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印刷2010/10/26 15:06

レビュー

妄想力全開のロールプレイを満喫できるが,やっぱり見た目に反して手強い。学園RPGシリーズ最新作「剣と魔法と学園モノ。3」レビューを掲載

 「剣と魔法と学園モノ。3」(以下,ととモノ。3)は,10月7日にアクワイアから発売された,ダンジョン探索型のロールプレイングゲームだ。PlayStation3版とPSP版の2種類が同日にリリースされており,両者のゲーム内容に大きな違いはない。本稿では,PSP版をベースに,「ととモノ。3」のレビューをお届けしていこう。

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「剣と魔法と学園モノ。3」公式サイト


 ダンジョン探索型のロールプレイングゲームは,名作“Wizardry”を筆頭に,今でも数多くのタイトルが作られる人気ジャンルである。その多くは正統派ファンタジーを謳う中世ヨーロッパ風の世界観で,いかにも重厚なタイトルが多いのだが,そんななか「ととモノ。3」は強烈な個性を放っている。タイトルを見ても分かるように,“学園モノ”の世界なのだ。

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 プレイヤーが操る冒険者は歴戦のツワモノ達ではなく,“学校の生徒”達である。元気いっぱいの少年少女が学校を飛び出し,世界各地で冒険を繰り広げるというストーリーになっているのだ。
 ゲーム自体あまり殺伐としてはおらず,敵味方のグラフィックスも,全体的にほんわかとした雰囲気。良い意味でライトノベルのようで,若い世代のプレイヤーにとっても,非常にとっつきやすそうだ。
 マイキャラ達に感情移入するための演出も数多く用意されており,ストーリーを頭の中で思い描いたり,妄想したりしてしまう人が多いのも,ととモノ。シリーズに共通する面白さといえるだろう。

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 ゲームの開始地点として,3つある学校の中から一つを選ぶことで,それぞれ違ったストーリーが楽しめるなど,リプレイアビリティが高い仕組みになっている。多彩なクラスシステムや,アイテムの強化や合成など,キャラクターを育成する“RPG”としての魅力もたっぷりとある。
 こういった骨太なゲーム本編を,とことん明るい演出で仕上げたのが,この「剣と魔法と学園モノ。3」というタイトルである。

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たっぷりと愛情を注ぎこめる

こだわりのキャラカスタマイズ


 ととモノ。3最大の魅力の一つは,幅広いカスタマイズ項目で,マイキャラにたっぷりと愛情を注ぎ込めることだ。まずはキャラメイク関連のシステムを詳しく見ていきたい。

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 このゲーム内世界には,「ドラッケン学園」「プリシアナ学院」「タカチホ義塾」という3つの学校があり,プレイヤーはまず,これらの学校のうち,一つを選び「生徒」(マイキャラ)を作成する。

 各学校の大まかな特徴としては,正統派ファンタジー系のドラッケン学園,近代的なプリシアナ学院,オリエンタルなタカチホ義塾といったところ。学校によって登場NPCやクエストなどのストーリー展開が微妙に違っているが,ゲームの難度自体は極端には違わない。グラフィックスなど,ぱっと見の好みで選んでしまってもよいだろう。

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 ヒューマンやエルフなど,生徒の作成時に選べる「種族」は10種類。そして,いわゆる職業となる「学科」に関しては,なんと40以上もの種類がある。「戦士」「ナイト」「盗賊」といった定番タイプのほか,「折り紙士」「予報士」「マニア」「弟/妹」など,一体どんな活躍ができるのか,まるで想像つかない学科もちらほら。

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 ととモノ。3では,いつでも「転科」つまりクラスチェンジが行える。ペナルティなどは無く,冒険する舞台やその時々の気分などによって,いろいろな学科の中から気軽に選べるのだ。
 また,メインシナリオを進めると,一人のキャラが「メイン学科」と「サブ学科」の2つを選べるようになり,キャラ育成のボリュームはさらに増していく。

