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[GDC 2010]「ソーシャルゲーム」定点観測:新興ビジネスの実情を解説
FacebookやMySpaceといった,「ソーシャルネットワークサービス」(SNS)が,ゲームプラットフォームとして次々と整備され始めたのが2007年の中期くらい。それから3年も経たないうちに,SNSはゲーム開発者達が注目する,業界の主役へと一気に躍り出たのだ。それは,去年立ち上がった「iPhone Gamesサミット」を隅のこじんまりとした部屋に押しのけ,基調講演の会場も兼ねる大きなセミナーホールで始まった「Social & Online Gamesサミット」が新たにローンチされたことからも分かるだろう。
Facebook向けゲームからFacebook運営元に計上される額は,300億円といわれる全収益の15〜20%にも及ぶと試算されており,Facebookにとってもゲーム開発会社は最大の顧客である。300億円の20%というと,そのパイはあまり大きくは見えないかもしれないが,ソーシャルゲーム市場の年間成長率は60%にも及ぶ。現在,「2008年度でコンソールゲーム市場はピークに達してしまったかもしれない」と不安視する投資家達が引率するゴールドラッシュが続いており,ソーシャルゲームを開発できる会社にとっては,またとない機会が提供されているのである。
「The State of Social Gaming: Industry Overview and Update」(ソーシャルゲーミングの近状:業界の総括とアップデート)というセミナーを行った,アナリストのJustin Smith(ジャスティン・スミス)氏によると,現在Facebookプラットフォームを中心に,ソーシャルゲーム業界のトップにランキングされるのが,2008年に190億円におよぶ収益を上げ,現在700人もの雇用を抱える「Zynga」だ。2番手は「Playfish」で,雇用者は250人,2008年度の収益は70億円とZyngaの3分の1ほどだが,2009年11月にElectronic Artsに買収されており,今後新たな局面を迎えるのは間違いない。業界3位は,300人の雇用者で45億円ほどの収益をあげた「Playdom」で,MySpace市場ではナンバー1の座を維持しているという。
興味深いのは,スミス氏の「実は,北米のFacebookユーザーは30%(1億4000万人)を超えたくらいに過ぎません。その同等数のユーザーがヨーロッパにおり,全体の18%(7000万人)はアジア方面にいます」と話していたことで,今後はさらに,こういった市場で新しい展開があることを予測する。アジアが18%と低いのは,中国ではFacebookが正式にローンチされていないためだ。ただ,人口の多いインドやインドネシアでは,Facebookはすでにインターネットユーザーが利用するSNSのファーストチョイスとなっており,こういったマーケットからも,新しいゲームビジネスの参入が見込まれているようだ。
また,Facebookは「Facebook Connect」という,ユーザーアイデンティティをFacebook以外でも利用できる新サービスを始めているのに加えて,今後は「Facebook Credits」というウェブマネーのような課金システムを整備していく予定だ。これには現在主流のPayPalも警戒しているのか,「PayPal ID」というSNS的サービスの発足を発表しているが,いずれにせよ,こういったFacebookのプラットフォームとしての進化が,ソーシャルゲーム業界を過敏に反応させつつ,今後もますます発展していきそうな気配である。
実際,有能なゲーム開発者として知られる人物の多くも,現在ソーシャルゲーム開発会社に雇用されており,例えば「Sid Meier’s Civilization II」(1996年)や「Rise of Nations」(2003年)で知られるBrian Reynolds(ブライアン・レイノルズ)氏は,Zyngaで「チーフ・デザイナー」という役職についたばかり。
彼のほかにも,「Indiana Jones and the Last Crusade」(1989年)のNoah Falstein(ノア・ファルシュタイン)氏,「Nemesis: The Wizardry Adventure」(1996年)のBrenda Brathwaite(ブレンダ・ブライスワイト)氏,「Pitfall」(1983年)のSteve Merezky(スティーブ・メレツキー)氏といった,そうそうたるメンバーがソーシャルゲーム市場に参入しており,今回のSocial & Online Gamingサミットでも「Why Are Gaming Veterans Flocking Social Gaming」(なぜ,ベテラン開発者はソーシャルゲーミングになびくのか)というディスカッションを行っている。
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