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印刷2011/12/01 00:00

レビュー

戦ってよし,隠れてよし,説得してよしと,きわめて自由度の高いアクションRPG

デウスエクス

Text by 小倉正也


 スクウェア・エニックスから2011年10月20日,日本語版が発売されたアクションRPG「デウスエクス」PlayStation 3/Xbox 360)。Eidosのモントリオールスタジオが開発を手がけた本作は,かつて高い評価を得た名作「Deus Ex」,そしてその続編「Deus Ex: Invisible War」に続くシリーズ第3弾だ。

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「デウスエクス」公式サイト



シリーズ初心者でも安心してプレイできる導入部


 本作に触れる前に,シリーズの歴史について簡単におさらいしておこう。
 2000年にEidos Interactive(当時)から発売されたシリーズ第1作Deus Exは,ゲームデザイナーのWarren Spector氏がプロデュースを手がけた作品で,同氏の出世作となった。FPSとRPGを組み合わせたゲームシステムに加え,それまでのゲームでは見たこともないような高い自由度を実現した名作として知られる。
 2003年には続編となるDeus Ex: Invisible Warが発売され,高い評価を受けたが,これら2作の開発を手がけたスタジオIon Stormが2005年に閉鎖。ここでシリーズはいったん,ストップすることになった。
 その後2008年,スクウェア・エニックスのグループ会社となったEidosのモントリオールスタジオによって再始動が発表され,シリーズ第3弾となる本作(海外版タイトルは「Deus Ex: Human Revolution」)の開発がスタートすることになったのだ。

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 日本では残念ながら“知る人ぞ知る”といったシリーズかもしれないが,従来作の特徴を受け継ぎつつも,ストーリーやシステムの部分は刷新されているので,過去作をまったく遊んだことがないという人であっても本作を楽しめるはずだ。

 それでは,実際にゲーム序盤の流れを追いつつ,ゲームを紹介していこう。ちなみに今回のプレイはXbox 360版を使用している。

 シリーズ第1弾の舞台は2052年のアメリカだったが,本作では時代を少しさかのぼり,2027年が背景になっている。第1作,2作では,ナノテクノロジーによるオーグメンテーション(人体拡張)がごく当たり前に行われていた時代だったが,本作の舞台はそのとば口にあたる,オーグメンテーションの是非について,人々の意見が割れている時代だ。
 主人公アダム・ジェンセンは元警官で,現在はオーグメンテーション技術をもつバイオテクノロジー企業「サリフ・インダストリー」の警備を担当している。ところがある日,サリフ・インダストリーに謎の武装集団が襲撃を仕掛けてくる。本作は,この出来事から幕を開けるのだ。

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 このプロローグパートはチュートリアルを兼ねており,移動やカバーアクションなど,操作方法がムービー付きで説明される。ゲームは基本的に一人称視点で進行し,アダムが物陰に隠れているときは三人称視点に変わるというスタイルだ。
 操作は一般的なFPSに準拠しているのだが,注意すべきは,ゲーム序盤では(もしくは,「強化するまでは」)アダムが,非常に撃たれ弱いことだろう。難度がノーマルであれば,部位にかかわらず,ほんの3〜4発撃たれただけで倒されてしまう。そのため,戦闘ではカバーアクションがほぼ必須となる。

 FPSに慣れていない人なら,このチュートリアルでゲームオーバーを経験するかもしれない(筆者自身,数回コンティニューを繰り返した)。ただ,序盤に関して言えば,オートセーブの頻度は高く,たとえ倒されても少し前の地点からすぐに再開できるので,そこを気にかける必要はないだろう。
 また,難度変更はゲーム中,いつでも行えるので,どうしてもすぐにやられてしまう! という場合は,難度を「ストーリー重視」(いわゆるイージーモード)に設定すれば,敵の人数こそ変わらないものの,被弾時のダメージが大幅に減少する。

