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    印刷2012/07/13 12:00

    インタビュー

    秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた

    画像集#040のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた
     セガのオンラインRPG「ファンタシースターオンライン2」の正式サービスが,ついに2012年7月4日にスタートした。本作は,オンラインRPGにおける“4つの革命”を掲げて開発されてきた「ファンタシースター」シリーズの最新作である。
     今回,4Gamerでは「PSO2」プロデューサーの酒井智史氏と,同ディレクターの木村裕也氏に,「PSO2」のこれまでの開発の歩みと直近の展開,そして今後の展望などについて話を聞かせてもらった。

     なお,あらためて紹介しておくと,酒井氏は「ファンタシースターユニバース」でディレクターを担当し,「ファンタシースターZERO」以降,シリーズ作品のプロデューサーを務めてきた。
     木村氏は,セガ入社後「ファンタシースターオンライン」から運営開発に参加し,以来「ファンタシースター」畑一筋という人物で,「ファンタシースターポータブル2」ではディレクターを担当した。

    「ファンタシースターオンライン2」プロデューサー・酒井智史氏(写真右)
    「ファンタシースターオンライン2」ディレクター・木村裕也氏(写真左)
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    「ファンタシースターオンライン2」公式サイト


    アップデート第1弾「目覚めし大旗艦」紹介ムービー

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    4Gamer:
     本日はよろしくお願いします。
     今回は,「ファンタシースターオンライン2」のこれまでの歩みを振り返りつつ,これからの展開についてお話を聞かせていただければと思います。
     まず「PSO2」が発表されたのは,東京ゲームショウ 2010の「ファンタシースターポータブル2 インフィニティ」ステージイベントでした。

    画像集#012のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた
    酒井智史氏(以下,酒井氏):
     ええ。そのタイミングで「ファンタシースターオンライン」10周年を記念するプロジェクトの一つとして発表しました。サービスインは結局11年目になってしまいましたが(苦笑)。
     開発自体がスタートしたのは2008年で,当時はゲームの内容もそうですが,タイトルも「ファンタシースターオンライン2」にするか「ファンタシースターユニバース2」にするか,議論していましたね。

    木村裕也氏(以下,木村氏):
     「ファンタシースターユニバース イルミナスの野望」を発売してから少し経った頃ですね。新作オンラインタイトルの発表を「PSO」の10周年に合わせられるといいねと話していて,「だったら『PSO2』でしょう」という流れで決まりました。

    酒井氏:
     そのあと,「ファンタシースターポータブル」シリーズが盛り上がったわけですが,私達には「マルチプレイの先にあるべき姿はオンラインゲーム」と考えていました。ですから,マルチプレイを体験した人達が,最終的にたどり着く場所となるオンラインゲームを作ろうと考えたんです。

    4Gamer:
     「ファンタシースターポータブル2」以降は,PSPだけでインターネットに接続してマルチプレイができる「インターネットマルチモード」がありましたね。つまり,家庭用ゲーム機のプレイヤーがオンラインゲームに馴染む下地を作っていたと。

    酒井氏:
     当時は,5か年計画と言っていましたね(笑)。

    「ファンタシースターポータブル2」のインターネットマルチモード
    (C)SEGA
    画像集#001のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた 画像集#002のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた

    4Gamer:
     当時からプラットフォームはPCと決めていたんですか?

    酒井氏:
     そうです。最初からPCでやろうと考えていました。

    4Gamer:
     当時,「ファンタシースターオンライン ブルーバースト エピソードIV」と「イルミナスの野望」という2本のオンラインゲームをすでにサービスしている中,さらに新しいオンラインゲームを作ろうと考えたのはなぜでしょうか。

    酒井氏:
     「PSO」は,日本で多くの人にオンラインゲームの面白さを伝えたタイトルです。その原点に立ち返る新作を,もう一度作りたいと考えたからですね。
     「PSO」や「PSU」をプレイしていない新規の方にも遊んでいただきたい,という思いから,「PSO2」でもシリーズの世界観を共有していますが,ストーリーに繋がりはありません。

    画像集#027のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた


    ネットワークゲームの“3つの革命”や基本プレイ無料モデルの採用は,企画当初から決まっていた


    4Gamer:
     2011年7月に行われたメディアブリーフィングでは,「無限の冒険」「オンラインRPG最高峰のアクション」「究極のキャラクタークリエイト」という“3つの革命”が掲げられました。これらは2008年当初から決まっていたのですか?

