プレイレポート
核戦争後の世界に出現した“ダークワン”とは……? 先行体験会で確認できた,Xbox 360用ソフト「メトロ2033」の魅力をレポート
メトロ2033は,核戦争によって荒廃した世界を舞台としたFPS(ファーストパーソンシューティング)で,開発はウクライナのデベロッパである4A Gamesが手がけている。
体験会当日は,1時間ほどと限られた時間ではあったが,マスターROMに近いバージョンを用いての先行プレイができた。本稿では,実際にプレイした印象をまじえつつ,ゲームの概要や,開発者のコメントなどをお届けしよう。
「メトロ2033」公式サイト
ちなみに赤石沢氏よると,日本語版には,欧米のゲームショップGameStopの予約特典として用意されていた,追加コンテンツのショットガンが標準で収録されているとのこと。
本作はこちらの記事でもお伝えしているように,ロシアの作家,Dmitry Glukhovsky氏の同名小説を原作とした作品だ。ゲームの舞台は核戦争後の荒廃した世界。戦争前に生を受けた青年“アルチョム”は,ある日“ダークワン”と呼ばれる恐ろしいクリーチャーの存在を知ることになる。ダークワンは,人々が隠れ住む地下鉄(メトロ)のトンネルに進出してきており,このままでは命を奪われるのは時間の問題だ。アルチョムは自らが育ったエキシビジョン駅を救うため,冒険の旅に出ることを決意する。果たしてアルチョムは生き残ることができるだろうか……というのが,本作の導入ストーリーだ。
ゲームのあちこちに置かれているオブジェクトも非常に丁寧に作られており,ギターに視点を合わせてボタンを押すと,弦をつま弾く音が聞こえてきたり,電気スタンドに視点を合わせてボタンを押すと,明かりが消えたりなど,なかなか芸が細かい。発売後には,そういった点にもぜひ注目してみてほしい。
プレイヤーは,いつ現れるやもしれぬクリーチャーにおびえながら,頼りないライトを片手に,地下世界を移動することになるわけだ。この緊張感は,本作の大きな魅力の一つといえるだろう。
そう説明されると,やたらと難しそうな印象を受けるかもしれないが,移動に関しては,コンパスが常に目的地を示してくれることもあって,広大な世界で道に迷うような状況はあまり発生しない。そのため,ゲーム展開のテンポは悪くなく,ストレスを感じることなくサクサクとストーリーを進められた。こういった配慮は,プレイヤーからしてみれば非常に嬉しいポイントだろう。
気になるFPSとしての戦闘バランスに関してだが,比較的広いステージならば,距離を取りつつ攻撃すれば,雑魚敵ならばすぐに倒せるため,そんなに難しいという印象はない。ただ,敵クリーチャーは動きが素早く,近づかれるとガンガン攻撃されてしまうので,油断は禁物である。
また,序盤でトロッコに乗るシーンがあったのだが,トロッコに乗った状態では当然照準が合わせづらい。そのうえ,トロッコ内では移動がほとんどできないため,敵から狙われると非常に危険だ。
もちろんクリーチャーは,そんなプレイヤーの都合などお構いなしに襲ってくる。そういった不自由な状況下だと,戦いづらさから冷静な判断力が失われるため,クリーチャーが普段よりも一層怖く感じられた。
ちなみにトロッコ乗車中,「後ろから嫌な音がするな」と思って振り返ったら,敵にガッツリ攻撃されており,さすがにビックリした(一体どこから飛び移ったんだ……)。メトロ2033の主人公は,一般的なFPSと比べると比較的タフなので,2,3発の攻撃で死ぬようなことはなかったが,これがもしリアル系FPSだったら,10回くらい死んでいるところである。
先述したように,広いステージなら,敵との間合いを取りつつ余裕を持って戦えるが,狭い場所やトロッコ乗車中などの特殊な状況化においては,いつもよりも的確な判断が求められる。普段はあまり使う場面のなさそうな,ナイフでの近接攻撃なども,リロードの時間ロスがないため,こういった場面で威力を発揮しそうだ(筆者はパニクってて近接攻撃をすっかり忘れていた)。
ともあれ,特殊な世界で,特殊な敵を戦うメトロ2033では,迅速な状況判断と,臨機応変な行動がなによりも重要だ。相手は,銃器で武装した人間とは限らないので,固定観念にとらわれていては命がいくつあっても足りない……ということを覚えておこう。
弾薬に関しても,無駄撃ちさえしなければすぐになくなるということはないため,節約を強いられる状況は確認できなかった。
最初の街の武器屋には,ゲームスタート時点では買えないような,高級な武器も売られている。通貨をコツコツと貯めて,そういった強い武器を購入してから,本格的に冒険を開始する……といったような,ロールプレイングゲームのような遊び方もできそうだ。FPSがあまり得意ではないという人でも,じっくり取り組めば何とかなるゲームバランスなのかもしれない。
