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「GeForce GTS 450」のSLI動作検証。1万円台のカード2枚によるマルチGPU動作の価値を考える
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印刷2010/09/15 14:50

テストレポート

「GeForce GTS 450」のSLI動作検証。1万円台のカード2枚によるマルチGPU動作の価値を考える

画像集#002のサムネイル/「GeForce GTS 450」のSLI動作検証。1万円台のカード2枚によるマルチGPU動作の価値を考える
 リファレンスクロックでシングルカード動作させたレビューではやや期待はずれの印象が否めなかった「GeForce GTS 450」(以下,GTS 450)ではあるが,それでも,GeForce 400シリーズとして初の1万円台前半という価格設定に惹かれている読者もいることだろう。
 そういった人達が,ひとまず1枚購入しておいて,後日予算に余裕が生まれたときもう1枚購入し,GPUの仕様上2-wayまで構成可能なNVIDIA SLI(以下,SLI)動作させるというのは,アップグレードパスとして有意義なものなのだろうか。

 レビュー記事でも用いたMSI製の搭載カード「N450GTS Cyclone 1GD5/OC」(以下,N450GTS Cyclone)とは別に,Galaxy Microsystems(以下,Galaxy)から「GF PGTS450SuperOC/1GD5 FUJIN 2.1」(以下,PGTS450SuperOC)の貸し出しも受けられたので,SLIのパフォーマンスも検証してみたいと思う。

画像集#003のサムネイル/「GeForce GTS 450」のSLI動作検証。1万円台のカード2枚によるマルチGPU動作の価値を考える
N450GTS Cyclone 1GD5/OC
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン Tel 03-5817-3389
予想実売価格:1万5000円前後(※2010年9月15日現在)
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GF PGTS450SuperOC/1GD5 FUJIN 2.1
メーカー:Galaxy Microsystems
問い合わせ先:info@galaxytech.jp
実勢価格:1万6000円前後(※2010年9月15日現在)


ユニークなカード設計のPGTS450SuperOC

メモリチップには0.4ns品を採用


PGTS450SuperOCに対する「GPU-Z」(Version 0.4.6)実行結果
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 テストに先立って,PGTS450SuperOCを概観してみたい。
 本製品は,N450GTS Cycloneと同じく,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップ品である。GTS 450のリファレンスクロックはコア783MHz,シェーダ1566MHzのところ,コア888MHz,シェーダ1776MHzと,いずれも約13.4%引き上げられているのが特徴だ。N450GTS Cycloneだとコア850MHz,シェーダ1700MHzなので,さらに挑戦的な動作クロック設定になっていることになる。ちなみに,メモリクロックは両製品とも4GHz相当だ。

 また,製品名から想像できるように,搭載するGPUクーラーは,最近のGalaxy一押しといえる「FUJIN」(風神)モデル。2本のヒートパイプと放熱フィンからなるパッシブヒートシンクを,取り外し可能なファンによって冷却する仕様である。

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FUJINクーラーを搭載するPGTS450SuperOC。メカメカしいイメージのカバー中央部に設けられたファンユニットは,2か所のツメに軽く力を入れながら引き上げると,扉のように開けられる
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さらに,回転軸部分を少しズラせば,ファンを取り出せるようになっており,ファンや放熱フィン部の掃除が可能だ。ちなみにカード背面にこれといった冷却機構は用意されておらず,N450GTS Cycloneと同じく,メモリチップ用の空きパターンも見える

左から,N450GTS Cyclone,PGTS450SuperOC,そしてMSI製の「GeForce GTS 250」カード「N250GTS Twin Frozr 1G」を並べたところ
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 カードサイズ自体は実測208mm(※突起部除く)で,N450GTS Cycloneと同じ。違いは電源周りにあり,PGTS450SuperOCの場合,PCI Express x16スロットに差したとき,6ピンの補助電源コネクタがマザーボードに対して垂直方向を向くのが,大きな特徴となっている。つまり,電源ケーブルの取り回しという観点では,N450GTS CycloneよりもPGTS450SuperOCのほうが有利となるわけだ。

GPUクーラーを取り外した状態で比較すると明らかだが,PGTS450SuperOCとN450GTS Cycloneでは電源周りのデザインが異なる。電源部用に単体のヒートシンクを用意するのもPGTS450SuperOCの特徴だ
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製品ボックスで0.4ns仕様のメモリチップ搭載が謳われる
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 PGTS450SuperOCが搭載するメモリチップはSamsung Electronics製のGDDR5「K4G10325FE-HC04」(0.4ns品)で,スペック上は5GHz相当の動作も可能。メモリクロックにはかなり大きなマージンが設けられている計算になる。Galaxyは製品ボックスでわざわざ0.4ns品の搭載を謳っているほどで,このあたりにメーカーの方向性が見えて面白い。
 なお,N450GTS Cyclone,PGTS450SuperOCそのものの製品レビューは後日あらためてお届けする予定だ。