    画像集#003のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた 画像集#010のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた

    画像集#013のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた
    木村氏:
     キャラクタークリエイトに関しては「やって当然」という認識でした。最初に決めたのは「無限の冒険」です。アクションについては,携帯ゲーム機のシリーズで多くの方がアクション性を求めていると感じていたので,「PSO2」では,これまでのオンラインRPGにはなかったようなアクションに仕上げようという方針で進めていきました。

    4Gamer:
     分かりやすいのがジャンプアクションでしょうか。一言でジャンプとは言っても,エネミーの上に乗れるようになったり,フィールドで移動できる範囲が縦方向にも広がったりと,幅が出て戦略/戦術性も変わりましたよね。

    酒井氏:
     「PSU」でも,ずっとジャンプを入れてほしいというリクエストが多かったんですよ。

    木村氏:
     ジャンプもそうですし,ホールドもそうなんですが,シリーズのノウハウを応用したセガならではのアクションになっています。その自負から,オンラインRPGにしてはけっこう無謀なことにもチャレンジしています(笑)。

    酒井氏:
     「PSO」と比較すると,かなりアクション性は高くなっていますね。

    木村氏:
     「ファンタシースターZERO」で導入した緊急回避やガードが好評だったんです。そこから本腰を入れてアクション性の強化に取り組みました。

    酒井氏:
     シリーズを通じて,少しずつ試しながらアクション性を高めているんですよ。

    木村氏:
     アクション性をどこまで高めるかという部分は,実は手探りなんです。今回はジャンプを入れたといっても,崖や穴に落ちたら戦闘不能というような要素は入れていません。それをやると,RPGとしては本当に難しくなってしまうので,あえてやっていないんです。

    2012年3月に実施されたイベント「メディアブリーフィング2nd」より(関連記事
    画像集#020のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた
    4Gamer:
     2012年3月のメディアブリーフィング 2ndでは,最後の“第4の革命”が「境界を超えるRPG」として発表されました。いわゆるクロスプラットフォーム構想ですが,これはいつ頃から考えていたんでしょうか?

    酒井氏:
     2010年の「PSO2」発表時には,だいたいの形は決まっていましたね。
     モバイル端末との連携はPSUでも取り組んでいましたが,もう少し先に進めたいという思いがありました。新しいオンラインゲームを提供するにあたって「こうすると,オンラインゲームの世界がもっと面白くなる」という提案をしたかったんです。

    4Gamer:
     スマートフォン版は,PC版とデータを共有しつつも,別の独立したゲームの形ですが,PlayStation Vita版はPC版と同じサーバーでプレイできる,同内容とされていますよね。PlayStation 3やXbox 360のような据置型ゲーム機ではなく,携帯型ゲーム機であるPS Vitaを選んだのは何故でしょうか。

    酒井氏:
     ちょうど私達もコンシューマゲーム機で何かやろうと考えていたのですが,これがPlayStation 3やXbox 360だと,今までの展開と大差がなくなってしまいます。
     しかしPS Vitaなら,「携帯型ゲーム機でいつでもどこでも遊べるオンラインゲーム」という,ユビキタスの概念を実現する新しい挑戦が可能になるわけです。また,これまでPSPで培ってきたファンの皆さんにも入りやすいものになるのでは,と思ったのです。そういう意味でも,PS Vitaの登場は非常にタイミングが良かったですね。

    ※画面は開発中のものです。
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    PlayStation Vita版
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    スマートフォン版

    4Gamer:
     スマートフォン版とPlayStation Vita版の開発の進捗はいかがですか?

    画像集#016のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた
    酒井氏:
     プロジェクトはもちろん動いていますが,まだ皆さんにお見せできるレベルにはなっていないんです。PC版がサービスインしてしばらく経つTGSあたりでは,ある程度まとまった情報を出せると思いますので,もう少しお待ちください。

    4Gamer:
     それでは,「PSO2」のビジネスモデルについても教えてください。基本プレイ無料という形式にするというのは,いつ頃決まったんですか?

    酒井氏:
     実は,最初から決めていました。これは,多くの方にプレイしていただくことを最優先に考えていたからです。

    4Gamer:
     やはり,現状のオンラインゲーム市場をかんがみると,基本プレイ無料のタイトルが多い中,月額料金制を採用するのはハードルが高いのでしょうか。

    酒井氏:
     そうですね。大きなブランドで世界展開を前提にしたタイトルなら月額制で大丈夫かもしれませんが,開発にかかるコストと利益を考慮すると,月額制ではかなり厳しいというのが本音です。とくに日本のPCオンラインゲームに関してはプレイヤー人口が広がっていないというか,縮小気味の傾向にあります。
     でも,ソーシャルゲームやブラウザゲームがゲーム業界の主流になりつつある今だからこそ,「無料だけどこれほどのクオリティを持ったゲーム」を出すことで衝撃を与えられると思った訳です。

