レビュー
Thermaltake初のゲーマー向けキーボードは,クセのない完成度がウリ
Tt eSPORTS MEKA G1
今回取り上げる「Tt eSPORTS MEKA G1」(以下,MEKA G1)は,そんなキーボード製品のうち,ハードコア&プロゲーマー向けと位置づけられるほうのデバイスだ。ZF ElectronicsのいわゆるCherry黒軸スイッチを採用し,英語配列のフルキー仕様になるという,一見して渋めの印象だが,本気でゲームをプレイしたいと考えている人達をどこまで満足させられるのか。今回はそのあたりをチェックしてみたい。
目立って邪魔な要素はなく,質実剛健という印象
直径10mmの布巻ケーブルが目を引く
では外観から見ていこう。本体は基本的にツヤ消しの黒一色で統一されており,LEDインジケータも,Num LockにCaps Lock,Scroll Lockと必要最低限。「Tt」の赤いロゴが目立つものの,総じて,おとなしい雰囲気を醸し出している。
違うところといえば,標準的な英語104キー配列における左[Windows]キーの場所に[Fn]キーが置かれていることくらいだ。
[Fn]キーという名前と,上の写真に見えるファンクションキー部の刻印で想像がついた人も多いと思うが,これは単体だと機能せず,[F1]〜[F7]キーと組み合わせることで,マルチメディアボタン的に利用できるというものだ。Windowsのサウンド出力音量調整とスピーカーのミュート,そしてメディアプレイヤーの簡易操作が行えるようになっているものの,ゲーム関連で使う機会があるとすればボリューム周りくらいなので,ここは先行するいくつかの他社製品と同様,ゲーム中に[Windows]キーを“誤爆”する問題に対処したという理解が正解だろう。
一方,重量は1.4kgあり,ずっしりとした重みを感じる。本体底面に貼り付けられた滑り止めのゴムがやや大きめということも相まって,机に置いた状態でゲームをプレイしていても,操作中にキーボードが動いてしまうような心配はまず無用だ。
キーの並びはシリンドリカルステップスカルプチャ仕様になっており,そのため,キートップの高さは場所によって異なる。実測では7mm弱〜10mmといったところだ。最近は,ノートPCよろしく,キーが平らに並んでいるキーボードも少なくないが,ゲーム用途で「キートップの並びに段差があるかどうか」が操作性を左右することはほとんどないので,ここは正直,好みの問題ではなかろうかと思う。ただ,長文を打つことまで考えると,筆者はシリンドリカルステップスカルプチャのほうが好みであり,その点でMEKA G1には好感が持てる。
このケーブル,見た目どおり相当に固く,取り回しは結構大変。付け根の部分をある程度回せるようになっているので,そこで調整できなくはないものの,キーボードの位置を頻繁に動かすようなケースでは気になる部分だといえる。
なぜこんなに太いケーブルなのかというと答えは簡単で,本体をPCと接続するためのUSBケーブルとは別に3本のケーブルが用意され,4本が束になっているからだ。MEKA G1の本体奥部には2ポートのUSB 2.0ポートと,アナログヘッドセット用となるミニピンのヘッドフォン出力&マイク入力端子各1が用意されるため,それらのケーブルも一緒に布で巻かれているというわけである。
黒軸採用で良好かつ反応の早いキータッチ
Nキーロールオーバー対応で同時押しに強い点も魅力
実際,MEKA G1の場合,ストロークが4mmあるのに対し,入力は2mmほど押し込んだところで受け付けられることと,リニアに変化する反発力もあって,高速タイプがしやすい印象だ。ただ,キーを底打ちするクセが付いている場合は,慣れるまでの間,スイッチを重く感じたり,それによって指が疲れたりする可能性もつきまとう。公称押下圧が60gなので,慣れるまでは大変かもしれない。
さて,ゲーマー向けキーボードで最も気になるのは,複数のキーを同時に押したときの挙動だが,MEKA G1はNキーロールオーバーに対応しているため,しっかりと認識してくれる。下に「4Gamer Keyboard Checker」(Version 1.0 Beta)を使って挙動をチェックしたものを示したとおり,PS/2接続時は全キーの同時押し,USB接続時は修飾キーを除いて6キーの同時押しが可能であると確認できている。いずれの場合もキーの組み合わせに制限はないため,ゲームをプレイするうえで同時押し周りの不都合に見舞われる心配はなさそうだ。
付属のPS/2変換アダプタを介してPCに接続し,4Gamer Keyboard Checkerを実行した結果。Nキーロールオーバー+PS/2接続ということもあり,多数のキーを同時押ししても問題なし |
一方,こちらはMEKA G1の標準インタフェースとなるUSB接続時の実行結果。[Shift]や[Ctrl]といった修飾キーを除いた6キーまでの同時押し対応を確認できた |
安心感のある使い勝手
キーは多少重いが許容範囲か
PCゲームの定番ジャンルであるFPS&TPSから,今回はオープンβテスト中の「トイ・ウォーズ」と,筆者がマウスレビューでも用いている「Warsow 0.6」をプレイしてみたが,「しゃがみ斜め移動しながらリロード」といった,複数キーを使う必要のある操作が,どのようなキーバインド設定でもこなせる。これはやはりNキーロールオーバー対応製品の強みといえそうだ。
また,ほんのわずかに押し込んだだけで入力を受け付けてくれるレスポンスの良さがあるので,「反発力が強すぎるせいで操作が遅れ,ミスしてしまう」といったことはまず起こらない。
連打というよりは,むしろキーを押しっぱなしにして移動したりしゃがんだりといったアクションをすることが多い関係で,よりキー入力頻度の多いWarsow 0.6では60gという荷重の重さが多少気になるものの,許容範囲だろう。
ただ,実用上の問題はないと言えるものの,もし「7キーすべてとターンテーブルを同時に押す」ような譜面があった場合,USB接続時は支障が出る可能性もあるので,この点は気にしておいた方がいいかもしれない。
ちなみにLR2では,バスドラムの16分連打のような,「同一キーを小刻みに連打」するシーンで黒軸の強みを実感できる。総じて良好な操作感だ。
安定感と操作感には合格点を与えられる
1万4000円という価格は高いが,相対的には妥当
そんなMEKA G1の実勢価格は1万4000円前後(※2011年3月18日現在)。パームレストが付属する点や,キーボード側にUSBやアナログサウンド入出力を引き出せるという点も含めてほぼ同じ仕様となる「SteelSeries 7G」の実勢価格が,日本語配列版,英語配列版とも1万5000〜1万7000円程度(※2011年3月18日現在)ということを踏まえるに,価格的にはMEKA G1のほうが優位といえる。ゲームにおける操作感を重視して1万円台半ばのゲーマー向けキーボードを選ぶとき,MEKA G1は有力な選択肢の1つとなるだろう。
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