レビュー
登録アカウント数6000万を誇る大人気無料戦車ゲームを,徹底指南
World of Tanks
戦車ですよ,せ・ん・し・ゃ。
テレビアニメ「ガールズ&パンツァー」のヒットとともに日本,とくに茨城県大洗町に襲来した空前の戦車ブーム。筆者も久々にリアルタイムでアニメを見て,戦車の挙動や作戦にいちいち感動していたのだが,ともあれ,ある意味でとてもゲーム的な戦車戦を見ていると,見るだけではなく乗ったり戦ったりしてみたくなるのがゲーマーの性というものだ。
かくして,以前から「このゲームを真面目にプレイしたら,時間を無限に吸い取られるのは間違いないので,なるべく触らないでおこう」と固く決意していた「World of Tanks」(以下,WoT)に本格的に手をつけちゃったのが昨年(2012年)12月の末。案の定,ハマりにハマって軽く体調を崩すくらい不眠不休でプレイしていたのだよ。いや,だって,面白いんですもの。
というわけで,今回は「今からでも遅くないWorld of Tanks」をテーマに,WoTの面白さを紹介したい。いきなり専門用語で申し訳ないが,WoTをすでに遊んでいるという人には,だいたいTier 4〜5くらいまでの紹介と思っていただけると幸いだ。ハマるとやたら深い,戦車の世界にようこそ!
「World of Tanks」公式サイト
WoTってどんなゲームなの?
World of Tanksはベラルーシのデベロッパ,Wargaming.netが開発/運営するオンライン戦車アクションだ。基本的に三人称視点で戦車を操縦,15人対15人のチーム戦を行うもの。いくつかのモードがあるが,主体となるのは,相手チームの戦車を全滅させれば勝ちという,FPSでいうところの「チームデスマッチ」となる。
日本語化もされているが,現在のところ多くの日本人プレイヤーは北米の「NAサーバー」または,東南アジアの「SEAサーバー」に集中しており,チャットは一般に英語が使用されている。ただし,Wargaming.netの日本法人が設立されたことで(関連記事),今後,日本人同士が一緒に戦い,日本語同士でのチャットが増えていくのではないかと期待されている。
WoTの魅力ってなんなの?
戦車ゲームにはアクション寄りの作品とリアリティ重視の作品があるが,World of Tanksは,その中間的な,セミリアルなものになっている。戦車そのものの設定,グラフィックスとも非常にリアルだが,マップは基本的に架空の土地であり,また歩兵や航空機といった実際の戦闘での重要な役割を果たす要素は出てこない。また,チームは同じ国の戦車で固める必要もなく,アメリカとイギリスの戦車が砲を並べて戦うといった編制も可能だ。
選択できる戦車は非常に多いが,WoTでは生産国によって大きく6つ(ソビエト,ドイツ,アメリカ,イギリス,フランス,中国),戦車の種類によって大きく5つ(重戦車,中戦車,軽戦車,駆逐戦車,自走砲)に分類される。車両名で言えば,ドイツの4号戦車やイギリスのチャーチルMk.I,ソビエトのIS重戦車にT-34,アメリカのシャーマン戦車など,一般にも名の通った有名どころは当然として,アメリカのT-57重戦車やソビエトのIS-4といった珍しい車両も大量にリストアップされている。
各戦車ごとに主砲の威力や視界の良さ,乗員や各種パーツ(エンジンや弾薬庫など)の位置,装甲厚などが細かく設定されており,命中した砲弾がどのような効果を及ぼすのかは,命中箇所や状況によって変化する。例えば履帯(無限軌道)を攻撃されれば履帯が切れて一時的に動けなくなることもあるし,主砲やエンジンに当たれば調子が悪くなることもある。さらに,車長や運転手など搭乗員が傷つくことで,戦車の機能を十分に発揮できなくなることさえある。
WoTは,「オンリーワンの魅力」が光る作品だ。このレベルで戦車戦をシミュレートした多人数参加型のオンラインゲームは,世界広しといえどもWoTしかない。だがWoTが突出しているのは,それだけではない。