ゲーム開始時に選べる難度は3種類。あとからいつでも変更できるため,初プレイの場合はとりあえず「アクション重視」(いわゆるノーマルモード)で始めるのがいいかも
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 社内を進んでいくと,オーグメンテーション技術で身体を機械化した敵との戦いにより,アダムは致命傷を負う。アダムの意識が遠のいてゆき,彼の身体に緊急手術が行われる――といったところでオープニングムービーが流れ,プロローグは終了だ。


敵を倒すも,隠れてやり過ごすも,
すべてはプレイヤー次第


 襲撃事件から半年後。オーグメンテーション手術によって死の淵から蘇ったアダムがサリフ・インダストリーに復職するところから,いよいよ本編が始まる。

プロローグでは画面内に各種パラメータが表示されていなかったが,アダムがオーグメンテーション手術を受けて以降は,体力やマップなどゲージが表示されている。HUD(Head-up Display)について設定画面できちんと説明をしているあたり,作り手のこだわりが感じられ,筆者としてはかなりグッと来た
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サリフ社長
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 復職早々,社長の呼び出しを受けたアダム。サリフ社長によると,自社工場が過激派の襲撃を受けているのだという。SWATが過激派の鎮圧にかかる前に,アダムは工場へ単独潜入し,会社の最高機密である軍事試作品の回収と,過激派に捕らわれた従業員の救出を行わなくてはならないというわけだ。

 ここから,敵兵が巡回しているマップを次々と突破し,工場の奥へと進んで行くこととなる。しかし,無理に敵と交戦する必要はない。プロローグパート同様に,銃撃戦で文字通り正面突破してもいいし,遮蔽物をうまく利用し,敵に見つかることなくスマートに潜入しても構わないのだ。

 このように,一つの問題に対して,複数の解決策が用意されているのが,本作というか,シリーズを通しての大きな特徴だ。ステルスアクションはあくまで選択肢の一つであり,力押しで敵全員を倒しながら進んでもゲームの進行にはまったく支障がない。手持ちの弾薬に限りはあるが,倒した敵から銃器や弾を補充できるため,遮蔽物で身を守りつつ各個に撃破していけば,十分に対抗可能となっている。また,見つからないように進む場合は,気絶させた敵を物陰に運ばなくてはならない。倒れた仲間を発見した敵が警戒態勢に入ってしまうからだ。どちらを選ぶかはプレイヤー次第。この選択肢の多彩さこそが,本作のキモといえる部分だろう。

LT(PlayStation 3の場合はL2ボタン。以下同じ)ボタンを押している間は,壁や机などの物陰に隠れることができる。物陰から物陰へと素早く移る場合には,A(×)ボタンを押せばOKだ
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銃器を使わずに敵を無力化するには,背後から忍び寄ってB(○)ボタンを押すだけ。長押しすれば殺すことも可能だが,物音が立ち,発見される確率が増してしまう
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ハッキングとソーシャル・エンハンサーによって,
攻略の幅がさらに広がる


 工場潜入のミッションには「戦う」か「隠れる」か,大きく分けて2通りの攻略法しかなかったが,ミッションの内容やアダムの成長によって,選択肢の幅はさらに広がっていく。
 オーグメンテーションによってアダムは常人にはない能力を身に付けているのだが,ミッションを達成することなどで得られるXP(経験値)を貯め,アダムのオーグメンテーションをアップデートすれば,さらなる能力が得られるのだ。
 アップデートの内容は多岐にわたっており,どの能力を優先して獲得するかはプレイヤーの自由だ。ステルスを重視するなら,探知能力などをアップすることになるし,戦闘を有利に運びたいなら,防御力を上げたりと,プレイスタイルによって十人十色の育て方が可能だ。

オーグメンテーション
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 中でも非常に面白いのが,「ハッキング」「ソーシャル・エンハンサー」という能力で,これらは戦闘や潜入とはまた異なった用途を持っている。

