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[GDC 2010]「たった5週間で作り上げた!」 〜 世界で3200万人のユーザーベースを抱える「Farmville」の成功秘話
つい先日も,アメリカのTV番組で,Farmvilleにハマってしまった主婦が育児放棄状態になっていくプロセスを見せていたほどで,その知名度はすでに相当なもの。アクセス者数は広告収入に直結しており,Farmvilleは「Mafia Wars」を抜いたZyngaの看板ソフトとして,またソーシャルゲームを語るうえでの代名詞的な存在として君臨している。
今回,Social & Online Gamesサミットで「Rapidly Developing FARMVILLE: How We Created and Scale a #1 Facebook Game in 5 Weeks」(Farmvilleの高速開発: Facebookのナンバー1ゲームを,5週間でいかに制作,スケーリングしたのか)という講演を行ったのは,そんなFarmvilleのリード・デベロッパであるAmitt Mahajan(アミット・マハジャン)氏だ。実は本作はもともと独立したデベロッパが開発しており,開発途中でZyngaによって買収されたという経緯がある。まだ,開発チームの名称も存在しないうちからのスピード買収だったようだが,そもそもFarmvilleがたったの5週間で作られたというのが驚きのニュースである。
「Farmville」に利用されているAbstracted Network Layerの概要 |
Social Network Wrapperをかけることで,Facebookのダウンタイムでも稼動できるようになっている |
マハジャン氏らのチームは,ゲームデザイナーが3人,アーティストが2人であり,さらにPHPやFlashに精通したWebデベロッパが6人という構成。サーバーなどのテクノロジーはミドルウェアなどでまかない,データ偏重型のゲームであるので,現在もXMLファイルを使ったものになっているという。
そんなWebデベロッパ達で構成されたチームであるためか,Abstracted Network Layerといったような,サーバーアプリケーションでは一般的だが,ゲーム開発にはあまり用いられていない方式が採用されている。買収された当時はZyngaのデータセンターがパンク状態だったため,デディケイテッド・サーバーは存在せずにクラウド化。その分,非常にスケーラブルなサーバーアーキテクチャになったとのことだ。
既成のゲーム開発では見られないような用語もソーシャルゲームには目立つ。Stagingとは,「最終テスト」といった意味のようだ |
今回のセミナーでは数々のデータが紹介されたが,3500万ユーザーを前に,Farmvilleは足踏み状態になったのか,それとも今後も爆発的に伸び続けるのか |
マハジャン氏は,「サーチエンジンでの500ミリ秒の遅延だけで,1%の収益が減った」というGoogleのリサーチを引用し,「Facebookのようなソーシャルゲームは,どれだけ快適にゲームができるかが最も重要だ」とする。ほんの数秒のローディング時間に飽きてしまい,Farmvilleへのアクセスを瞬時に断念してしまう人は,二度と顧客として帰ってくることはないという想定のうえで,とにかくローディングにかかる時間を極限まで減らすことに努めたのだという。
そういった努力の甲斐もあってか,Farmvilleはローンチ後24時間で18万人を記録。これは当初予定していたよりも3倍の数値だったとマハジャン氏は言うが,これがFacebookユーザーのツボにはまったのか,100万人に達するまでには4日間しかかからなかったらしい。この間,プロモーションはまったく行われていなかったとマハジャン氏は話すが,ユーザーからの質問や苦情が入ったときは,サーバーテクニシャンからプロデューサーまで,実際には問題解決できない人材であったとしても,まず最初に動ける人が対応してユーザーを安心させるなどし,「快適に遊んでもらう」ことを心掛けていたようだ。マハジャン氏は,「ソーシャルゲームは短距離走ではなくマラソン。我々は週末2日に寝るだけ寝て,月曜日にFarmvilleをローンチしたが,良い運営には体力が一番であることを心に留めておいてほしい」と講演を締めくくった。
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