まず言っておきたいのは,WoTは必ずしも「遊んでいて不愉快なことがまったくない,愉快痛快なゲーム」ではないということだ。むしろ現実の戦車戦がそうであるように,ときに苦しく,ときに忍耐を求められ,ときに激しい無力感に襲われる。誰から攻撃されたのかも分からずに一発で撃破されることなどザラで,砲弾を命中させたのに敵戦車の装甲に弾かれて逆にやられるということも普通に起こる。フレンドリーファイア(同士討ち)は当然のごとくオンで,しかもゲームの基本がリスポーンなしのチームデスマッチなので,撃破されたらそこまで。そりゃ現実の戦車戦よりはゆるいだろうが,WoTの「現実」はかくも厳しい。
機動力を活かして峠を越え,対岸にいる敵重戦車を側面から狙撃だ |
貫通した砲弾が弾薬庫を直撃,爆発四散! もちろん自分がこうなることも |
だがその厳しさは当然,自分だけが被るものではないし,状況が困難であるからこそ,工夫のしがいがある。工夫がうまくいかなかったときはその理由を考え,トライアンドエラーを繰り返すことで,撃破されるより撃破することが確実に増えていく。何をしていいのか分からない状況から,何をすればいいのかが見えるようになり,できなかったことが,できるようになる。
もちろん,戦場の常として,ときに理不尽な敗北はある(逆に,自分はまるで活躍できていないのに,チームは圧勝してしまったりすることもある)。WoTには結構な割合でランダム要素が絡んでくるので,自車が放った必殺の一撃が敵戦車の薄い装甲の上を滑り,敵が何気なく撃った一発がこちらの弾薬庫を直撃して爆発四散ということもあり得る。技術を積んだうえでの運の要素。このバランスの妙こそが,WoTの面白さを生み出しているのだ。
基本操作と,役に立つ基礎知識
WoTの操作には,キーボードとマウスを用いる。W/A/S/Dキーで移動しマウスで照準,左クリックで射撃という標準的なユーザーインタフェースだ。
ただし気をつけなくてはいけないのは,W/A/S/Dで移動するのは人間ではなく戦車だということだ。戦車は基本的に前進速度が速く,後退速度は速くない。またAとDは左右への移動ではなく,左旋回/右旋回となる。さらに,戦車によっては「その場で向きを変える」(専門用語では「超信地旋回」)ことができない車種もある。
操作してみれば,戦車はそれほど速くないということも感じるはずだ。軽戦車であれば時速50kmや60kmという速度も叩き出せるが,それでも速いとは言い難い。しかも,登り坂になれば急激に移動速度が落ちるし,最高速度が時速20km程度という戦車も少なくない。重戦車クラスになると,マップの端から端まで移動するほどマッチが長くは続かないので,ゲーム開始時に進んだ方面で最後まで戦うしかない。
だが,もちろん戦車はこの重さが強味でもある。木造の建物など簡単に踏み越えられるし,塀や電信柱,樹木をなぎ倒しながらも進める。放置してある自動車やトラックなども,同様だ。
照準にも癖がある。戦車は通常,回転する砲塔を備えており,マウスで照準を移動させると,砲塔がやや遅れてそれに追従する。しかし,砲塔重量が重い(つまり大きな)戦車は砲塔の回転速度もまた遅く,たとえ神がかったエイムをしても,砲塔がその速度に追いつかず,獲物を取り逃がしてしまうことがある。
加えて,戦車の主砲は上下方向にはあまり角度をつけられない。例えば切り立った崖の上と下で両軍の戦車が向かい合った場合,上の戦車は(俯角がつけられないので)下の戦車を狙えず,下の戦車も(仰角がつけられないので)また然りという,ぎこちないカップルみたいな状況に陥ったりもする。
精密射撃をしたい場合,シフトキーを押すと「狙撃モード」と呼ばれる一人称視点に切り替わる。狙撃モードではマウスのホイールを使った拡大縮小も可能で,シフトを押さずにマウスホイールだけで視点を切り替えることも可能だ。
