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“尖った作りでない”ことが魅力とも言える,SRPG入門に最適なPSP用SRPG。「BLUE ROSES 〜妖精と青い瞳の戦士たち〜」のレビューを掲載
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印刷2010/10/29 16:00

レビュー

「日本一ソフトウェア製SRPGは手強い!」と思っている人にこそ挑戦してもらいたい1本

BLUE ROSES 〜妖精と青い瞳の戦士たち〜

Text by 御簾納直彦


 日本一ソフトウェアから9月16日に発売されたPSP用ソフト「BLUE ROSES 〜妖精と青い瞳の戦士たち〜」(以下,BLUE ROSES)は,妖精を見ることができる青い瞳を持つ者達によって結成された戦闘集団,“ブルーローズ”に所属する戦士達の活躍を描いたシミュレーションRPG(以下,SRPG)だ。

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 本作は,イラストレーターのすーぱーぞんび氏と大塚真一郎氏による魅力的な登場キャラクターや,RPG色の強い斬新な戦闘システムなど,ゲームファンにとっては非常に見どころの多い作品となっている。
 日本一ソフトウェアといえば「魔界戦記ディスガイア」シリーズを筆頭に,「ファントム・キングダム」や「ソウルクレイドル 世界を喰らう者」など,これまでにも数多くの良質なSRPGを世に送り出しているメーカーだ。
 そして本作の開発は,アポロソフトとチャイムが手がけている。アポロソフトは,過去に「サモンナイト」シリーズや「ドラゴンシャドウスペル」等の人気SRPGを手がけてきたゲームクリエイター,川瀬浩一氏が在籍するソフトハウスである。
 本稿ではそんな,SRPGファンにとっては最強の布陣と呼ぶに相応しいスタッフが手がけたBLUE ROSESの魅力に迫っていこう。発売から時間は経ってしまったが,難易度的に,本作は日本一ソフトウェア製SRPGの入門編としてオススメの作品。2011年2月24日には,PS3用SRPG「魔界戦記ディスガイア4」もひかえている,同社のタイトルに興味があるなら,まずはこの作品で戦術級ストラテジーに挑戦してみてはどうだろうか。

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「BLUE ROSES 〜妖精と青い瞳の戦士たち〜」公式サイト


妖精と人が共に生きる国「アウストレイル王国」。
この国には人と妖精との穏やかな営みを脅かす,黒い影が存在していました。
黒い異形の者「ファントム」は日々その数を増やし,
妖精たちが暮らす妖精の隠れ家や人々の街を襲い,驚異となっていました。
しかし,
人々はファントムの影におびえているだけはありませんでした。
アウストレイル王国の貴族たちのなかに
「妖精を見る青い瞳」通称「ブルーローズ」を持つものたちが現れ,
彼らは対ファントム用戦闘集団「ブルーローズ」を結成します。
そして妖精の力を借り,ファントムへと立ち向かっていったのです。
長い間,彼らはファントムと戦い続けてきました。
そして現在。
下町の少年ロシェ,そして貴族の少女アリシア。
彼ら二人がそれぞれ,古い関わりをもつブルーローズと関わりを持ったことから
物語が始まります。


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 これが,BLUE ROSESの導入ストーリーだ。公式サイトや紹介記事を一読した方ならご存じと思うが,王道的なファンタジー世界が本作の舞台となっている。
 日本一ソフトウェアのSRPGといえば,可愛く描かれた魅力的なキャラクター達が特徴の一つだが,BLUE ROSESのキャラクターも,これまでの作品に負けないくらい力の入ったデザインになっている。その辺りは「さすが日本一ソフトウェア。ファンのツボを押さえているな」といった印象だ。もちろん,イベントシーンはすべてフルボイス(街中の会話などはボイスなし)となっているので,声優ファンも要注目である。

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 ストーリーに関しては,あまり多くを語るとネタバレになってしまうため,詳細は割愛させていただくが,これまたファンタジーの王道をいく内容。登場キャラ達はやけに可愛らしいが,シリアスなシーンもしっかりと用意されており,見応えのある物語に仕上がっている。とくに難解な要素もなく,間口の広い正当派のストーリーと言えるだろう。個人的には,同じくファンタジー世界を舞台としたサモンナイトシリーズや,テイルズ オブシリーズなどとそう違わない感覚で楽しめたので,そういったテイストが嫌いでなければ,違和感なく受け入れられるのではないだろうか。
 なお本作には,主人公としてロシェ(男性)/アリシア(女性)という2キャラクターが用意されている。それぞれ異なる視点でストーリーを進められるので,自分好みのキャラクターを選ぶといいだろう。ちなみに筆者は当然(?)アリシアを選択している。

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最大3対3のチームバトルが熱い。SRPGと王道RPGが

絶妙なバランスでブレンドされた戦闘システム。


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 BLUE ROSESの戦闘システムは,一般的なSRPGとは違い,一風変わったものとなっている。移動に関しては,マップのマス目上に仲間を配置して,敵との距離を見極めながら戦略を考えるという,一般的なSRPGに準じた形だ。しかしバトル画面では,画面左上に表示されるコマンドから行動を選択し,まるでRPGのように戦闘を進めていく。ターン制SRPGの戦略性と,RPGでおなじみのコマンド選択式の取っつきやすさが,うまくブレンドされた戦闘システムである。