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 キャラの能力だけでなく,外見にこだわれるのも大きな魅力だ。作成時は,種族ごとに用意された全身図をベースに,多数用意された髪型や髪の色を選べる。口で言うのは簡単なことだが,こういった2Dグラフィックスのゲームで,髪型を変えても全身のデザインが破綻していないのは凄いことだろう。選べるボイスも含めると(このゲームではとにかくよく喋る),キャラメイクのパターンは7万5000通り以上とのことだ。

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 そしてもう一つ,これはほかではなかなか聞かないシステムだが,各キャラクターが「好き・嫌い」な相手を,それぞれ一人ずつ設定できる。これがゲーム内にいくつかの影響を及ぼしており,例えば相思相愛の2人なら協力技や連携技のスキルが繰り出せる。逆に嫌いなメンバー同士でも,戦闘中に口論しながら,(なぜか)モンスターに強力な八つ当たり攻撃を行えたりするのだ。

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 RPGとは言うまでもなくロールプレイングゲームの略であり,“役を演じる”ことである。キャラクターのストーリーをあれこれ思い描くのは,RPGの大きな醍醐味の一つだろう。本作のキャラメイクでは,その醍醐味を強く促してくれるどころか,妄想レベルまで引き上げてくれるのだ。


オーソドックスでありながら

少々尖ったゲームバランス


 マイキャラ達のパーティはそれぞれの拠点から,フィールドやダンジョンの冒険へ繰り出していく。メインストーリーを進めることで活動エリアが広がっていくという,お馴染みのゲーム展開だ。
 本作は“学園モノ”なので,拠点にある施設は宿屋ではなく「学生寮」である。そのほかの施設も,「購買部」「保健室」「職員室」「図書室」といった感じだ。クエストを依頼してくる相手も,先生や校長先生などといった具合で,一般的なファンタジーRPGの経験が豊富な人ほど,本作における世界観のギャップは楽しめるだろう。

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 一人称視点で描かれるフィールド/ダンジョンは,基本的に20×20マスの広さがある。マップ内は,(Wizardryなどとは異なり)迷路のように入り組んではおらず,大分ゆったりとした構造だ。その代わりモンスターとのエンカウント率は高めで,一回の戦闘時間も若干長く,それらをひっくるめると,冒険ペースはほかのRPGと比べてもプラマイゼロといったところ。
 これは慣れの問題かもしれないが,画面内で距離感が掴みにくく,移動時に意図せず壁に当たることが,ちょっと多かった。PSPの小さい画面ではあるもの,SELECTボタンでミニマップが常時表示できるので(オートマップにも対応),これの利用をおすすめしたい。

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 戦闘システムはターン形式で,RPGのプレイ経験がある人なら,とくに問題はないだろう。学園モノの本作では,モンスターのデザインも決しておどろおどろしくはなく,コミカル系が中心だ。モンスターの表示形式やエフェクトの画面演出など,どちらかというと重厚なダンジョンRPGより,もっとライトな一般のRPGに近い雰囲気である。

 エリア内では時折,ほかのモンスターと比べて妙に強いモンスターが出現することがあり,泣かされることが多々ある。どうやらこのあたりが,本作が見た目に反して手強い印象を与えているようだ。
 本作はレベルアップによる影響がかなり大きいので,地道にレベルアップ作業を行えば,極端な壁にぶち当たるようなことは少ないはずだ。また,オートセーブの頻度が高めで,仮に全滅しても学校の保健室に戻り,所持金が半額になるだけ。全体的に見ると難度は高いのだが,ダンジョンやボスなどには,気軽に挑戦しやすい印象だ。

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 バトルにおける本作ならではのシステムといえるのが,先述した「相性システム」である。“好きな人同士”あるいは“嫌いな人同士”で,MPを消費して協力技を繰り出すことができるのだ。その際は格闘ゲームチックなコマンド入力が求められるのだが,入力時間が2〜3秒と結構シビアなので,思わず熱が入ってしまうだろう。