さらに,攻撃にも特徴がある。基本的に,戦車は移動中に射撃しても,めったに敵車両に命中しない。狙撃モードに切り替えて不整地を走行してみればよく分かることだが,画面が激しく上下に揺れて,とても何かを狙うような状況ではないのだ。
目標に向けて射撃を行った場合,画面に表示される緑色のリングの中のどこかに着弾する。緑色のリングは,移動中は拡大し,停止すると徐々に縮小する(主砲の精度や乗員の練度によって,縮小限度や縮小速度に差が出てくる)。確実に敵車両を捉えたいなら,最低でもリングが敵車両と同じ大きさになるまで待ったほうがいいだろう。
射撃を行うと,次弾の装填まで一定の時間が必要になる。口径の小さい主砲(=弾丸が軽いので装填手が楽)であれば2〜4秒で次弾が撃てるが,大口径の砲弾となると20〜30秒近くかかる。ただし,同ランクの戦車に対してなら,砲弾一発の命中はかなりのダメージを与える。
このほか,覚えておくと便利な機能としては,右クリックでの「ロックオン」,RとFキーでの自動移動がある。
ロックオンは,照準が敵戦車に固定され続ける便利な機能だ。とはいえ,移動する敵にロックオンしてもまず命中しない(予測射撃してくれない)し,敵の弱点を狙い撃つこともできない。普段の使用はあまり推奨できないが,敵に肉薄してその周囲を移動しながら攻撃する場合,ロックオンを使うと操作が楽になる。
自動移動は,Rで前進,Fで後退にギアが入る。複数回押すとより強くアクセルを踏んだ状態で固定されるので,微速前進や長時間の全速前進などで便利だ。
チャットのショートカットや,ミニマップを利用した指示など細々した機能もあるが,ゲームに慣れてから把握しても遅くはない。
戦車と乗員の育てかた
WoTにおいて,プレイヤーは複数の戦車を保有できる。それぞれの戦車には必要な乗員が設定されており,戦車を購入する段階で乗員も用意される。
それぞれの戦車は,経験値とクレジット(ゲーム内通貨)を用いてアップグレードできるが,戦車ごとにどのようなアップグレードができるかは異なっている。アップグレード対象は主砲や砲塔,エンジンなど多岐にわたるが,敵戦車の装甲を抜けないとストレスが溜まるので,まずは主砲強化を急ぎたい。
アップグレードに使う経験値は,その戦車で戦闘を重ねることで獲得できるが,ある戦車で獲得した経験値はその戦車にのみ蓄積される。例えばT-34とM4を持っている場合,T-34でどんなに戦闘しても,そこで得られた経験値はT-34を強化するためにしか利用できないわけだ(ただし得られた経験値のごく一部は「フリー経験値」として蓄積され,ほかの戦車にも使用可能)。
一方のクレジットは一元管理(要するに「お財布は一つ」)で,アップグレードに用いるほか,砲弾の補給や,破損した車体の修理などにも使用できる。
アップグレードはツリー構造になっており,条件を満たすと上のTierの戦車をアンロックできる仕組みだ。ただし,どの戦車でも自由にアンロックできるわけではない。戦車群全体で巨大な技術ツリーができているので,それを参考に「いつかこの戦車に乗るんだ!」といった目標を踏まえたうえでの戦車選択が重要になる。要するに,ソビエト戦車をどんなに育成しても,強力なアメリカ戦車に乗れるようにはならないし,ドイツツリーを進める限りは,よりTierの高いドイツ戦車しか選べないということだ。
戦車の乗員にも育成要素がある。無料(0クレジット)で得られる乗員はスキル50%でスタートするが,スキル50%の乗員が操る戦車とスキル100%の乗員が操る戦車では,機動性や命中精度などに雲泥の差がある。スキルが100%になると特殊能力の習得も始められるので,戦車だけでなく乗員の育成にも気を使うようにしたい。とはいえ,ゲームを初めて間もないころは乗員が育つよりも先に次のTierの戦車を購入できてしまうので,最初はあまり気にしないくてもいいだろう。どうせ相手も似たような練度の乗員だ。