 まずは,ハッキングについて。ミッションの途中,重要なデータが記録されたPCにアクセスしたり,セキュリティロックのかかった扉を開けたりしなければならない場面が出てくる。正しいアクセスコードをあらかじめ入手していれば難なく突破できるが,必ずしもアクセスコードが手に入るわけではない。その場合に役に立つのがハッキングだ。ハッキングはミニゲーム仕立てになっており,アクセス先のセキュリティが作動する前に手早く完了しなくてはならない。
 初期段階ではごく一部の端末に対してのみハッキングできるが,ハッキング関連の能力を取得することで,ハッキングできる端末を増やしたり,検知されにくくしたりするといったパワーアップができる。
 ハッキングを完了させるだけでXPが入るため,片っ端からハッキングをかけてXPを稼ぐのもいいだろう。また,敵のロボットやターレットを制御できれば,戦闘においても大きなアドバンテージが得られることになる。
 ただし,監視の目がある場所でハッキングすると不審人物として攻撃を受けてしまうので,その点には要注意だ。筆者は,ハッキングに夢中になっている間に見つかり,蜂の巣にされてしまった。

ハッキング
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 続いて,ソーシャル・エンハンサー。本作では会話中に頻繁に選択肢が表示され,そこから好きなものを選ぶというスタイルで,普通は,どれを選んでも結果はそれほど変わらない。ところが,場合によっては会話次第でキャラクターの生死や,その後の攻略の手順が変わるほど大きな影響を及ぼすこともあるのだ。
 例えば,工場を襲った過激派の首領,ジークと対峙しているシーン。ジークは工場の職員を人質に取っており,アダムがどんな言葉をかけるかによって,人質の運命が決まる。
 説得に失敗すれば,人質は命を落とす。ここで使えるのがソーシャル・エンハンサーというわけで,その能力が高ければ,相手の心の動きや,それに対応したフェロモン(!)を使うことによって,交渉を有利に運べるのだ。
 本来ならば命がけで潜入しなくてはならない場所であっても,交渉次第では正面から堂々と入れる場合もある。交渉というと一見地味に思えるが,実は,中途半端に戦うより,はるかに強力な場合もあるのだ。

説得
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 工場をクリアすると,サリフ・インダストリーへ帰社。ここから先,メインミッションに沿ってストーリーを先へ進めるのもいいが,オフィスビルやデトロイトの街中を自由に歩き回ることができるようになる。
 このあたりのプレイ感覚は,FPSよりむしろ,RPGやオープンワールドのアクションゲームに近く,メインミッションとは別に用意されたサブミッションを攻略してもいいし,街中いたるところにあるセキュリティをハッキングしまくってもいい。また,路上でいきなり発砲してもいいだろう(もちろん大騒ぎになる)。このように,あちこち探索できる要素がたっぷりと用意されているのだ。

ミッションログ
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 とくに筆者が夢中になったのは,サリフ・インダストリー社内でのハッキング。社内にはアダム以外にも多くの社員が勤めており,それぞれに個室があてがわれているのだが,そのほとんどの扉にセキュリティロックがかかっている。これらをハッキングで破り,同僚の部屋に置かれたクレジットチップをくすねたり,さらにPCをハッキングしてプライベートなメールを覗き見したりと,好き放題に楽しんでしまった。
 セキュリティ担当の社員が同僚の部屋をコソコソとハッキングで荒らし回っている――というのはいかがなものかと思うが,このようなハッキングでもXPが貯まるし,同僚のメールや部屋に置かれたEBOOKには,この世界を理解するうえでのヒントも隠されているので,これも攻略上,大事な要素なのだ。そういうことにしておこう。

あらゆるところに置かれているEBOOK。これを読めば,ストーリーを追っているだけでは明かされないバックグラウンドが分かることもある
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一周しただけでは味わい尽くせないボリューム感


