インタビュー
「PSO2」にネオ演歌「ヨーコソ・アークス」を提供したビートまりおさんに聞く,楽曲制作の裏側。同人音楽やPSO2への要望など脱線多めのインタビュー
小林幸子さんとPSO2。この大型コラボに合わせて制作されたオリジナル曲「ヨーコソ・アークス」の作詞・作曲を手がけたのが,現役アークスであり,同人サークル「COOL&CREATE」を主宰するビートまりおさんだ。
「ヨーコソ・アークス」はゲーム内のバーチャルライブはもちろん,CDの一般発売も始まっており,すでに聞き込んでいるというアークス諸君は多いだろう。アークスフェスティバル2016の会場に足を運び,小林幸子さんのライブに圧倒された人もいるはずだ(関連記事)。
今回4Gamerでは,「ヨーコソ・アークス」を生み出したビートまりおさんにインタビューを行い,楽曲制作時のエピソードや裏側,さらには同人音楽シーン,最近のプレイ状況などについても尋ねてみた。
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いろいろなつながりを経て「ヨーコソ・アークス」
本日はよろしくお願いします。まずは先日のコミケ(コミックマーケット90),お疲れさまでした。
ビートまりおさん:
ありがとうございます(笑)。
4Gamer:
「ヨーコソ・アークス」についてお聞きしたいのですが,酒井さん※からオファーがあった時点で「ネオ演歌」というコンセプトは決まっていたのでしょうか。
※酒井智史氏。PSO2シリーズプロデューサー。
ビートまりおさん:
なんとなくですが,「こんな路線で行こう」というのはありました。
2011年に作った「林檎華憐歌」という曲が,ダンサブルなんだけどメロディが歌謡曲っぽい。いわば「ネオ歌謡曲」だったので,それを意識して制作を進めました。
では,イメージはすぐに固まった感じですか。
ビートまりおさん:
そうですね。ただ,同じではつまらないので,PSO2に寄せてみよう,と。
PSO2と言っても,曲のイメージはいろいろです。そのなかでも,EP1のムービーで流れるドラマティックでかっこいいストリングスだとか,EP3の和風な雰囲気だとか,そういった要素を入れてみながら詰めていきました。
4Gamer:
確かに,カウンターで入ってくる部分にはそのような雰囲気を感じました。
ビートまりおさん:
最初にいくつかデモを作ったのですが,演歌要素が少なかったんですね。そうしたら,酒井さんから「お祭りで盛り上がるぶんにはいいけど,小林幸子さんの歌をもっと聞かせたい」という要望をいただきまして,現在の形に決まりました。
4Gamer:
たとえば,どんなデモがあったのですか。
ビートまりおさん:
間奏に「Ship1ィィィ!! ワーーーーー!!」といったコール&レスポンスがいっぱいあったんですよ(笑)。「開発チームをご紹介〜♪」といったノリもあったりして,「プロデューサーの,酒井!」とか(笑)。
4Gamer:
それはそれで聞いてみたいですね。
ちなみに,楽曲の制作期間はどれくらいでしたか。
ビートまりおさん:
約半年ですね。2015年10月にお話をいただき,結構じっくりと作り込みました。
4Gamer:
苦労された点は?
