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SOS団に驚愕の新団員が登場! 「放課後ライトノベル」第44回はお待ちかねの『涼宮ハルヒの驚愕』で冒険でしょでしょ?
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印刷2011/06/04 10:00

連載

SOS団に驚愕の新団員が登場! 「放課後ライトノベル」第44回はお待ちかねの『涼宮ハルヒの驚愕』で冒険でしょでしょ?



「思い返せば4年前,2007年に『涼宮ハルヒの分裂』が発売されてから,いろいろなことがありました」
「目を閉じれば,今日までのさまざまな思い出が蘇ってきます」
「書店で謝るハルヒのポスター」
 「「「ごめんネ!」」」
「ファン待望のアニメ二期スタート」
 「「「いつまでも続くエンドレスエイト!」」」
「劇場の大スクリーンで見た『涼宮ハルヒの消失』」
 「「「長門可愛いよ,長門!」」」
「何もかもが楽しかった」
「そして4年間という長い時を経て」
「僕たち」
「私たちは」
『涼宮ハルヒの驚愕』の発売日を迎えました」
 「「「迎えました」」」
「そこで今回の放課後ライトノベルでは,『涼宮ハルヒの驚愕』を紹介いたします」

 ……とまぁ,4年という年月が身に染みて思わず小学校の卒業式風に振り返ってしまったが,この4年間で身の回りの環境が変わった人もたくさんいるだろう。高校生だった人が大学生になったり,大学生だった人が社会人になったり,社会人だった人がデイトレードにはまって,仕事を辞めて一日中PCの前に貼りついて,株価の値上がりに一喜一憂したりと,環境の変化は人それぞれだと思うが,ハルヒの続きを読みたかったという気持ちはみんな一緒のはず。

 そんなファンの期待に応えるかのごとく,『涼宮ハルヒの驚愕』は前後編という二分冊の大ボリュームで登場。ちなみに2冊がセットになっている初回限定版では,特製小冊子もおまけでついてくるので,できれば限定版をゲットしたいところだ(通常版は2011年6月15日に発売予定)。
 それじゃあ4年振りのハルヒを楽しもう!

画像集#001のサムネイル/SOS団に驚愕の新団員が登場! 「放課後ライトノベル」第44回はお待ちかねの『涼宮ハルヒの驚愕』で冒険でしょでしょ?
画像集#002のサムネイル/SOS団に驚愕の新団員が登場! 「放課後ライトノベル」第44回はお待ちかねの『涼宮ハルヒの驚愕』で冒険でしょでしょ?
『涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き)』

著者:谷川流
イラストレーター:いとうのいぢ
出版社/レーベル:角川書店/角川スニーカー文庫
価格:1260円(税込)
ISBN:978-4-04-429210-2-C0193

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●おさらいしておきたい『分裂』の内容


 県立北高校に入学した男子高校生・キョンは,入学式の日に「東中出身,涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人,未来人,異世界人,超能力者がいたら,あたしのところに来なさい。以上」という,突拍子もない自己紹介をする少女,涼宮ハルヒに遭遇する。

 世界を自分の思いどおりに改変できる能力を持っているハルヒ(本人に自覚なし)は,「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと」を目的にSOS団を結成。SOS団には,無口で本好きの宇宙人・長門有希(ながとゆき),萌えとコスプレ担当の未来人・朝比奈(あさひな)みくる,笑顔と丁寧な態度を崩さないイケメン超能力者・古泉一樹(こいずみいつき)と,ハルヒの望みどおりの人材が次々と入団する。

 しかし,肝心のハルヒは彼らの正体に気づくことはなく,SOS団のメンバーは映画を撮ったり,海に行ったり,山に行ったり,バンド活動をしたりと楽しい学園生活を満喫し,進級の時期を迎えようとしていた。

