インタビュー
WargamingのCEO,Victor Kyslyi氏にインタビュー。ボービントン戦車博物館の通常展示の模様も写真多めでお届け
ボービントン戦車博物館が保有する約60両の稼働戦車が多数の来場者の前を駆け抜けるという内容で,合わせて当時を再現するリエナクトメントが行われるという,まさにお祭り気分満載のイベントであったことは,7月8日の記事に詳しく書いたので,ぜひ参照してほしい。
このイベントのスポンサーを務めたのは,「World of Tanks」や「World of Warships」でおなじみのWargaming.netで,同社はこうした博物館とのコラボレーションを世界各地で行っている。
今回,そんなWargamingのCEOであるVictor Kyslyi氏と,ミリタリースペシャリストのRichard Cutland氏にインタビューする機会を得た。ボービントン戦車博物館の一般展示を写真多めで紹介しつつ,インタビューの模様をお伝えしたい。
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Wargamingが世界の博物館とコラボするわけ
――ボービントン戦車博物館とのコラボレーション,あるいはスポンサーシップについて,Wargaming.netはどのように評価していますか。
Victor Kyslyi氏(以下,Kyslyi氏):
これらを考えると,文字どおり共生的な,良い関係が作れていると考えています。
――ボービントン戦車博物館以外では,どういう状況ですか。
Kyslyi氏:
ボービントン戦車博物館のほか,フィンランドの戦車博物館など,すでに世界中のさまざまな博物館とのコラボを行っています。ローカルなイベントとしては,例えばストックホルムの博物館をファンミーティングの会場として利用させてもらったりしていますね。
――個人的にボービントン戦車博物館で一番好きな戦車は,なんですか。
Kyslyi氏:
ティーガーIIのヘンシェル砲塔バージョンですね。ゲームではよく見かける戦車なのですが,実物を見るとその巨大さに一種の感動を覚えます。大きさという点では,マウス,E100,五式戦車といった戦車も好きですね。
――博物館以外とのコラボについて,予定がありましたら教えてください。
Kyslyi氏:
現在,映画「ダンケルク」とのコラボおよびパートナーシップを進行させています。
これ以外にも,とくに日本で行われているアニメやゲームとのコラボなどは今後も続けていきますので,期待してください。
――最後になりますが,日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Kyslyi氏:
「World of Tanks」では,まもなくアジア・太平洋地域向けに大きな改善を行う予定になっています。楽しみに待っていてください。
――ありがとうございました。
ボービントン戦車博物館の展示はこんな感じ
ここからは,ボービントン戦車博物館における常設展示の雰囲気をお伝えしたい。どの写真を見ても戦車ばかりなので,お腹いっぱいという人もいるかもしれないが,100年以上の歴史を誇る戦車だけに種類が多く,形や能力もさまざまなのだ。ぜひがんばって付いてきてほしい。
特別展示:ティーガーコレクション
さて,博物館の一角には「Tiger Collection」として,ティーガー戦車シリーズを集めた特別展示が行われている。戦車の輸送などでWargaming.netが協力したというこの展示の模様を紹介したい。
戦歴30年の戦車兵に聞く,戦車戦と車長の心得
戦車づくしの最後にWargaming.netのヨーロッパのミリタリースペシャリスト(日本のミリタリーアドバイザー的な立場の仕事)であるRichard Cutland氏のインタビューをお届けしたい。
Cutland氏は軍歴30年の兵士で,その長いキャリアのほとんどを戦車兵として過ごしたというベテラン中のベテランだ。実戦に何度も参加してきたCutland氏が語る「戦車戦と戦車乗り」の話を聞いてみよう。
――まず最初に,軍歴を教えてください。
Richard Cutland氏(以下,Cutland氏):
30年間,イギリス陸軍に在籍していました。そのうち2年はヘリコプターを飛ばしていましたが,あとはずっと戦車兵です。フォークランド,アフガニスタン,湾岸戦争時のシリア,ボスニア,それからイラクに行きました。