乗員をほかの戦車に乗り換えさせることも可能だが,戦車を乗り換えるとスキルが下がる。
基本のルールは,チームデスマッチ
ゲームモードにはランダムマッチ,タンク・カンパニー,クラン戦があるが,一番手軽にプレイできるのはランダムマッチだ。
ランダムマッチは上にも書いたとおり「敵チームの全滅」を目指す15人対15人のチームデスマッチだが,敵の基地(敵チームのスタート地点)を占領することでも勝てる。敵基地の占領は,基地の範囲内まで移動して一定時間そこを保持するというものだ。
なお,ゲームを進めていくと,「エンカウンター」「アサルト」といったルールの適用されたマップが登場することがある。
エンカウンターには「自軍の基地」は存在せず,中立の基地がマップ中央に置かれる。これを占領してもいいし,敵を全滅させてもいいというルールだ。アサルトの場合は,攻撃側/防御側に分かれ,攻撃側は防御側の基地を占領するか全滅させれば勝ち,防御側は攻撃側を全滅させるか一定時間粘りきれば勝ちというルールとなり,攻撃側に「基地」はない。
繰り返すが,WoTでは「撃破されたらそれまで」であり,リスポーンはない。同様に,ダメージを受けて減少した戦車のHPも回復しないが,それは相手も同じこと。よって,慎重かつ大胆に行動したいところだ。
重要な点として,自分が出撃させた戦車のTierとだいたい同じTierの戦車30両によってマッチが組まれるということが挙げられる。マッチに参加する戦車は,自分の戦車のTier±2の範囲から選抜される。したがって,Tier 4の戦車で出撃すれば,Tier 2〜4のチーム,Tier 3〜5のチーム,Tier 4〜6のチームに入って出撃する可能性がある(稀に全部Tier 4とか,Tier 3〜4だけといったことも起きる)。
マッチメイキングは両軍の戦闘力がだいたい同じになるように設定されるので,どんな戦場においても全力を尽くすことが重要だ。また自分の戦車が最上位のTierのなのか,それとも一番下なのかによって,できること/やるべきことが変わってくる。Tierの最上位であれば敵車両の積極的な撃破が重要になるが,一番低いTierで参戦した場合は,ワンミスで即死が前提なうえ,格上の敵はなかなか倒せないので,偵察や戦線の時間稼ぎなどに集中すべきだ。
Tier 3戦車である我らがチハが,Tier 5戦車が出てくる戦場に放り込まれたところ。正直厳しいが,できることがまったくないわけでもない |
こちらはTier 8戦車のISU-152。戦場にはTier 6以上の戦車しかいない。つまり「Tierの高い戦車をアンロックすれば,格下戦車相手に性能差で無双できる」システムではないのだ |
課金しても,とにかく勝ちたい! まず勝たなくては! と思われる方は,低Tierにも課金戦車が存在するので,そちらを購入するといいだろう(ソビエトのT-127あたりがオススメ)。あるいは課金トークンを使うとスキル100%の乗員を雇用できるので,それも一つの選択になる(ただし最終的な費用対効果としては,あまり良くない気がする)。
課金ないしクレジットで購入できる貫徹力の高い特殊砲弾は,ゲームに慣れた人なら強さを十分に発揮できるが,そもそも命中しなければ貫徹力など無意味だし,敵が見えなければ命中どころの話ではないので,最初の頃はお守り程度に数発持っておけば十分だろう。
あえて「理論的には,最初はここに課金すれば強い」ものを挙げるなら,それは,拡張パーツであるBinocular Telescope(双眼鏡,通称カニメガネ)である。このパーツは1つ50万クレジットと低Tierの課金戦車よりはるかに高価で,静止時に視界を25%延長するという効果を持っている。クレジットは課金トークンを使うことでも獲得できるので,課金すればいきなりこのパーツを購入することも可能だが,この「視界が25%延長」という効果の意味が把握できていないと強さを活かせず,かつその強さを理解しても活用するためにはマップを覚える必要があるため,本当にこれがあれば初心者でもすぐに強くなれるかと言えば,やはり疑問だ。要するに,課金だけで勝とうと思ってはいけないということですね。