ビートまりおさん:
EP4に入ってから,新フィールド「地球」が出てきて,「実は,PSO2というゲームだった」みたいなメタフィクションの流れになりましたよね。
「じゃあ,自分はどの視点で歌詞を書けばいいのか」と,迷ったときがありました。メタフィクションで書けばいいのか,ゲーム内のアークスとして書けばいいのか,それとも地球でPSO2を遊んでいる清雅学園の生徒なのか。
ただ,先のストーリー展開を聞くとゲームが楽しめないので(笑),自分なりの解釈を加えながら歌詞を決めていったんです。
4Gamer:
確かに,視点のバランスがいい歌詞だと思います。
ビートまりおさん:
ありがとうございます。「なに視点で歌っているの?」と言われることもありますが,やっぱりお祭りソングなので,お祭り感があればいいかなって(笑)。
4Gamer:
その歌詞ですが,言葉遊びは盛りだくさんでしたが,過去の作品で見られる空耳がありませんでした。それは意図的ですか。
ビートまりおさん:
空耳はあまり意識してなかったですね。勝手に出てきたりするので(笑)。
言葉遊びについては,桃井はるこさんの「レアドロ KOI 恋!」にある「巡るミラクルオラクルに」のフレーズが最強ですよね。そこで,「ヨーコソ・アークス」では「以心伝心エーテル通信」という歌詞を書いたのですが……勝てないなあ(笑)。
4Gamer:
「オラクルがそら来るぞ」の部分も楽しいですね。
ビートまりおさん:
歌ったり,聞いたりして楽しくなってもらえたら嬉しいです。
4Gamer:
サビの前にゲームのSEが入っていますが,どのような狙いがありましたか。
ビートまりおさん:
タイトル画面とShip選択後のSEですね。SEのあとに「みんなみんなみんなヨーコソ 地球へヨーコソ」とつながるんですけど,「PSO2の世界にようこそ」という意味を込めて入れてみたら,キレイにハマりました。あのSEが,また気持ちいいんですよね。
4Gamer:
小林幸子さんのレコーディングはスムーズに進みましたか。
ビートまりおさん:
ゲーム用語はざっくりとですが説明しました。小林幸子さんの収録に立ち会うのは初めてだったんですが,必要以上に気負わず,対等の立場で進められましたね。
幸子さんも「まりおちゃん,ネチネチやってくるよねー」と冗談を言ってくれて,それでうまく回ったのかなと。
途中から木村さん※も意見を出してきて,スタジオ全体が「ちゃんといいものを作ろう」という,いい空気になりました。
小林幸子さんはさすがでして,収録自体は短時間です。機材トラブルがあって時間を取られたくらいで。
※木村裕也氏。PSO2シリーズディレクター。
4Gamer:
間奏では酒井さんと木村さんの声が入っています。
収録はノリノリでした。「えー,やるのー? アニメのときもさー,収録に立ち会ったら台本に書いてあってさー」とか言いつつ,嬉しそうで(笑)。
お二人とも,すごく声が出るんですよ。あれだけ声がしっかりと出せるプロデューサーとディレクターは,ちょっとほかにはいないんじゃないかな(笑)。
4Gamer:
酒井さんから「ヨーコソ・アークス」の企画が生まれた経緯も気になるところです。
ビートまりおさん:
自分も謎ですよ(笑)。そもそもの発端は2015年のアークスフェスティバルで,酒井さんに挨拶させていただいたところですね。
4Gamer:
と言いますと?
ビートまりおさん:
2014年に「maimai」のイベントに出演したのですが,そのイベントに“俺たちのかまたろう”こと会 一太郎さんが来られていたんです。
4Gamer:
おお!
ビートまりおさん:
こちらは「PSO2放送局」を見ているので,ぜひお会いしたいと。
しかも,自分の曲で遊んでくれたそうで,そこからやり取りがありました。その翌年,コミケで「アークス×アークス」という同人アレンジCDを出したので,アークスフェスティバル2015のときに「渡したい」と伝えたんです。
なるほど。そういうことでしたか。
ビートまりおさん:
楽屋に行ったら,「酒井さんもいるよー」と。そこで初めてご挨拶した形ですね。
4Gamer:
原作者の人に二次創作物を渡した,ということですね。
ビートまりおさん:
そうですね。ファン活動ではあるけど,グレーな部分もあることは承知の上で。
でも,ゲームへの愛情表現として,自分ができるのは曲を作ることなので,自信を持って渡しました。それから,すぐに酒井さんから連絡をいただいたので,喜んでもらえたのかな,と思います。
4Gamer:
小林幸子さんから酒井さんに紹介があった,という背景ではなかったんですね※。
※2014年夏,小林幸子さんがコミックマーケットに初参加したとき,ビートまりおさんの「COOL&CREATE」が合同参加の形でこれをサポートした。小林幸子さんとビートまりおさんは,それ以前のニコニコ超パーティーで知り合っている。
ビートまりおさん:
アークスフェスティバル2016で,酒井さんが「絆が繋がったんだよ」と表現されていましたが,本当にそんな感じです。
小林幸子さんのライブについて
アークスフェスティバル2016では,小林幸子さんの衣装を現場でご覧になったと思います。自分は望遠で見ても「なんだ,このクオリティ……」と圧倒さたんですが。
ビートまりおさん:
すごかったです! 紅白歌合戦と同じ衣装チームが担当されたそうで,布が一切なくて,堅い素材ばかりだったんですよ。それでいて,ちゃんと可動部分もある。スタッフさんが「いくらかかったのか,怖くて聞けない」と言っていました(笑)。
4Gamer:
某メーカーの衣装担当に写真を見せたら,「後ろの写真はないの!」と真顔で言われました(笑)。
ビートまりおさん:
背中のパーツも自立しているんですよね。紅白チーム,すごい!
