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これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
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印刷2011/12/24 00:00

レビュー

これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう

画像集#023のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
 フロム・ソフトウェアより9月22日に発売されたPlayStation 3用ソフト「DARK SOULS」は,2009年にリリースされた「Demon's Souls」の精神的な後継作だ。
 “死んで覚える”ことを前提としたシビアな難度と,人間関係の煩わしさを一切排除した“非同期コミュニケーション”,そして苦痛と孤独の中に垣間見える“達成感”という名の甘い毒を一度でも味わってしまったプレイヤーは,際限なく“ソウル”を貪り続ける亡者と化してしまう……。「Demon's Souls」は,そんなソウル中毒者を数多く生み出した罪深いタイトルだ。
 そして「DARK SOULS」にも,文字どおりその魂が受け継がれている。「Demon's Souls」によって積み上げられた無数の屍を糧に,本作は一体どのような変貌を遂げたのか。複数回のパッチ配信によってようやく本来の魅力を取り戻した本作の魅力について,あらためて紹介していきたい。
 なお,興味がある方は「こちら」の「Demon's Souls」レビューも併せてチェックしてもらえると,本稿に対する理解がより深まるはずだ。

画像集#024のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう

「DARK SOULS」公式サイト



スタッフの人間性を疑う悪意の塊

総合的な難度はデモンズ以上!


画像集#025のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
 ゲーム開始時,プレイヤーはまずキャラクターを作成することになる。性別から容姿まで自由にクリエイトできるのだが,ここでもっとも重要な要素となるのが“素性”の選択だ。武器の扱いに長けた“戦士”や“騎士”,魔術や奇跡を得意とする“魔術師”と“聖職者”,ステータスは高いものの,初期装備が極端に貧弱な“持たざる者”など,全部で10種類が存在する。
 ただし,どの素性を選んでも,プレイヤーの育て方次第でキャラクター特性を変えていけるので,あまり悩まず好みで選ぶといいだろう。まぁ,さすがに初心者の場合,序盤がとにかくキツイ“持たざる者”は避けたほうがいいが……。
 また,各素性の初期装備以外に,冒険の助けとなるさまざまなアイテムの中から一つだけ,“贈り物”を受け取ることができる。あえて何も選ばないことも可能だが,その選択には何のメリットもないので,余程のマゾでもない限り,もらえるものは素直にもらっておこう。初心者には,特定の扉を開けられる“万能鍵”がオススメだ。ちなみに万能鍵は“盗人”の初期装備であり,ゲームを進めると商人から購入することもできる。

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ゲーム中にプレイヤーキャラクターの顔を拝むことなど滅多にないのだが,それでも容姿にこだわりたくなるのが人情というもの。まぁ,死ねば結局は干し柿のような顔になってしまうのだが……
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“呪術師”の放つ炎は威力とコストパフォーマンスに優れている。魔法プレイを目指す初心者にオススメしたい素性だ

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篝火は,不死人にとって自らの命に等しい存在だ。体力回復だけでなく,レベルアップなど重要な行動のほとんどを篝火で行うことになる
 さて,キャラクターを作成し終えると,いよいよ過酷な冒険の旅が始まるわけだが,ここで本作の“核”となる設定とシステムについて説明しておこう。
 まず,本作においてプレイヤーは,呪われた存在として忌み嫌われている“不死人”であり,何度死のうが,最後に休息した“篝火”で“亡者”として蘇ることができる。「Demon's Souls」における“要石”と“ソウル体”を彷彿させる設定だが,大きく違うのは,ソウル体の場合,HPの最大値が半分になるというペナルティがあったのに対し,亡者にはそれがない。つまりいくら死亡しても,ステータス的には生身と変わらない状態でゲームを進めることができるのだ。

画像集#026のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう

 しかし,だからといって決して難度が低くなっているというわけではない。なぜなら,本作ではすべてのマップがシームレスに繋がっているうえ,基本的には篝火での休息か,篝火でのみ補給できる“エスト瓶”の使用でしかHPを回復できないシステムになっているのである。もちろん,回復系の奇跡を覚えることもできるのだが,本作における魔法は回数制となっており,使用回数の回復も篝火でしか行えない。さらには,篝火で休息するたびにマップ上の敵が復活してしまうという容赦のない仕様なのだ。
 つまり,「Demon's Souls」において非常に有効だった「大量の回復アイテムとMP回復の指輪を装備してゴリ押し」という攻略法が使えなくなったわけであり,総合的な難度がエラいことになっているのである。

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ソウルは「Demon's Souls」同様,経験値と通貨の両方の役割を果たす。ソウルを消費して任意のステータスを伸ばすレベルアップシステムは相変わらず自由度が高く,悩ましい
画像集#012のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
篝火では“人間性”を消費することで,亡者から生身に復活できる。生身でしか選択できない行動や使用できないアイテムが存在するのもポイントで,例えば篝火に人間性を捧げてエスト瓶の最大数を増加させる“注ぎ火”は,生身でしか行えない

