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[インタビュー]設立25周年を迎えたWargamingのCEOに,新作情報から戦争対応まで幅広く聞いてみた
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印刷2023/10/14 12:00

インタビュー

[インタビュー]設立25周年を迎えたWargamingのCEOに,新作情報から戦争対応まで幅広く聞いてみた

 「World of Tanks」「World of Warships」シリーズでお馴染みのWargamingは,今年で創業25周年を迎えた。ベラルーシという,コンピューターゲーム産業の中心地からは離れた地域で生まれたWargamingは,2010年に「World of Tanks」をヒットさせたことで世界的なゲーム企業へと躍進。10年前の2013年には日本オフィスも立ち上げるなど,破竹の展開を続けた。

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 しかし2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は,Wargamingに大きな選択をつきつけるものとなった。本社をキプロスに移転させていたとはいえ,巨大な開発・運営拠点としてロシア・ベラルーシ・ウクライナにも拠点を持つ同社にとって,「ロシアとベラルーシでゲームの運営を続けるか否か」は,社運を懸けるレベルの選択だ。
 だがWargaming社は侵攻開始から2か月で,ロシア・ベラルーシ市場からの撤退を表明。ベラルーシの首都ミンスクにあるオフィスを閉鎖するという決断を下した。果たしてこの決断にあたって,CEOであるVictor Kislyi氏が何を考え,実際にどのようなオペレーションがあったのかを聞いてみた。

WargaminのCEO Victor Kislyi氏
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 とはいえKislyi氏はゲーム開発会社のCEOだ。ゲーム開発会社のCEOに話を聞くからには,新作情報から聞くのがゲームメディアのあるべき姿だ。たぶん。
 というわけで,まずはWargaming社の新作について探りを入れてみることにした。



AAAクラスのオンライン対戦ゲームを制作中!


4Gamer:
 最初に,25周年を迎えたWargaming社のこれからの展開予定を,大まかで構いませんので教えてください。

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Victor Kislyi氏(以下,Kislyi氏):
 私がWargamingを作ってから四半世紀が経過しました。25年前の自分はとても若かったなと感じます(笑)
 我々の新たな目標は,やはり50周年ということになります。これからの25年間も,今あるタイトルを面白くし続け,また新しいゲームも開発していく。ゲームというエンターテイメントを面白いものであり続けさせるのは,我々の仕事であり任務だと感じています。

 自分がよく言うことですが,Wargamingのタイトルは釣りや自転車と同じ,「趣味」の領域に入る楽しみだと考えています。つまり生活の中にあって,何十年と楽しみ続けられる,電子ホビーというわけですね。
 この趣味をこれからも10年,20年と変わらず楽しみ続けられるものとして,他社にも追随していきますし,これまでと変わらぬ努力も続けていきたいと思います。

4Gamer:
 「新しいゲームの開発も行っていく」ということに触れられましたが,現状,新作についてうかがえることはありますか?

Kislyi氏:
 まだ詳細はアナウンスできませんが,AAAクラスのゲームを2本作っています。

4Gamer:
 もうひと押し,オンラインかオフラインかだけでも教えてもらえますか?

Kislyi氏:
 我々はPvPゲームを制作するプロ集団であると確信しています。なのでオンラインゲームを作っている,というところまではお教えできます。

4Gamer:
 ありがとうございます。
 さて,Wargamingの主力となるゲームはどちらかと言えばPC寄りということになるかと思うのですが,一方で全世界的な市場を見るとモバイルが強い状況にあります。なかでもアジア市場はモバイルゲームの生産・消費とも大きな存在感を見せており,インドのように新たに成長が始まった市場も見受けられます。
 こういったアジア市場の現状に対し,モバイル領域においてはどのような戦略をお持ちでしょうか。

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Kislyi氏:
 繰り返しになりますが,我々はPvPのシューター制作において最大の強みを有しています。それもカジュアルなゲームというよりは,しっかり腰を据えて遊ぶタイトルがメインとなっています。
 ですがその一方で,例えばモバイル向けの「World of Tanks Blitz」はリリースから9年と長い歴史を持つタイトルとなっていますし,2018年には「World of Warships Blitz」もリリースしております。
 ですので我々としてはこの先も,長く遊び続けていただける趣味として,スマートフォン市場においてもPCと同じように,愚直にゲームを制作し,アップデートし続けていくというのが基本戦略となります。今までやってきたことを,これから先も終わりなく続けていくということですね。

 ただ,何もかもが変わらないというわけではありません。我々はこれまでPC・モバイル・コンソールそれぞれのタイトルを,別々のIPとして展開してきました。ですが今後は「World of Tanks」フランチャイズとして,ブランドを総合的に強化していくという計画で動いています。

 またアジア地域の成長は,中国を中心として非常に勢いのあるものであり,市場として見逃せないです。日本の東京支社をはじめ,アジア地域には注力を続けています。
 ただ地域によっては,うまく作品を広められていないところもあるのは事実です。これについても,アジア市場にしっかりフォーカスして,それぞれの地域にフィットした戦略を深めていきたいと考えています。

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4Gamer:
 ミリタリーがテーマとなるゲームはWargamingの伝統であり,最大の強みでもあると思います。一方,現代においてミリタリーがテーマとなるゲームを作ることには,少なからぬ困難があるようにも感じます。
 現代におけるより良いミリタリーゲーム体験の実現のために,最も重要なことは何だと考えていますか。

Kislyi氏:
 そうですね,我々はミリタリーのゲームを25年間作り,また成功してきた,文字通りのスペシャリストだと思います。
 そのうえで,重要な点は2つあります。

