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「風来のシレン5」,ダンジョン「原始に続く穴」を24時間で制覇できるか? イベント「風来のシレン5をみんなで遊ぶオフ会」レポート
これは,ゲームライター田下広夢氏が企画したイベントで,エクストラダンジョン「原始に続く穴」の地下99階までを,24時間以内にクリアすることを目指すという趣旨で開かれた(関連記事)。
取材を行ったのは12日だったが,参加者には前日から一睡もせずに遊び続けているという人もいた。
筆者が確認した限り,参加者には比較的若いプレイヤーが多く,グループで参加して仲間と楽しんでいる人達もいれば,単独で参加し,この場でほかのファンと交流を深めている人もいるようだった。
イベントではすれ違い通信が実施され,新種道具「おコンの杖」が配布されていた。普段,ほかのプレイヤーとあまりすれ違う機会がないという人は嬉しかったことだろう。
本稿では,イベントの発起人である田下氏のプレイぶりや,対戦会の様子をレポートする。
また田下氏と,会場に登場したシレン5のディレクター,醍醐頼希氏に話を聞く機会を得たので,その内容も紹介したい。
「不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス」公式サイト
非常に過酷なチャレンジ。「原始に続く穴」を24時間以内でクリアできるか
今回のイベントで田下氏は,「シレンの設定に倣って,おにぎりと桃に関連するものだけ食べる」と宣言しており,プレイルームには,田下氏に対して差し入れられたさまざまなおにぎり,桃を使ったヨーグルトや飴,ドリンクなどが置かれていた。
あまり大きな声では言えないが,徹夜でのプレイに備えてか,田下氏は栄養ドリンクも多数摂取していたようである。
今回のイベントに挑戦するため,事前にダンジョンを地下50階までクリアし,地下99階までの攻略に挑む権利を得ていた田下氏だが,それ以上の階層は未知の領域。そこでニコニコ動画内の「ニコニコ生放送」に集まったユーザーから助言を得るなどし,じっくりと歩を進めていた。
ゲームは,田下氏が自らのプレイを実況しながら行われており,何かトラブルが起こっても,「聖域の巻物を使え」「その敵にはギタン砲は効かないよ」など,中継を見ているファンから数多くのアドバイスが送られていた。複数の解決方法が提示された場合は,田下氏がファン達の声に耳を傾け,自分がどう行動すべきかを判断していた。
見せ場はいくつもあり,例えば,地下80階で敵に取り囲まれて大ピンチに陥るも,そのとき持っていた数々の道具を駆使して切り抜けたり,身動きが取れない状況のときに出現したカッパが,散乱する道具を投げつけてきたりといった劇的な出来事が起こった。
何か起こるたびに会場では大きな歓声が上がったほか,モンスターハウスに足を踏み入れたときは,ニコニコ生放送のコメント欄が弾幕状態になるなど,イベントは大いに盛り上がりを見せていた。
公約された24時間以内でのクリアは惜しくも達成できなかったが,田下氏は,来場者やニコニコ生放送の視聴者に支えられつつ最後まで戦い抜き,地下99階のクリアを成し遂げた。前日から過酷な目標に挑んできた田下氏に対し,来場者は惜しみない拍手を送っていた。
ダンジョンを無事制覇した田下氏には,チュンソフトの醍醐氏からサイン入り色紙と攻略本が手渡された。