知っておくべき戦車の特徴(種類別編)
ここで,戦車のカテゴリー別に,それぞれの特徴を見てみよう。
ここに示すのはあくまで一般論であり,例外となる戦車も数多くある。実際のマッチではしばしば「例外的な車両」がキーポイントとなったりするので,あくまで,おおざっぱな特徴だと思って読んでほしい。
・重戦車
とはいえ,低速であることはなかなかカバーできず,砲塔の回転が遅いこともあって,高速な戦車を至近距離に入れてしまうと想像以上に苦戦することになる。また,「もうちょっとで敵の防衛ラインを突破して敵基地の占領に入れる。でも先に敵戦車が自軍基地の占領を始めてしまった」という場合,重戦車の速度では自軍基地に戻るまでにゲームが終わっている。
しかも逃げ足が遅いので,敵軍が圧倒的多数でどうにもならないと分かったところで,その場にとどまって,できる限り多くの敵を道連れに倒される以外の選択肢はない。
戦場で一番硬い戦車であるゆえに,「ここを攻撃すると倒せる」という知識が最も広まっているのも重戦車だ。装甲が厚いから大丈夫,と思って無茶をすると,あっさり大炎上することになるだろう。
・中戦車
重戦車ほどの火力や装甲厚はないが,重戦車をはるかに上回る速度を持つ。もちろん,軽戦車よりは遅いが,軽戦車のように「当たったら終了」めいた脆さはないし,攻撃してもまったくダメージを与えられないという心配もない。
戦場におけるオールマイティなプレイヤーであり,目の前の戦局が自軍に有利だとみれば,不利な状況に陥っている場所に転進したり,敵の数があまりに多くて不利だとみれば無駄死にを避けて逃げ出して友軍と合流したり,味方の自走砲を狙う軽戦車を撃退したりと,できることが非常に多い。
もちろんこれは器用貧乏の裏返しでもあり,一歩間違えると「重戦車ほどの打撃力も耐久力もなく,軽戦車のような敏捷性もない」という空気のような存在になってしまう。攻撃力もそこまで高くないので,重戦車の正面装甲は貫徹できないと思って行動しなくてはならない。
マップをよく覚えて安全に敵戦車の側面を確保したり,正面から攻撃する場合でも敵戦車の弱点を狙ったりなど,プレイヤーの知識や経験が求められるのが中戦車だ。
・軽戦車
貧弱な攻撃力,薄い装甲,ただし目を見張る敏捷性を備えた軽戦車。攻撃されるときわめて脆く,攻撃しても格上相手にはほとんどダメージを与えられない。低Tier戦では相手も軽戦車なので十分に砲撃戦になるが,Tier 4が登場する戦場あたりからは軽戦車の攻撃力に過度な期待を持つのは禁物だ。
では何をするのか。WoTでは自軍の誰の視界にも入っていない敵は,見えないものとして,ミニマップにも表示されない。逆に,誰かが敵を見てさえいれば,その位置情報は自軍が共有する情報となる――共有できるのは通信機の有効範囲にいる友軍のみだが。
軽戦車は車体が小さく,マップに茂みがある場合はそこに完全に隠れてしまえる。こうして静止している軽戦車は,自分から攻撃を仕掛けない限り,なかなか発見されない。この状態で敵軍を視界に納めておけば,その情報は自軍で共有され,敵本隊は味方本隊がまったく見えないのに,味方本隊は軽戦車の偵察情報をもとに敵の位置を把握して一方的に攻撃する,という状況が発生する。
また,最大射程を誇る自走砲は軽戦車の武装でも簡単に撃破できるので,その速度を活かして敵軍深くに潜り込み,自走砲を破壊するのも軽戦車の醍醐味だ。チームの目として活躍する軽戦車は,勝負の行方を変えることもしばしばある。
なお特定の軽戦車は,Tier 4なのにTier 8のマッチに放り込まれたりすることもある。軽戦車にとってはかすっただけでも即死クラスの火力が飛び交う戦場だが,そんな中にあってなお,偵察が勝負を分けることは珍しくない。