 バトル中,必殺技発動時や敵からの攻撃を受ける際に,ボタン入力を求められることが多々ある。これには,攻撃時にボタン入力を成功させれば与ダメージボーナス,防御時に成功させれば被ダメージの軽減といったメリットがあるのだが,妖精大魔法を使う際に必要となる“フェアリーポイント”も溜まるので,本作のバトルには欠かせないシステムといえる。
 コマンド入力後はただ戦闘デモを見ているだけになりがちなバトルに,ボタン入力というリアルタイム性を加えたことで,本作では,プレイヤーは適度な緊張感を保ちつつ,戦闘を楽むことができるのだ。

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 ちなみに戦闘は,最大3対3で行われるチームバトルが基本。プレイヤーは,敵の弱点や能力などを事前にチェックしつつ,「火属性に弱い敵がいるから魔法使い系を出そう」「物理攻撃が厳しいから打たれ強い仲間を入れよう」などと,得手不得手や相性などを考慮したチームメイクをする必要がある。
 チームメイクは敵と接触し,バトルが開始されるたびに行えるので,ゲームに慣れてきたらアレコレ試行錯誤しつつ,状況に応じてチームを組み換え,さまざまなバリエーションのバトルを楽しんでみよう。

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 戦闘では,チームメイクの中心人物である“リーダー”と,リーダーを補佐する“サポート”の組み合わせも重要となる。サポートは,それぞれ能力や使用可能な技,狙える攻撃対象などが異なっており,誰をサポートにするかによって,戦い方が大きく変化するのだ。
 そういった部分も考慮しつつ戦略を練り,その戦闘での最適な構成で,最善の戦果を狙っていく楽しみは,BLUE ROSESの大きな魅力の一つである。


妖精とのコミュニケーションが攻略のカギを握る


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 本作には何人もの“妖精”が登場し,その愛らしい風貌や特徴的な性格で,ストーリーに彩りを与えてくれる。しかし妖精は,単なるマスコット的存在にとどまらず,ゲームを攻略するうえで重要な役割を担ってもいる。
 まず,キャラクターに妖精を付ける(パートナーにする)と,妖精ごとに設定されたステータスボーナスが得られる。妖精は複数存在し,状況に応じて付け替えることも可能だが,キャラと妖精の間にも相性が存在するので,ブーストしたい能力と,妖精との相性を考慮しつつ,キャラを強化していくことになる。
 さらに,ターン経過でHPが回復していく効果や,攻撃力がアップする効果など,さまざまなスキルを付加できるのも妖精の大きな強み。加えて,戦闘中徐々に貯まっていくフェアリーポイント(FP)を消費して,戦闘の流れを一気に変えられるほどの威力を持つ“妖精大魔法”が発動できることも,妖精から得られる恩恵だ。
 妖精の力を上手く使い分けながらキャラクターを育成しておけば,敵が手強くなる後半戦においても,かなり有利にストーリーを進められることは間違いないだろう。

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 ちなみに妖精とダイレクトに関係があるわけではないが,仲間との絆を深める“妖精会話”も見逃せない。妖精会話には,普段は見られない仲間の意外な一面が発見できたり,会話を重ねることでステータスにボーナスが付いたりする,コミュニーケーションゲームのような側面がある。妖精会話を重ねていけば,相手の好感度があがり,最終的にはエンディングに影響を与えることあるので,ステータスボーナスに期待しつつ,各キャラクターのエピソードを楽しもう。


「ディスガイア」シリーズのような派手さはないが

シミュレーションRPG初心者でも気軽に遊べる作品


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 日本一ソフトウェアのSRPGといえば,ディスガイアシリーズのようなやり込み系作品を連想してしまいがちだが,BLUE ROSESは,初めて同社製SRPGを遊ぶ人でも気軽に楽しめるほどハードルが低い。もちろん,SRPGというジャンルの性質上,何も考えずに力押しだけでクリアできるような難度とも言えないのだが,ちゃんと考えてプレイしていけば,SRPGに不慣れな人でもエンディングを迎えられるはずだ。

 すべてのキャラクターにまんべんなく妖精を付けられなかったり(結果的にメインメンバーが固定されてしまいがち),演出面がやや淡泊だったりと,気になる部分はあるものの,本作は,キャラクターの魅力,戦闘システムの面白み,妖精を絡めた育成要素などが,手堅くまとめられている作品だ。
 ディスガイアシリーズのような,尖った仕様や果てしないやり込み要素を求めている人にとっては,やや物足りないかもしれないが,「たまにはSRPGを遊んでみたいな」と思っているのなら,本作は比較的気楽に楽しめる作品と言えるだろう。とくに,SRPGというジャンルに対して「とにかく難しい」という印象を抱いている人にとっては,一度試してみる価値のあるタイトルである。

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