 この先も,警察署へ潜入するために受付の人物を説得したり,ロボットが巡回する中をコソコソと潜入したり,オーグメンテーションによって強力に武装したボスと戦ったりと,さまざまな戦いが待ち受けている。ボス戦以外のほとんどは複数の解法があるため,「普段は慎重に隠れて潜入しているけど,今回は正面から派手に攻めてみるか」など,ワンパターンに陥らない遊び方ができるのも魅力だ。
 新たなオーグメントを身に付けるたびに行動の幅がどんどん広がるため,遊べば遊ぶほど,新たな楽しみが見つかるのだ。

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 本作は全体的に非常にしっかりと作り込まれている印象で,選択肢の多彩さもあって,非常に贅沢な感じを受ける。そのため,「もしあの場面で人質を助けていたら?」「あのミッションを別のルートから攻略していたら?」といったことが気になり,一周するだけではとても十分に遊んだとはいえない気持ちになる。
 強いて要望を挙げるとするなら,画面右下のミニマップに地形が表示されないため,小まめにマップ画面を開かないと道に迷いがちであること。また,コンティニュー時のロードが長く感じられることぐらいだ。いずれも,プレイするうえで大きな問題になるわけではない。

通常,自動販売機のように大きなものを動かすことはできない。だが,オーグメンテーションによって腕力を増し,オブジェクトを動かすと,そこに隠されたルートを発見できることもある
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物語が進むと,アメリカを離れ,海外の街へ潜入することも。一つ一つの街がしっかりと作り込まれている点にも注目だ
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海外では予約特典として配布されたアイテムと限定ミッションも,日本版では標準で同梱されている
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 本作の日本語版は海外版よりも遅れての発売となったが,そのぶんローカライズはしっかりと行われている印象だ。ゲームにおいては物語の占めるウェイトが大きく,前述のソーシャル・エンハンサーのように,相手の発言をよく聞いたうえで選択肢を選ぶという場面も多いため,英語によほど自信がない限りは,日本語版でのプレイをおすすめしたい。

 伝説的なシリーズの新作を生み出す,という困難な仕事を見事に果たしつつ,シリーズ従来作を知らない新規プレイヤーでも楽しめるタイトルに仕上がっているこのデウスエクス。過去シリーズの特徴を現代的にアレンジしつつ,非常に手堅く作られているため,本作の世界観やゲーム内容に興味を抱いた人ならば間違いなく楽しめるはずだ。

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「デウスエクス」公式サイト


 さて,ここまでで本作の内容は分かってもらえたと思うが,さらに,本作のゲームディレクターを務めたジャン=フランソワ・デュガ氏へのメールインタビューを以下に掲載したい。ゲームがリリースされる前に行ったインタビューなので,レビューと重複する部分もあると思うし,また,メールインタビューということで,一問一答形式になってしまうのは仕方ないが,海外でも高い評価を受けた本作の開発者達がどのような思いで制作に当たったのかが理解できると思う。
 ちょっと長めだが,ぜひ読んでみてほしい。


「デウス エクス」ゲームディレクター
 ジャン=フランソワ・デュガ氏へのメールインタビュー

1.自己紹介をお願いします。ゲーム開発では,どのような役割を担当されたのでしょうか。
ジャン=フランソワ・デュガ氏。写真はE3 2011のときのもの
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 こんにちは,デウスエクスのゲームディレクターのジャン=フランソワ・デュガです。私の役割は,クリエイティブチームとゲームのビジョンを確立し,それを開発過程の中できちんと実現していくことです。

2.歴史的名作とされる,デウスエクスシリーズの最新作を制作するに当たって,最も気をつけた部分はどこでしょうか。また,苦労した部分は?
 すべてに注意を払いました。いつもうまくいくわけではありませんが,「生焼き」状態でゲームを出すことはしません(笑)。一番大変だったのは,ゲームのビジュアルと,マルチパスやマルチソリューションとなっているレベルデザインでした。すべてのツールやオーグメンテーションを生かそうとしたため,大変でした。