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 このシステムで「良いな」と感じたのが,例えば序盤の盗賊などのように,戦闘中ヒマになりがちなメンバーでも,パーティに大きく貢献できること。逆にヒーラーなど呪文系の出番が多いキャラは,使う機会があまり多くないかもしれない。これを踏まえてメンバー間の相性を煮詰めていくのも,一つの戦術といえるだろう。

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ぎこちなさはあるもののなぜか憎めない

今後のシリーズ作でライト向けに調整されることに期待


 そのほかの特徴的なシステムとしては“錬金”が挙げられる。これはモンスターのドロップアイテムや,不要なアイテムを分解して得られる“廃品”と“素材”を用いて,新たな装備品を作り出したり,今あるアイテムを強化したりできるというもの。

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 本作では,ショップで購入できる装備品が全体的に割高で,錬金を上手に使えるかどうかで,ゲームの進めやすさが大きく違ってくる。ただし,ゲームの序盤から非常に多くの廃品や素材が登場し,レシピのシステムが若干分かりにくいため,面倒くさがりなプレイヤーは投げ出してしまいやすいかもしれない(筆者のことだ)。
 そうなると,本作のゲームバランスが余計に厳しく感じられてしまい,人によって評価が大きく分かれやすいポイントとなりそうだ。錬金に関しては,素直に攻略サイトなどを参考にするのもよいだろう。

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 プレイ中に気になったのは,戦闘のテンポが全体的に悪い点だ。PSPで頻繁にロード/セーブが行われることを抜きにしても,戦闘中のスキップ機能がなく,ストレスが溜まりやすい。ただでさえ1回の戦闘時間が長めなのに,10匹近くのモンスターに遭遇すると,それだけで気が重くなってしまうだろう。今作でシリーズ3作目ということで,このような基本的な冒険の快適さについては,もう少し煮詰められていてもいいのではないか。

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 もう一つは先にも少し触れた,強力なモンスターやアイテムがいきなり登場するようなケースが散見されること。コアゲーマーならまだしも,キャラクターの可愛さに惹かれてパッケージを手に取った,3DダンジョンRPGの経験がまったくないライトゲーマーは,序盤でいきなり躓く可能性があるだろう。

 そういった問題もあるのだが,なぜか憎めないのがととモノ。3の良いところである。その理由はやはり,マイキャラに愛着を感じているからだろう。RPGのプレイヤーの中には多いかと思うが,自分の中であれこれとストーリーを繰り広げてしまうような妄想壁のある人にとっては,本作キャラメイクや演出はかなり楽しめるだろう。

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 例えば今回プレイした際は,男が1人に女が5人というハーレムパーティを目指してみた。“好き・嫌い”の相性システムでは,女の子全員が男の子に好意を抱いているという,現実世界ではなかなかお目にかかれないシチュエーションである。こうなると,男の子以外のキャラはバトル中にスキルを繰り出しにくくなるので,ベストの戦術とは到底言いがたい。しかし,こういう(他人からするとどうでもいい)ところに,自分なりのこだわりを持てるのは,プレイする本人にとってはとても楽しいものだ。こんな遊び方に共感してくれる人なら,ととモノ。3を気に入る可能性が高い。

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 次回作では,このキャラ方面でのパワーアップだけでなく,ゲームシステムをいま一度しっかり調整してほしいと思う。3DダンジョンRPGの経験がまったくないようなライト層が最初でつまずかないよう,序盤のゲームの難度や各種システムの見直しに期待したい。
 本シリーズのRPGとしての“骨太”さは,開発側が意図したものばかりではなく,ゲームバランスの調整不足もあるように感じられる。この部分を丁寧に仕上げることで,より多くの人に支持されるタイトルへと変貌するのではないだろうか。

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 クセのあるタイトルなのは否定しないが、他のダンジョンRPGには無い強烈な個性も確かにある。グラフィックスなど、学園モノとしてのテイストが気に入ったゲーマーなら、アクワイアの新作RPG「剣と魔法と学園モノ。3」を一度プレイしてみてはどうだろうか。

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