搭載するGPU上の刻印は「GF106-250-KA-A1」。メモリチップは0.4ns品だった
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レビューと同じ260.52版ドライバを利用

GTX 470やHD 5850といったハイエンドGPUと比較


 今回,SLIの動作にあたっては,N450GTS Cycloneをプライマリ,PGTS450SuperOCをセカンダリで用いることにした。また,前述のとおり2製品はいずれもクロックアップモデルだが,今回はMSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 2.0.0)で,どちらも動作クロックをリファレンス相当にまで落とすことにしている。
 GTS 450によるSLI動作(以下,GTS 450 SLI)の比較対象としては,パフォーマンス的に近いスコアが出ると推測される「GeForce GTX 470」(以下,GTX 470)と「ATI Radeon HD 5850」(以下,HD 5850)を用意している。そのほかテスト環境はのとおりで,GTS 450のレビュー時とまったく同じ。テストタイミングの都合上,用いたドライバのバージョンも,14日にリリースされた「GeForce Driver 260.63 Beta」ではなく,NVIDIAからレビュワー向けに配布された「GeForce Driver 260.52」となる。

 テストにあたって,「Core i7-975 Extreme Edition/3.33GHz」の自動オーバークロック機能「Intel Turbo Boost Technology」をBIOSから無効に設定した一方,「Intel Hyper-Threading Technology」は有効にしたままにしているのも,GTS 450のレビューと同じである。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション10.0準拠だが,マルチGPU構成時のパフォーマンス傾向はより高い解像度でこそ顕著に表れるため,解像度はレビュー時から変えて,1920×1200&2560×1600ドットの2種類に変更。そのため,比較対象となるGTS 450のシングルカードとグラフィックスメモリ768MB版「GeForce GTX 460」(以下,GTX 460 768MB)については,「1920×1200ドット解像度のデータはレビュー記事から流用する一方,2560×1600ドット解像度のデータは新たに取得する」方向で対処するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。


GTX 470とHD 5850と肩を並べる性能のGTS 450 SLI

ただ,メモリI/F周りの制限はやはりある


 テスト結果を順番に見ていこう。
 「3DMark06」(Build 1.2.0)の結果がグラフ1,2である。GTS 450シングルカードに対するGTS 450 SLIのスコア上昇率は,最も低い1920×1200ドットの「標準設定」で約59%。最も高い2560×1600ドットの「高負荷設定」だと約86%にまで達し,グラフィックス描画負荷が高ければ高いほど真価が発揮されるという,SLIらしい傾向が見て取れる。
 ハイエンドGPUと比較すると,GTX 470には若干届かないものの,HD 5850とはほぼ互角のレベルだ。

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 次にグラフ3,4は「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)から,「Day」シークエンスの平均フレームレートをまとめたものになる。
 ここで面白いのは,スコアのGTS 450シングルカードに対するパフォーマンス上昇率の傾向が,3DMark06と比べて逆の展開になっていること。最も高いスコア上昇率を示したのは1920×1200ドットの標準設定で約92%となっており,逆に,最も低かったのは2560×1600ドットの高負荷設定における約84%なのだ。こういった結果を生んだ要因としては,128bitメモリインタフェースが“狭く”,メモリアクセス量が増加する高負荷設定で足を引っ張った可能性が指摘できるだろう。
 なお,STALKER CoPはDirectX 11タイトルということもあってか。GTS 450 SLIのスコアがHD 5850のそれを大きく上回り,GTX 470のスコアに肩を並べている。

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 128bitメモリインタフェースの制約をより強く感じられるのが,同じSTALKER CoPから,最も描画負荷の高い「SunShafts」シークエンスのテスト結果をまとめたグラフ5,6である。GTS 450 SLIとGTS 450で比較すると,2560×1600ドットの高負荷設定ではスコア向上率が約73%まで落ち込んだ。
 Fermiアーキテクチャが元来持っているDirectX 11アプリケーションでの強さもあって,HD 5850よりは高いスコアを示すGTS 450 SLIだが,GTX 470には離される結果になっている。

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 グラフ7,8の「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)だと,SLIのメリットが非常に大きい。スコアの向上率は,最も高い1920×1200ドットの高負荷設定で約98%にも達しており,2枚めのカードを差した効果をはっきり感じられる結果だ。
 DirectX 11世代のタイトルということもあって,HD 5850より高いスコアを示すのは,BFBC2でも同じ。GTX 470に届かないという意味では,STALKER CoPのSunShaftsと似た傾向といえるかもしれない。

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 続けて,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)の結果がグラフ9,10となる。Call of Duty 4は,シェーダプロセッサ数とテクスチャユニットの数がスコアを大きく左右するため,もともとSLIやATI CrossFireXでスコアが大きく伸びる傾向にあるのだが,果たしてGTS 450 SLIのスコアも実に優秀。いずれのテスト条件でも,シングルカードと比べて2倍以上というスコアを叩き出している。また,GTX 470やHD 5850を安定的に上回っているのも,注目しておきたいポイントだ。