田下氏が「皆さんのおかげでクリアできました」と来場者に向けて謝辞を述べると,醍醐氏は「今後,シレン6,7が出るかもしれませんが,そのときはよろしくお願いします」と思わせぶりに発言し,無事イベントは終了した。
最強“シレンジャー”を決する対戦会も
この対戦会で使用されたのは,対戦モードの「決戦」というルール。これは二人のプレイヤーが,最終決戦の場である地下6階に向けて探索を進めたあと,直接対決し,相手のHPを先にゼロにしたほうが勝ちとなるというルールだ。
シレン5の対戦モードでは,ニンテンドーDSの上画面に相手のキャラ,下画面に自分のキャラが表示される。互いに相手の動きが確認できるので,相手の行動を参考にしたり,相手に有利な状況にならないよう,裏をかいたりといった駆け引きが重要となる。
どちらかのプレイヤーが先に地下6階に到達した時点で,もう一方のプレイヤーは強制的にこの階に移動させられるため,相手よりも早く先に地下に潜り,良い道具を集めておくのもアリだし,あるいは敵を倒しつつじっくりと進み,レベルを上げておくのも手といえる。
トーナメント方式で行われた対戦会には,24人がエントリー。3つのブロック(各8人)に分かれて4組で対戦を行い,各ブロックの勝者4人ずつが2回戦に進むという方式だ。
なお,当初は計32人でのトーナメントが想定されていた。空き枠が生じたため,その枠は敗者復活戦を行って補填された。
いずれの試合でも,相手の手の内を読もうとするアツい駆け引きが展開。まさに,囲碁や将棋を思わせる頭脳戦が繰り広げられていた。
今回の対戦会の決勝カードは,ルーレ選手対こうすけ選手。二人の戦術は似ている印象で,巻物による装備品の強化や,杖を用いての妨害などに重点を置いているようだった。
地下6階での最終決戦では,両者が隣接しての殴り合いが展開した末,攻撃を的確にヒットさせていたこうすけ選手が勝利を収めた。
こうすけ選手には,チュンソフトから「チンタラぬいぐるみ」「もざらしTシャツ」がプレゼントされる予定となっていたが,醍醐氏が「これでは賞品を渡せない」と物言いをつけ,急遽,こうすけ選手と醍醐氏による対戦が行わることになった。
じっくり進み,レベルを上げていく醍醐氏に対し,こうすけ選手は地下6階に向けて足早に歩を進める。こうすけ選手が先に6階に到達して最終決戦が始まったのだが,醍醐氏はなすすべなくこうすけ選手の攻撃を受け続け,あっさりと敗北。こうすけ選手は無事プレゼント品を獲得した。
イベント終了後,短い時間ではあったが田下氏と醍醐氏からそれぞれ話を聞く機会を得たので,その内容を紹介しよう。
チュンソフト 醍醐氏インタビュー
今回のイベントの話を最初に聞いたとき,どう思いましたか?
醍醐頼希氏(以下,醍醐氏):
「面白いことを考えるなあ」と思いましたね(笑)。話を聞いたとき,田下さん主催のイベントはいつも24時間行われているのかと思ったら,24時間のイベントは今回が初めてと聞いて,驚きました。
4Gamer:
シレン5自体は昨年12月に発売され,すでに約半年経過していますが,今回のイベントには多数のファンが来場しています。
醍醐氏:
実を言うと,弊社としては,ファンが集まり過ぎて混乱するのを防ぐために,今回のイベントについてはあまり宣伝してきませんでした。それでも,告知を見て駆けつけたり,ニコニコ生放送を見てコメントを書き込んだりしてくれて,すごく嬉しく思いますし,ありがたいことだと思います。
4Gamer:
今回のイベントは,エクストラダンジョン「原始に続く穴」の制覇に挑むという内容でしたが,開発スタッフの場合,地下99階までの攻略にどのくらい時間がかかるものなんですか?