 1つめは,「我々はミリタリー・シミュレータを作っているわけではない」という点です。我々が作っているのはゲームであり,かつ,さまざまなプラットフォームごとに最適化された体験を作っていかねばなりません。毎秒毎秒の体験が最高のものになるよう,慎重にゲームがデザインされている必要があります。
 
 2つ目は,「面白さを重視すること,Pay to Winではないように作ること,サービスとして正しく運営し続けること」です。
 定期的なアップデートにより異なる遊び方を提示したり,あるいはより戦略的な楽しみを提示したりといった,楽しみ方のバリエーションを提示すること。またプレイヤーが自分のスキルを磨けるようなゲームとして成立していること。こういった要点を押さえ,「遊ぶ」というサービスをきちんと提供し続けることが大事になってきます。
 私は,我々の提供するゲームは何よりも「面白い」ものでなくてはならないと思っています。面白さに集中していると言ってもいいでしょう。アニメや映画スターとのコラボ企画はこの典型例と言えます。我々はもちろん戦車のリアルさも追求していますが,こういったコラボによる楽しさの追求も大切に思っているのです。
 加えて,このようなコラボから来てくれたプレイヤーにちゃんと楽しんでもらえるゲームとして作られているということも大事なことです。ゲームという趣味は,楽しさこそが満足につながると,私は信じていますので。


「自分たちが正しいことをしたと考えていますし,その判断をしたことに後悔はありません」


4Gamer:
 さて,話は大きく変わりまして,2022年2月24日以降のことをうかがいたく思います。あの日の直後,Wargamingはどのような状況と立ち向かわねばならなくなったのでしょうか? 無数の難問と困難な選択が立ちはだかったかと思いますが,全体的な対応のポリシーがどのようなものであったのか教えてください。

Kislyi氏:
 まず最初に考えねばならなかったのは,ウクライナで働いている従業員の安全です。当時は400名以上の従業員がウクライナで働いていました。爆撃や停電のなかで頑張っている同僚たちのための安全をどう確保するのか,それが最優先事項でしたね。
 また,我々自身が会社としてどのような対応をすべきかという点についても,会社の幹部を集めて緊急討議を行いました。そして我々は「ロシアとベラルーシでのサービスを切り離す」ことを,その場で即決しました。
 もちろん弊社はロシアにもベラルーシにもオフィスを持っていましたし,それらの地域の市場は大きなものです。ですからそれらを切り離すという判断は,少なからぬ痛みを伴うものではありました。
 でも我々は,「そのままであり続けること」ではなく,歴史の正しい側に立ち続けることを選びました。

 これに伴い,無数の困難が発生したのは事実です。ロシアやベラルーシの市場から撤退するということは,企業経営という目で見れば,「その地域から利益が出なくなる」ということです。またそれらの地域にあったオフィスの代替となるオフィスを新しい土地に準備し,そこに社員をアサインしていかねばなりません。結果的に1000人近いスペシャリストが,新天地に移ることになりました。

キーウのオフィス
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4Gamer:
 金銭的なダメージは相当大きかったかと思います。

Kislyi氏:
 もちろんです! その結果,全体の3分の1のアクティブユーザーを失い,そして3分の1の利益に相当する約2億5000万ドルを一夜で失いました。シドニースタジオの売却に伴ったオフィスの売却や,先ほどお話しした2作品とは別で動いていた,3つの未発表の開発中だったプロジェクトの閉鎖を余儀なくされた側面もあります。またこの決断に伴い,社員は5400名から3500名,3分の1以上減少することになりました。
 とはいえ,現在ではもう財政状況も安定しましたし,組織の再編成も素早く完了しております。「Wargamingが倒産してしまって,ゲームのサービスが止まってしまう」といった心配はまったくありません(笑)。

 我々としても,いつまでも後ろを見てはいられません。また,我々の姿勢がウクライナの人々や世界の人々に認めてもらえたのはとても嬉しいことでもありました。
 ですのでWargamingとしては今までと変わらないサービスを提供し,プレイヤーをハッピーにするという信念を守り続けたうえで,今まで以上にヨーロッパ・アメリカ・アジア市場に注力していくというスタンスを取っております。

4Gamer:
 2023年8月にはキーウでゲーム開発者向けのカンファレンス「Game Gathering Kyiv」が開催されました。こういったイベントの支援するといった計画はあるのでしょうか?

Kislyi氏:
 最初に申し上げたいのは,常に私達の心はウクライナとともにあるということです。なので実は「Game Gathering」のオンラインイベントに,Wargamingも支援させてもらっています。
 これ以外にもウクライナ赤十字に寄付したり,ウクライナの医療機関へ6台の救急車を寄付するなど,ウクライナへの支援としては様々な活動を行っています。
 ですが何より嬉しいのは,こういった支援活動に対してプレイヤーから賛同の声をいただいていることです。ゲームを通じてのサポートバンドル購入や募金など,直接的な支援も近い将来予定しています。
 この数年は本当に激動で,非常に多くの困難が発生しました。ですが我々は,自分たちが正しいことをしたと考えていますし,その判断をしたことに後悔はありません。

4Gamer:
 ありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますでしょうか?

Kislyi氏:
 我々のゲームを長く愛してくださっている日本の皆様には,深く感謝を示したいと思います。新作の発表も含め,次の25年に向けて変わらず前進していきたい,プレイヤーの皆様をハッピーにしていくべく,努力を続けます。
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