そのへんに関しては,今回のプレイ時間が短かったこともあり,確認が取れなかったが,製品版を購入したら,ぜひとも試してみたいところだ。
本作では,日本語,英語,ロシア語の3言語から音声を選択できるということは,先述したとおり。筆者は最初,日本語音声でプレイしていたのだが,チャプター間なら音声変更が可能ということで,途中からロシア語に変更してプレイしてみた。
さすがロシアの小説を元にしている作品……ということでもないのだろうが,ロシア語音声にすると,雰囲気の素晴らしさがさらに際立つ印象だ。日本語音声でのプレイも,洋画の吹き替えっぽい感じでかなり楽しめたのだが,ロシア語でのプレイには,また違った魅力がある。
音声を変えると,メインキャラクターだけではなく,NPCの日常会話もすべてロシア語になるので,日本人の筆者からすると,本当に異国に迷い込んでしまったかのような感覚が味わえるのだ。海外旅行先の裏路地で感じるような心細さ,怖さが,本作で体感できる絶望感を,さらに深めてくれる。これは本当にオススメできるので,発売日である5月13日以降,ぜひ一度はチャレンジしてみてほしい。
ここからは,体験会の最後に行われた,赤石沢氏による質疑応答の模様をお伝えしよう。ローカライズに定評のあるスパイクならではの,こだわりがうかがえる内容なので,洋ゲーファンはぜひ目を通してほしい。
赤石沢氏:
本作は音声を重視していますので,原作のニュアンスを大事にしつつ,プレイヤーの方にとって分かりやすいように翻訳しています。たとえば原文で「あれが」「それが」というような分かりにくい部分に,具体的な名前を出すなどして,ストレスがかからないようにしています。
――本作の地下鉄路線図は実際の地下鉄のものなのでしょうか?
赤石沢氏:
多少違うものもありますが,ベースとなる図は実際のロシアのものです。私もこの仕事で初めて知ったのですが,実際にロシアの地下鉄はシェルターの役割も果たしているらしいです。
――スパイクさんが「メトロ2033」のローカライズを手がけることになったきっかけを教えてください。
赤石沢氏:
昨年の11月くらいから,獲得に向けて動いていました。あまり情報のないタイトルだったのですが,必ずいいタイトルになると思っていましたので,早めに唾を付けさせていただきました(笑)。
――では,ゲームの出来が分かる前から,このタイトルなら間違いないと感じていたのですね。
赤石沢氏:
はい。欧米では2010年3月発売だったのですが,その割にはタイトなスケジュールで開発を進めていたようでした。なので我々も年明けの1月,2月は心配していましたね。ですが結果的には,いいものになったんじゃないかなと思います。
――昨年の11月から動いていたとなると,かなりタイトなスケジュールでしたね。
赤石沢氏:
スパイクにローカライズをやらせていただけないかと,THQさんにお声をかけさせていただいたときは,まだ英語版も出来ていない状態でした。ですので,ローカライズの実作業に入ったのは2月,3月からですね。テキストをいただいてゲームの中身を一週分見た後で,もう翌週には声優さんに収録をお願いしなくちゃ,というくらいにタイトなスケジュールでした。
――ローカライズに慣れているスパイクさんならではのスピードですね。
赤石沢氏:
そういいたいですね。
――声優さんはどなたが演じられているのですか?
赤石沢氏:
主役のアルチョムは,“てらそままさき”さんですね。「ER」の吹き替えなどをやっています。ヒーローものでしたら「仮面ライダー電王」のキンタロス役などを演じられています。
――ストーリーのボリュームはどのくらいでしょうか?
赤石沢氏:
時間でいうと,初回であれば10〜15時間くらいになると思います。
――グラフィックスが綺麗ですが,これは自社のエンジンなのでしょうか?
赤石沢氏:
はい。デベロッパが4A Gamesですので,オリジナル開発による“4A エンジン”を使用しています。
――日本のファンに楽しんでほしい部分はありますか?
赤石沢氏:
「メトロ2033」に関しては,ティザーサイトの段階で「あなたは吹き替えと字幕,どちらが好きですか?」という謎かけから入らせていただきました。
結果的には3言語を収録でき,お客様に選んでいただけるという形でご提供できましたので,1週目は日本語でプレイしていただき,2週目以降は他言語で遊んでもらって,モチベーションに変えてほしいですね。
――:本日はありがとうございました。
「メトロ2033」公式サイト
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