・駆逐戦車
Tierに見合わぬ高い攻撃力,あまり良好でない装甲,ぼちぼち〜劣悪な機動力を備えた戦車。2階級上のクラスの主砲が搭載できたりするので,攻撃力という点では凶悪で,また砲の精度が良い戦車も多く,スナイパー的な活躍ができる。
ただし駆逐戦車は原則として砲塔を持たず,主砲の向きは戦車の向きとほぼ同一となる。このため側面や背面に回り込まれると非常に脆く,場合によってはまったく反撃できずに撃破されてしまう。
車高が低く,茂みに隠れると発見されにくいため,それを利用した待ちぶせ攻撃が有効。発見されて集中攻撃を受けるとあっという間に撃破されるので,前線から一歩引いた場所からの狙撃が望ましい。
こうした性格から,自走砲の遠距離砲撃に弱いため,軽戦車に見つからないようしつつ,張り付きではなく,状況を踏まえた陣地転換を図るべきだ。
・自走砲
自走砲は攻撃画面も独特で,遠距離射撃を行うときはシフトを押して画面を俯瞰マップに切り替える。TPS画面で直接射撃ができないわけではないが,その距離で攻撃しなくてはならないのは自走砲にとってかなり追い詰められた状況だ。
耐久力はなきに等しく,機動力も低い。前線をすり抜けた敵軽戦車に簡単にやられてしまう程度の近接戦能力しかないので,うまくチームに守ってもらえる位置取りをしたい。敵への攻撃に集中しすぎると,陣地転換すべきタイミングを逃すことがあるので要注意だ。
知っておくべき戦車の特徴(国別編)
続いて,国別の特徴をざっくりと紹介しよう。かなりざっくりなので,驚かないでほしい。
・ソビエト
ソビエトの重戦車は,ときに「強力な中戦車」とでもいいたくなるような運用が可能だし,それが必要になる。Tier 5のKV-1,Tier 6のKV-1Sは,Tier 3〜4の時代に出会うとトラウマになるくらい凶悪だが,最近ではドイツとアメリカの中戦車にお株を奪われ気味。主砲の精度と貫徹力が低い以外はとくに目立った問題もなく,扱いやすい戦車が多いので,こだわりがないなら,最初はKV-1を目指してツリーを進めるのが良いだろう。
・ドイツ
ドイツ戦車は正面装甲以外が極端に薄いことがあり,とにかく,敵に正面を向けるという運用が重要になる。低TierではTier 4の駆逐戦車Hetzer(強力な主砲を搭載できる駆逐戦車),少し上ではTier 7の重戦車Tiger Pといったあたりが典型的。「癖がある」というほど尖ってはいないが,乗りこなすにはある程度の慣れが必要。
・アメリカ
車高が高い戦車が多く,かつ主砲がとれる俯角が大きいため,斜面を利用して,敵から見ると砲塔だけが見える状態での攻撃が容易。敵にこれをやられると,砲塔の装甲は固いは,そもそも砲塔しか見えないので狙いがつけにくいわで,非常に苦労させられる。
軽中重いずれも乗りやすい戦車が多いので,戦車はよく分からないがWoTはやってみたいという人であれば,とりあえずアメリカの駆逐戦車ラインを選んでおけば間違いない。
・イギリス
Tier 4のMatildaは,このクラスでは飛び抜けた装甲厚と,2ランク上の戦車すらサクサク貫徹できる主砲を有する(1発あたりのダメージは小さいが)。駆逐戦車はだいたい装甲が固く,とくにTier 5〜6あたりでは無類の壁っぷりを発揮する。戦車はとにかく固くなくては! という人は,重戦車よりもイギリスの駆逐戦車を選んだほうがいいかもしれない。
・フランス
とにかく癖のある車両が多く,例えばTier 3〜4の軽戦車は軽戦車の名に相応しくないほどの重装甲かつ低速なのに,これがTier 5になると超高速かつ紙装甲戦車に生まれ変わるのだ。高いTierでは自動装填装置がついた戦車も多く,瞬間的に火力を集中することも可能だが,やはり装甲が薄い。
デザインにも癖があり,好みが別れるところだろう。これって「StarCraft」とかに出てきそうですよね,という雰囲気の車両が多い。