    4Gamer:
     「ファンタシースター」のブランドを持ってしても,月額制は厳しいですか。

    酒井氏:
     正直にいえば,厳しいですね。実際,アンケートを取ってみたところ,7割の方は「基本プレイ無料かどうかで,遊ぶかどうかを決める」と言う結果がでています。ということは,7割の方は月額制だと遊ぼうとすら思ってもらえないわけです。
     私達は,今の閉じられたオンラインゲームの市場を広げていきたいと考えています。基本プレイ無料のタイトルが無数にある中で,どうやって「PSO2」にプレイヤーを取り込んでいくかを考えた結果が,今のプレイ料金の考え方です。
     そしてそれは料金体系だけでなく,スマートフォンやPS Vitaで展開する部分も全部ひっくるめて,オンラインゲームをもっとたくさんの人に楽しんでいただくためなのです。

    4Gamer:
     となると,コスチュームや時間短縮系アイテムに,どれだけ価値を持たせられるかが重要になってくるわけですね。

    酒井氏:
     それに加えて,ある程度の割合のユーザーさんには,プレミアムセットをご購入いただけると,「PSU」での経験から見込んでいます。

    木村氏:
     ご購入いただくことでより充実したプレイができるようになるプレミアムセットは,30日間レンタルで1300ACという価格設定ですから,ある意味では月額制に近いかもしれません。ただ,プレミアムセットをご購入いただかなくてもプレイに支障はありません。

    ※AC(アークスキャッシュ)。ゲーム内有料ポイントで1AC=1円相当。

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    酒井氏:
     プレミアムセットだけでなく,皆さんそれぞれがご自身のプレイスタイルに見合った額を選択できるよう,かなり細かくメニューを設定しています。
     メニューで選べる項目が多いこともあって,お金がかかるように見えることもあるようですが,実際にプレイしていただければ,非課金でもさほど不便ではないことを理解していただけるはずです。そのうえで,便利だと思えるものの購入を検討していただければと思います。
     プレイしていただいた方には,逆に「こんなに無料でプレイできるのか」ということが分かっていただけていると思います。

    木村氏:
     ほかの有料アイテムについても,ほとんどの場合,非課金でも利用できる代替手段は用意しているんです。たとえばコスチュームは,マイショップで購入することが可能です。ほかのプレイヤーが出品していれば,ゲーム内でメセタを稼ぐことで,非課金でも入手することができます。
     また,スケープドールは有料アイテムとなりますが,特別なクエストやクライアントオーダー中でなければ,体力が尽きてもキャンプシップに戻されるだけです。スタート地点からではなく直近のチェックポイントからすぐに復帰できますから,その少しの手間が惜しいという方にご購入いただければいいんじゃないかなと。
     パーティープレイ中なら,ほかのプレイヤーにムーンアトマイザーを使ってもらえば,その場で復帰できますし。

    ※ゲーム内マネーで購入できる,他者を復活させるアイテム。

    酒井氏:
     従来のシリーズより,体力が尽きて倒されることが少なくなるように調整していますし,「PSO2」では,プレイがうまくなればすべての攻撃を回避するのが可能なくらいアクション性は高いので,慣れれば慣れるほど,倒されることも少なくなると思います。

    画像集#028のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた


    見知らぬプレイヤーとも一緒に遊べるマルチパーティーエリアは好評


    4Gamer:
     「PSO2」では,クエストに途中参戦できるというシリーズの特徴を推し進めた,クエスト中にほかのパーティーと遭遇するマルチパーティーエリアが用意されています。マルチパーティーエリアの利用状況は,どのような感じですか。

    酒井氏:
     当然,一人でやるよりもレベルの上がり方が速いこともあって,利用率は非常に高いです。α2テストでマルチパーティーを組みにくいというご意見をいただいて,クローズドβテストで仕様を変更したこともありました。

    画像集#015のサムネイル/秋には5つの武器カテゴリと新クラスが追加される「ファンタシースターオンライン2」。その歩みとこれからについて,プロデューサーの酒井智史氏とディレクターの木村裕也氏に聞いてきた
    木村氏:
     もともとは,見知らぬプレイヤーと出会って一緒に冒険するというような意味合いで,「無限の冒険」の一要素として考えていたものなんです。
     マルチプレイを強制されるエリアなので,最初は反発もあるかと心配していたのですが,ほとんどの方に好意的に受け入れていただきました。私達としても力を入れた部分ですから,評価していただけたのはうれしいですね。

    4Gamer:
     反発というのは?