3.開発が決まったとき,ファンやメディアからのプレッシャーを感じましたか。
 もちろん。でも,一番厳しい批評家は,自分達でした。最高のデウスエクス体験をプレイヤーに届けたいと思い,常に自分達に挑戦していました。最後は,ファンからよりも,自分達が自らに課したプレッシャーのほうが大きかったですね。

4.開発には,何人ぐらいのスタッフが,どれくらいの時間をかけたのですか。
 細かく説明はできませんが,2007年にプロジェクトを立ち上げ,チームは100名以上でした。

5.使用しているゲームエンジンはなんでしょうか。その特徴,もしくは選ばれた理由があるのなら,どういうものか教えてください。
 「CDC」という自社エンジン(トゥームレイダーのエンジン)を使っています。エンジンとして安定しており,成熟した状態であることと,非常に早い段階からプロトタイプを作ることが容易なので,使用することを決めました。

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6.主人公のアダムはどういう人物なのですか。
 彼は忠実で,好奇心旺盛。機知に富んでいていますが,少し皮肉屋です。彼は頼りになるタイプの男です。彼と遊ぶと楽しいと思いますが,やりすぎるとそのあとが怖いかもしれません(笑)。

7.Warren Spector氏は,本作に関与はあったのですか。あったとすれば,どのようなものでしょうか。なかったとすれば,何かコメントしたりしていたりしませんか。
 Warrenはゲーム開発に直接は関わりませんでしたが,開発途中でゲームを見せて,一部をプレイしてもらったりしました。ゲームの方向性を全体的に応援してくれましたね。

8.ゲームの時代はシリーズ従来作「以前」に設定されていますが,それはなぜでしょうか。また,従来作とのつながりはあるのでしょうか。
 それにはいくつか理由があります。まず,フランチャイズの新しいスタートとして,ユニークで独立した作品にしたかったという点。その結果,ゲームはデウスエクスシリーズのファンでなくても楽しめる内容になっていると思います。ゲームの中で出会うのは,新しい主人公や脇役達です。

 二つ目の理由として,この時代はメカニカルなオーグメントが台頭してきた過渡期であるという点です。これより時代が進むと,ナノオーグメントが施された人々が登場しますが,過渡期ゆえ,オーグメンテーションにまつわる道徳的視点,一部の人間はオーグメンテーションによる恩恵を享受できる金銭的余裕がありますが,そのほかの人間にはその特権がないという世界の有益性,危険性などを描くことができます。また,メカニカルなオーグメンテーションは目に見え,キャラクターがどのように進化していくかを見ることもできます。

 これらをテーマとして探求すると面白いのではないかと考えた結果,従来作より前の時代を描くことになりました。

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9.オリジナルの「デウスエクス」は,まるで実際の世界を探索しているような雰囲気が魅力的でした。今回はどうでしょう?
 そう願っています! 今回のデウスエクスは,オリジナルと同じ哲学をもって開発しました。プレイヤーに,その世界の一部であると感じてもらえることは大切なことです。その世界がプレイヤーの行動に反応する,ということですね。プレイヤーが何をするかが意味を持つ,その体験を提供できるかどうかです。

10.生きているようなゲーム世界を作り上げるうえで,どのような挑戦がありましたか。例えば,優れたAIですとか,新しいゲームシステムですとか。
 一番大きなチャレンジは,コンバット(戦闘)でも,ステルス(潜入)でも楽しめるAIをつくることでした。プレイヤーが自由なプレイスタイルを体験しながら,ゲームが問題なく動くようにする,正しいバランスを見つけること,これに尽きます。ここに到達するまでに,とても長い時間がかかりました。