・中国
現状では若干のアンバランスを感じさせる戦車もある。例えばTier 4のM5A1 Stuartはアメリカの車体に日本のチハの主砲を載せたキメラだが,高速かつ高貫徹力の主砲持ちとあって人気が高い。高Tierの中戦車,重戦車にも,スペック的に頭ひとつ抜けた戦車が見られる。
もっとも,ソビエトの戦車を少しいじっただけという戦車も多く,弱点の位置なども共通している。全体に見て,最大貫徹力や火力は本家より上,トータルでの取り回しは微妙に悪いことが多く,被弾場所が悪いとすぐ引火したり弾薬庫が誘爆したりするので注意しよう。
基本のノウハウはこれだ
WoTは基本プレイ無料のアイテム課金という料金体系を取るが,より多くの経験を積んだプレイヤーのほうが,より多くの現金を使ったプレイヤーよりもおそらく強い。アクションゲームなんだから,当然ですけどね。
そのため,練達のプレイヤーと砲火を交えると,最初の頃はわけも分からないうちに,あっという間に撃破される。やられて覚えるのが基本ではあるが,以下,とりあえずこれだけは意識したいということを列記してみよう。
・死んだらガレージに
・攻撃するときは正面を向く
どんな戦車でも,正面の装甲が一番厚いので,敵を攻撃する際は,その敵に対して戦車の正面を向けるようにしたい。もうちょっと理解が進むと,ティーガー乗りが言うところの「昼飯の角度」(敵に30度ほどの角度を付けて対すること。時計の針で,11時/1時方向になる)が重要になるが,最初は正面を向けることからスタートだ。
遮蔽物が利用できるときは,車体側面を遮蔽物で隠し,砲塔を90度回して敵に向け,物陰から出て射撃,遮蔽部の背後に戻って次弾装填,を繰り返してもよい。状況が許せば,遮蔽物にぴったり横付けするのではなく,ある程度の角度を持たせよう。
・攻撃は停止して
ゲームに慣れてきたら,さらに以下の項目に気をつけると「何もできずに撃破され続ける」という事態に陥ることは減ってくれるはず。
・一人称画面を活用する
起伏や傾斜が戦闘に与える影響は大きいので,マップを覚える際は「この稜線を超えると危険」といったことをしっかり意識しておきたい。
ただし地形や植生によっては,一人称視点では攻撃できないように見えるのに,実はできるという状況も起きるので,視点は頻繁に切り換えよう。
・頻繁に出会う強敵の弱点は把握しておく
Tier 3くらいまでなら,どの戦車も撃てばだいたい倒せるので問題ないが,Tier 4の戦車に乗るようになってきたら,Tier 5のKV-1やAT 2,Tier 6のKV-1SやAT 8といったあたりの戦車のどこを攻撃すれば倒せるか,といったことは知っておく必要がある。
WoTでは,たとえHPが残り1の戦車でも,砲弾の威力が減ったりはしない。瀕死の相手をちゃんと仕留められるか,あるいは逆に撃破されるかで,マッチの行方が変わることがある。
ネットを検索すると弱点を示した画像がたくさん見つかるので,そちらを参考にしてみるのもいいだろう。
ドイツの重戦車,E-75は強固な装甲と優れた攻撃力を持つTier 9屈指の重戦車。普通に撃ってもダメだが,砲塔のキューポラ(車長用の覗き窓)は装甲が薄い |
市街戦で,建物の柱の隙間から敵重戦車の履帯を狙い撃つ。この状況で履帯を狙ってもあまりメリットはないが,少なくとも嫌がらせにはなる |
・低Tierでもできることはある
Tier 3の軽戦車で,Tier 5の重戦車を含む敵集団に遭遇すると,正直何もできない気持ちでいっぱいになる。が,きちんと遮蔽物の背後に隠れれば即死はしないし,敵主力の攻撃が行われたのを確認して遮蔽物の背後からちょっとだけ飛び出し,すばやく敵主力の履帯を攻撃,すぐ隠れるという動きを繰り返すことで,履帯を破壊できる可能性がある。
履帯が破壊された戦車はしばらく動けないので,自走砲の餌食にするなり,後方の駆逐戦車が狙撃するなりすれば,戦局はいくらでも変わり得る。
