ムービー
不死身の男を主人公にした,異色すぎるアクションゲーム
NeverDead
死なない主人公が,
死ぬような思いをしてがんばるアクションゲーム登場
KONAMIが2012年2月2日にリリースしたアクションゲーム,「NeverDead」(PlayStation 3/Xbox 360)。かつて名うてのデーモンハンターとして活躍していた主人公ブライスだが,魔王との戦いに敗れ,妻を殺され,しかも不死身の体にされてしまう。恥辱と後悔を抱いたまま,永遠に生き続けろという文字どおりの劫罰だ。それから500年。希望も気力も失ったブライスは,NADA(National Anti-Demon Agency)と呼ばれる組織の女性捜査官アルカディアと共に,市内に発生するザコっぽい悪魔を倒して酒代を稼ぐというしがない生活を送っている。昔は,有名RPGの主役をやれそうなくらいハンサムだったブライスも,長い年月が経ち,今やなんだかすっかりうらぶれた中年男になってしまった。そんなある日,いつものように仕事に出かけた彼は……というのが,本作序盤のストーリーだ。
「NeverDead」公式サイト
ところが,筆者のそうした心配をよそに,そんなことは開発側もとっくに分かっていると言わんばかりに,本作にはブライスの特性を生かしたさまざまな仕掛けが施されていたのだ。さすが。
2011年6月25日に掲載した開発者インタビューでお伝えしたように,本作のプロデューサーを務めるのは,「メタルギア」シリーズの外伝的な作品「METAL GEAR AC!D」の企画,監督などの経験を持つ野尻真太氏で,PSP向けタイトルのMETAL GEAR AC!Dでは「トレーディングカードを使ったステルスアクション」というユニークなシステムを採用するなど,個性的なゲーム作りには定評のあるクリエイターだ。
制作は,「Aliens vs. Predator」や「Sniper Elite」などで知られるイギリスの中堅デベロッパRebellion。ただし,最近リリースした独自IPの評価があまり高くなかったのはRebellion自身が認めるところで,それだけにこのNeverDeadには力が入っているはずだ。日本人スタッフがイギリスのデベロッパと協力してゲームを開発するというスタイルは,初めての事例というわけではないものの,これまた注目すべき点だろう。さらに,ゲームに楽曲を提供しているのがアメリカの人気バンド,Megadeth(メガデス)であるところも,なんというか,それらしすぎちゃって見逃せない。チョイスがいいっすね。
ベテランゲーマーほど罠に落ちやすいかもしれない
ユニークな戦いっぷり
さて,繰り返しになるが,ブライスは不死身なので,叩いても突いても焼いてもなでても死なない。ただ,戦闘で大きなダメージを食らうと,ブライスの手や足,そして首までもが取れてしまう。予備知識なしで見ると,「えっ!」と,かなりビックリするはずだが,当の本人は意外に平気そうで,取れたパーツに接近して所定のボタンを押すと,すぐにくっつくので安心だ。とはいえ,両足が取れると,這って進むことになるし,腕が取れると武器が持てなくなるなど,困ることは困る。
グランベイビーは,大量のモンスターが登場するようなシーンで普通のモンスターに混ざって登場することが多く,戦闘場面では「まずこいつからやっつける」とか,そういう戦略が必要になる。またグランベイビーは一度倒しても,ある程度の時間が経つと再び,どこからともなく出現するので,その点もなかなかやっかいだ。おっといけない,首が取れちゃった,なんてときにヤツの姿を見ると,腋の下にどっと冷や汗をかく。
つまりブライスは,不死身ではあるが無敵ではないということだ。
さて,ブライスが扱えるのは,ハンドガンなどの銃器系と,バタフライブレードの2種類だが,ゲームの序盤は銃器の威力が乏しい印象があり,ブレードを多用することになるだろう。とはいえ,最初から出てくるところではやたら多数のモンスターが出現するので,すぐに乱戦に巻き込まれて,アレが取れたりコレが取れたりと,もう大騒ぎ。
マップを見ると,あちこちに赤いガスボンベがあり,いかにも爆発したくてしょうがない風情なのだが,距離があるとなかなか弾が当たらない。うーん,あれをうまく使いたいんだけどなあ,というところでハッと気がつく。なにも普通のアクションゲームのように,遠くから撃つことはないのだ。ボンベのそばに仁王立ち。敵がどっと集まってきたところでボンベを撃ち,自分もろとも木っ端微塵。ブライスもバラバラになるが,敵も一網打尽というわけで,これはかなり斬新で愉快だ。
こういう仕掛けがマップのあちらこちらにあり,例えば柱を壊して天井を落とし,自分もろとも敵の一団を押しつぶしたりすれば,ゲームの進行が非常に楽,かつ爽快になったりするのだ。これは,ベテランゲーマーほど気がつきにくいかもしれないコペルニクス的展開。いや,つい普通に戦っちゃおうとするわけよ。
こうしたユニークな戦法は,公式サイトのコンテンツ「地獄の48手」にムービーとして掲載されているので,ぜひ参考にしてほしい。個人的には,できれば最初は普通にプレイして,そのあとでチェックすると,「おお,こんな手があったのか」と驚けるので,そのほうが面白いんじゃないかしらと思う。
自分の体を武器にして,ゲームを進めていこう。え?