醍醐氏:
実は,このダンジョンを地下99階までクリアした開発者は,ほとんどいないんです(笑)。“稼ぎプレイ”が苦手な人が多いんですよね。このゲームは地味なことをしないとクリアできませんが,「おにぎりや矢を集めるのは面倒だから」と避けていると,あとで大変な思いをします(笑)。もちろんそういう人ばかりではなく,ちゃんと地道に下積みをする人もいて,彼らはクリアしていますよ。
シレンというゲームは,クリアするために知識が必要ですよね。「このゾーンは駆け抜けたほうがいい」とか「駆け抜けちゃいけない」とか。また,駆け抜けちゃいけないゾーンだけど,あのゾーンに行くまでにこんな道具がないと厳しいから,あえて道具を集めるべき,といったこともあったりして,長年の勘や,経験も重要ですね。
4Gamer:
ところで,対戦会では優勝したプレイヤーと対戦していましたが,その感想を聞かせてください。
醍醐氏:
皆さんの前で遊ぶのは緊張しますね。私は久しぶりに対戦したので,やり方を忘れている部分があり,「もっと練習しておくんだった」と思いました(笑)。相手のプレイを見ながら遊んでいましたが,そつなくこなしているし,駆け引きも私より上手かったと思います。
4Gamer:
シレン5に対戦モードを盛り込んだ理由は何ですか?
シレンは一人で遊ぶゲームですが,業界全体としては「みんなで遊ぶ」というのが一つのキーワードになっています。実は,構想自体は「風来のシレン2」の頃からあり,「風来のシレン3」に対戦要素を入れましたが,シレン3の対戦では,相手に対して何も行えないんです。私自身,それを遊んで「もうちょっと,相手に対して何かをしたい」と感じていました。
その次の「不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ」では時間が足りず,実現できませんでしたが,対戦要素を追加したいとは考えていました。そしてシレン5の開発にあたり,対戦だけでなく,どうせなら協力プレイもと考え,盛り込んでみたんです。
4Gamer:
シレン5に追加された新たな対戦モードに対する,プレイヤーからの反応はどうですか?
醍醐氏:
おおむね好評です。今回のようなイベントで知り合ったほかのプレイヤーと対戦できるのは,すごく楽しいことだと思います。
4Gamer:
最後にシレンシリーズのファンや4Gamer読者にメッセージをお願いします。
醍醐氏:
シレン5は発売から時間が経っていますが,まだ遊んでくださっている人もたくさんいます。このゲームは,すべての要素を遊びつくそうと思ったら何千時間も遊べるRPGなので,ぜひこれからも続けて楽しんでください。また,この記事を読んで「こんなゲームがあったんだ」と思った人は,手にとってみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
田下広夢氏インタビュー
まずは「原始に続く穴」の制覇,おめでとうございます。実際に24時間,正確には“26時間耐久プレイ”となりましたが,遊んでみてどうでしたか?
田下広夢氏(以下,田下氏):
これだけプレイしていましたが,あっという間でした。「またやってよ」と言われたら,またできると思いますね。ものすごく楽しかったので,時間の経過を早く感じました。
4Gamer:
今回,13:30にプレイを再開したところから見てきましたが,そのときは地下78階でした。イベントは17:00までということで,それまでに終わるか心配になりましたが,本人としてはどう感じていたんでしょうか。
田下氏:
もともと,僕のシレン5の実力は,地下99階のうちの30階ほどでゲームオーバーになる程度なんです。一度だけ地下50階に到達したことがありましたが,地下99階まで行けるというイメージはありませんでした。それでも,皆さんからアドバイスをもらえれば,何か面白いことが起こるかもしれないと思ってイベントを企画したんです。
もう,途中からは,時間内に攻略できるかどうかは予測できなくなっていました。
4Gamer:
ニコニコ生放送では,累計視聴者数が2万人を超え,その中にはシレン5の熟練者もいたことでしょう。そういったプレイヤー達のコメントはすごく役に立ったんじゃないかと思います。
田下氏:
寄せられたコメントどおりに動いた場面が何度もありましたし,判断に困ることは皆さんに聞いて,プレイを進めていきました。昔のゲームではありえない遊び方ですよね。皆さんと一緒になってクリアしたという感覚です。
4Gamer:
一人用のゲームですが,まるでオンラインゲームのプレイを見ているような感覚でした。
僕はおっちょこちょいなので失敗することもありましたが,こうやって皆さんのアドバイスを受けながらプレイしていると,別のゲームを遊んでいるかのようでした。
来場者や,中継を見ていた人からすると,ちょっと頭の悪いAIに指示を出して誘導し,クリアを目指しているような,新鮮な楽しみを味わってもらえたんじゃないでしょうか。
4Gamer:
ところで田下さんは,今回のようなイベントをこれまで何度か主催しているそうですが,こういったイベントを開こうと思ったきっかけは何ですか?