    木村氏:
     世界的に見て,オンラインゲームを一人で遊ぶという傾向は強くなっています。本音で言えばパーティープレイを楽しんでほしいのですが,一人でもプレイできる内容にすることは大きな課題なんです。
     ですから,一人でクエストを始めても,途中でほかのプレイヤーと何となくすれ違って声を掛け合う,というようなことを実現したかったんですね。あとは,MMOタイプのゲームでよくあるように,見知らぬプレイヤー同士で回復したりされたりということを,MOで実現できないかということも考えていました。

    4Gamer:
     そういう意図だったんですね。個人的には,オンラインゲームなのにほかのプレイヤーとコミュニケーションを取らないというのはもったいない気もしますが。

    木村氏:
     私の個人的な考えとしては,パーティーで遊びたくないというわけじゃなくて,コミュニケーションが億劫といいますか,パーティープレイに伴うストレスを嫌っているんじゃないかと思うんです。
     オンラインゲームを遊ぶ人は,効率の良さもそうですし,ゲーム的にもパーティープレイのほうが楽しいことは分かっていますから,そのストレスをシステム的に軽減できれば,楽しい部分だけを体験できますよね。
     「PSO2」では,マルチパーティーエリアでほかのプレイヤーと出会いますから,一人でプレイしていてもパーティープレイ的なことを体験できます。マルチパーティーエリアで自動的にほかのプレイヤーと出会って,気が合えば無言でも追走して一緒に遊べるわけです。“横殴り”しても問題ないシステムですし,アイテムもそれぞれのプレイヤーごとにドロップされますから,全部自分で取っても問題ありませんし。

    酒井氏:
     なかなか自分から声をかけられない,シャイな日本人向きの仕様といえます(笑)。

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    4Gamer:
     ちなみに,一人で遊ぶプレイヤーはどのくらいいたのでしょうか?

    木村氏:
     「PSU」もそうだったんですが,初めて挑戦するクエストは一人で遊ぶ方が多いですね。どこまでを一人プレイと区分するか難しいのですが,そういう意味では,統計上,一人プレイの割合は高めだと思います。

    4Gamer:
     確かに,何も知らないまま,ほかのプレイヤーのパーティーにいきなり参加するのではなく,クエストの内容を一人で下見してからパーティーに参加するというパターンは多いかもしれません。律儀というか,よくも悪くも日本人的な行動ですが。

    酒井氏:
     知らないと申し訳ないと思ってしまうんでしょうね。逆に,知らないことを怒るプレイヤーもいますし。「PSO2」ではそういうケースをなくしたいんですけどね……。


    マターボードは「ファンタシースター」シリーズの最大の魅力である“アイテム収集”を理解してもらうための導線


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    4Gamer:
     マターボードは「PSO2」のストーリーに関わる大きな特徴ですが,説明するのはすごく難しい仕組みですよね。実際にプレイすればどんなものか分かるのですが。

    酒井氏:
     最初にプレゼンされたときも「いいと思うんだけど,よく分からない」というのが,正直な感想でしたね。実物を見てようやく理解できましたが,マターボードのことをブログで紹介するとき,どう説明するかでまた悩みました(笑)。

    木村氏:
     「ファンタシースター」シリーズの最大の楽しさはアイテム集めにあるのですが,これまでゲーム中ではこの部分をまったく説明してこなかったんです。
     また,「ファンタシースターポータブル」などでアンケートを取ったところ,通常のRPGと同じく,ストーリーを終えたところで止めてしまうユーザーさんもけっこういらっしゃることが分かりました。
     「ファンタシースター」シリーズの本当の魅力を理解しないまま,ゲームを止めてしまうユーザーさんが多いのかもしれない,ならばそれをゲームのシステムにも取り入れることで,楽しさを伝えていったほうがいいのでは,というところにたどり着いたわけです。

    酒井氏:
     一般的なRPGのように,ストーリーをクリアしただけで止めてしまうのは,非常にもったいないですよと伝えたかったんです。

    木村氏:
     「PSO2」では,目当てのアイテムを敵がドロップしたときに「やった!」という喜びを感じてもらえるよう,導線としてシステムに組み込むにはどうすればいいかと考えたんです。
     最終的には誰もがとっつきやすくなるよう,ストーリーと組み合わせてマターボードという形にしたんです。また,ビジュアル的にも訴えかけられるように,パズルのような要素を採用してみました。

    4Gamer:
     なるほど。

    木村氏:
     マターボードによって,ストーリーが断片的に見えてくる「PSO」と,ストーリーが枝分かれするマルチエンディングの「ファンタシースターポータブル」シリーズを融合するような形に仕上がっています。

    4Gamer:
     2012年2月から行われたというアフレコの内容は,サービスインで追加される第4章までのストーリーにすべて含まれているのでしょうか?

    酒井氏:
     まだまだ全部じゃないですよ。

    木村氏:
     台本は3冊あって,「インフィニティ」のときよりも多いですから,オンラインゲームとしては破格のボリュームになっています。

    4Gamer:
     今後もストーリーが追加されていくわけですよね。それを無料で遊べるのはプレイヤーにとっては嬉しいですけど,そこまで力を入れるのは大変ではないですか?

    木村氏:
     今は,ゲームに限らず無料のエンターテイメントコンテンツがたくさんあって,時間の奪い合いをしている時代ですから,大変ですけど中途半端なことはできないと考えています。

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