そんな感じで軍歴を重ねていたんですが,妻から「そろそろちゃんとした仕事をして」と要求されまして(笑)。それでWargaming.netのミリタリースペシャリストという職を得た次第です。実戦におけるさまざまな要素を,より良い形でゲームに取り入れてもらえるように頑張っています。
――軍隊に入った理由はなんでしょうか。
Cutland氏:
私は軍人の家系出身ではありません。父は兵役で従軍しただけです。祖父は元デザートラッツ(イギリス第7機甲師団)で,一度は捕虜になりましたが,脱走したと聞いています。
そうですね,どちらかといえば住んでいた場所に影響を受けたのかもしれません。私は幼い頃からボーンマスに住んでいて,この博物館もよく訪れました。そして,いつか戦車兵になりたいと思っていたんです。結局その思いが昂じて,16歳で軍の学校に入ることになりました。
――これまで参加された戦いの中で,最も厳しかったものはなんですか。
Cutland氏:
戦車戦ではありませんが,北アイルランドの戦いは非常に厳しいものでした。たくさんの人が,この戦いで亡くなりました。それから,自分にとって初めての戦車戦を体験した戦いとして,イラクが強く印象に残っています。
――「World of Tanks」における戦いは当然,実際とは大きく異なると思いますが,具体的に「ここは似ている」「ここは違う」ということがあれば教えてください。
Cutland氏:
似ているところをまず挙げれば,チームワークが非常に重要だということです。戦車の位置取りがとても大切で,かつ,とにかく注意深く進めなければならないのも,実際の戦車戦に近いですね。
一方,似ていないところを挙げるとすれば,やはり戦闘距離でしょう。現代の戦いの戦闘距離は,「視認できる範囲全部」と言っても間違いありません。私は夜間戦闘で,4km向こうのT-62を撃破しています。照準などもゲーム向けになっているなと思いますね。
――戦車兵にはいろいろな役職がありますが,どのようなポジションを経験されましたか。
Cutland氏:
最初は砲手ですね。それから操縦手をやって,装填手を務め,そして車長になりました。車長を務めたあと,連隊の指揮官に昇格しました。おそらく,戦車兵としてはここが最も高い階級になると思います。
――これまで多くの戦車に乗ってきたと思いますが,印象深い戦車があったら教えてください。
Cutland氏:
チーフテンですね。この戦車では操縦手を務めましたが,本当によく故障しまして(笑)。非常に苦労させられたという記憶が残っています。
世界のさまざまな戦車に乗る機会はWargaming.netに入ってから得たのですが,スウェーデンのSタンクが最も印象的でした。操作系が2本のスティックなのですが,レバーを両方とも前に倒したり引き上げたりすることで手砲の俯角/仰角が変化するんです。まずこの操作に慣れるのが大変でした。また,ペリスコープの視界が非常に狭くて,前がほとんど見えないんです。
Sタンクの開発では「いざとなったら一人でも戦闘できる」という要素が重視されたそうですが,「あれでどうやったら一人で戦えるのだ」というのが正直な感想です。
――なるほど。ところで,これまでのさまざまな国との交流があったかと思いますが,「この国は違うな」と思ったのはどこですか。
Cutland氏:
交流の機会が多かったのもありますが,やはりアメリカ軍は「これは違うな」と感じることが多かったですね。
かつて彼らと共同作戦を行ったことがあるのですが,そのとき我々は「前方からアメリカ軍が進軍してくるので,道を譲ってほしい」と連絡を受けまして,戦車を路肩に寄せて彼らを先に通したんです。結局,車列がすべて通過するまで,なんと4時間もかかりました。アメリカの物量の途方のなさを痛感しましたね。
ドイツ連邦軍も印象に残っています。彼らはとてもプロフェッショナリズムにあふれています。
――戦車長にとって最も重要な資質を教えてください。
Cutland氏:
まずは体格ですね。やはり身長は低いほうがいいです(笑)。それから,人間性がとても大事です。戦車兵として戦うということは,4人ほどの他人と常に一緒に過ごすということです。クルーとのコミュニケーションがうまく行かないようでは,戦車長は務まりません。
もう1つ大事なのは,耐える心でしょう。戦車は,戦場の最も大きな兵器になることが多く,隠れることもできないし,敵のターゲットとなることもしょっちゅうです。このプレッシャーに耐えられる精神力を養うのが,とても大事ですね。
――ゲームにも活かせるかもしれません。本日はどうもありがとうございました。
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