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 もちろん,万事が万事こう上手くいくわけではないというのも,SLI動作の常だ。グラフ11,12は「Just Cause 10」のテスト結果だが,GTS 450 SLIのGTS 450に対するスコア上昇率は61〜72%。2560×1600ドットの高負荷設定で,メモリ周りが原因と思われるスコアの伸び悩みも見られる。
 ハイエンドGPUとの比較でも,GTX 470には完敗。HD 5850にも,4条件中3条件で置いて行かれる結果となった。

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 一方,グラフ13,14の「バイオハザード5」では,グラフィックス描画負荷の高まりに合わせてスコアの伸び率が高まるという,3DMark06と似た結果が得られた。もっとも,1920×1200ドットでHD 5850のスコアを上回るGTS 450 SLIが,2560×1600ドットでは下回るあたりからは,128bitメモリインタフェースが影を落としている様子も見て取れよう。

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 パフォーマンス検証の最後はグラフ15,16に示した「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)だが,GTS 450 SLIのGTS 450に対するスコア上昇率は91〜93%で,SLIの恩恵は大きい。HD 5850はもちろん,GTX 470のスコアすら安定的に上回っているのは目を見張るところだ。ゲームアプリケーションで用いられているDirectX APIの世代は異なるものの,傾向自体はCall of Duty 4に近い印象を受ける。

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シングルカード比で消費電力は最大150W近い増加

しかしそれでもGTX 470よりは低い


 2枚のグラフィックスカードを用いるSLIでは,消費電力が当然増加するが,それはHD 5850やGTX 470と比べて高いのか低いのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測し比較してみよう。
 テストにあたっては,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。なお,GTS 450シングルカードとGTX 460 768MBのデータはGTS 450のレビュー記事から流用しているので,この点はご了承を。

 というわけで結果はグラフ17のとおりだ。最も効率よく機能していたCall of Duty 4を最大値として,アプリケーション実行時は113〜149Wの上昇を確認できた。これは,HD 5850と比べても100W前後高い値であり,消費電力の増加は,SLIを利用するうえで避けられないと捉えるべきだろう。
 ただ,そんなGTS 450 SLIも,GTX 470と比べると消費電力は同等かそれ以下。GF100コアの強烈な電気食いぶりがあらためて示されたといえるが,逆にいえば,GTX 470クラスを問題なく駆動できる電源ユニットがあれば,GTS 450 SLIも安心して利用できる,ということでもある。

画像集#035のサムネイル/「GeForce GTS 450」のSLI動作検証。1万円台のカード2枚によるマルチGPU動作の価値を考える

 グラフ18は,参考までに,3DMark06を30分間連続実行したときを「高負荷時」として,アイドル時ともどもGPU-ZからGPU温度をチェックしてみた結果である。
 GTS 450のレビューと同様,オリジナルクーラー搭載モデルということもあり,横並びの比較にはまったく適さないのだが,それでも,GTS 450 SLIのプライマリとして用いたN450GTS Cycloneに注目してみると,高負荷時の温度は8℃上がっており,SLI構成による温度面への影響は避けられないと見るべきだろう。SLI構成を前提にPCを組む場合は,PCケース内のエアフローに気を配りたい。

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「ほぼGTX 470相当の性能を2万円台で」

と考えるならアリか


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 GTS 450のレビュー記事で筆者は,「GTS 450が魅力的な存在となり得るためには,実勢価格の下落を待つ必要がある」と述べた。その理由は,3Dオンラインゲームなどで求められるDirectX 9性能が旧世代の「GeForce GTS 250」に及んでいないとか,Fermiアーキテクチャ自慢のDirectX 11性能も,GF104からの機能削減によって今ひとつのレベルにまで落ちているとかいった部分にあったわけだ。
 しかし,SLI構成をとったGTS 450に関していうと,これらの問題はほぼクリアされたといっていいだろう。2枚買って3万円以下というか,もう少し安価に,例えば2枚で2万5000〜2万6000円程度なのであれば,GTX 470に変わる選択肢として,GTS 450 SLIは十分に価値のあるといえる。

 ただ,もちろんデメリットやハードルもある。最たる例は消費電力の増加で,この点で論外のGTX 470はともかく,HD 5850を1枚で使うのと比べて100W近い消費電力の増加になってしまうのは,やはり無視できない。また,SLIを利用できるマザーボードの選択肢に限りがある点や,AMDのプラットフォームでは事実上利用できないことなども,「コスト重視のSLI」という観点からは看過できそうにない。
 以上を踏まえるに,まず,はじめからGTS 450カードを2枚購入するくらいなら,それこそHD 5850など,上位クラスの単体GPUを選ぶのが正解だろう。SLIに対応したIntelプラットフォームのマザーボードを持っている人が,予算と相談しながら少しずつグラフィックス性能をアップデートしたい場合に候補となる選択肢とまとめられるのではなかろうか。
 悪くないのだが,対象となるユーザーの数は多くなさそうな雰囲気である。
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