イベント
[GDC 2012]「The Witcher 2」のCD Projektが語る,あなたのPC専用ゲームもこうすれば100万本売れるというレクチャー。果たしてその方法とは
ここで「The Witcher 2: Assassins of Kings」がどのようなプロモーションを行ったのかが詳しく説明されたのだ。演壇に立ったのは,同社の設立者の一人であり,ディレクターを務めるMichał Kiciński氏だ。
Kiciński氏の発表によれば,2007年に発売された前作「The Witcher」は,現在までに200万本以上,The Witcher 2は,発売から6か月で100万本のセールスを達成したという。その200万本のうち,26万9700本が北米で,23万4215本がロシアおよびCIS(独立国家共同体),18万5123本がお膝元のポーランドで売れた。また,全体の24%がSteamやGOG.comなどのデジタル販売だったとのこと。販売国の状況は,The Witcherのときと大きく変わらず,それは彼らが市場調査の結果,ダークな雰囲気のアクションRPGが北米で人気があることを知っていたからこそだという。
Michał Kiciński氏は,The Witcher 2のプロモーションにおいて,以下の4つに重点を置いたと語った。
(1)誰がそのゲームを買ってくれるのか見定める
(2)買ってくれる人の目につくようにする
(3)小売店を使うのか,デジタル販売か,あるいはその両方かを決める
(4)ゲームと,ゲームを買ってくれたゲーマーをサポートする
というわけで,彼らは最初から北米市場をメインターゲットにしていたのだ。
個人的に興味深いのは(2)だ。Michał Kiciński氏は,続いてゲームメディアとの付き合い方,もっとぶっちゃければ利用方法について説明を行ったのだ。
筆者が海外のゲームショウに取材に行ったとき,積極的に声をかけてくるメーカーの一つがCD Projektだった。たいてい,パビリオンの並ぶエキスポホールには出展しておらず,ビジネスセンターにブースを設けている程度なのだが,前を通りかかると,日本のメディアであるにも関わらず「説明会をやるからぜひ来てくれ」と言う感じでアポイントを取らされたりするのだ。
また,渡されるメディア向けのキットも凝っており,ただのノートだと思ったら,そこにThe Witcher 2の特徴などがあらかじめ手書き風フォントで書き込まれているといった具合。変わったことをする会社だと思っていたが,これもまた戦略だったのだ。
マーケティングのアイディアとしてMichał Kiciński氏が提案したのは,以下の9項目で,適宜訳すとこんな感じだろうか。
(1)デベロッパダイアリーを頻繁に公開すべし
(2)新しいスクリーンショットを毎週公開すべし
(3)カバーアート/キャラクターのレンダー画像を公開すべし
(4)プレイムービーを,新たな見せ場ができるたびに公開すべし
(5)プレスリリースには,必ずスクリーンショットを付けるべし
(6)インタビューを受けるたびに,スクリーンショットなどの新素材を準備すべし
(7)ゲームショウにブースを出せなければ,ゲリラ作戦を展開すべし
(8)たとえお金がなくても,プレスツアーをやるべし
(9)行動を促すことを忘れずに
印象的だったのは,Michał Kiciński氏が各項目の説明をするとき,ほぼ必ず,必要なコストを口にすることだ。
例えばスクリーンショットの場合,デザイナーを半日拘束とか,カバーアートを制作したら5000ドルだが,これをゲーム雑誌の表紙に使ってもらえば十分ペイするとか。ほかには,ムービーの制作に同じく5000ドルほどかかったが,専門サイトにアップしてもらったところ,数百万ビューを達成し,費用対効果は十分にあったとか,そういう話だ。当然といえば当然だが,経営者として常にコスト意識を持っているのだろう。
(7)のゲリラ作戦とは,彼らが2005年にロサンゼルスで開催されたE3で行ったもので,E3に出展するほどの予算がなかった彼らは,会場であるコンベンションセンターから出てくる人を捕まえて,近くのホテルで新作説明を行ったという。個人的に,「そういえば……」と思い出せる話だ。
カバーアート |
レンダリングされたキャラクター |
ムービー公開とその反響 |
それに続いて,SteamやGOG.comなどのデジタル販売を行うディストリビュータとの交渉手順や,損益計算書の見方,パブリッシャとの交渉のコツなどが説明されたが,このあたりはちょっと省略しよう。印象に残ったのは,やはりゲームだけでなくゲーマーも同時にサポートするべきだという部分だろう。
たとえ一人でもいいからカスタマーサポートを置き,メディアのレビューやプレイヤーからのフィードバックには必ず目をとおし,バグやミスがあったら,必ずオフィシャルに謝罪する,という心構えが語られたのだ。もちろん,バグにはすぐにパッチで対応すべきだが,技術的に難しいときもある。そういう場合は,なぜ時間がかかるのか,いつ頃になりそうかをプレイヤーに説明すべきだというのだ。
2011年8月19日に掲載したGamescomレポートでお伝えした大型アップデートも,人員を投入して,時間をかけたプロジェクトであったにも関わらず,ファンサービスとして惜しげもなく無料公開している。また,小さなところでは,DRMがゲームのスピードを低下させるというクレームを受けて,DRMを外したこともあるし,The Witcher 2のコレクターエディションに同梱されたフィギュアに,輸送時のトラブルで傷が付いたときには,同社の責任で代替品を送ったりもしている。
言うまでもないことだが,“これさえやれば100万本売れる”という処方箋があるわけはない。
キャッチーな講演タイトルであり,朝一番のレクチャーだったこともあって,来場者はお世辞にも多いとはいえなかったが,ポーランドのあまり大きくない,独立系デベロッパがどのような姿勢でゲーム制作/販売を行っているのかが分かる話だった。
こういう,ちょっとした話が聞けるのもGDCの面白いところだが,個人的には,Gamecom 2011(関連記事)でCD Projektからもらった,ペーパークラフト入りの大型プレスキット,Michał Kiciński氏は「大変好評だった」と語っていたが,はっきり言ってデカ過ぎで困ってたりしました。
- 関連タイトル:
The Witcher 2: Assassins of Kings
- 関連タイトル:
The Witcher 2: Assassins of Kings
- 関連タイトル:
The Witcher
- この記事のURL:
キーワード
(C)The Witcher is a trademark of CD Projekt RED sp. z o.o. The Witcher game CD Projekt RED sp. z o.o. All rights reserved. The Witcher game is based on the prose of Andrzej Sapkowski. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.
(C)CD Projekt RED S. A. All rights reserved.
Copyright(C)1998-2005 CD Projekt. All rights reserved.