4Gamer:
ライブも圧巻でしたが,会場には純然たる小林幸子さんのファンと思われる人が見られました。
ビートまりおさん:
小林幸子さんは活動のフィールドをどんどん広げていますが,これまでのフィールドにいたファンの方も大切にしているから,自然と新しいフィールドにも連れて来ることになるんでしょうね。すごいことですよ。
ただ,そういった方に「ヨーコソ・アークス」がどう思われているのかが気になったりはします。
4Gamer:
自分の母親も小林幸子さんのファンですが,「ヨーコソ・アークス」はお気に入りでした。
ビートまりおさん:
PSO2のファンじゃなくても,ちゃんと届く曲に仕上がった。その自信はあったのですが,そう聞くとホッとしますね。母も「これは,さっちゃんのための曲だ!」と言ってくれました。
PSO2とコミケと同人のお話
4Gamer:
ここからは話を変えて,アークス歴のことをお聞きしたいと思います。PSO2との出会いからお願いできますか。
ビートまりおさん:
PSO2をスタートしたのはサービスインの直後,2012年8月ですね。総プレイ時間はもう1万時間を超えています。と言っても,マグにエサを与えるために放置していた時間も含まれるので,実際にはそこまでではないかも(笑)。あと,チャット好きなので,チャットしている時間も長いです。
まだ難度がハードまでだった時代に,火山洞窟探索でアーディロウ掘りをして,次は地下坑道探索でマイセンとデモニックフォーク掘りをして,アンガ掘りも楽しんでいたという感じです。で,いまはレイシートを進めています。
4Gamer:
ファンタシースターシリーズを過去にプレイしたことはありますか。
ビートまりおさん:
いや,PSO2が初めてですね。嫁さんがドリームキャストの「ファンタシースターオンライン」をプレイしていて,その続編ということで誘われました。
ただ,ネットゲームを始めるとそれだけになっちゃうので,「ほどほどにしないと」と思っていたんですが……案の定,がっつりハマりました(笑)。
4Gamer:
筋金入りのアークスですね。
それでは,主宰している同人サークル「COOL&CREATE」の活動も紹介していただけますか。
ビートまりおさん:
コミケへの参加は2001年からですね※。それまでも好きなゲームの曲をアレンジしていたんです。
「ラグナロクオンライン」にドハマりして大学を留年したこともあるんですが,作品として結果を残せたから良かったかなと。同人CDを聞いてくれた人が,その後,ガンホー(・オンライン・エンターテイメント)さんに入社して,仕事の話を持ってきてくれたこともあります。だから,あのときの留年はムダじゃなかった(笑)。
※コミックマーケットは夏と冬に開催されている世界最大規模の同人即売会。オリジナル作品から二次創作まで幅広く,紙媒体だけでなく,CDやハードウェアなどジャンルも多岐にわたる。
4Gamer:
PSO2もドハマりしていますよね。
ビートまりおさん:
締切を守れなくなりそうなときはありました(笑)。仕事用とゲーム用のPC2台体制なんですけど,いつの間にかPSO2の画面ばかり見てるんですよ……。
4Gamer:
自分も似たような感じです(笑)。
それでは,ご自身の肩書きは「同人ユニット」なのか,「インディーズ」なのか,「プロ」なのか,どう捉えていますか。
ビートまりおさん:
自己紹介のときに,いつもそこでつまずきます。メジャーの仕事をいただいたときに,「同人ユニット」と言っても通じないので,「インディーズ」を使うことはありますが,自分は同人とインディーズは別ものだと考えています。
インディーズの先にはメジャーがある。でも,同人は独特の世界で,メジャーに向かうというわけではないんです。
ただ,分かりやすさを重視するなら「インディーズ」でいいかなと。
4Gamer:
ゲームでも,同人ゲームとインディーズゲームは一緒くたにされがちです。個人的にはもう,展開先が同人即売会中心なのか,それともSteamのようなプラットフォームなのかといったくらいの違いしかないとも感じていますが※。