もっとも,ゲーム序盤ではできないこともある。例えば,ブライスは自分の手足を自分ではずし,それを放り投げ,爆発させるというとんでもない荒業が使えるのだが,最初はロックされていて使えない。ゲームが進むにつれて,さまざまな能力が使用可能になっていくという仕様になっており,やはり,最初からなんでもかんでもできちゃうと,わけが分かんなくなっちゃうのを開発側がとっくに分かっていたということだろう。
また,はずした首を高い場所まで放り投げるという方法もあり,この場合,絵づらがすごい。自分の頭投げてるんだもんねえ。
画面にミニマップなどは表示されないが,ゲームは基本的にリニアな一本道なので迷うことはない。とはいえ,マップの構造が立体的になっていたり,ちょっと入り組んでいたりと,筆者のような方向音痴には辛いときもある。もし,行くべきところが分からなくなった場合,所定のキーを押すことで,向かうべき方角がなんとなく分かる仕掛けになっている。
マップのあちこちには,赤,もしくは金色のオブジェクトが落ちているが,これは「XPアイテム」と呼ばれるもので,拾うことで経験値が溜まり,ショップでアビリティが購入できるようになる。アビリティは,移動速度をアップする「Sprint」や,近くの敵に自動的に照準を合わせてくれる「Aim Snap」など,非常に種類が多く,どれも役に立ちそうな気がするので目移りする。さらに,ゲームが進むにつれて,購入できるアビリティもどんどん増えていくので,自分のプレイスタイルに合ったブライスを作れるはずだ。ちなみに,XPは敵モンスターを倒すことでも手に入る。
ただし,このアビリティを使用するには,購入してからスロットにセットする必要があるので,手に入れたものがすべて使えるわけではない。したがって,ゲームが進むにつれてブライスがむやみやたらと強くなったりはしないようだ。
ゲームの序盤は戦闘に次ぐ戦闘で,ムービーシーンも比較的あっさりしており,この点は説明過剰な雰囲気のある最近のゲームの中では異色で,洋ゲーっぽくもある。それでも,キャラクターはうまく表現されており,それほど数は多くないものの,登場人物はいずれも個性的だ。とくにアルカディアとブライスのやりとりは面白く,上司の前では猫をかぶりつつ,ブライスに憎まれ口をきくアルカディアと,それを冗談で軽くいなすブライスのキャラ立ちのよさは特筆すべきだ。頭だけになって移動するとき「ぐーるぐーる。ああ,目が回る」などという主人公は珍しいと思う。
個性的な登場人物と設定,そして不死身の主人公
このノリについてこれる人は,ぜひプレイを
グラフィックスについては,掲載したスクリーンショットからも分かってもらえるかと思うが,かなり緻密に描かれている印象で,これで「オブジェクト破壊」も実現しているのだから,レベルは高い。室内の場面が多いが,オープンスペースも出てくる。最初はもう少しおどろおどろしい雰囲気になるのかと思っていたが,そうでもないようだ。もっとも,まだエンディングを迎えたわけではないので,今後,どのような場面が展開するか楽しみだ。
というわけで,「主人公が不死身じゃゲームにならないだろう」という予想を覆して,NeverDeadはスタイリッシュで粋な,大人のゲームに仕上がっている。暗い過去を背負いながらも軽口を叩き,手足がバラバラになったり高電圧にしびれたり,車や電車に轢かれながらも,そのつど復活して戦い続ける彼の姿に共感する人もいるのではないだろうか。まさに,煮ても焼いても食えない男とは彼のことだ。
今回は,シングルプレイについて説明したが,いずれ,マルチプレイについても紹介したいと思っている。こちらも,なんだか「普通とはちょっと違う」感じになっているようで,楽しみだ。尖っているゲームが好き,という人はぜひ試してほしい。
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