レビュー
これが究極の“心折設計”だ。アップデートを重ね本来の魅力が味わえるようになった「DARK SOULS」について,今こそ語ろう
“死んで覚える”ことを前提としたシビアな難度と,人間関係の煩わしさを一切排除した“非同期コミュニケーション”,そして苦痛と孤独の中に垣間見える“達成感”という名の甘い毒を一度でも味わってしまったプレイヤーは,際限なく“ソウル”を貪り続ける亡者と化してしまう……。「Demon's Souls」は,そんなソウル中毒者を数多く生み出した罪深いタイトルだ。
そして「DARK SOULS」にも,文字どおりその魂が受け継がれている。「Demon's Souls」によって積み上げられた無数の屍を糧に,本作は一体どのような変貌を遂げたのか。複数回のパッチ配信によってようやく本来の魅力を取り戻した本作の魅力について,あらためて紹介していきたい。
なお,興味がある方は「こちら」の「Demon's Souls」レビューも併せてチェックしてもらえると,本稿に対する理解がより深まるはずだ。
「DARK SOULS」公式サイト
スタッフの人間性を疑う悪意の塊
総合的な難度はデモンズ以上!
ただし,どの素性を選んでも,プレイヤーの育て方次第でキャラクター特性を変えていけるので,あまり悩まず好みで選ぶといいだろう。まぁ,さすがに初心者の場合,序盤がとにかくキツイ“持たざる者”は避けたほうがいいが……。
また,各素性の初期装備以外に,冒険の助けとなるさまざまなアイテムの中から一つだけ,“贈り物”を受け取ることができる。あえて何も選ばないことも可能だが,その選択には何のメリットもないので,余程のマゾでもない限り,もらえるものは素直にもらっておこう。初心者には,特定の扉を開けられる“万能鍵”がオススメだ。ちなみに万能鍵は“盗人”の初期装備であり,ゲームを進めると商人から購入することもできる。
ゲーム中にプレイヤーキャラクターの顔を拝むことなど滅多にないのだが,それでも容姿にこだわりたくなるのが人情というもの。まぁ,死ねば結局は干し柿のような顔になってしまうのだが…… |
“呪術師”の放つ炎は威力とコストパフォーマンスに優れている。魔法プレイを目指す初心者にオススメしたい素性だ |
篝火は,不死人にとって自らの命に等しい存在だ。体力回復だけでなく,レベルアップなど重要な行動のほとんどを篝火で行うことになる |
まず,本作においてプレイヤーは,呪われた存在として忌み嫌われている“不死人”であり,何度死のうが,最後に休息した“篝火”で“亡者”として蘇ることができる。「Demon's Souls」における“要石”と“ソウル体”を彷彿させる設定だが,大きく違うのは,ソウル体の場合,HPの最大値が半分になるというペナルティがあったのに対し,亡者にはそれがない。つまりいくら死亡しても,ステータス的には生身と変わらない状態でゲームを進めることができるのだ。
しかし,だからといって決して難度が低くなっているというわけではない。なぜなら,本作ではすべてのマップがシームレスに繋がっているうえ,基本的には篝火での休息か,篝火でのみ補給できる“エスト瓶”の使用でしかHPを回復できないシステムになっているのである。もちろん,回復系の奇跡を覚えることもできるのだが,本作における魔法は回数制となっており,使用回数の回復も篝火でしか行えない。さらには,篝火で休息するたびにマップ上の敵が復活してしまうという容赦のない仕様なのだ。
つまり,「Demon's Souls」において非常に有効だった「大量の回復アイテムとMP回復の指輪を装備してゴリ押し」という攻略法が使えなくなったわけであり,総合的な難度がエラいことになっているのである。
ソウルは「Demon's Souls」同様,経験値と通貨の両方の役割を果たす。ソウルを消費して任意のステータスを伸ばすレベルアップシステムは相変わらず自由度が高く,悩ましい |
篝火では“人間性”を消費することで,亡者から生身に復活できる。生身でしか選択できない行動や使用できないアイテムが存在するのもポイントで,例えば篝火に人間性を捧げてエスト瓶の最大数を増加させる“注ぎ火”は,生身でしか行えない |
また「Demon's Souls」では,ボスであるデーモンを倒せば要石が出現し,すぐさま安全地帯である“楔の神殿”に戻って,ヒロインのかぼたん(火防女)に癒してもらうことができたが,本作では発売当初,死闘の果てにデーモンを倒しても,自力で篝火まで戻るか,さらに先へと進む必要があったのだ。筆者もせっかくボスを倒したのに,篝火を目指す途中で野垂れ死んで大量のソウルを失うという悲劇に,何度瞳のハイライトが消えたことか……。しかし現在では,大抵のボスが,討伐時に“帰還の骨片”(篝火に戻れるアイテム)を落とすようパッチで調整されているので,今となっては楽しい思い出である。
アクション面に関しては,「Demon's Souls」のシステムを引継ぎつつ,より洗練された印象を受ける。盾によるガードと敵の攻撃を受け流すパリィ,そしてローリングによる回避といった防御行動が戦闘の要となる,シビアな剣戟アクションは健在だ。