11.敵はどのような存在なのでしょうか。戦い方は,敵の種類によって異なるのですか。
 一般的な悪党から兵士までさまざまな敵が存在します。普通の人間と,オーグメント化されていて特殊な力を使ってくる敵,ロボットの敵も存在します。
 どの敵と対峙するかによって,戦略を変更するのが賢い戦い方です。
 普通の悪党ならたいした事はありませんが,もしオーグメント化された強化兵士に出くわしたら,直接戦うのは避けたほうが良いかもしれないですね。
 どうするかはあなた次第ですが,状況に適応するという事が生き残る為のカギになります。
 全体的に見て25時間から30時間のゲームプレイ中,常に新鮮な体験が出来るよう,選択のバラエティを保つことに注力しました。

12.主人公以外のキャラクターとして,どのような人々が出てくるのか教えてください。あるいは,好きなキャラクターなどがいたら教えてください。
 本作には,アダムと彼のボス,サリフ以外にも面白いキャラクターがたくさん存在します。せっかくのゲーム体験を台無しにしたくないので深くは語りませんが,皆さんがプレイする際にはぜひ,メインのストーリーライン以外の部分も探索してほしいと思います。そうすることで,たくさんの興味深いキャラクターに出会え,この世界のこと,仲間,そして自分自身をより良く知ることが出来ますから。

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13.オーグメンテーションにはどのようなものがあるのでしょうか。オススメの,あるいはお気に入りのオーグメンテーションがあれば,教えてください。それはどのような場合で,どう使いこなすことを勧めますか?
 コンバット,ステルス,ハッキング,ソーシャルと,ゲームプレイの主軸となる4つ要素をサポートする異なった種類のオーグメンテーションがあります。このゲームをどう遊びたいかは本当にユーザーの選択によりますので,どのオーグメントを装備するかはあなたの選択になります。

 私個人はステルスで遊ぶのが好きです。ですので,クロークシステム,スマートビジョン,ノイズサプレッサーのオーグメントを使用します。ハッキングも強化します。なぜなら状況によってハッキングは新しい可能性を生むことが出来るからです。

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14.ゲームの舞台となる各都市の特徴を教えてください。
 デトロイトは,典型的な犯罪と貧困を抱える荒廃したアメリカ北部の町ですが,アダムの働いているサリフ・インダストリーのおかげで,町は成長し続けその姿を誇示しています。
一方で上海近くのヘンシャはとても繁栄している町で,ナイトライフには最高の地域です。教育水準も高く,大学なども存在します。

15.「コンバット」「ステルス」「ソーシャル」「ハッキング」の4つの攻略方法が用意されていますが,ゲームシステムに組み込むときに気をつけたことはありますか? 作り方次第では,物語が破綻したり行き詰ったりと大変そうですが。
 4つの主軸がゲーム内で相互にうまく,かつ自然に生かされていて,それで楽しいかという部分が開発のチャレンジでした。プレイヤーがプレイしたいとおりにプレイ出来るというゲームの特徴のもとにストーリーを構築したので,あなたが何をするかによってストーリーも合わせて変化を見せます。

16.日本語版はお聞きになりましたか。どう思われました?
 安元氏が演じているアダム・ジェンセンの音声データは少し聞きましたが,それ以外のキャラクターは聞いていません。個人的にすごくいい感じだとは思いましたが,私は日本語がまったく分からないので本当に良いのかどうかは分かりません(笑)。

 日本版デウスエクスプロデューサーと話をしたところ,デウスエクスのビジョンがきちんと日本のユーザーにも伝わるように,最高の声優達を使用すると約束してくれましたので,心配はしていません。

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17.DLCや続編の計画があったら教えてください。
 はい,いくつか予定はあります。情報を楽しみに待っていてください。

18.4Gamer読者へのコメントをいただけますか。
 欧米のゲーマーからは良いリアクションが返ってきているので,日本のゲーマー達も同じようにゲームを楽しんでくれることを願っています。
 デウスエクスはFPSとRPG要素が見事に融合され,枠組みにとらわれずに考えることを促すのに成功したとゲームだと思います。
 あなたがもし,自分自身がヒーローの大作アドベンチャーが好きなら,デウスエクスはあなたが待っていたゲームかも知れないですよ!
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