デーモンを倒すと,ランダムでレアな装備品を得られることがある。また,部位破壊によって手に入る武器も存在するため,アイテムのコンプリートを目指すのならば周回プレイが必須だ
画像集#021のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
 オマケに,当然のことながら地図なんて便利なものは持っていないので,プレイヤーは複雑怪奇なマップ構成を自力で頭に叩きこまなければならない。
 また「Demon's Souls」では,ボスであるデーモンを倒せば要石が出現し,すぐさま安全地帯である“楔の神殿”に戻って,ヒロインのかぼたん(火防女)に癒してもらうことができたが,本作では発売当初,死闘の果てにデーモンを倒しても,自力で篝火まで戻るか,さらに先へと進む必要があったのだ。筆者もせっかくボスを倒したのに,篝火を目指す途中で野垂れ死んで大量のソウルを失うという悲劇に,何度瞳のハイライトが消えたことか……。しかし現在では,大抵のボスが,討伐時に“帰還の骨片”(篝火に戻れるアイテム)を落とすようパッチで調整されているので,今となっては楽しい思い出である。

えげつないトラップや,生理的嫌悪感を抱かざるをえないグロテスクな敵の数々。強い精神力で挑まなければ,瞬く間に心を折られてしまうだろう
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 アクション面に関しては,「Demon's Souls」のシステムを引継ぎつつ,より洗練された印象を受ける。盾によるガードと敵の攻撃を受け流すパリィ,そしてローリングによる回避といった防御行動が戦闘の要となる,シビアな剣戟アクションは健在だ。
 特筆すべきは,攻撃モーションがより細分化されたという点で,例えば同じ“直剣”カテゴリでも,ロングソードの強攻撃は刺突で,ブロードソードでは横薙ぎだったりするなど,武器ごとの個性がはっきり表現されているのだ。さらに,片手持ちと両手持ちでもモーションが変化する。
 これはつまり,単純な威力や重量だけで武器の有用性を判断できなくなったということだ。装備選択の幅が大きく広がり,本作は「Demon's Souls」以上の高い自由度と奥深さを持つに至ったのである。

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武器はさまざまな方向に強化していける。徹底的に物理攻撃力を追求することもできるし,魔力や属性を付加することも可能だ
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パリィから発生する致命の一撃と,背後から急襲するバックスタブは,強敵相手の戦闘において重要な攻撃手段だ。これらを使いこなせるようになって初めて一人前の戦士と言える

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敵は追跡範囲が広いため,倒さずに振り切るのが難しい。ボスに挑む場合,いかに回復手段であるエスト瓶を温存して進めるかが重要になってくる
 アクション面で変化があったのは,プレイヤー側だけの話ではない。本作では,敵のAIもかなり進歩している。待ち伏せ不意打ちは当然のこととして,ザコでもスキを見てエスト瓶を使用するし,パリィやバックスタブを積極的に狙ってくるヤツもいる。逃走するふりをして,追いかけてきたプレイヤーを罠にハメようとする敵まで存在するのだからたまらない。「人の嫌がることは全部やるよ!」と言わんばかりの,極めて狡猾かつ悪意に満ちたAIである。

 筆者の場合,脱出困難なダンジョンで,体力の最大値が激減する“呪死”を連続で食らった際は,さすがに泡を吹いてぶっ倒れそうになった。残されたのはザコの一撃でも即死するわずかなHPで,進むも地獄,戻るも地獄。ゲームライターになって以来,本気で「あ,これ詰んだ」と諦めかけたのは,本作が初めてである。
 ちなみに,呪死の効果はあまりの凶悪さゆえ,現在はアップデートにより緩和されている。しかしそれでも恐ろしいことに変わりはないので,新米不死者の諸君には重々注意していただきたい。

呪いのブレスを吐いてくる“バジリスク”。見た目もおぞましければ,攻撃方法もおぞましい。ちなみに呪死状態を解くには癒し手の力を借りるか,やたらと高価な解呪石が必要になるという安心の“心折設計”だ
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 ……とまぁ,ホントに底意地の悪いゲームなのだが,言わずもがな厳しい試練を乗り越えた末に得られる達成感の味は,筆舌に尽くし難い。理不尽に見えても必ず攻略の糸口が用意されているあたり,「だぁークソ! ……もう一回だ!!」という風にプレイヤーのゲーマー魂を掻き立てるのだ。ここまで本作のことをさんざん外道呼ばわりしてきたが,DARK SOULSにおける難度に対する愚痴は,賞賛と同義なのである。