特筆すべきは,攻撃モーションがより細分化されたという点で,例えば同じ“直剣”カテゴリでも,ロングソードの強攻撃は刺突で,ブロードソードでは横薙ぎだったりするなど,武器ごとの個性がはっきり表現されているのだ。さらに,片手持ちと両手持ちでもモーションが変化する。
これはつまり,単純な威力や重量だけで武器の有用性を判断できなくなったということだ。装備選択の幅が大きく広がり,本作は「Demon's Souls」以上の高い自由度と奥深さを持つに至ったのである。
武器はさまざまな方向に強化していける。徹底的に物理攻撃力を追求することもできるし,魔力や属性を付加することも可能だ |
パリィから発生する致命の一撃と,背後から急襲するバックスタブは,強敵相手の戦闘において重要な攻撃手段だ。これらを使いこなせるようになって初めて一人前の戦士と言える |
敵は追跡範囲が広いため,倒さずに振り切るのが難しい。ボスに挑む場合,いかに回復手段であるエスト瓶を温存して進めるかが重要になってくる |
筆者の場合,脱出困難なダンジョンで,体力の最大値が激減する“呪死”を連続で食らった際は,さすがに泡を吹いてぶっ倒れそうになった。残されたのはザコの一撃でも即死するわずかなHPで,進むも地獄,戻るも地獄。ゲームライターになって以来,本気で「あ,これ詰んだ」と諦めかけたのは,本作が初めてである。
ちなみに,呪死の効果はあまりの凶悪さゆえ,現在はアップデートにより緩和されている。しかしそれでも恐ろしいことに変わりはないので,新米不死者の諸君には重々注意していただきたい。
……とまぁ,ホントに底意地の悪いゲームなのだが,言わずもがな厳しい試練を乗り越えた末に得られる達成感の味は,筆舌に尽くし難い。理不尽に見えても必ず攻略の糸口が用意されているあたり,「だぁークソ! ……もう一回だ!!」という風にプレイヤーのゲーマー魂を掻き立てるのだ。ここまで本作のことをさんざん外道呼ばわりしてきたが,DARK SOULSにおける難度に対する愚痴は,賞賛と同義なのである。
遊び応えの増したマルチプレイ
誓約を結び,戦いに身を投じよ
加えて,ほかのプレイヤーが奇跡を使用することでマップにサインが表示され,その近くで奇跡を使用すると威力がアップする“共鳴”や,ほかのプレイヤーが行った注ぎ火が自分に伝播して,エスト瓶の使用回数が増えるといった新システムも追加された。
召喚サインから他世界のプレイヤーを味方として呼び出す“協力プレイ”や,他世界のプレイヤーを殺して人間性やソウルなどを奪う“敵対プレイ”といった要素も健在なのだが,本作では“誓約”というシステムが加わったことで,「Demon's Souls」よりも複雑化している。誓約は,特定のNPCと結ぶことで様々なメリットを得られるシステムなのだが,結んだ相手によって,マルチプレイの楽しみ方が大きく変わってくるのだ。
同じ誓約を結んだ者同士だと協力しやすくなるなどの効果がある一方で,敵対プレイに特化したり,特定のアイテムを奪い合ったり,他世界の難度を上昇させたり,ひたすら誓約相手に貢物をしたり……といった具合に,一口に誓約と言っても,目的とする行為は非常にバリエーション豊かである。課せられた条件を満たすことで“絆”を深めることもでき,誓約相手との関係が良好になれば,特殊なアイテムや魔法が得られる場合もある。ちなみに,誓約は重複して結ぶことはできない。誓約破棄/再契約は可能だが,絆レベルはリセットされてしまうので注意が必要だ。
また,マップ上の壺や樽に化ける“擬態”という魔術にも注目してほしい。隠れて敵をやり過ごしたり不意打ちを狙ったりと,使い方次第でマルチプレイが相当面白いことになるはずだ。……まぁ,稀にホスト側と侵入側が双方とも擬態していることに気付かず,果てしない根競べに発展することもあるが。
そして現在では,ネットワーク/ゲームバランス共に良好な状態となっており,やっと「DARK SOULS」が本来のポテンシャルを発揮し始めたという印象だ。
本作のハンパでない難度は人を選ぶが,アクションゲームの面白さをドロッドロに煮詰めたような濃い味付けには驚異的な中毒性がある。ツボにハマると,しばらくほかのゲームに浮気できなくなること受け合いだ。
本稿に心惹かれるものを感じたならば,その身にはすでに,不死者の証たる“ダークリング”が刻まれているはず。人間性など投げ捨て,残酷で自由な「DARK SOULS」の世界に足を踏み入れようではないか。リリース直後の不具合で心が折れたという人にも,ようやく本来の魅力を取り戻した本作のプレイを再開し,本当の意味で心をへし折られてほしいものだ。
「DARK SOULS」公式サイト
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(C)2011 NBGI (C)2011 FromSoftware, Inc.
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