,なるべくアークスの参考になるようなものにしたいと考えている。
 なお,すでに当選の連絡が届いているという幸運な555名(競争率は約5倍!)は,申し込みの期限(2018年1月4日23:59:59)までに決済の手続きをお忘れなく。

「マイキャラ3Dクリスタルフィギュア化プロジェクト」特設ページ

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