 前巻『涼宮ハルヒの分裂』の冒頭で,キョンたちは2年生に進級する。めでたくSOS団全員が無事に進級したというのに,団長のハルヒはややご機嫌斜め。その原因は,春休み中にキョンが中学時代の親友,佐々木(ささき)と再会したことにあった。古泉曰く,佐々木は「魅力的な女性」。その佐々木とキョンが親友だったことを知って,無意識内でハルヒは動揺しているという。

 こうして,ひと波乱ありそうな空気の中,新学期がスタート。最初の内は,何事もなく新入生の勧誘活動に励むSOS団だったが,キョンと佐々木が再び接触したことで,事態は一変する。
 その時,佐々木と一緒にいたのは,古泉が所属する「機関」と敵対する超能力少女・橘京子(たちばなきょうこ),長門以上にコミュニケーションが困難な宇宙人・周防九曜(すおうくよう)だった。また,その場にはいなかったが,過去にみくるの誘拐を企てた,未来人の藤原(ふじわら)も彼女らと行動を共にしているらしい。

 なぜ,一般人であるはずの佐々木が彼らと一緒にいたのか? 果たして,彼らの目的は何なのか? といったところで,物語はタイトルどおりαとβの2パートに“分裂”してしまう。


●SOS団に『驚愕』の新団員登場!


 αパートでは,SOS団に入団希望者がたくさん集まったり,キョンがハルヒに勉強を教わったりと,いたって平穏無事な日常が営まれていた。
 その一方で,βパートはかなりの荒れ模様。佐々木たちから呼び出しを受け,向かった先でキョンが聞かされた話は,ハルヒの持つ力を佐々木に移譲しようという計画だった。

 佐々木本人は乗り気ではないのだが,ほかの3人にとっては佐々木が能力を持つほうが都合が良いらしい。そのような状況下に加えて,SOS団の最終防衛ラインである長門が倒れるというトラブルまで発生!
 果たして,SOS団に新入団員は入るのか? 佐々木たち4人の真の目的は? 長門の容体はどうなっているのか? ってか,そもそもなんで物語が分裂してるの? 数多くの疑問を残しながらも,物語は2か月後に発売予定の『涼宮ハルヒの驚愕』へ続く! そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

 ……そして4年の月日が流れた。

 この引きで4年は長いよ,長すぎるよ!
 しかし,こうして無事に続きが読めるようになったのだから,すべて水に流そうじゃないか。現実では4年もの歳月が流れたが,『涼宮ハルヒの驚愕』は,当然『涼宮ハルヒの分裂』の直後からスタート。αパートでは,多くの新入生がSOS団に入団を希望するが,ハルヒの突然の思いつきによって,入団試験が開催される。

 明らかに無茶振りな試験内容に,次々と新入生たちがふるいにかけられていく中,一人だけハルヒの要求をクリアする女子が現れる。彼女の名は渡橋泰水(わたはしやすみ)。果たして彼女はいったい何者なのか?
 またβパートでは,長門が倒れてしまったために,キョンが単独でSOS団もどきの4人と対峙することに。4人との対談で,キョンは長門が倒れた原因は敵方の宇宙人・周防九曜によるものと教えられる。

 向こうからの要求は,長門を助けたければ,ハルヒの力を佐々木に譲れというものだった。当然そんな要求は呑めるはずがなく,キョンは自力で状況を打開しようとするが……。


●押さえておきたい,いろいろな『秘話』


 満を持して発売された『涼宮ハルヒの驚愕』だが,前後編に分けられていながら,一度読み始めると時間を忘れて,あっという間に最後まで読み終えてしまう。どうせなら,復習の意味も込めて『分裂』と合わせて3冊まとめて読んでしまうのも良いだろう。

 キャラクターの可愛らしさは相変わらずで,中でもαパートに登場する新キャラ・渡橋泰水が可愛い。入団直後に,自分から積極的にお茶くみを行ったり,普段はあまり他人と喋らない長門に物怖じせずに話しかけたりと,元気と笑顔を振りまく子犬系の後輩という,これまでのSOS団にはいなかったタイプのキャラクターだ。