遊び応えの増したマルチプレイ

誓約を結び,戦いに身を投じよ


マップ上でわずかに感じられる他者の痕跡は,探索の孤独感を緩和してくれる。……苦しんでいるのは自分だけじゃないのだ
画像集#005のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
 本作を語るうえで絶対に外せないのが,一風変わったオンライン要素の存在だ。ネットワーク上のプレイヤーが白い影として表示される“幻影”,死亡時に残された血痕に触れることで,その死に様をリプレイできる“血痕システム”,定型文を組み合わせることでマップ上にアドバイスを残せる“メッセージ”など,これら“非同期コミュニケーション”の要素はすべて「Demon's Souls」から受け継がれている。
 加えて,ほかのプレイヤーが奇跡を使用することでマップにサインが表示され,その近くで奇跡を使用すると威力がアップする“共鳴”や,ほかのプレイヤーが行った注ぎ火が自分に伝播して,エスト瓶の使用回数が増えるといった新システムも追加された。

危険を知らせてくれるメッセージもあれば,こちらを罠にハメようとする嘘のアドバイスが書かれていることもあるのが,本作の面白いところだ
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 召喚サインから他世界のプレイヤーを味方として呼び出す“協力プレイ”や,他世界のプレイヤーを殺して人間性やソウルなどを奪う“敵対プレイ”といった要素も健在なのだが,本作では“誓約”というシステムが加わったことで,「Demon's Souls」よりも複雑化している。誓約は,特定のNPCと結ぶことで様々なメリットを得られるシステムなのだが,結んだ相手によって,マルチプレイの楽しみ方が大きく変わってくるのだ。
 同じ誓約を結んだ者同士だと協力しやすくなるなどの効果がある一方で,敵対プレイに特化したり,特定のアイテムを奪い合ったり,他世界の難度を上昇させたり,ひたすら誓約相手に貢物をしたり……といった具合に,一口に誓約と言っても,目的とする行為は非常にバリエーション豊かである。課せられた条件を満たすことで“絆”を深めることもでき,誓約相手との関係が良好になれば,特殊なアイテムや魔法が得られる場合もある。ちなみに,誓約は重複して結ぶことはできない。誓約破棄/再契約は可能だが,絆レベルはリセットされてしまうので注意が必要だ。

人外フェチにはたまらない“混沌の従者”の誓約。卵姫様に人間性を捧げて彼女の痛みを和らげるのだ。節足動物門鋏角亜門系女子いいよね……
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 また,マップ上の壺や樽に化ける“擬態”という魔術にも注目してほしい。隠れて敵をやり過ごしたり不意打ちを狙ったりと,使い方次第でマルチプレイが相当面白いことになるはずだ。……まぁ,稀にホスト側と侵入側が双方とも擬態していることに気付かず,果てしない根競べに発展することもあるが。

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 以上のように,マルチプレイは非常に遊び応えがあるのだが……あまり手放しで褒めることができないのが,一ファンとしては心苦しいところ。プレイヤーならご存じだと思うが,「DARK SOULS」は発売直後からネットーワーク関係の不具合が頻発し,かなり長い間,まともにオンライン要素が楽しめなかった。発売日に購入したプレイヤーなどは泣く泣くオフラインで攻略を進めるしかなく,本作を100%の状態で楽しむことができなかったのだ。さらに,基本的な不具合が修正されたあとも,マッチングが不安定だったり,ゲームバランスを著しく崩すバグ技が発見されたりしたのだが,そのたびにフロム・ソフトウェアはアップデートファイルを配信し,徐々に改善を行なってきた。
 そして現在では,ネットワーク/ゲームバランス共に良好な状態となっており,やっと「DARK SOULS」が本来のポテンシャルを発揮し始めたという印象だ。

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画像集#028のサムネイル/これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
 さて,ここまで色々と語ってきたが,最後にあらためて伝えたいのは,本作が「Demon's Souls」とは“似て非なるゲーム”であるという点だ。「Demon's Souls」はチャレンジ精神溢れるシステムの数々と,奇跡的なゲームバランスが大絶賛されたが,フロム・ソフトウェアはその上に胡坐をかこうとはせず,失敗を恐れずに,「DARK SOULS」へ挑戦的な要素を数多く導入してきた。結果的には不具合も色々と発生したが,筆者としては,デベロッパとして新しい遊びを追求し続けるその姿勢を高く評価したい。

 本作のハンパでない難度は人を選ぶが,アクションゲームの面白さをドロッドロに煮詰めたような濃い味付けには驚異的な中毒性がある。ツボにハマると,しばらくほかのゲームに浮気できなくなること受け合いだ。
 本稿に心惹かれるものを感じたならば,その身にはすでに,不死者の証たる“ダークリング”が刻まれているはず。人間性など投げ捨て,残酷で自由な「DARK SOULS」の世界に足を踏み入れようではないか。リリース直後の不具合で心が折れたという人にも,ようやく本来の魅力を取り戻した本作のプレイを再開し,本当の意味で心をへし折られてほしいものだ。

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