田下氏:
皆で集まってゲームを遊ぶと,もっと面白くなるという考えからです。大げさなことを言うと,メーカーが面白いゲームを作ろうとしたとき,コストをかけて内容の豊富な作品を開発するのは一つの方法です。でも,これは作る側からすると大変だし,確かにすごい作品になるかもしれないけど,そういうことができるメーカーは限られてしまいます。
私は,メーカーとは違った立場でゲーム業界を面白くしていくという方向があるとすれば,それは「ゲームファンがゲームを楽しくプレイする」ということではないかと考えています。ゲームを遊んだときの体験を共有し,皆で盛り上がれる場を用意したいと思ったことが,イベントを開いたきっかけです。
4Gamer:
今回,イベントのテーマにシレン5を選んだ理由は何ですか?
田下氏:
もともと僕はシレンが大好きだし,チュンソフトさんのファンだというのが大きな理由です。そして,イベントでどういうことをやったら面白いか話していたとき,24時間ぶっとおしでプレイし,ダンジョン制覇に挑んだら面白いのではないかという発言があって,それがすごく楽しそうに思えたんです。
4Gamer:
「ゲームセンターCX」(フジテレビCS放送のバラエティ番組)みたいな感じですね。
田下氏:
そうですね。ゲームセンターCXでは,有野課長が何度も倒されながら昔のゲームをプレイするわけですが,あの番組を見ている人はその様子を見て,「ちょっと面白そうだな」と感じると思います。今回,ニコニコ生放送での中継に対して「面白そう」「買ってきた」といったコメントもありました。
4Gamer:
イベントでは,Twitterなども活用されていますね。
これまで開催してきたオフ会では,僕をフォローしている人や記事を読んでいる人が,Twitterなどを通じて,「一緒に遊ぼう」と知人などに声をかけてくれました。でも今回は,Twitterなどでの告知より,シレンというゲームが持っているパワーが人を集めたという印象です。
4Gamer:
今回のイベントでは,すれ違い通信を用いて新種道具の配布が行われました。すれ違う機会がなかなかなく,これまで入手できなかったという人には嬉しいプレゼントになったんじゃないでしょうか。
田下氏:
私は,すれ違い通信を“仲間見つけツール”だと思っています。互いに挨拶しなくても,「ここに仲間がいたんだ」と実感できるのが面白いんです。
実は,「オフ会を地方でも開催してほしい」というリクエストが寄せられており,私も率先して行いたいと考えていますが,ぜひ皆さんにもオフ会を開いてもらい,さまざまなゲームのファンが交流を深めてほしいと思います。
4Gamer:
最後に来場者や,ニコニコ生放送を見てくれた人,4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
田下氏:
今回,コントローラを握っていた僕ですが,ニコニコ生放送にコメントを寄せてくれた皆さんのおかげでゲームを進められました。また,シレン5というゲームはチュンソフトさんが作ったものですし,場所は自遊空間さんが提供してくれました。セッティングは,「DSゲームカフェ」の皆さんによるものです。ありがとうございました。
皆で集まってゲームを遊ぶのはものすごく楽しいので,最初はちょっと勇気がいるかもしれませんが,オフ会を開催したり,オフ会に参加したりしてみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
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(c) 2010 CHUNSOFT
- 不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス(2010年発売予定)
- ビデオゲーム
- 発売日:2010/12/09
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