 ストーリーの面でも,長門が倒れたことでいつも以上に奮闘するキョンは,通常の五割増しぐらい主人公らしい活躍を見せてくれる。作品内で物語が分裂するという驚愕の仕掛けもきっちり解決されており,これまで待った甲斐があった内容に仕上がっている。

 また,物語の本筋とは関係ないが,ところどころでさまざまな新事実が明かされているのも嬉しい。本編では,古泉の所属する「機関」の秘密や,みくるがやって来た未来の情報が一部明かされたり,谷口が一時期付き合っていたという女性の正体が発覚する。そして,初回限定版特典の小冊子「涼宮ハルヒの秘話」に収録されている,「Rainy Days」というショートストーリーでは,キョンと佐々木の中学生時代の話が書かれるなど,全体を通してよりキャラクターの側面が掘り下げられており,今後の展開にもますます期待できそうだ。

 物語もキャラクターも,4年間分の読者の期待に見事に応えた『驚愕』だったが,唯一惜しまれる点が残る。それはβパートの冒頭で長門がダウンしてしまったために,長門の出番が全体的に少なかったことだ
 「もっと長門が見たい」「ハルヒといえば長門だろう」,そのような熱心な長門ファンの皆様は,先月発売されたばかりのゲーム「涼宮ハルヒの追想」PlayStation 3/PSP)をプレイすると良いだろう。『涼宮ハルヒの消失』直後に起こった出来事を描いたゲームオリジナルストーリーで,『驚愕』では物足りなかった長門分がたっぷり補給できる。長門可愛いよ,長門。

■宇宙人や未来人や超能力者でなくても分かる谷川流作品

『学校を出よう! Escape from The School』(著者:谷川流,イラスト:蒼魚真青/電撃文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
画像集#003のサムネイル/SOS団に驚愕の新団員が登場! 「放課後ライトノベル」第44回はお待ちかねの『涼宮ハルヒの驚愕』で冒険でしょでしょ?
 「涼宮ハルヒ」シリーズの作者である谷川流は,2003年にスニーカー大賞受賞作である『涼宮ハルヒの憂鬱』と,電撃文庫『学校を出よう! Escape from The School』の同時発売でデビュー。スニーカー文庫からは「涼宮ハルヒ」シリーズのみだが,電撃文庫からはさまざまなシリーズが刊行されている。
 デビュー作ともなった『学校を出よう!』は,超能力者たちばかりを集めた学園内の物語。舞台は共通しているが,1巻ごとに主人公が変わるのが特徴で,中でも2巻の『学校を出よう!(2)I-My-Me』は時間SFとしての完成度が非常に高く,これを読んでいると『驚愕』のとあるシーンでクスリとすることができる。
 『絶望系 閉じられた世界』は,一般人,建御の元に天使と悪魔と死神と幽霊というオカルト属性な人たち(?)がやってくるという,ある意味,「裏ハルヒ」とでも言うべき作品。物語全体のダークさも含めて,いろんな意味で裏。
 ほかにも『電撃!! イージス5』『ボクのセカイをまもるヒト』などの作品があり,また小説だけでなく,電撃コミックスから出ている『蜻蛉迷宮』という漫画の原作も担当している。
 ちなみに,『学校を出よう!』の1巻は幽霊となった妹に取り憑かれる話で,『ボクのセカイをまもるヒト』は突然やってきたアンドロイドに「お兄ちゃん」と呼ばれる話。『電撃!! イージス5』の主人公は妹持ちで,『蜻蛉迷宮』の主人公は,同腹の妹,妾腹の妹,義理の妹がいるという3バリエーションの妹盛り合わせ。そういえばキョンにも妹いるし,全体的に妹率高し。

■■柿崎憲(ライター/絶体絶命)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。普段から「『涼宮ハルヒの驚愕』が出たら本気出す!」と言っていた柿崎氏。そんな『驚愕』もとうとう発売され,この状況にかなりの危機感を感じているご様子。どうやら早くも次の言い訳を探しているようですが,そろそろその本気とやらを見せていただきましょうかね。楽しみだなあ。
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