とはいえ無理して履帯を狙ってやられるくらいなら,1秒でも長く生き延びたほうがいい状況もあり,その場から逃げてしまうのも選択の一つだ。このあたりの判断は冷静に。
・茂みには敵がいる
茂みには,敵が隠れている可能性がある。不用意に前進した結果,見えない敵の群れからの一斉射撃を受けるのは,いくつかのマップにおける典型的なやられパターン。
速い軽戦車に偵察させて敵の位置を把握するなり,自分が撃たれてもうしろの味方が逆襲してくれる状況にしておくなりの工夫が必要だ。
・自走砲は万能ではない
駆逐戦車に乗っていると「自走砲からの攻撃を受ける」→「あわてて後退する」→「後退位置を予測され,もう一度撃たれて終わり」というパターンが多くなるはずだ。
だが,自走砲は万能ではない。実際に自分で自走砲を使えば分かるが,建物などで射線がさえぎられることが多いため,自走砲が攻撃できない範囲は意外に広い。どういう位置関係であれば自走砲の攻撃を受けないか,実際に自走砲を使って理解しておこう。
・体当たりは武器の一つ
敵と自分の重量差など,さまざまな要素の影響を受けるものの,体当たりは確実にダメージを与える手段の一つだ(ある程度の速度が必要だが)。瀕死の相手に対して,あるいはどうしてもダメージを与えたい相手に対しては,回避運動をしながら突っ込んでみるのもいい手になる。
・初期に勝ちたいなら
戦車マニアのためのゲームであるWoTは,「乗りたい戦車に乗る」「乗りたい戦車を目指す」のが基本だ。とはいえ,負けや即死が重なって嫌気がさしてきたら,アメリカの駆逐戦車,T18に乗ってみよう。Tier 2以下の敵相手であれば敵に正面を向けてさえいればめったに死なないし,余裕ができるのでWoTの基本的な立ち回りを把握するのも楽になる。
全世界の戦車好きのために
これ以外,WoTには多くの要素がある。1回だけ故障を即座に修理してくれる消費アイテムや,砲弾/榴弾の使い分け,追加パーツによる車体のカスタマイズ,ランダムマッチ以外のモードなど,潜ろうと思えばいくらでも深く潜り込める。
序盤はプレミアムアカウントにしなくても問題なく快適にプレイできるので,戦車に興味のある人は,まずは無課金でのプレイをオススメしたい。プレミアムの導入はある程度Tierが上がり,ヘタすると修理代と弾代で赤字という世界に突入してからでも構わない。
繰り返しになるが,WoTはリアルさを感じさせる戦車ゲームであると同時に,運と技術のバランスが巧みな作品だ。
同じ場所で,似たような仲間と似たような相手に向かって戦っても,結果は毎回変化する。それゆえに,運だけで勝負を決めさせない技術も要求されることになる。狙いどころを正確に絞ることに始まり,多少の無理を押して敵の側面を取るために飛び出したり,わざと少し退いて敵車両群を誘ったりなど,その技術のあり方は自分が乗る戦車ごとに異なるし,状況によっても変化する。そこでは無謀と勇気を履き違えない冷静さ,臆病さと慎重さを取り違えない勇敢さが要求される。あと,体調を壊さないことも大切だ。
WoTは,マニアのためにマニアックなゲームを作っても,世界が相手ならビジネスとして成り立つ好例として考えることもできる。普通なら「そんなゲームは売れない」で一蹴されそうなコンセプトでも,世界のあちこちにいるマニアの心を掴めれば,ゲームが成り立つだけの人口は集められるというわけだ。
参入のハードルを下げるために,サービス開始当時(ロシアでは2010年)の欧米では珍しかったFree-to-Playというビジネスモデルを採用したのも,結果としては正しかったようだ。戦車マニアが本当に欲しがっているものを,確実に提供するWoTは,ゲーマーの心を掴んで離さない魅力にあふれている。
「World of Tanks」公式サイト
- 関連タイトル:
World of Tanks
- この記事のURL:
キーワード
(C) Wargaming.net