※「Play, Doujin!」は,PS4やPS Vitaで同人ゲームを配信しているプロジェクト。「PlayStation Indies」とは別に存在しているため,メジャーでもインディーズでもないという位置づけである。「Play, Doujin!」には東方シリーズの同人ゲームが多く,東方シリーズ自体も同人からスタートしている。
ビートまりおさん:
徐々に境界線が曖昧になっていますよね。外から見たら,そうじゃないかもしれないけど,自分では「同人ユニット」だと思っています。基準点は同人です。
4Gamer:
音楽歴についても教えていただけますか。
ビートまりおさん:
「意外だ」とよく言われるんですが,楽器は弾けないし,楽譜も読めません。KONAMIさんの「ビートマニア」に触れて,フリーのアプリケーションでゲームの譜面を自作したり,オリジナルの曲を作ったりして覚えていきました。
なので,「音楽を作りたいです。教えてください」と言われると,返事に困っちゃいます(笑)。楽器が弾けなくても,楽譜が読めなくても,「音楽はできる」ということは証明したので,気軽に作ってほしいと思います。
4Gamer:
ゲーム音楽がルーツなんですね。
ビートまりおさん:
はい。メロディラインがしっかりしている曲が好きです。PSO2だと坑道エリアは「ちょっと環境音みたいだな」と思いますけど,東京エリアは歌メロが入っていてノリノリでいいですね。
4Gamer:
コミックマーケット90では,ちょうどゲーム系が2日目ということで,アークスフェスティバル2016と重なりました。タイミングが良かったですね。
ビートまりおさん:
今回はPSO2系サークルが50〜60くらいで多かったような気がします。同人が盛り上がるのは嬉しいので,もっと増えてくれるといいなあ。コスプレのレベルもどんどん上がってるし。
4Gamer:
最近のPSO2では,どこに注目されていますか。
ビートまりおさん:
やれることが多いので,どこから手を付けていいのか困りますね(苦笑)。コレクトシートを埋めようか,ギャザリングしようか,アークスリーグしようか……。
4Gamer:
アップデートの頻度が高いですよね。
ビートまりおさん:
最近だと,「アドバンスクエスト」の復活が嬉しかったかな。レア掘りが好きなので,「青武器,出ないかなー」って(笑)。
そういえば,PSEバーストが終わらないんですけど,最大で何回まで続くようになっているんですか。
セガゲームス PR担当:
上限についてはお答えしかねるのですが,クロスバーストするとワンモアが確実に1回発生しますので,PSEが上昇しやすいアドバンスクエストはバーストが継続しやすいクエストになっていますね。
4Gamer:
おお,ありがとうございます。
それでは,これからのPSO2に期待していることはありますか。
ビートまりおさん:
とにかく長く続いてほしい! 「ヨーコソ・アークス」には,新しく始める人に向けたメッセージも込めていますから,プレイしていくうちに,フレーズ内のゲーム用語の意味にも気づいてもらいたいですね。
「PSO2は話題先行」という声もありますけど,話題がなければ新しい人は入って来ませんよ。どんどん新しい人を迎え入れて,長く遊ばせてほしいですね。
以上が真面目な話で……。
4Gamer:
え!?
ビートまりおさん:
★14武器がコレクトシートに登場したら,いよいよ直訴するしかないな,と。やっぱり,レア掘りがしたいですって!
4Gamer:
ですよね! サプライズ要素として,ドロップオンリーの★15武器とかも実装してほしい!
ビートまりおさん:
「レアが出ないから止める」という人がいるから,仕方がないのは分かるのですが,もっと驚かせてほしいですね。しれっと,誰も見たことがない★15武器が実装されて,みんなで「なんや,これ!?」とザワザワしたい。
4Gamer:
うーん,分かります。
本日はありがとうございました。
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